※この作品はR-18です。

TSアイテムで人生が変わる話   作:てぬてぬ@TSF

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うさぎのお面でバニーに変身して発情してしまう話・前編

「うへぇ、さっむ!」

暖房の利いた部屋から出た瞬間、俺は思わず声を漏らした。冷えた空気が肌を刺し、ぶるりと体に震えが走る。こりゃ、体が冷える前に急いだ方がいいな。

「おーう、急げよ義和ー。凍っちまう前によう」

「うるせえ飲んだくれ!いいから寝てろっての!」

部屋から聞こえる間延びした声に言い返しながら、俺は扉を閉めて近所のスーパーへと向かい始めた。

 

俺の名前は木島義和(きむらよしかず)。とあるオカルト系の出版社に勤めるしがない社会人だ。今日は古い馴染みである友人の誕生日ということもあり、酒を持って彼の住むマンションに向かったのだが・・・・・・。結論から言うと、俺が着いた時点でそいつは既に酔っぱらっていた。そいつ・・・・・・高野丈(たかのじょう)は極度のうわばみで、酔っ払いながらも吐いたり記憶を失うことは無く、それでいて日本酒を三升近く飲み干す生粋の呑兵衛だ。どうやら、35歳の誕生日にも関わらず浮いた話の一つも無いことが悲しくなり昼から飲んでいたらしい。まぁ、丈の三歳年下の俺にも彼女はいないので、言ってしまえば傷の舐め合いみたいな所はあるが。

俺が持ってきたそれなりに高額な酒もあっという間に飲み干した丈は、何がおかしいのか大笑いしながら布団に寝っ転がった。なんだか、見ていて痛々しい雰囲気だ。こんな大酒呑みの駄目男に見えるような奴が凄腕の実業家だというのには、長い付き合いの俺でも違和感があった。そのまま眠るということもなく、俺は丈と取り留めも無い会話を交わしながら、余ったつまみを口にする。と、

「なんだか飲み足りねえなぁ。家にあるもんは全部飲んじまったし。買ってくるか」

「待て待て、そんだけ飲んで外出るのは危ないだろ。ただでさえ路面が凍ったりしてるんだから」

ふらついた足取りで立ち上がろうとする丈を止める。本来なら飲酒そのものをそろそろ諫めるべきなのだが、まぁ今日くらいはいいだろう。俺は丈の代わりに酒を買ってくるために、マンションの部屋を後にし、そして、

「さっみ~~~・・・・・・」

震えながら夜道を歩いていた。氷点下を随分下回っているようで、道路は所々氷に覆われている。丈が出掛けなくてよかった、絶対転んでただろあいつ・・・・・・。そう思いながら、俺自身も転ばないよう慎重に歩いていく。スーパーまで後少しの所まで歩いたところで、何か陽気そうな音が聞こえてきた。

「んー、祭囃子か?」

どこかで祭りか何かやっているのだろうか。この寒さの中でご苦労なことだと思いながら、道の角を曲がると、奇妙なものが俺の目に移り込んだ。

それは、俗に言う屋台のようだ。縁日に出るような、子供向けのお面がずらりと並べられている。しかし、そのお面屋だけがぽつんと道路に存在しているのは、率直に言って不気味だ。何か面倒事に巻き込まれそうな予感がしたため、見なかったことにして視線を逸らしながら通り抜けようとする。しかし、

「おや、そこのお兄さん。どうだい、寄っていってくれないかい?」

お面屋の店員らしき、明らかに普通ではない少女に声を掛けられてしまった。ちらりと確認すると、少女はこんな寒い日にも関わらず着物を羽織り、妖しげな笑みを浮かべながらこちらをじぃっと見つめている。視線が合ってしまい、俺は観念して振り返った。

「・・・・・・どうしたんだ、お嬢ちゃん。こんな暗くて寒い夜道で一人は危ないぞ」

この少女がまともではないのは、直感的に感じている。オカルト系の出版社で働き始めて10年以上、その辺りの嗅覚が鋭くなっているのだ。このまま無視するのはヤバい・・・・・・気がする。ただ、この窮地を乗り越える策は思いつけない。当たり障りの無い会話で切り抜けられればいいんだが・・・・・・。

「・・・・・・くくっ。そんなに警戒しなくても取って喰いやしないさ。それに、お兄さんは中々勘がいいようだ。どれ、これを持っていくといい」

少女はくつくつと笑いながら、並んでいるお面から一枚を手にしこちらに渡してくる。それは、可愛くデフォルメされたうさぎのお面だった。警戒してしまい、すぐに手は出ない。

「安心しておくれ。こいつはお兄さんに害を及ぼすものじゃない、約束するよ。まぁ、察しの通りただのお面でもないけどねぇ」

年に似合わぬ口調で喋りかけてくる少女。ぞわりと背筋に悪寒が走り、いっそ走って逃げてしまおうかと思った俺に、少女は見透かしたような言葉を放った。

「あぁ、走るのは危ないよ、転んで骨を折ってしまうかもしれない。最悪頭を打って死んでしまうかもしれないよ」

「・・・・・・脅し、か?」

寒さのせいだけではない、震え始めた体を叱咤しながら少女を睨む。いや、睨むことしか出来ない。

「いや、いや。お兄さんが思うような『悪いもの』じゃないよ。何度も言うが、警戒する必要は無いさ。ただ、まぁ。受け取ってくれるのならば、こちらとしては嬉しいねぇ」

この状況を愉しんでいるかのように、少女はニヤニヤと笑いながら言ってくる。あぁ、これは駄目だ。受け取る以外に選択肢が無いやつだ。クソ、まさか今日に限ってこんな目に遭うなんて・・・・・・!

「・・・・・・オーケイ。そのうさぎのお面を受け取ればいいんだな?」

「うん、それがいい。ただ、すぐに捨てたりするのは勘弁してほしいかね。丹精込めて作ったものだから、ね」

つまり、捨てずに持っていろってことか。畜生、ここまで直接的にヤバいものに関わるのは初めてだ。どうしようも無く、うさぎのお面を受け取る。

「ありがとう。心配しなくても、このお面はお兄さんやお兄さんの知り合いに害があるものでは無いさ。むしろ、幸福が訪れるかもしれない」

少女の言葉を聞きながら、俺は懐にお面をしまって背を向ける。足早に立ち去ろうとしながら、どうか呼び止められないようにと祈っていた。

「君や君の友達に幸福が訪れるよう、祈っているよ」

少女の言葉を背に受けながら、俺は逃げるようにその場を後にした。

 

「おー、お帰り義和。結構遅かったな」

あの後。俺はスーパーに逃げ込んで、適当に酒を見繕ってから急いで丈の家へと向かった。呑気そうに声を上げる丈を睨み、返事をする。

「あぁ、まぁな。道中でろくでもない目に遭った。ちょっと聞いてくれないか?」

俺は、さっきの少女との邂逅を丈に話した。懐からうさぎの面を見せつつ、真剣に。

「なぁ、丈。この辺りで似たような怪談とか聞いたこと無いか?俺には、あの少女はマジもんのヤバい奴だとしか思えないんだよ」

「んー・・・・・・いや、聞いたこと無えな。頻繁に起きることなら耳に入るだろうし、変に波長が合っちまったんじゃないか?」

俺の言葉を疑うことも無く、丈は言う。こいつ自身もオカルト情報にそれなりに詳しいので、俺が真剣に話したものを信じてくれたんだろう。

「かもしれないなぁ・・・・・・しかし、これどうするか。明日辺りお焚き上げに持っていくのが無難だろうけど」

ちゃぶ台に置いたお面を見つめながら、俺は疲れたように呟く。丈は俺が買ってきた酒を早速開けながら、さらりと言ってきた。

「気になるなら、俺の伝手でちゃんとした神社とか好事家紹介するぜ?元は俺が酒をねだったからだしな」

「・・・・・・助かる。クソ、俺も飲むか。素面じゃいられないわこれ」

半分以上自棄になりながらビールをコップに注ぎ、一気に呷る。普段はそこまで飲まないが、今夜は深酒したい気分だ。幸い明日も休みだしな。

「おぅ、いい飲みっぷりだ!そうそう、酔って忘れちまえ!それ、もう一杯!」

丈に注がれるまま、俺はビールをかっ食らい続けた。丈も丈でテキーラと日本酒を交互に飲みまくっている。いや、ほんとこいつうわばみだな・・・・・・。

それから、俺たちは二人で延々と酒盛りを続けた。酔いが深くなっていく内、さっきの不気味な体験への恐怖は薄れていき、寝落ちする頃には部屋の隅に置いてあるうさぎのお面のこともすっかり気にならなくなっていた。

 

深夜。二人が寝静まった中で、何かがかたりと動いた。部屋の隅から、かたかたと音がする。

ゆらり。何かが浮かび上がる。それは、可愛らしくデフォルメされたうさぎのお面だった。ふわふわと浮かびながら、お面は爆睡している義和に近付いていく。顔の部分まで近付いてきたお面が、ゆっくりと義和の顔に重ねられた。

「ん、が・・・・・・」

少し息苦しいのか、言葉にならない声を漏らす義和。しかし、目覚めることは無い。そのまま、お面はまるで染み込むように義和の顔に取り込まれていく。

「ぐぅ、・・・・・・んんん・・・・・・」

お面が完全に見えなくなると同時に、義和の体が変化していった。ボサボサの髪の毛がよく手入れされたような金髪になり、さらに数倍の長さに伸びる。胸が膨らむのと同時に腹回りが細くなっていき、手足がすらりとしなやかに変わっていく。しかし、義和は眠ったまま、起きる気配を見せなかった。

やがて、頭の部分から何かが生えてくる。うさぎの耳のように見えるそれは、ぴくぴくと動いて神経が通っているかのようだ。全ての変化が終わった後、そこに寝ているのはうさぎ耳を生やしたスタイル抜群の美女だった。

誰にも気付かれぬ変化が済んで、待っていたかのように夜が明けていく。日が昇り、陽光が義和を照らし、そして───

 

「・・・・・・うー・・・・・・」

頭が痛い。鈍痛がガンガンと脳の奥を揺らすような、そんな気分だ。うっすらと目を開けると、カーテン越しの窓からは既に日光が差している。どうやら、俺は酔いに酔いまくって潰れてしまったらしい。重たい頭を無理に動かしてなんとか体を起こすと、ちゃぶ台の向こう側で大の字になって寝ている丈の姿が見えた。時計を確認すると、午前の10時を回っている。大の大人が二人して、随分とだらしない真似をしてしまったようだ。と、

「・・・・・・んあ?」

電源が落ちているTVの真っ暗な画面に、誰かが映っている。なんと言えばいいのか、うさぎの耳カチューシャを付けた、男物の服を着た美人な女性だ。だぶついた服越しからでも、目を見張る程の巨乳が分かる。彼女は眠たげにこちらを見つめ、て・・・・・・?

「ん、んんん?」

とてつもない違和感。TVは消えているはずなのに、なんでこんな金髪の美女が映ってるんだ?よく見れば、彼女が着ている服は俺が着ているものと同じだ。俺が立ち上がると同時に、映っている美女も立ち上がる。嫌な予感が一気に湧き上がり、確認しようと体を見下ろすと、俺の目にとんでもないものが映った。

「は、いや、えぇ!?」

サイズの合っていない服が、豊満な乳房に押し上げられている。同じくサイズの合っていないズボンとトランクスが、立ち上がった影響でするりと滑り落ちた。白く柔らかそうな肌と、すらりと伸びた美脚が姿を現して俺の混乱は頂点に達した。

「待て待て待て待て!?どうなってるんだこれ!?」

慌てて滑り落ちたズボンのポケットからスマホを取り出そうとしたところで、俺が騒いだせいか丈が目を擦りながら体を起こす。

「んだよ、TVの音うるさすぎるだろ・・・・・・もうちょいボリューム絞れって」

声に振り向いた俺と、眠たげな丈の視線がカチ合う。丈の目が徐々に開き、ぽろりと零すように言った。

「・・・・・・どちら様?」

「っお、俺だ丈!朝起きたら、こうなってて・・・・・・!」

混乱しながら説明するが、自分でも信じられないことが起きているのに丈が信じてくれるはずが無い。クソ、どうすれば・・・・・・!

「・・・・・・あー、なるほどな。だからうさぎの耳か。あのお面がどうこうしたって訳か、こいつぁ?」

「・・・・・・え?いや、信じてくれるのか?自分で言ってても大概頭おかしいことだと思うけど」

「まぁ、なぁ。普通はありえないことなんだろうが、一応家の鍵はオートロックで閉まってるし、誰かが侵入してくれば防犯会社に連絡もいくからな。それに、金か何かが目当てなら俺が起きるまでここにいるってのもおかしな話だし、お前の雰囲気が義和そっくりってのもある。例のお面もいつの間にか無くなってるしよぉ」

目をつぶって頭をがしがし掻きながら、丈はつらつらと理由を並べていく。友人が気付いてくれたことの安堵で、俺は思わず涙を零しそうになって、

「あとは、うん。恥じらいが無えもんな。そんな美人さんなのに」

「は?」

丈からの言葉に、一瞬固まった。そうか、客観的に見れば今の俺は下半身を晒したままの美女って訳で・・・・・・っ!

「な、中身は俺だぞあんま見るんじゃねぇ!」

「だから目ぇつぶってるだろ。いくら彼女無しの35歳迎えたてだからって、突然部屋にいた不審者に興奮するほど好色じゃねえ。いや、体だけなら完全に好みの姉ちゃんなんだけどなぁ」

そう言いながら、背を向けて立ち上がる丈。そのまま俺に視線を向けないようにしながら別室に向かいつつ、言ってきた。

「タンスの一番下に女物の服が入ってるからサイズ合った奴来てくれ。それまで別の部屋にいるからよ」

「・・・・・・ありがたいけど、なんでそんな服持ってるんだよ?」

俺の疑問に、丈は扉を開けたまま無言で固まり、しばらくして恥ずかしそうに呟く。

「・・・・・・で、デリヘル呼んだ時のコスプレ用に・・・・・・」

・・・・・・なんとも言えない気まずい空気が俺たちの間に広がる。丈はそのまま何も言わずに出ていき、俺は缶や瓶が散乱した部屋に一人残されるのだった。

 

「ま、まともな服が無い・・・・・・」

タンスを漁りながら、俺は顔をしかめて言う。ナース服、メイド服、巫女服、学生服・・・・・・おそらくは丈の趣味であろうコスプレ衣装が出てくるわ出てくるわ、しかもかなり作りがしっかりしている。金かけてんなぁ・・・・・・。

しかし。どうやら今の俺はかなりのナイスバディなようで、サイズの合いそうな服が中々見つからない。さらに、最初はカチューシャか何かだと思っていた頭のうさ耳が直接頭から生えていて、挙句触ってみたら神経が通っているようだ。バカバカしい話だが、実際にそうなんだから受け入れるしかない。しかも、腰の辺りに何かが生えているような変な感覚もある。触ってみると、ふわふわした感触と触られた感触を同時に感じた。どうやら、尻尾も生えてしまっているらしい。

「マジかよ・・・・・・」

嘆息しながらも、とりあえず着れそうな服を探す。様々なコスプレ衣装の中、なんとか見つけたのが、

「よ、よりにもよって」

そう。よりにもよってバニースーツだった。まるで、何かに誘導されているかのようだ。というかバニースーツとか露出度高過ぎるし、着る意味があんまり無い気がするのだが・・・・・・。

「・・・・・・まぁ、あれだ。これ着た上でなんか羽織ればいいか」

ずり落ちたりキツ過ぎたりするよりはマシかもしれない、と思い直す。俺は仕方なくバニースーツに袖を通し(バニースーツに袖は無い)、別の棚にあったコートを上から羽織った。

「おーい、とりあえずいいぞ、丈」

声をかけてしばらくすると、丈がこそこそと部屋に入ってきた。気まずげな表情を浮かべながら、視線を逸らしつつ言ってくる。

「まともな服、着れたか?」

「・・・・・・あのお面のせいか知らないが、バニースーツ以外は全滅だ。仕方ないからコートで体を隠してる。しかも耳と尻尾に感覚通ってるし、尻尾がスーツに潰されて痛い。自分がこんな目にあってなきゃ鼻で笑って冗談扱いする状況だな」

「ま、そりゃそうだな。俺だって普通は信じられねえさ。で、こっからどうする?憑き物落としの知り合いは一応いるが、そういうタチのもんか、これ?」

丈の言葉に、首をひねって考える俺。確かに、動物霊、それこそうさぎの霊が憑いたからこうなったというのは考えにくい。原因は、あの少女が渡してきたお面に間違い無いだろう。だが、出会った路地に行ったところでまた会えるという保証も無ければもっと酷いことになる可能性もある。うーむ・・・・・・。

「とりあえず、その知り合いを呼んでもらえると助かる。駄目元でお祓いを試すしか無さそうだ。こんなナリじゃまともに動けないしな、俺は」

元々常識からかけ離れている状況なので、どうすればいいのか分からない。丈の人脈に頼るしかなさそうだ・・・・・・。と、

「あ、え?」

くらっと、意識がブレるような妙な感覚。前にのめるように倒れかけた俺は、なんとか手を付いて堪えた。

「おい、大丈夫か!?」

駆け寄ってくる丈。その顔を見上げた瞬間、さらなる異常が俺の体を襲った。

「───っあ」

ぞくり。戦慄に似た何かが、俺の背筋を走り抜ける。全身が熱い。くらくらと、目が回る。なんだ、これ。俺の体、どうなって・・・・・・。

「しっかりしろ!」

丈の手が肩に触れた瞬間。熱と快感が、一気に溢れ出した。

「ひゃあっん!!?!?」

口から漏れる声は、俺のものとは思えないほどに高く艶やかだ。体が意思に反してびくびくと震え、下腹部が疼く。まさか、これは。

「じょっ丈!離れて、くれ・・・・・・っ!」

「おいどうした、顔真っ赤だぞ!?」

「いい、からっ!っくぅ・・・・・・!」

自分で自分の体を抱き締めるようにして、疼き・・・・・・性的な興奮を必死に抑える。間違いない。この症状は・・・・・・。

「俺の体っ、発情してやがるっ・・・・・・!」

一度自覚してしまうと、部屋に漂っている丈の、男の生活臭すら興奮の材料になってしまう。疼く、疼く、疼く。股間から、おそらくは女性器から液体が滲み出て、股を滴り落ちていく。

「はぁっ、はぁっ」

荒い息を吐きながら、体を丸めてうずくまる。男の体とは明確に違う、女の感覚が全身を暴れ回って、俺は耐えることしか出来なかった。

「・・・・・・おい、俺に出来ることはあるか?」

部屋の隅まで距離を取ったらしい丈が言ってくる。正直、助けを求めたい。だが、今の俺が助けを求めるということは、つまり丈に男としての行為を求めるということだ。流石に、それは出来ない。女として扱われることも、丈を巻き込んでしまうことも。俺は、納得出来ない。

「無い、からっ・・・・・・!しばらく、一人にしてくれっ、すまん・・・・・・!」

呻くように声を出し、ひたすら湧き上がってくる感情を抑え込む。それしか、出来ない。

「・・・・・・分かった。とりあえず俺の伝手でなんとか出来そうな奴に声かけてみるわ。なんかあったらすぐ呼んでくれ」

足音に、扉を開けて閉める音。どうやら丈は部屋を出ていったようだ。我慢の限界を迎えた俺は、コートを脱ぎ捨て股間に手を伸ばす。

「あぁっんんんんん!!!??」

じゅくじゅくに濡れている女性器に触れると、それだけで信じられない程の快感が俺を襲った。雷のような衝撃が脳を痺れさせ、体が勝手に痙攣してしまう。

「んんんんっ、はぁっくぅぅぅぅぅっっ!!」

ぐちゅりぐちゅりと女性器をまさぐると、上部の突起物を見つけた。多分、クリトリスだろう。快感に流されるままに触ってみると、鋭い刺激が精神を貫くように伝わってくる。

「だっめっあぁぁぁぁぁぁっ!?」

脳細胞が焼き切れそうな程の快感。思考が真っ白になり、快楽以外のものが無くなったかのようだ。気付けば、俺は女性としての自慰行為に夢中になっていた。女性器だけではない、全身が敏感になり、身を捩らせるだけで快感が産み出される。

「ひぃっぃぃぃぃっ!はぁっく、んんんんんっ・・・・・・!」

豊満過ぎる胸にも手を伸ばす。片手では収まり切らない巨大なそれは、きめ細やかな手触りと共に俺の細い指先を受け入れた。強く揉みしだくと、ぐにゅりぐにゅりと形を変えてその度に快感がじんわりと伝わってくる。

「こ、これっなんっぅぅぅううううううあああああっ!!?」

胸の感覚に気を取られた隙に、勢い余った指先が女性器にぬるりと入った。膣の中が待ちわびたようにキュウキュウと締まり、体の中に何かが侵入してくる変な感覚と、それ以上の満ち足りた感覚が俺の心を蝕んでいく。

「ふっぅぅぅぅぅっっ・・・・・・!んんっんんんんんんん!!」

胸を押し上げると、口に乳首が届きそうだ。俺は欲望のままに、固くなった自分の乳首にむしゃぶりつく。クリトリスに似た、しかし満足感の混ざった快感が湧き上がり、膣内に挿入っている指の動きを激しくしてしまう。

「んむぅぅぅぅっんんぅぅぅぅぅっっ!!!」

乳首をしゃぶりながら、膣内を抉るように指を動かす。受け止めきれない量の快感に押し流されて、俺の精神はぐちゃぐちゃだ。快感以外の何も分からないまま、心身が絶頂した。

「んんんんんぅぅぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁっぁあああああああ!!!!」

体の感覚すら無くなって、快感に全てを塗り潰される。

「ぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううっ・・・・・・!」

どれだけの時間が経ったのか。ようやく絶頂から降りてきた俺は、全身を暴れ回る絶頂の余韻にカーペットの上で悶える。と、生温かい感覚を下半身に感じた。

「あっ、ヤバいこれっ漏れるっ・・・・・・!」

ショワワワワワ・・・・・・

絶頂で膀胱が緩んだのか、薄黄色の液体が股間から噴き出した。止めることも出来ず、俺は絶頂の余韻と放尿の解放感、虚脱感を受け入れるしかない。

「は、ぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

気付けば、俺は尿を辺りにまき散らしたまま放心していた。カーペットに大きな染みが出来たまま、力も入らずへたり込んでいる。しかし、それだというのに体の熱は消えることが無い。性欲がふつふつと湧き上がり、俺は再び股間と胸に手を伸ばした。

 

どれだけ、オナニーしていただろう。何度イっても性欲は治まらず、むしろ風に煽られる火のように増していく。

「はぁ、はぁ、はぁ」

分かっている。この劣情を止めるのは、きっと俺だけじゃ無理だ。下腹部が、膣の奥が疼き続けている。男のモノが欲しい。精液が欲しい。子種が、欲しい。

「いや、ふざけんなっ・・・・・・!」

こんな体になったとしても、男に抱かれるなんてごめんだ。脳裏には丈の顔がよぎるが、首を振ってかき消す。古馴染みのあいつなら事情を理解してくれるだろうが、だからといって超えてはいけない線ってのはあるはずだ。

だけど。それでも。俺は性欲に流されてしまいそうになる。それほどまでにこの体の快楽は強烈で、この体に溜まっている劣情は膨大だった。

「クソ、クソッ・・・・・・っ!」

悪態をつきながら、フラフラと立ち上がる。おそらく、丈は隣の寝室にいるだろう。そこに行けば、きっと、俺を抱いてくれる。駄目だと分かっている。おぞましい考えですらある。しかし、うさぎの耳と尻尾が生えたこの体の本能に、もう抗いきれない。

まるで泥酔しているかのようなおぼつかない足取りで、部屋の扉まで向かう。熱く、艶めかしい吐息を漏らしながら、廊下に出て、寝室の扉に手をかけようとした。

「駄目、だ・・・・・・!」

駄目だ。やっぱり、駄目だ。勝手な俺の都合に、丈を巻き込むわけにはいかない。ただでさえ、あいつの人脈に頼ってどうにかしようとしてるんだ。これ以上、迷惑をかけるのは俺自身が許せない。俺はドアノブから手を離し、火照った体を引きずるように元の部屋に戻ろうとして、

がちゃり

扉が、開いた。

「おい、どうした義和。部屋の前で突っ立って・・・・・・って、あ?」

声に振り向いてしまう俺。目に入った丈・・・・・・オスの姿に、釘付けになる。

「おい、おい!どうした!」

明らかにまともではない様子の俺の肩を掴み、話しかけてくる丈。しかし、その肉体接触が最後の理性を破壊した。何かが切れたような感覚とともに、俺は丈を押しやりながら寝室の中に入る。

「義和!?しっかりしろ、どうしたんだ!」

そのまま、ベッドに丈を押し倒した。ぺろりと唇を舐めながらのしかかり、潤んだ瞳を丈に向ける。

「なぁ、丈。頼みがある」

今の俺は、発情し切った表情を浮かべているんだろう。だが、もう止まらない。止められない。

「俺を抱いてくれ。もう、限界なんだ。壊れちまいそうなんだよ」

俺の言葉に、丈は目を丸くしてこちらを見つめていた。分かってる、俺がおかしくなってることくらい。だけど、だけどさ。頼むよ、丈。俺を助けてくれ。

「・・・・・・オーライ。うさぎだから性欲も強いってことか。安心しろ、大歓迎だよ。今のお前は好みど真ん中のバニーちゃんだからな」

丈は言う。だが、表情の端々からは動揺が見て取れた。きっと、俺の為に無理をしてるんだろう。こいつはいつも、他人の為に無理をして、それを表に出そうとしない奴なんだ。分かってる。俺は分かっている。分かった上で、その善意に付け込もうとしている。

「いいの、かよ。こんなナリでも俺は男だぞ」

「はっ、構わねえさ。男高野丈35歳、素人童貞を捨てられるなら中身が義和だろうと問題にしねえよ」

嘘だ。長い付き合いの俺には分かる。だけど、その優しさに俺は甘えることにした。だって、それしかないんだから。

「んむっ・・・・・・」

丈の唇を奪う。カサついた唇に俺の唇を重ね、舌を丈の舌に絡める。溢れる唾液を相手の口内に流し込みながら、俺は丈のズボンを下ろそうとした。

「んんんっ・・・・・・!」

熱気を纏ったペニスが外気に晒される。初めて見る膨張した丈のペニスは、俺のモノよりも一回りは大きそうだ。キスをやめて、ゆっくりとペニスに顔を近付ける。

「っは、あはっ」

口角が吊り上がる。むせ返るようなオスの匂いにクラクラとしながら、俺は丈のモノを両手で握った。熱く脈動するそれに愛おしさが湧いてくる。そのまましごいてみると、ビクビクと敏感に反応した。

「これ、が。これが、欲しかったんだ」

呟いて、俺は口を大きく開きながら丈のペニスを咥え込もうとする。口内にペニスが入り込み、生臭いような味と匂いが一気に広がっていく。

「ん、むぅぅぅっ・・・・・・!」

限界まで口を広げるが、全てを飲み込むことは出来ない。竿の部分を余らせながらしゃぶっていくと、悦ぶようにペニスが震えた。

「よっ義和っ!?」

驚いたような丈の言葉を気にもせず、そのままペニスをしゃぶり尽くしていく。先端から滲む我慢汁は苦いようなしょっぱいような味で、嚥下する度に下腹部がズクズクと疼いてしまう。

「んむぅ、はぷっ、じゅぅっずぞぞっ」

いやらしい音を立てながらペニスを啜り上げると、丈の体に力が入るのが分かった。射精を堪えているのだろう、震える丈を感じると心臓が歓喜で跳ね上がる。激しくペニスを責め立て、味わう。精液を強請るように口を窄めて啜り上げ、暴れるペニスを思い切り咥え込むと、亀頭がぷくりと膨れ上がって射精の予兆を伝えてきた。

「ぷはっ」

ペニスを口から解放すると、射精を求めてびくびくと震えているようだ。見上げると、丈の表情が視界に映った。快感と困惑で歪んでいる顔を見ていると、どうにも嗜虐心を煽られてしまう。

「よ、義和」

「射精は、んっ、こっちでしてくれよ」

股間のバニースーツをずらして、びしょびしょに濡れている女性器をさらけ出す。膣の肉はさっきまでのオナニーで完全にほぐれ、ペニスを求めてぱくぱくと膣口が動いた。

「・・・・・・本当にいいんだな?」

「早くしてくれって。完全に出来上がってるから、さ」

ベッドに仰向けになった俺に覆いかぶさってくる丈。俺は丈の腰を足でホールドし、ペニスを膣に引き寄せる。亀頭と膣口が触れ合うと、それだけで痺れるような感覚が下半身から這い上がってきた。子宮が悦び、吸い付くように膣が蠢く。そのまま、丈を急かすように足に力を入れて、膣内へとペニスを導いていった。

「っふうぅ、あっちぃ・・・・・・!」

「はぁっ、挿入って、くるぅ!」

ずぶずぶと、指とは比べ物にならないほど太く、熱いペニスが肉をかき分け侵入してくる。快感が一気に湧き上がり、全身が歓喜に包まれる。手足で丈に絡みつき、膣内と共にぎゅっと抱き着いた。と、

「あっ、ヤベっ!?」

「えっんんんんんぁぁぁぁあああっっ!?!?」

何か、何かが膣内に出されている。温かく、粘ついた液体が噴き出し、子宮へと流し込まれていく。快感とは違う、満足感や幸福感がじんわりと子宮から広がってった。満ち足りた、女のしての悦び。全身を震わせながら、俺はその感覚を享受した。

「・・・・・・わ、悪い。出ちまった」

ぽつりと丈が言う。落ち込んだ様子で、こっちを見つめてきた。・・・・・・ヤバい、可愛く見えてきた。心が、体に引っ張られてるのか?俺は丈の頬に軽くキスをして、微笑みながら言う。

「しょげんなって。俺がお前だったら、同じようにすぐ出してしまうだろうし。それに、まだやれるだろ?」

腰をくねらせると、膣内の入ったままのペニスがぴくりと反応する。一度出してもまだ固さの失われていないそれを、膣の肉が蠢いて愛撫していった。

「うぅっ、クソ、なんだよその腰つきはっ!」

「ほら、頑張ってくれよ、俺の性欲を鎮めるためにさ。それに、35歳の初日で素人童貞捨てられたんだぜ。嬉しいだろ?」

丈を煽るように、抱き着いたまま耳元で囁く。あぁ、ヤバい、俺はおかしくなっている。それもこれも、全部あのお面のせいだ。自分の痴態の責任を擦り付けながら、丈を強く抱き締める。

「ほら、頑張れ、頑張れ。男を見せてくれよ、丈」

俺の言葉に、丈は複雑そうな表情をしながらも腰を動かし始めた。ペニスが膣内を擦り、暴力的な快感が俺に襲い掛かる。

「ははっんんんんんんんっ!!そうそうっ上手だぜっ!」

丈の頭を撫でながら犯される俺。本来ならありえない倒錯的な状況に、脳細胞がぷちぷちと弾けていくような快楽を感じてしまう。たくましい丈のペニスが俺の膣内を抉る度に、はしたない嬌声が口から漏れた。

「んああっ!っくぅうう、んんぅぅぅぅううううっ!!」

じゅっ、じゅっと水っぽい挿入音が聞こえてくる。そのリズムに合わせて熱と快感が子宮に溜まっていき、二度目を射精を催促するように膣内が収縮した。

「あはっ、あはははっっ!!ひぃっんんんんんん!!」

「はぁ、はぁ、どうだ義和、気持ちいいかっ!?」

一度出したからか多少の余裕があるのか、丈は腰を打ち付けながら聞いてくる。俺はその言葉に、自身の胸に丈の手を誘導しながら答えた。

「はぁっ、こっち、もっ・・・・・・!いじめてくれぇっ!」

丈は目を見開きながら、俺が言った通り乱暴に揉みしだき、さらに口を近付け乳首に吸い付いてきた。腰の動きはそのままに、両手で乳房を揉まれ、乳首を吸われる快感。全身が性感帯になったような感覚に、俺は丈の顔を腕で引き寄せ自身の胸元に埋めさせる。

「いいっいいよぉっ!!あはっくぅんんんん!!」

丈から与えられる快感を全て受け入れながら、昂ぶり続ける体。俺はだらしない笑みを浮かべながら、犯されるがままにされている。屈強なオスとまぐわい、子作りをする。繁殖する為の交尾だという考えが頭に浮かんで膣がキュウッと締まった。

欲しい。今犯してくるオスとの仔が欲しい。まるで獣の本能のような考えに、思考が支配されていく。だから、そうだ。まだ足りない。子種、子種をもっと注いでくれ。突き入れられるペニスを膣内で啜り上げ、再度の射精を請う。

「丈っ出してっ出してくれぇっ!俺を孕ませてくれぇぇぇぇぇぇっっ!!!」

切羽詰まった俺の叫びに、丈の腰の動きが更に激しくなった。ゴリゴリと膣内を抉られ、子宮口を亀頭が突いてくる。あぁ、来る。もうすぐ、熱くて粘ついた精液で全てが満たされる。胎内にぶちまけられて、全てを白く染めていくんだ。

「いく、ぞっぐぅぅぅぅっっ!!」

「あぁっぁぁぁぁぁぁあああああんんんんぅうううううううっっっ!!」

来た、来た、来た!一度目以上の精液が力強く叩き付けられ、子宮が収縮し全部飲み込んでいく。子種を受け入れた事実に全身が歓喜して、痙攣し続ける。

「はぁぁぁぁぁぁっっあぁぁぁぁぁぁっ・・・・・・!!!」

快感?いや、そうじゃない。繁殖出来る、遺伝子を残すことが出来る、そういう直接的な本能に根差した悦びだ。そうだ、俺は丈の仔を孕むんだ。あぁ、それはなんて、幸せな───

 

 

気が付くと。俺は、全裸で毛布をかけられて眠っていた。慌てて飛び起き、周囲を確認する。と、

「も、戻ってる!??!」

そう、元の男の体に戻っていたのだ。それと同時に気絶する直前までしていたことを思い出し、体温が急上昇する感じがした。

「夢・・・・・・って訳じゃねえよな。はぁ~・・・・・・」

座り込み、溜め息を吐く。改めて周囲を確認すると、どうやらやらかした時の場所と同じ寝室のようだ。乾いた体液の匂いが鼻をつき、少し咳き込む。

「ごほっ。ヤってる時は気付かなかったけど、酷ぇ匂いだな」

さて、どうしよう。元に戻れたとはいえ、あんなことをしてしまった以上かなり気まずい。まさか、獣の様に丈とセックスしてしまうとは。

「はぁ~~~・・・・・・」

もう一度大きな溜め息を吐きながら、俺はベッドの横に用意されている俺の服を着ようとした。と、そこで俺は気付く。

「げ」

枕の横に、例のお面が置いてある。デフォルメされたその顔がとてつもなく不気味に思えてしまい、さっと視線を逸らした。大体、元に戻れた理由も分からなければお面が再び出現した理由も分からない。ちゃっちゃと服着て丈の所に向かおう。

服を着て寝室を出ると、どうやら丈は外出しているようだ。昨日の朝から散らかりっ放しになっている酒の空き缶やつまみのゴミを片付けながら待っていると、数十分もしない内に丈が帰ってきた。

「おーう、ただいまーっと・・・・・・、お、目ぇ覚めたか義和」

「おかえり、その様子だと俺は意識トんでからすぐに元に戻ったのか?俺の姿見て驚いてないし」

「あぁ、まぁな。とりあえず昼飯食いながら話すわ」

そう言って、俺が片付けたちゃぶ台の上にレジ袋をドサッと置く。俺も適当におにぎりを手に取りながら、丈の話を聞き始めた。

曰く、俺が意識を失って、丈がペニスを引き抜いた後、すぐに体が変化し始めたらしい。まるでCG技術を使っているかのような目の前の状況に、丈は少し気分が悪くなったんだとか。そして、変化していく俺の顔からお面が浮かび上がり、横に落下したそうだ。ちなみに着ていたバニースーツがびりびりに破れて使い物にならなくなった、と。

「高かったんだがなぁ・・・・・・」

「いや、それは弁償するけどよ・・・・・・どういうことだ?お面と融合してたのか、俺?」

「見た感じそんな風に見えたなぁ。ほれ、ムジュラの仮面みたいな」

懐かしいゲームのタイトルで例えてくる丈。まぁ、確かにイメージはしやすい。

「・・・・・・すると、なんだ。文字通り呪いの仮面ってことかよ。怖くて枕元に放置したままだぞ」

「俺も触るのビビっちまってなぁ、置いたままにしてたのはすまん。一応、知り合いの奴らは午後2時くらいにはこっち来れるらしいから、それまで寝室に入るのはやめとくか」

丈の言葉に頷きながらおにぎりを頬張る。・・・・・・ん?何か忘れているような・・・・・・。

「・・・・・・いや、待て丈。そいつは不味い」

とんでもないことに気付いてしまった。顔が青ざめる俺を見て、丈が訝しげに聞いてくる。

「不味いって、何がだ?」

「寝室さ、あのままだろ?つまり、俺とお前がやることやったのが確実にバレる。そうなったら俺の羞恥心が耐えられない」

「あー・・・・・・不味い、そいつは不味い。お面もヤバいが、しゃあない片付けるか」

丈はサンドイッチを口に押し込みながら立ち上がる。俺もそれに続いて、寝室を掃除しに行くのだった。

・・・・・・正直な話。こうやっていつもみたいに会話出来るという事実にほっとしている。あんなことがあった後だ、古い友人とはいえ友情が壊れるんじゃないかと心配していた。だが、丈はいつも通りで、俺もいつも通りに接することが出来ている。それは、素直に嬉しい。後は、お面をどうにか出来ればいいんだが・・・・・・。

 

掃除中、お面が何かすることも無く、なんとかシーツの張り替え等を終わらせることが出来た。丈の知り合い達も無事到着し、これでなんとかなると思っていたのだが・・・・・・。

「あー、これ、うちでは無理ですねー」

「ちょっと、駄目ですなこれ。法則が違う感じがする」

「うーん、これは流石に引き取れません。何が起こるか分からないので」

見事全員に白旗を振られてしまった。なんとか頼もうとしたのだが、すげない態度で断られ、そそくさと去っていく知り合い達。丈もガクリと肩を落として、俺に頭を下げてくる。

「すまん、役に立てなくて」

「いや、しょうがないだろこれは。それだけヤバいってのが分かっただけで御の字だ」

そう返しながら、ちゃぶ台の上に置かれているお面を眺める俺。流石に、丈の家にこのまま置いておくわけにはいかないよな。

「とりあえず、これは俺が持ち帰るわ。こっちも伝手使って色々調べてみる」

「そいつは・・・・・・危なくないか?また取り憑かれるかもしれねえんだぞ」

「だからって丈のとこに置いとく訳にもいかないだろ。ガキに直接渡されたのは俺だし、持ってなかったら逆に何かあるかもしれない」

「・・・・・・んーむ」

言いくるめながら、俺は鞄にお面を詰め込み立ち上がる。

「何か分かったりまた取り憑かれたりしたら連絡する。んじゃ、またな」

「あ、おい」

背中にかけられる声にも構わず、俺は家を飛び出した。これ以上、丈に迷惑はかけられない。そんな思いを隠しながら。

 

 

 

 

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