「えっと、ここ・・・・・・かな?」
眼鏡をかけ、ぼさぼさの髪の毛で顔が隠れがちの少女が呟いた。学生だろうか、どこか野暮ったい私服を纏ったその少女は、寂れたビルの三階の扉の前に立っていた。
「えぇっと、ここ、だよね。でも、本当なのかな」
スマホの画面と錆の浮いた扉を交互に見ながら、少女が首をかしげる。少し躊躇しながらも、ドアノブに手をかけゆっくりと扉を開けた。
少女の名前は南屋志都美(みなみやしずみ)。内気な性格で、人付き合いも苦手な高校一年生の彼女は、友人に教えられた占い屋を訪ねていた。なんでも、悩みを解消したり願いを叶えるお守りやストラップを売ってくれるらしい。
(それって、占い屋なのかな・・・・・・?)
友人から話を聞いた時はそんな疑問が浮かんだ志都美だったが、人には言えない悩みを抱えていた彼女は友人に薦められるまま、その怪しげな占い屋に行ってみることにした。そういうわけで、寂れたビルの三階、教えられた占い屋の住所に向かい、志都美は扉を開けたのだが・・・・・・。
「わぁ・・・・・・!」
扉の先は、幻想的な装飾をされた、まるで異世界のような雰囲気を漂わせる空間だった。天井から薄絹のベールがかかり、名前も知らない生物の置物や、水晶玉が飾ってある。アロマか何かを焚いているのか、ふわりと花のような香りが志都美の鼻腔をくすぐった。
「あぁ、お客様かな?いらっしゃい、こっちだよ」
「あっ、えと、はいっ」
部屋の奥からの声に、驚いた志都美はどもりつつも返事をする。何枚かのベールの向こう、どうやらテーブルが置かれているらしい場所の向こう側に人影が見える。おずおずと、ベールをくぐりながら志都美はそちらに歩いていった。
(でも、さっきの声・・・・・・女性の人なのかな)
そう考えた志都美の予想通り、ベールを抜けた先にいたのはまだ幼さを残す少女だった。袖の長い着物を羽織り、妖しげな笑みを浮かべている。
「ようこそ、占いの館へ。さ、座っておくれ」
少女に促され、綺麗な装飾が施されている椅子に腰かける志都美。テーブルの向かい側の少女は笑みをたたえたまま、話しかけてくる。
「よろしい。さて、早速だけど君の悩みを聞こうじゃないか。」
「は、はいっ」
雰囲気に圧倒されながら、志都美は話し始めた。ここに来た理由である、とある悩みを。
「あの、えっと・・・・・・わ、私には、弟みたいに可愛がってる子がいるんです。近所に住んでる陽太って子なんですけど。それで、二週間くらい前に陽太に告白されちゃって。陽太のことは好きですけど、弟に対しての気持ちと同じだと思うんです」
ポツポツと語る志都美の話を、少女は微笑みながら聞いている。
「陽太はまだ小学生だから、多分親愛の感情を恋愛的なものだと勘違いしてるんじゃないかなって。でも、断ると悲しむだろうし、何より私が陽太に嫌われたくなくて。どうすれば、いいでしょうか?」
「なるほどねぇ。ふぅむ・・・・・・」
志都美の話を聞き終わった少女は、考え込むような素振りでテーブルの下から何かを取り出した。カードの束に見えるそれを慣れた手つきでシャッフルし、ざっとテーブルの上に広げながら志都美に言う。
「好きなカードを二枚、引いてくれるかな」
少し緊張しながら手を伸ばし、志都美は二枚のカードを選ぶ。促されて表返すと、そこにはタロットのような絵が描いてあった。白い服を着た女性が、座りながら何か棒のようなものを振っている絵と、トカゲのような生き物が尻尾や体を絡ませ合っている絵。
「ほぉ、これはこれは。降ろし巫女が出たのなら、存外に難しい問題ではないかもしれないね」
「え、ええと・・・・・・?」
「あぁ、すまないね。つまり、君の悩みはいずれ晴れるだろうということさ。そうさな・・・・・・一週間後、その陽太君に返事をしてあげるといい。その時、君が思うままの返事をね」
「は、はぁ・・・・・・?」
(答えになってない気がするんだけど・・・・・・)
そう思いながらも、ニコニコと笑う少女に言うのは気が引けてしまった。志都美は曖昧に頭を下げて、ふと気付く。
「あっ、ごめんなさい。あの、料金の方は」
「構わないよ。君は初めてのお客様だからね、料金はいらない。ただ、その代わりと言ったらなんだけど、このストラップを買ってほしいんだ」
少女の小さな手で差し出されたのは、デフォルメされた狐の付いたストラップだった。
(ちょっと可愛いかも・・・・・・)
そう思ったが、もしかしたらこのストラップで法外な値段を取るのかもしれないと、志都美は身構えてしまう。だが、
「500円なんだけど、いかがかな?」
少女が口にした金額は、いたって普通なものだった。なんだか肩透かしを食らった気分で、志都美は財布を取り出した。
「は、はい。それくらいなら大丈夫です」
「それは良かった。色々とご利益があるからね、これには。出来るだけ、肌身離さず身に付けているといい」
受け取った狐のストラップは値段にしては結構しっかりした作りに見えた。志都美は早速、鞄に付けてみる。どうやら気に入ったようだ。
「うん、それじゃあ帰りに気を付けて。またのお越しを、お待ちしているよ」
「あっ、はい、ありがとうございました」
ぺこりと一礼し、部屋を後にする志都美。ベールをくぐりながら扉を開けて外に出ると、なんだか元の世界に戻ってきたかのような気分になった。
(なんか、雰囲気凄かったな・・・・・・こんな可愛いきつねさんも買えたし。陽太のことは解決しないと思うけど、まぁいいかな)
階段を降りながら、ストラップに目をやる。ブラブラと揺れているそれはどこにでもありそうなのに、志都美にとっては妙に魅力的に見えていた。
「ふふ」
どことなく嬉しそうにしながら、志都美は帰路につく。悩み自体は解決していないものの、気が晴れたのかその足取りは軽かった。
「ふぅ・・・・・・」
夜。入浴を終えた志都美は、自室でくつろいでいた。ベッドに座りながらスマホを確認すると、一件だけメッセージが届いている。
『明日、しず姉さんの家行ってもいい?』
メッセージは陽太からのものだった。心臓が少し跳ねながら、志都美は慌てて返信する。
『ごめん!明日はちょっと難しいかも・・・・・・』
明日は日曜日で、特に予定は無い。しかし、志都美の中で陽太の告白に対する答えが出ていない以上、直接会うのはどうしても避けたいと思ってしまった。
『本当にごめんね。一週間後の日曜日なら大丈夫だから!』
時間稼ぎの為のメッセージに、陽太はすぐに了解のスタンプを押してくる。申し訳なさそうな表情をしながら、志都美はスマホを置き、ベッドに寝転がった。
「うぅ、ごめんね陽太・・・・・・私、臆病だなぁ・・・・・・」
罪悪感を覚えながら、天井を眺める志都美。ちゃんと陽太の気持ちに向き合わないといけないと分かっていながらも、中々勇気が湧いてこない。と、
「・・・・・・あれ?」
ふと、狐のストラップが視界の隅に入った。まるで自己主張するようにプラプラと揺れている狐に、志都美はそっと手を伸ばしてみる。
「やっぱり可愛いなぁ。でも、結局陽太のことは解決してないんだよね・・・・・・はぁ」
狐を手の中で弄びながら呟く。すると、狐のストラップはまるで生き物のように、志都美の手の中で脈動した。
「え?」
驚いて手を放そうとする志都美。しかし、狐は紐の部分を絡みつかせるようにして志都美から離れない。
「何、怖いっ、なんなのっ!?」
怯えながら手を振るが、狐は生きているようにするすると志都美の手から腕へと上っていき、顔の横まで来てしまう。そして、
「え、あっ・・・・・・!?」
狐のストラップ、その顔の部分が志都美の頬へと触れる。瞬間、彼女の意識がぐにゃりと歪み、闇の中へと落ちていく。
「や、だっ・・・・・・!」
抗おうにもどうしようも出来ず、志都美は何かの力に飲み込まれるように意識を手放すのだった。
意識を取り戻した志都美の目に映ったのは、スマホに映った自分の写真だった。力が抜けたのか、スマホは手を滑り落ちてベッドに着地する。どうやら、ベッドに横向きで寝ているようだ。
(え?あれ、いつの間に・・・・・・?)
状況を掴めず混乱しながら、体を起こして周囲を確認する。すると、とんでもない光景が目に飛び込んできた。
「え、なんで・・・・・・これって・・・・・・っ!?!?」
下半身に、何も履いていない。それだけではない、本来ありえないものが、股間に付いている。
「お、おちんちんっ!?!なんで、え!?」
すぐに目をつぶって手で顔を覆い隠す志都美。しかし、さっきの光景が脳裏に焼き付いて離れない。陰毛も生えそろっていない股間に屹立する、勃起しても皮を被ったままの男性器。しかも、
(な、なんか変な感じがするっ・・・・・・!)
勃起したペニスの感覚が、志都美に伝わってくる。ドクンドクンと心臓が鼓動する度に、ぴくぴくと震えるペニスは、外気に晒されているからか敏感に存在を主張していた。深まるばかりの混乱に、志都美はもう一度、自身の股間を確認してみる。
「・・・・・・嘘、なんで」
そこには、さっき見たものと同じ光景がある。勃起した小さなペニスと、その下にある睾丸二つ。間違いない。二次性徴前の、男性の下半身だ。顔を青ざめさせながら、志都美は周囲を確認する。
「・・・・・・え、ここって」
そこは、志都美の部屋ではなかった。しかし、見覚えがある。ここは、この部屋は。
「陽太の、部屋?」
何度も来たことのある、陽太の部屋だった。わけも分からないまま、スマホを手にしてインカメラを起動する。
「よ、陽太!?なんで、え、どういうことなの!?」
スマホの画面に映ったのは、他ならぬ陽太だった。青ざめながら驚いた表情で、目を見開き固まっている。青い生地に恐竜のシルエットの柄が入ったパジャマを着ているが、下半身には何も履いていない。志都美が顔を触ると画面内の陽太も頬を触り、口を開いたり閉じたりすると、陽太もその通りに動いた。
「わ、私・・・・・・陽太になってる・・・・・・!?」
志都美は、彼女自身に恋慕の情を抱いている少年の体で、呆然と呟いた。ベッドに座り込みながら、信じられないような状況に何もすることが出来ない。
(なんで、分からない、夢でも見てるんじゃ)
そう考えるも、ここまでリアリティーのある夢を志都美は今まで見たことが無い。それに、下半身で未だにぴくぴくと動いているペニスの感覚は、とても夢だとは思えなかった。
「ど、どうしよう、早く元に戻らないと・・・・・・でも、どうすればいいの、これ・・・・・・?」
何故こうなったのかも、戻り方も分からずに志都美は混乱し続けている。とりあえず服を着ようと、ベッドの近くに脱ぎ捨ててあったブリーフとパジャマのズボンを手に取った。
「こ、これ、大きいままでも大丈夫なのかな」
陽太のペニスは、志都美の動揺も関係なくピンとそり立ったままだ。ブリーフに足を通し、出来るだけペニスに触れないように上げていくが、
「あっ・・・・・・!?」
ブリーフを持った指先が、ペニスを掠めた。鋭い刺激が伝わり、志都美は思わず声を漏らす。
(い、今のって・・・・・・!お、おちんちんの感覚・・・・・・!?)
志都美は、別に性的な知識に疎いわけではない。むしろ、興味津々なタイプだった。一週間に数回は自慰行為を行うし、数少ない友人と卑猥な話で盛り上がってしまったこともある。しかし、生のペニス、それも小学生のものを見るのは当然初めてだった。さらに、その感覚を知ることも出来るという事実に、志都美は頭がくらくらとしてしまう。好奇心に駆られてペニスに手を伸ばすも、なんとか思い留まった。
(だ、駄目っ!この体は多分陽太のものなんだから、変なことしちゃいけない!)
首をぶんぶんと振り、煩悩を振り払おうとする志都美。だが、視線はどうしても陽太のペニスに向かってしまい目を離すことが出来ない。まるで魅了されたかのように、志都美の精神は徐々に何かに蝕まれているようだ。
「うぅ・・・・・・」
口から、まだ声変わりしていない陽太の呻き声が漏れる。少女と言っても違和感の無いような声は、いつも陽太と話している時に聞く声とは少しだけ違うように聞こえた。
(だ、駄目、そんな、陽太に顔向け出来ない)
そう思いながらも何かに背中を押されるように、志都美は再びペニスに手を伸ばしてしまう。陽太の指先が皮被りのペニスに触れると、ピリピリとした鋭い刺激が志都美を襲った。
「あぁっ・・・・・・!」
女性の感じ方とは違う、触れた部分に集中しているような刺激。クリトリスに似ているが明確に違う感覚に、志都美は陽太の体を震えさせてしまう。そのまま、手でペニスを握って前後に動かすと、敏感な快感が次々と伝わってきた。
「だ、っめ・・・・・・ぅうん・・・・・・!」
罪悪感を覚えながらも、陽太の体で悩ましげな声を上げながら青臭い快楽を味わう志都美。手の動きが徐々に速くなり、いつものオナニーの癖か片手で乳首を弄る。陽太の乳首を指先でつまんでも、普段のような快感は得られない。しかし、少年の、陽太の体をまさぐっているという事実に、志都美の背にゾクゾクとした背徳感が走っていく。
「くぅぅ・・・・・・っはぁ、駄目、なのに・・・・・・とまらないよぉ・・・・・・!」
シュッシュッとペニスを擦る音と、声変わりもしていない陽太の喘ぎ声が彼の部屋に響く。非現実的で倒錯的な状況に、志都美の精神と陽太の体は限界だった。
「あっ、なにか、きちゃ、うぅっ・・・・・・!」
幼いペニスがびくびくと震え、志都美は目尻に涙を浮かべながら、ぎゅうっと足を閉じるように力が入ってしまう。熱い息を吐きながらペニスを確認すると、しかしそこからは何も出ていなかった。
「あ、れっ?」
(今、何か来たと思ったんだけど・・・・・・)
志都美の知識では、男性が絶頂する時は射精を伴うはずだった。しかし、目の前のペニスはびくびくと震えるばかりで何も出してはいない。どういうことかと考える前に、志都美は強烈な眠気を覚える。
「ちょっ、と、え?」
体から力が抜け、ベッドへと倒れ込む志都美。彼女は陽太の下半身を露出したまま、落ちていくように意識を失った。
「はっ!?」
意識を取り戻した志都美は、ベッドから飛び起きて辺りを見回した。間違いない、自分の部屋だ。
「え、あれ・・・・・・?」
気が抜けたように座り込む。姿見に目をやると、呆けたような表情の自分が映っている。志都美は、ぼんやりとしたまま呟いた。
「夢、だったの?」
しかし、陽太の体になってオナニーをしたという記憶は志都美の脳裏に焼き付いている。とても夢とは思えない、生々しい体験。志都美が自身の体を確認しようとした時、それに気が付いた。
「これ、って」
腕に絡みついた、ストラップ。狐を模したそれを見て、意識を失う直前のことを思い出す。
「ひっ・・・・・・!」
その時の恐怖が蘇り、ストラップを振り払う。簡単に吹き飛んだそれは、カツンと音を立てて部屋の壁にぶつかり、床へと落下した。それを見ながら、志都美は全てを思い出していく。
「も、もしかして、これが原因なの?」
床に転がったままのストラップを見つめながら呟くが、拾い上げることは出来ない。志都美は全てを忘れようと、毛布にくるまり目をつぶった。しばらく眠ることも出来ないまま、彼女はベッドで震えているのだった。
翌日。いつの間にか眠りについていた志都美は、目覚ましをかけていなかったのに自然と目覚ましの鳴る時間に目を覚ました。目をこすりながら起き上がると、部屋の隅に転がっている狐のストラップが目に入る。
「っ・・・・・・!」
出来るだけそちらを見ないようにしつつ、彼女は朝食を食べに部屋を後にした。
(うぅ・・・・・・どうしよう・・・・・・)
ブルーベリージャムを塗った食パンをかじりながら、志都美は陰鬱な表情で悩む。今日は日曜日、普段なら部屋でダラダラと漫画を読んだり動画を見たりするところだが、今の部屋にはあのストラップがある。昨日、あんなことを引き起こしたであろう狐のストラップが。
(どこかに、捨てにいこうかな)
そう考えるが、ふと陽太の体になった時の体験が脳裏をよぎった。新鮮で初々しい、陽太の体での自慰行為。女性の快感とは違うそれを、志都美は再び味わいたいと思いかけ、首を振って煩悩を払おうとした。
「ちょっと、志都美大丈夫?顔赤いし・・・・・・風邪?」
「う、ううんなんでもない!ごちそうさま!」
母親から心配げな視線を向けられるが、今まさにオナニーの想像をしていたという後ろめたさもあり、志都美は逃げるように部屋に戻った。当然、原因であろうストラップは部屋の隅に転がったままだ。
(・・・・・・一度、一度試してみよう。もしかしたら、関係無いのかもしれないし)
志都美は自分に対する言い訳のように考えながら、慎重にストラップに近付いてしゃがみ込んだ。恐れる気持ちと、それ以上の快感への誘惑。そっとストラップの紐をつまみ、狐を持ち上げる。
「・・・・・・何も、起こらない?」
そのままじっと待ってみるが、特に意識が遠のくことも、力が抜けることも無い。拍子抜けしたように、志都美は机の上にストラップを置いて椅子に座った。
(あれ、じゃああの時はどうして・・・・・・やっぱり、夢だったの?でも、あの感覚は・・・・・・)
狐を眺めながら、志都美は思考を巡らせる。色々と考える内に、昨日寝付くのが遅かったからか睡魔が襲ってきたようだ。彼女はうつらうつらと船を漕ぎ始め、ゆっくりと意識が眠りに沈んでいき───
「・・・・・・あいたっ!?」
───おでこを、机にぶつけてしまった。
「いたたた・・・・・・もう、駄目だなぁ私・・・・・・って、あれ?」
おでこをさすりながら目をやると、机にあるはずのストラップが無い。代わりに何かの本のようなものが開かれたまま置いてある。どうやら、算数の問題集のようだ。
「え、待って、これってもしかして」
嫌な予感がした志都美は、顔を上げて辺りを見回す。予感の通り、そこは陽太の部屋だ。つまり、今の志都美の体は。
「ま、また陽太になってる・・・・・・!?」
立ち上がって確認すると、昨日と同じように陽太の体になっている。どうすればいいか分からず、ひとまず志都美は椅子に座り直して考えようとした。と、
コンコン
「っ!?」
陽太の部屋の扉がノックされる。返事も出来ず固まっていると、誰かの声と共に扉が開いた。
「ちょっと陽太、寝てるの?って、起きてるじゃない」
中に入ってきたのは、陽太の母親だ。陽太と仲良くしている志都美にいつも感謝してくれていた彼女は、どこか奇妙なものを見るようにこちらを見つめてくる。
「どうしたのよ、そんな驚いた顔で」
「あっ、いえ、なんでも」
言い訳をしようとした志都美だが、ふと気付いた。
(そ、そっか。今の私は陽太になってるんだった)
「んー?変な子ね。まぁいいわ、お母さんちょっと地区の会合に出ることになっちゃったの。お昼までには戻るけど、留守番しててね。玄関のカギはかけておくから」
「は、はい。わかり、わかった」
バレないか緊張しながら返事をする志都美の様子を気にしているようだった母親だが、特に何事も無く部屋から出ていった。ホッとしながら、志都美は大きく息を吐く。
(そっか、そうだよね。だって、今の私はどう見ても陽太なんだもの。バレるわけがない、か)
陽太になっていることを実感しながら、体を見下ろす。見慣れた自分の体とは違う、男の子の体。志都美は陽太の口で唾を飲み込んだ。
(陽太のお父さんは出張中って聞いてるし、お母さんは今出ていった、んだよね。じゃあ、家に私一人なんだ)
志都美の頭によくない考えが浮かぶ。また、男の子の、陽太の快感を味わってみたい。良識と罪悪感が必死に止めようとするも、何故か陽太の体は火照り、股間のものが大きくなっていく。
「あ・・・・・・」
気付けば、ズボンを押し上げるようにペニスが膨らんでしまった。志都美はまるで酔っぱらっているかのような胡乱な思考で、熱に浮かされたように呟く。
「陽太の、おちんちん」
立ち上がってズボンとブリーフを下ろすと、陽太の未成熟なペニスがぷるんと揺れながら姿を現した。そっと手を伸ばして手を添えると、それだけでペニスが期待するようにピクピクと震える。
「駄目、駄目なんだけど・・・・・・ごめんね、陽太っ」
謝りながら、志都美は陽太のペニスをしごき始めた。ぴりぴりと鋭い刺激が下半身から伝わってきて、声が漏れてしまう。
「んぅっ・・・・・・!」
陽太の体を悶えさせながら、じっくりと味わうようにペニスをしごいていく志都美。いつもの自慰行為とは違う男性器からの刺激は、志都美の精神を少しずつ溶かしていった。
「は、ぁっ・・・・・・!」
陽太の部屋で、陽太の体を使ってオナニーをしている。ありえない状況に背徳感も合わさり、志都美はくらくらと目が回るような気分になった。血液が限界まで流れ込み、固くなったペニスは前後に擦る度に敏感に反応し、志都美に快感を伝えてくる。
「きもち、いいっ」
悩ましげな声が陽太の口から漏れる。普段の様子からは想像もつかない、涙目で快感を堪えるような表情。本人の意思を無視してそんな状態にしているという事実に、志都美は手の動きをどんどんと速めてしまう。
「あっ、なんか、またきちゃうっ!」
びくびくと幼いペニスが震え、付け根辺りから快感が這い上がってくる。耐える間も無く、志都美は陽太のペニスで再び絶頂した。
「イっ、くぅっ・・・・・・!」
びくり、びくりとペニスが手の中で脈動する。が、やはり射精はしていない。
(気持ちいい、けどっ・・・・・・)
なんだか、物足りない。吐き出したくても吐き出せないようなもどかしい感覚に、志都美は椅子にもたれかかりながら呟く。
「陽太、精通がまだなのかな」
頬を上気させながら、一度イったはずのペニスを撫でる。成熟していない小さな肉棒は、萎えることなく存在を主張していた。それを見つめながら、ふと考える。
(確か、おちんちんって普通は皮を被ってないんだよね・・・・・・皮を剥いたら、どうなんるんだろう)
好奇心からか、あるいは別の何かか。志都美は皮を根本に集めるようにしながら、ペニスをゆっくりと剥いていく。先端部分から、綺麗なピンク色をした亀頭が姿を現し、ずるりと皮が剥け切った。
「んっ・・・・・・涼しい・・・・・・?」
外気に晒された亀頭は、熱を放ちながらも志都美に奇妙な感覚を与えてきた。服を脱いだ後のような解放感と、寒いような涼しいような感覚。少し不思議な気分になりながらも、志都美は皮の剥けたペニスに手を伸ばして、
「んんんんんっ!?」
嬌声を上げた。亀頭に触れた瞬間、さっきとは比べ物にならない程の鋭い刺激が志都美を襲い、思わず口を抑える。ぎゅっと全身に力が入り、瞳からは涙が滲み出てきた。
(びっ、敏感、すぎるっ)
外に声が漏れないよう、口元を抑えたまま皮の剥けたペニスを愛撫する。先ほどよりも慎重に亀頭を撫でても、皮を剥く前より数倍の刺激が伝わってきて脳が痺れていく。
「んんっ、ふぅっむぅぅぅっ・・・・・・!」
まるで、嫌がる陽太に無理やりしているかのようだ。口を抑えたままの手淫に、志都美はそう思ってしまう。背徳感をスパイスに、彼女は手の動きを速め、亀頭と竿をしごき上げていった。
(おちんちんにっ、意識とかが全部持ってかれてるみたいっ・・・・・・!)
滑りがよくなるよう涎を垂らし、ペニスに塗り付ける。はしたないしいやらしい振る舞いだが、それを陽太の体でしているという事実が志都美を一層興奮させていく。ぬちゅぬちゅと音を出しながらさっきよりも激しくしごき始めると、ペニスから感じる快感はどんどん高まっていった。
「ふっんんんん!んぅぅぅぅぅっ!」
ぽろぽろと涙を零しながら、片手でペニスをしごき、もう片手で口元を抑える志都美。なんでこんなことになっているのか分からないまま、陽太の若い快感を貪っていく。そして、再び陽太のペニスに限界が訪れた。
「んんっんんんんんんんっ!!」
手の中で暴れ回るように、ペニスがビクビクと痙攣する。全体が伸縮しポンプのように動いているが、やはり射精はしていない。しかし、ペニスの根本、その奥から湧き上がってくるような快感は志都美を悶えさせるには十分だった。
「はぁっ、はぁっ・・・・・・」
荒い息を吐きながら、志都美はぐったりと体の力を抜いた。だが、結局イっても熱は治まらないようだ。
(男は、女と違って出したら終わりって聞いたことあるけど・・・・・・)
精通していない陽太の体は、何度もイくことが出来るのだろうか。そんなことを考えながら志都美は見上げるように天井の方を向き、突如めまいのような感覚を覚えて、
「あっ」
瞬きをした瞬間に、自分の部屋に戻っていた。
「な、なんで・・・・・・?」
どうやら机にうつ伏せになっていたらしい。起き上がって確認するが、間違いなく自分の部屋で、自分の体だ。志都美は混乱しながら、目の前の狐のストラップを見つめる。
「あ、あなたが原因なの?」
呟くが、答えが返ってくることはない。確かなのは、昨日に引き続き今日も陽太になり、オナニーをしてしまったということだ。
「分からない、分からないよ・・・・・・何が起こってるんだろう」
普通ではありえないような体験に、志都美は怖がりながらも興味を抱いてしまっている。年端もいかない少年の、陽太の体で味わう快感。駄目だと分かっていても、それはとても甘美なものだった。
「うぅ」
机から離れ、ベッドに飛び込む。何か解決策は無いかと、志都美はスマホで色々と検索し始めた。
「ふわぁ・・・・・・」
翌日。志都美は高校の教室で、口を隠しながら生あくびを噛み殺していた。あれから色々と調べたが、解決策になるようなものは見つからなかった。陽太になってしまう・・・・・・おそらく陽太に憑依しているという事実と、狐のストラップがそれを引き起こしているであろうということ。そして、いつの間にか男の快感やより気持ちいいオナニーの方法なども調べてしまい、結局昨日は一日悶々としながら過ごすことになってしまった。
(私のままえっちしても、なんか気持ちよくなかったし)
男のオナニーについて調べながら自身の胸や膣を刺激してみた志都美は、少し落胆した。気持ちいいことには気持ちいいのだが、陽太の体で感じた鋭い刺激とはまったくの別物だったからだ。いつものオナニーでは満足出来なくなってしまい、さらに色々と調べていたために寝不足気味にもなっていた。
(私、こんなにえっちだったのかな)
ホームルーム前の時間、うとうとしながらぼんやりと考える。志都美は人並みに性欲はあると自認していたのだが、ここ数日のことは異常だ。陽太の体になった後、その体でオナニーをしてしまうなんて。
(いや、きっとあのきつねのせいだ。あれのせいで、私も影響されてる・・・・・・はずだから)
狐のストラップは部屋に置いてきてある。恐怖感が残っているのもそうだが、何より高校にいる状態で陽太への憑依が起きたら大変だと思ったからだ。最悪、意識を失った志都美の体が救急車で運ばれるまでありうる。
(帰ったら、ちゃんと確認してみよう。うん、ただの確認だから)
自分に言い聞かせるようにしながら、志都美は早く放課後が来るようにと願うのだった。
そして、放課後。志都美はそそくさと帰宅し、部屋着に着替えてからベッドに寝転がる。枕元の棚に置いてある狐のストラップを、おそるおそる手に取った。
「確認、確認の為。えっと・・・・・・」
言い訳を口にしながら、ぶら下げたストラップを指先でつつく。しかし、特に何かが起きるということは無い。
「あれ・・・・・・?」
志都美は首をかしげながら、ストラップを触ったり、握ったり、振り回したりしてみた。だが、何も起きない。いつの間にか陽太の部屋にいることも、陽太の体になってしまっていることも無かった。
「え、どうしよう、もしかしてこのきつねは関係無いの?」
動揺しながら起き上がり、じっとストラップを見つめる。当然、返事が返ってくることは無い。志都美は混乱しながら、物言わぬストラップを見つめ続けた。
(な、なんで・・・・・・?てっきり、このきつねのストラップがあんなことを起こしてると思ったのに)
どうすればいいのか分からず、志都美はおろおろとしてしまう。言ってしまえば、起きたことややったことの責任を全てストラップに押し付けていたのだ。だからこそ、何も起こさないストラップを前に、どうすればいいか分からない。と、
「あっ・・・・・・!?」
狐が、生き物のように鼓動を打ち始めた。異常な状況のはずだが、ぱぁっと明るい表情になる志都美。狐はするすると動き、志都美と視線を合わせるように浮き上がる。作り物のはずの目が怪しく輝き、そして、
「きゃっわぷっ!?」
何かに躓いた志都美は、盛大にずっこけた。幸い転んだ先はベッドだったため怪我をすることは無かったが、顔面から突っ込んだので息が詰まり、少し首が痛む。
「いたた・・・・・・」
首に手を当てながら体を起こして、周囲を見回す。志都美の思った通り、そこは陽太の部屋だった。体を確認すると、帰ってきた直後なのかランドセルを背負ったままの陽太の姿が見える。
「や、やっぱり、あのきつねが原因だったんだ」
言いながら、ランドセルを降ろしてベッドに座る。走って帰ってきたのか、全身からは汗がじっとりと滲んでいた。
「なんか、汗の匂いが」
とてもいい匂いとはいえないそれが鼻腔をくすぐり、志都美はなんだか変な気分になる。陽太の汗の匂いを、陽太自身の鼻で嗅いでいる。そんな状況を改めて理解すると、志都美はまるで何かに魅入られたかのように目がトロンとし始めた。
「・・・・・・っ」
ずきり。下半身に痛みが走る。勃起したペニスが窮屈そうにズボンを押し上げ、存在を主張していた。ごくりと生唾を飲み込んで、志都美は陽太をズボンを下ろそうと手を伸ばす。
「あっ・・・・・・」
何度目になるだろうか、ペニスはブリーフから逃れるように反り返りながらその姿を見せた。ぴくぴくと震えているそれを愛おしげに見つめながら、志都美は手を伸ばしてそっと触れる。熱と脈動、そして期待するようなもどかしい刺激が伝わってくる。
「ふふ、うふふ」
笑みを漏らしながら、ゆっくりと手を動かし始める。回数をこなして慣れてきたようで、指の動きは前に比べて的確だ。手全体で輪のような形を作り、ペニスをしごき上げていく。引っ張るように皮を剥くと、膨らんだ亀頭が現れた。
「ふっ、あぁ、ここっ」
亀頭のふちの部分、カリに指を這わせると鋭く刺されるような快感が産み出される。片手で亀頭を包むように刺激しつつ、もう片方の手で竿を擦ったり陰嚢を揉んでいく志都美。快感に流されただらしのない表情を陽太の顔に浮かべながら、彼女は手淫に夢中になっていた。
「んんっ!」
強めに亀頭を擦ると、びりびりとした快感が湧き上がってくる。気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。陽太の体から伝わってくる快楽に翻弄されながら、志都美は貪欲に求め続けた。ペニスへの愛撫はどんどんエスカレートしていき、あっという間に達してしまう。
「んんぅぅぅぅぅぅぅっ!」
服の裾に噛みついて喘ぎ声を文字通り噛み殺す。家の中には陽太以外の家族がいるかもしれないという事実が、今更ながら志都美の脳裏によぎった。
「ふぅっ、はぁ」
荒く熱い息を吐きながら、部屋の外から何か聞こえてこないか耳を澄ます。が、遠くからテレビか何かの音が聞こえてくるだけで、どうやら噛み殺した喘ぎ声には気付かれなかったようだ。緊張を解き、下半身を露出したままベッドに寝転がる。
(よ、よかった・・・・・・バレちゃったら、陽太が大変だもんね)
そう思いながら、陽太の体をもっと愉しもうと志都美は毛布にくるまり、声が外に漏れないようにする。矛盾する思考に気付かないまま、彼女は昨日調べたことを試してみることにした。
(えっと・・・・・・確か、男の子はお尻でも気持ちよくなれるんだったっけ。前立腺っていうのを刺激すればいい、んだよね。うん)
随分と偏った拙い知識のまま、志都美は陽太の臀部に手を伸ばした。探るように撫でまわすと、瑞々しい肌の感触が手のひらに伝わってくる。そして、そのまま陽太のアナルに指先が触れた。
(き、汚くないかな?)
触ってみた感触では、少しだけ汗で湿っているようだ。一旦手を戻し確認してみるが、特に汚れているようには見えない。志都美は指先に涎を垂らして滑りを良くしてから、アナルの入り口を慎重に撫で回す。
「な、なんか変な感じ・・・・・・むずむずする」
元の体の時も弄ったことはないアナルの感覚に、内ももを擦らせるようにもじもじしてしまう。やがて、志都美は意を決して人差し指をアナルに挿れていった。ぬるりと、案外抵抗無く飲み込んでいく。
「う、うわ、なんかぬるぬるしてる・・・・・・」
人差し指を押し返すようにアナルが蠢く。入り口の部分が明らかにキツく、その奥はふわふわと締め付けてくるような、そんな感触。本来何かを挿れる場所ではない為、異物感が凄い。
(んん・・・・・・指が挿入ってることは分かるけど、特に気持ちよくはない、かな)
ずぶずぶと奥まで挿れていくが、快感を得られるわけではない。昨日調べた知識を思い出しながら、探るように人差し指を動かす。
「ん・・・・・・」
アナルは柔らかく指を締め付けてくるが、痛いほどではない。そのままアナルの色んな場所を人差し指でまさぐると、他とは違う感じがする部分が見つかった。
「・・・・・・っ?なんか、ここ変・・・・・・?」
ペニスの付け根、裏側の辺り。腸壁越しにぐにぐにとした何かがある。人差し指で刺激してみると、言葉にし難い妙な感覚が湧き上がってくるのを感じた。
(ここが、前立腺?)
ペニスのような直接的な快感とは違う、どこかぼんやりしたような感覚。女性の快感とも違うそれに、志都美は首をかしげながらも指先で刺激し続ける。
(あ・・・・・・なんか、ちょっと良くなってきた、かも)
少しずつ、伝わってくる感覚が大きくなってきたような気がする。ぐにり、ぐにりと指先で潰すようにすると、触ってもいないペニスがピクピクと震え、付け根の部分に熱が溜まっていく。何かが漏れ出しそうで漏れないような、曖昧な感覚。
「ふぅっ・・・・・・」
熱っぽい吐息を陽太の口から漏らしながら、昨日調べた知識の通り、その感覚に集中しようとする志都美。目をつぶり、前立腺から感じられる快感を味わっていると、突然ペニスの付け根に溜まっていた熱が暴れ出すのを感じた。
「あっ、えっ!?」
堪える術も知らないまま、熱が陽太の全身に広がっていく。四肢が震え、ペニスがぷるぷると振動して先端から透明な液体を溢れさせる。
「んぅっ、んんんんんっ!?」
女性の絶頂に似た、しかし違う快感。全身を暴れ回るそれを志都美は必死に耐えながら、陽太の目尻からぽろりと涙が零れた。
「は、ぁぁぁ・・・・・・!」
余韻が中々去らず、毛布にくるまった陽太の体を丸めて震えている志都美。挿入している人差し指を、アナルがうねりながら押し出そうとしてくる。その度に人差し指が僅かに動き、刺激された前立腺から快感が溢れ出た。
「ふぅっ、ふぅぅぅぅ・・・・・・」
しばらくして。なんとか落ち着いた志都美はアナルから指先を引き抜き、毛布から這い出るように立ち上がりながらペニスを確認した。何かが漏れ出したような感覚の通り、尿道の部分から透明な液体が零れている。
「これ、って・・・・・・?」
指で掬い取ってみると、少し粘ついていた。これがカウパー液、俗に言う我慢汁であるということを志都美は知らない。
(精液じゃないみたい、だけど・・・・・・でも、前立腺?は結構気持ちよかったな)
ぬちょぬちょと我慢汁を指先で弄びながら、志都美は思う。他人の、陽太の体でとんでもないことをしているという罪悪感は、どうやら狐の魔力か何かで吹き飛んでしまっているようだ。と、
「あっ」
くらり、とめまいがする。元の体に戻る前兆だ。志都美は名残惜しげにしながらも、ぎゅっと目をつぶってその時に備える。そして、
「っ・・・・・・戻っちゃった、か」
ベッドに寝ている、志都美自身の体に帰還した。残念そうな表情をしながら、目の前に落ちている狐のストラップを手に取った。
「ねぇ、君のせいなんだよね?一体何を考えてるの?」
話しかけるも、特に返事は帰ってこず、また陽太の体になることも無かった。どういう理屈で、どういう仕組みなのか。結局、それは分からないままだ。
「・・・・・・まぁ、しょうがないよね。今の所、一日に一回しか陽太に憑依は出来ないって感じなのかな。それに元に戻るタイミングも分からないし・・・・・・」
志都美はブツブツと呟きながら、枕元の棚にストラップを置く。分かったことと分からないことをスマホに打ち込みながら、彼女は怪しげな色を瞳に浮かべて思う。
(明日も、陽太に憑依出来るのかな?)
普段の志都美とはかけ離れた、妖艶な雰囲気。それを見つめるように置いてある狐のストラップが、かたりと動いたような気がした。
「あっうぅんっ・・・・・・!」
三日後の木曜日。帰宅した志都美は着替えや課題を終わらせ、少し早めの夕飯を食べた後、狐のストラップを使い陽太に憑依していた。
「どっ、同時、いいかもっ・・・・・・!」
右手の人差し指をアナルに挿入し、抉るように前立腺を刺激する。左手は皮を剥いたペニスを掴みながら、リズミカルにしごき上げていた。ベッドの上、毛布で姿を隠しながら自慰行為に耽る様は、陽太の体でありながらどこか淫靡に見える。
「くっふっ、はぁっ・・・・・・!」
涙目で震えながら、志都美は前立腺をぐにぐにと押しつつ亀頭の裏スジを丁寧に撫でていく。ビリビリと痺れるような快感が体を駆け巡り、艶っぽい吐息が陽太の口から漏れて志都美の精神を高揚させていった。
「陽太、ようたぁ・・・・・・!」
肉体の名前を呼びながら、彼女は少年としての快感を貪る。前立腺を強く撫でる度にペニスはぴくぴくと震え、腸壁がうねり人差し指を押し出そうとしているようだ。
「っぅぅぅうう!!!」
熱い熱い快感が、前立腺から広がっていく。指先で抉るように深く押し込むと、一気に快感が爆発した。握られたペニスが手の中で暴れ回り、とろとろと我慢汁を垂れ流す。心臓がどくどくと脈打ち、浮遊感さえ覚えながら志都美は絶頂した。
「っあっくぅぅぅぅっ!」
熱が、快感が襲い掛かってくる。脳が侵蝕され、心が歓喜するようなそれを、余すところなく味わおうとする。余韻までしっかりと感じながら、志都美はアナルから指を引き抜こうとして、
「ん、あ、戻っちゃった・・・・・・?」
気付いたら、元の体に戻っていた。
(もうちょっと余韻を感じてたかったけど、やっぱりイっちゃったら元に戻るのかな?でも最初の時は一度イっても元に戻らなかったような気が・・・・・・)
志都美は考え込みながら、高ぶった精神に反応して湿り始めた股間に手を伸ばした。ここ三日はずっとこうだ。陽太の体を愉しんだ後、元に戻った体でも自慰行為を行っている。ストラップの影響か、あるいは異常な体験のせいか。志都美の性欲はどんどん歯止めが利かなくなっていた。
そして、翌日の金曜日。高校から帰宅した志都美のスマホに、ネット通販からの連絡が届く。近場のコンビニまで向かって商品を受け取った彼女は、その足で陽太の家まで向かった。と、言っても陽太に会いに行くわけではない。
(ふふふ・・・・・・)
内心ほくそ笑みながら、志都美は陽太の家近く、電柱の陰に商品の入ったダンボール箱を隠した。急いで自宅に戻った彼女はすぐに狐のストラップを手にし、そして、
「っ・・・・・・よし」
陽太に憑依して、家を飛び出し電柱の陰に隠してあるダンボール箱を回収。陽太の部屋に戻り、一息ついた。
「ふぅ、上手くいった」
呟きながら、ダンボール箱を開ける志都美。中には、複数の物が入っているようだ。俗に言う、大人のおもちゃだ。
(どれにしようかな)
その内から一つを選び、残りはダンボール箱に入れたままベッドの下に押し込んだ。早速下半身の服を脱ぎ、いつものように陽太のベッドに寝転がる。そして、手にしたおもちゃの包装を開けていった。
「うわ・・・・・・」
取り出されたのは、ゴムで作られた滑らかな手触りのものだった。丸みを帯びた棒のような見た目のそれは、でこぼこした太い指のような形状をしている。下の部分には曲がりくねった変な形状の突起が付いているが、どう使うのかは分からない。
(一応ネットで確認したけど・・・・・・エネマグラって、こんな感じなんだ)
エネマグラ。元は医療用に作られた、前立腺を刺激するための器具である。なんでも、これでちゃんと前立腺を開発すると、女性以上の快感が得られる・・・・・・と、志都美が調べた情報にはあった。
「え、っと」
同封されていた説明書を読みながら、使用方法を確かめる。通常よりもやや小さめのエネマグラを口に含み、唾液で湿らせた後にゆっくりとアナルに近付けた。ここ数日ずっと弄っていたからか、物欲しそうに入り口が伸縮する。
「んっ、ちょっと、大きい・・・・・・っ!」
人差し指よりも太いエネマグラを、しかしアナルはずぶずぶと受け入れていく。指とは比べ物にならない、異物感と圧迫感。横向きになりながら、そのまま毛布にくるまり体を丸める。
(まずは、このまま馴染むまで待てばいいのかな)
挿入したエネマグラを動かすことも無く、目をつぶってアナルの感覚に集中する。体をもじもじさせていると、それだけでエネマグラが前立腺を刺激し、じわりじわりと熱が湧き上がってくるようだ。
「ふっ、んん・・・・・・」
小さく喘ぎながらも、いつもに比べて物足りないような刺激を志都美はもどかしく感じた。だが、こうやって横になっているだけで少しずつ気持ちよさが伝わってくるのは悪くない。むくむくと大きくなり始めたペニスにも手を伸ばさず、そのままゆっくりとエネマグラの刺激を感じ続けた。
(そろそろ・・・・・・)
十分程経過しただろうか。もどかしい快感でじんわりと汗をかきながら、志都美はアナルに挿入されているエネマグラに手を伸ばす。曲がりくねった突起を押してエネマグラを動かすと、尋常では無い快感が産み出された。
「えっあぁんんんんんんっっ!?」
いきなり襲い掛かってきたそれに、志都美は悲鳴のような喘ぎ声を上げそうになる。毛布を口に当てて嬌声を抑え込みながら、下腹部、前立腺から伝わってくる快感に全身を悶えさせてしまった。
(なんでこんな急にっ!?)
軽く動かしただけで噴き出してきた快感。好奇心に抗いきれず、もっと強くエネマグラで前立腺を刺激してしまう。ぐりっ、ぐりっとエネマグラの膨らみが前立腺を押す潰す度に、下半身の感覚が溶けて消えてしまうような衝撃が広がっていくようだ。
「んんんっ、ぅぅぅんんんんっ!!」
ペニスが触れてもいないのにびくびくと震え続け、先端から我慢汁を垂れ流し続けている。志都美は想像以上の快楽に振り回されながら、エネマグラを動かして前立腺を責めることをやめようとはしない。
(気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい!陽太の体、こんなに気持ちいいんだ・・・・・・!)
小さな快感の爆発が繰り返され、永遠に絶頂が続いているかのようだ。快感が途切れること無く全身を駆け巡り、陽太の体が熱に包まれる。全てが溶け合い、激しくシェイクされるような感覚に、志都美ははしたなくイき続け、そして───
「えっ、あれ、どうして?」
元の体に、戻っていた。
(なんで、私まだずっとイってたのに・・・・・・!というかどうしよう、陽太にバレちゃうかも)
後片付けもしないまま、絶頂している最中に元に戻ってしまったのだ。おそらく、陽太には何も理解できない状況だろう。もう一度憑依出来ないかと狐のストラップを握りしめるが、やはり陽太の体になることは出来なかった。
「うぅ、陽太には悪いことをしちゃったかな」
悪いことどころではないことをしておきながら、志都美は陽太を心配していた。何気ないメッセージを陽太に送ってみるが、既読が付いたのはしばらくたってから、それも今は忙しいから後でという返事だった。まず間違いなく、志都美がエネマグラでやってしまった前立腺オナニーの後処理をしているのだろう。
(どうしよう・・・・・・よく考えたら、私のせいだってのはバレないと思うけど・・・・・・)
考えるも、妙案は浮かばない。既に起きてしまったことはどうしようもなかった。志都美はそのまま、あても無く狐のストラップを眺め続けるのだった。
日曜日になった。あれから志都美はバレるかもしれないと思いながらも、我慢できずに陽太の体に憑依しては大人のおもちゃで愉しむということを繰り返してしまっていた。しかし、今日は日曜日。一週間前に約束した、陽太が遊びに来る日だ。両親が買い物に行った一人きりの家の中、落ち着きながら考える。
(流石に今日は・・・・・・うん、やめよう)
そう心に誓った志都美は、陽太が訪ねてくる午後まで手持ち無沙汰で過ごした。本当はストラップの力で陽太に憑依し、少年の快感を味わいたかったのだが、志都美は理性を総動員してなんとか耐える。
(駄目駄目駄目っ・・・・・・!もう、最近の私ちょっとおかしいのかな)
そんなことを考えていると、スマホにメッセージが届いた。『もうすぐ着く』という陽太からのメッセージに、志都美は玄関まで迎えようと腰を上げる。と、どこかから視線を感じた気がして彼女は振り返った。
「えっ?」
枕元の棚に置いてある、狐のストラップと目が合う。ストラップは明滅を繰り返しながらふわりと浮き上がり、志都美まで近付いて、
「あっ、ちょっと待ってっ!?」
ぴかりと光る狐の目を見てしまった志都美は慌てた声を上げても意味は無く、そのまま、
「はっ!?」
陽太の体に、なっていた。
目の前には、自分の家の玄関、その扉が見える。志都美は慌てて家に上がり、急いで自分の部屋まで向かった。
「はぁっ、はぁっ」
扉を開き、中に入ると、そこにはぐったりとした様子で意識を失っている自分と、横に転がる狐のストラップが見える。どうやら、またしても陽太に憑依してしまったようだ。
「ど、どうしよう」
呟きながらへたり込む。自分の部屋に陽太の体でいる、という状況に混乱しながら、志都美は狐のストラップを手に取った。
「も、元に戻して!今はそういうのいらないから!」
しかし、志都美の声にストラップが反応することは無かった。途方に暮れながら彼女が辺りを見回すと、自身の意識を失った体が目に入る。
(な、なんか変な気分。こうやって客観的に自分を見るなんて)
志都美の体は、ベッド仰向けに倒れ込んでいる。それを眺めていた陽太の体が、反応した。
「え、あっ・・・・・・!」
連日の自慰行為で過敏になっているのか、陽太のペニスが膨らみ始める。自分自身の体を見て、陽太の体を興奮させているという事実に、志都美は衝撃を受けた。
(わ、私の体なのに・・・・・・うぅ・・・・・・!)
なんとかペニスを治めようとするが、意味は無い。それどころか、志都美の体から目を離すことが出来ず、震える腕をゆっくりと胸元に伸ばしてしまう。
むにゅり。小ぶりとはいえ柔らかい乳房を、服の上から掴む。いつもは自分の体についているものを、陽太の手で揉んでみると、頭がクラクラする程に気分が高揚するのを感じた。志都美はそのまま、自身の胸を揉みしだく。はたから見れば、陽太が眠っている志都美を襲っているように見えてしまうだろう。その事実が、志都美を一層興奮させていく。
「う、うぅぅ・・・・・・!!」
我慢出来なくなったのか、志都美はズボンとブリーフを脱ぎ捨て、痛い程に勃起している陽太のペニスを露出させた。片手で自身の体の胸を揉みながら、もう片方の手で陽太のペニスをしごく。皮を剥き、亀頭と竿を激しく擦り上げると呻くように喘いでしまった。
「っくぅ!はぁっ、んんんんっ・・・・・・!」
荒い息を熱っぽく吐きながら、胸の柔らかさとペニスの快感を堪能する志都美。涙で滲んだ視界で自分の顔を眺めると、むらむらと欲情するような気分になっていく。そして、
「わ、私の、顔・・・・・・んむっ」
顔を近付けて、そのまま自分の唇に陽太の唇を重ねた。意識の無い自分の体と、陽太に憑依した自分のキス。カオスな状況のままに、志都美は自分の唇の感触を味わった。
「っんんぅ・・・・・・ふふ、えへへ」
唇を離し、志都美はだらしなく笑う。たがが外れたような雰囲気で、今度は自分の体の下半身に手を伸ばした。
「あ、濡れてる・・・・・・意識が無くても、反応するんだ」
スカートを躊躇無くめくりパンツを確認すると、股間の部分にうっすらと染みが出来ている。そのまま志都美がパンツを剥ぎ取ると、てらてらとぬめっている膣が姿を現した。自分の体のはずなのに酷く淫猥に見えてしまい、視線が釘付けになってしまう。
「はぁっ、はぁっ」
完全に発情した雄の顔付きで、志都美は陽太のペニスを自分の膣へと近付ける。自分で自分を犯す。禁忌にしか思えないその行為を、志都美は何かに魅入られたような表情で躊躇無く実行した。
「んんんんっっ・・・・・・!!」
ずぶずぶと、陽太のペニスが膣の中へと挿入っていく。小さなペニスを膣内の肉が締め付け、啜り上げてくる。意識が無い志都美の体は、頬を紅潮させながら僅かに震えたようだ。
「んんぅぅっ・・・・・・!私の中、気持ち、いいっ!」
唸るように声を漏らしながら、志都美はペニスを根本まで挿入した。長さが足りないのか、志都美の膣にはまだ余裕があるようだ。それも構わず、腰を動かし始める。ぺちぺちと志都美と陽太の肉が打ち付け合う音が部屋に響き、快感と興奮が際限無く加速していった。
(駄目だけどっ、気持ちいいっ!私のおまんこも、陽太のおちんちんも!両方、凄いぃっ!)
一気に高ぶる体と心。こらえる気も無く、志都美ははしたなく絶頂した。
「んんんっ、んんんあああぁぁあぁぁっっ!!!」
子種を吐き出そうと、ペニスがポンプのように脈動する。が、カウパー液以外のものが噴き出してくることは無い。どこか無様に、陽太のペニスは膣内でビクビクと暴れ続けた。
「はぁっ、ひぃ、はぁ・・・・・・」
あまりの快感につぶっていた目を開くと、そこには赤らんだ自分の顔が映る。目元にはうっすらと涙が浮かび、口からはキスの時の涎が付いたままになっていた。ごくりと生唾を飲み込み、志都美は再び腰を動かし始める。
「だめっ、これっだめぇっ!」
イヤイヤと首を振りながらも、志都美は自分自身の体を犯し続けた。我慢できない、耐えられない、堪えられない。陽太の体を好き勝手に動かし、雄として雌の体を貪っていく。
「も、もっとぉっ!」
腰を掴んでいた手の片方を、自分のアナルに伸ばす。不自然で苦しい体勢になりながらも、志都美はそんなことに構わず人差し指と中指をアナルに挿入した。ここ数日で敏感になった前立腺を、容赦無く押し潰す。
「あぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁあ!きっもちいぃ、んんんんんんっっ!!!」
膣内で啜られているペニスと、開発された前立腺の快感。さらに、意識が無いながらも発情し愛液を溢れさせている自分の体。全てがぐるぐると渦巻き、混ざり合い、志都美の心を飲み込んでいく。
「はぁぁぁぁっようたっ、ようたっようたぁっ!!!」
叫びながら、腰と指を荒々しく動かす。また、大きな波が来る。小さい爆発が連続している先から、大きな爆発が迫ってくる。何も分からなくなりながら、志都美はペニスを限界まで突き入れ、前立腺をごりごりと抉った。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっっっ!!!!」
今まで感じたことが無いほどに深く、高い絶頂。快感は無限に湧き続け、陽太の全身を犯し尽くしていく。絶頂から、降りてこられない。視界にバチバチと光が迸り、脳が快感に焼き尽くされて、
「んんっ!?!?」
志都美は、元の体に戻った。
「なっこれぇっなにっんんぅぅぅぅぅぅっっっ!?!」
自分の体の上に覆いかぶさり、膣にペニスを挿入しながら淫らに悶えている陽太の姿が見える。膣内で暴れ回る小さなペニスは、じゅくじゅくと快感を伝えてきた。
「もど、った?」
快感にのたうち回るような陽太を見ながら、志都美は呟く。まさか、行為中に戻ってしまうなんて。殆ど白目を剥きながら痙攣している陽太を見ながら、志都美は思う。
(陽太、可愛い・・・・・・)
そのまま、震える陽太の体を抱きしめた。自分のせいで無茶苦茶になっている彼を包み込みながら、志都美はふと横に目をやる。そこには、狐のストラップがこちらを観察するように鎮座していた。
「ありがとうね。これからも、お願いします」
感謝を伝えながら、志都美は未だ絶頂から降りてこられない陽太を、愛おしげに抱きしめる。そんな様子を眺めながら、物言わぬ狐のストラップはこてんと横に転がるのだった。