※この作品はR-18です。

TSアイテムで人生が変わる話   作:てぬてぬ@TSF

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文芸部の少年少女が入れ替わってイチャラブセックスする話

チクタクという時計の音と、時折りページをめくる音以外、部室には静寂が満ちている。俺・・・・・・春日井秋良は流行りのファンタジー小説を読みながら、ちらりとテーブルの向かいを確認した。

「・・・・・・」

どこか眠たげな表情で、しかし瞳は真剣に文章を追っている少女が見える。天野江風香。それが彼女の名前だ。長い髪の毛を頭の後ろで三つ編みにし、前髪には青い星の髪留めを付けている。物静かないで立ちとは裏腹に、制服の胸元は大きく盛り上がっていた。

今から一年半くらい前。家族の都合で引っ越しをして、知り合いが誰もいない状態で高校に進学することになった俺はクラスでも孤立しがちだった。このまま灰色の高校生活を送ることになるのか・・・・・・と落ち込んでいた時、話しかけてきてくれたのが天野江である。

「それ、今月に出た新刊ですか・・・・・・?その、どこの書店も売り切れてて・・・・・・」

その時俺が読んでいた、とある作家が数年振りに執筆した推理小説が俺たちが出会うきっかけとなった。それから、読み物の趣味が合う俺たちは意気投合し、勢いで文芸部の立ち上げを高校に申請。部費も殆ど出ない同好会扱いだが認められ、彼女が部長、俺が副部長となって現在に至るというわけだ。

「・・・・・・ふふ」

本格派の推理小説を読みながら、楽しげに微笑む天野江。俺はそれに見惚れてしまい、中々手元の小説に目を落とすことが出来ない。

そう。俺は、彼女に恋心を抱いている。こうして文芸部の部室で同じ時間を過ごす内に、彼女の何気ない所作や、お気に入りの小説を俺に紹介する時の熱量、何より時折り見せる微笑みに、俺は惹かれてしまったのだ。

だけど。恐らく彼女に俺の気持ちは伝わっていないだろう。彼女にとっての俺は、趣味が共通する話しやすい友達。まぁ、そんなところか。

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴り、下校の時間を知らせる。天野江は小説を閉じて、俺に視線を向け話しかけてきた。

「そっちの、どうだった?最近、色んな人たちに人気みたいだけど」

その言葉にハッと我に返る。小説を読んでいる時の彼女の表情に見惚れすぎて、まったく読めていなかった。

「あー、まぁ序盤だからまだ分からないな。登場人物達のやり取りは軽快で面白いと思ったけど」

辛うじて読めていた分で意見を返す。罪悪感で、少しだけ胸が痛んだ。

「そうなんだ。うん、春日井君が言うなら間違いないね」

そう言って、はにかむ天野江。うぅ、なんか申し訳ない・・・・・・。

その後、俺たちは部室を後にして校門まで一緒に歩く。明日の小テストの話や、最近購買でやたら辛いお菓子が販売されている話、最近出た小説誌に載っていたおすすめの短編など、なんでもないような世間話をした。

「じゃあ、お疲れ。また明日ね、春日井君」

校門を出て、彼女が言う。天野江の家は俺の家とは方向が真逆で、帰り道まで一緒にいることは出来ないのだ。

「あぁ。また明日な、天野江」

何度も感じた残念な気持ちを抑えながら、俺は返事をした。天野江が歩いていき、少しずつ遠くなる背中をぼんやりと眺める。

「・・・・・・やっぱり、男として意識されてないよなぁ・・・・・・」

そう呟き、俺はトボトボと帰路に着くのだった。

 

「・・・・・・あれ?」

帰り道。いつもの景色が広がる中で、違和感を覚える場所があった。

「こんな所に、書店なんてあったっけ・・・・・・?」

クリーニング屋と空き家の間、空き地だったはずの場所に、古めかしいいで立ちの書店が立っていた。俺の記憶違いだろうか。看板はかかっているが、薄れていて読むことは出来ない。

俺は、妙な魅力を感じて中に入ってみることにした。こういう古そうな書店には、思わぬ掘り出し物があるかもしれないからだ。

ちりんちりんと扉に付けられた鈴が鳴り、俺が店内に入ったことを告げる。中は薄暗く、雰囲気としては古書店のようだ。本棚をざっと眺めてみるが、海外の書籍が結構多く、日本語で書かれているものは半分も無かった。と、

「いらっしゃい、お兄さん。何かお探しかな?」

突然声をかけられた。驚きながら振り返ると、レジのカウンターに一人の少女が座っている。小学生くらいに見えるけど、店番をしているのだろうか。今時珍しい、古式ゆかしい着物を着た少女は、値踏みをするようにこちらを見つめてきた。

「あぁいや、何かを探してるってわけじゃないんだけど・・・・・・」

「そうかい、そうかい。では、ごゆっくり」

俺が口ごもりながら返事をすると、老人のような口調とともに少女は手に持った本に視線を落とした。ここからでは見づらいが、随分古そうな本を読んでいるようだ。

なんとなく気まずさを感じながら、店内を見て回る。殆どの書物は専門書のようなものだったり、英語でもない知らない言語で書かれたものだったりした為、あまり興味を惹かれるようなものは無かった。

しかし。本棚の一点に目が留まる。それは、どこにでもあるような文庫本だった。薄緑色の背表紙に描かれてある題名は『回り回る恋』。なんとなく手に取るが、裏表紙にあらすじなどは書いていない。作者の名前も、聞いたことの無いものだった。

「おや、それをご所望かい?」

「うわっ!?」

後ろから声をかけられ、思わず情けない声を上げてしまう。振り返ると、先ほどの少女がにやにやと笑いながら俺の手にある本を見つめていた。

「そいつは恋愛小説さ。青春の最中、淡く美しい恋心を書いた中々の名作でね。ただまぁ、自費出版らしくて殆ど出回っていないらしい」

「そ、そうなんだ・・・・・・」

どことなく少女に不気味さを感じながら、手元の本に目を落とす。

「あぁ、あとね。『回り回る恋』はちょいとした曰く付きでもあるんだ」

「曰く付き・・・・・・?」

「うん。なんでも、似たような境遇の読者が本を読み終わったら、その恋を叶える力があるんだとか。眉唾ものの話だけれどね」

表紙には、木々と散る木の葉が抽象的に描かれ、そこに回り回る恋、と可愛らしい字体で題名が書かれている。少女の話もあって、妙に引き込まれてしまう魅力があった。

「あの、これ、いくらかな?」

少女に尋ねると、くすくすと笑いながら答えてくれた。

「それなりに珍しいものだけれど新品でもないからねぇ。500円で構わないよ」

安い。読んだことも無く、かつ他では見つけることも難しそうな小説。それに、もしかしたら俺の恋を後押ししてくれるかもしれない。俺はこの本の購入を決意した。

早速レジに向かい、支払いを済ませる。紙袋に本を入れながら、少女が話しかけてきた。

「もし、読んでみて面白かったらまた来て感想を聞かせておくれ。ついでに別の本を買ってくれるとなお嬉しいねぇ」

その言葉に愛想笑いを返しつつ、紙袋を受け取って店の外へ出る。夕暮れの中、俺は上機嫌に帰路についた。

 

「さてと・・・・・・」

夕飯とお風呂を終わらせて、自分の部屋で紙袋から本を取り出す。ベッドに腰掛けながら、俺はうきうきと本を開いた。

小説の内容はこうだった。男子高校生の主人公は、入る部活を探していると寂れた文芸部の部室を見つける。そこで本を読んでいたヒロインの少女と出会い、なし崩しに文芸部に入部。主人公は文芸部の活動を通して、少しずつ少女に好意を寄せていく・・・・・・。

どこにでありそうなありきたりな内容だが、柔らかい文体と緻密な情景描写ですいすいと楽しく読み進めることが出来た。三分の一ほど読み終えた所で、残りはまた明日にしようとベッドに潜り込んだ。一気に読むのもいいが、何回かに分けて読むのもまた味がある。

しかし、それにしても。毛布を被りながら俺は思う。細かい部分は当然違っていたが、なんとなく、小説の内容と俺の境遇は似ている気がしなくもない。あの店番の少女が言っていた曰くが頭をよぎる。

「読者の恋を叶える、かぁ」

まぁ、期待するものでもないし、そもそもまだ読み終わってすらいない。読み終わって、あの少女に感想を伝える時に詳しい話を聞いてみよう。そう思いながら、俺は微睡みの中に落ちていった。

 

 

 

ジリリリリリリ・・・・・・

「・・・・・・ん・・・・・・」

スマホのアラート音が聞こえて、俺は目を覚ました。半分眠りながらスマホを探すが、何故かいつもの所に無い。なんだかいつもより重く感じる頭を動かすと、いつもとは逆の枕元にスマホがあった。だが、

「・・・・・・あれ?」

可愛らしいカバーに、いつもより小さめのフォルム。俺のものではないそのスマホには、見覚えがあった。

「天野江のスマホ・・・・・・?」

スマホを手に取り、ひとまずアラームを止める。しかし、

「あっえっ、なんだこの手?」

いつもの俺の手じゃない。白くて細くて、爪も綺麗に整えられている。まるで、女の子の手のような・・・・・・。

「っ!?」

慌てて周囲を確認すると、そこは俺の部屋じゃなかった。大きい本棚と、可愛らしい小物が控えめに飾られている勉強机が目に入る。

「はっえーっとちょっと待ってどうなってるんだ!?」

完全に意識が覚醒し、勢いよく起き上がる。それと同時に、胸元で何かがぶるんと揺れた。視線を下に落とすと、

「・・・・・・・・・・・・え?」

青を下地に、所々に星の模様が彩られたパジャマ。それを、大きく押し上げている胸元。何もかも、俺とは違う。混乱しながら、スマホを起動しようとする。パスワードは分からなかったが、幸い解除しなくてもインカメラは起動出来た。

「こ、れって」

そこに映ったのは、普段の物静かさとは似ても似つかない慌てた表情をした、天野江の姿だった。俺が手をかざすと、カメラに映る天野江も手をかざす。頬を指で押してみると、押される感覚とともにカメラに頬を押す天野江が映る。

「え、え」

間違いない。俺は、なんでか分からないけど天野江の体になっている。何故、どうして、なんで?疑問と混乱で、俺はふらふらとへたり込んだ。

「風香ー?どうしたのー」

快活な女性の声がする。それとほぼ同時に、部屋の扉が開かれた。

「えっわっ」

「もう朝ご飯出来てるよ。・・・・・・って、どうしたの、そんなところに座り込んで」

入ってきたのは、天野江に少し似ている顔立ちの女性だ。天野江の母親、なんだろうか?彼女は、気づかわしげな視線を俺にやりながら言ってくる。

「なに、もしかして体調悪い?だったら無理しなくてもいいよ、あんたはただでさえ生真面目なんだから」

「あっえっと、その」

咄嗟に天野江のフリとか出来るわけでもなく、俺は口ごもってしまう。そんな様子を見た推定母親は、眉根を寄せながら言う。

「んー、やっぱりちょっと変ね」

ドキリと心臓が跳ねる。ま、まさか本当は天野江じゃないってバレるのでは・・・・・・!?

「どうしても辛いなら電話するか、タクシー呼んで病院行ってね。お金はテーブルに置いとくから。あと、ご飯は出来るだけ食べなさい。ゼリー飲料はいつもの所にあるから。水分も取らないと駄目よ?」

ただでさえ混乱している所に立て続けに言われ、目が回るような気分を覚える。が、どうやらバレてはいないようだ。

その後、推定母親は忙しなく出かけていった。そういえば、天野江から両親は共働きだと聞いたことがある。その時に兄弟がいないということも聞いていたので、つまり、

「今、家には俺一人ってことか・・・・・・」

一安心だ。これならバレることは無いだろう。

「って、いやいや!バレてもよかったというか、事情を説明した方がよかったか?いや、そもそもなんでこんなことになってるんだ?」

独り言が口から漏れるが、その声は女の子のものだ。普段の天野江の声とは若干違うように聞こえるのは、喋り方の違いか、もしくは俺が天野江自身になってるからかは分からない。と、ここであることに気付いた。

もしかして。俺が天野江になっている、というか天野江の体に俺の意識が入り込んでいるということは、俺の体の方には天野江の意識が入り込んでいるのでは?そこまで思い至った所で、スマホが振動した。

着信のあったスマホを覗くと、そこには春日井秋良・・・・・・俺の名前が映し出されている。もしかして・・・・・・

「も、もしもし・・・・・・」

「もしもし、春日井君?春日井君だよね、そうだと言って!?」

切羽詰まったような男の声。電話越しなのと天野江の耳で聞いているからか分かり辛いが、おそらく俺自身の声だ。

「あぁ、そうだよ天野江。っていうか、天野江、だよな?」

努めて落ち着こうとしながら返事をする。

「うん・・・・・・!あぁ、よかったぁ・・・・・・!」

ほっとしたような声。なんか、こうやって自分の声を聞くのは妙な感じだが、状況がおかしすぎて逆に落ち着いてきた気がした。

「えっと・・・・・・つまり、俺が天野江になって、天野江が俺になってる、ってことでいいんだよな。入れ替わってるってことか、これ?」

状況を整理するため、声に出して確認する。

「そう、みたいだね。でも、本当によかったよ・・・・・・もしこれで私の体になってるのが春日井君じゃなかったり、そもそも普段通りの私が返事をしてきたら、今の私の方がおかしいってことになりそうだったから・・・・・・」

そういう考えもあるのか。確かに、自分の体が見も知らない他人に操られていたらと思うと恐ろしい。それに、もし相手がいつも通りだったら、自身を春日井秋良だと思ってる俺は一体何者なのか、という今以上に訳の分からない状況になってしまう。

「と、とりあえず会わないか?電話だと色々不便だし・・・・・・」

「あっ、うん、そうだね。じゃあ・・・・・・あっ」

天野江が何かに気付いたような声を上げ、そのまま沈黙した。

「ん・・・・・・?どうした、何かあったのか?」

「え、っと・・・・・・ううん、大丈夫!じゃあ、私が家に行くから!」

慌てたように言う天野江。なにか反応がおかしい。

「あーいや、そっちばかりに移動させるのもアレだし、高校の近くの公園とかに」

「い、いいから!すぐに行くから家で待ってて、お願い!」

「・・・・・・?」

何か焦っているような声色。一体何が・・・・・・。そう思っていると、天野江は電話を切る直前にとんでもないことを言ってきた。

「あ、あの・・・・・・着替えとか、しなくていいからね!それじゃ!」

電話が切れる。着替え?着替えって・・・・・・あ。

体を見下ろす。そこには、天野江の体が、俺が好きな女の子の体があった。

「~~~~~っっ!!!」

思わず目をつむった。しかし、一度見て、意識してしまったらもう駄目だ。パジャマに包まれた足元が見辛くなる程の胸が頭に浮かび、顔が急速に火照るのを感じる。さらに、目をつむったせいで逆に全身の感覚がよく分かってしまう。

「うぅ・・・・・・」

口から漏れたのは、まるで喘ぎ声のように艶のある声だ。手で口を塞ぐも、瑞々しい唇が手のひらに当たって変に意識してしまう。

ヤバい、クラクラしてきた。このままじゃ俺の精神がどうなってしまうか分からない。天野江が来るまで、なんとか耐えないと・・・・・・!

目と口を閉じて、手で耳を塞ぐ。これならなんとかなるだろう。そう思った俺の考えは甘かった。心臓が早鐘を打つ音に、じわりと肌が汗ばんでいく感覚、そして口を閉じているせいで唾液が溜まり、口のなかでクチュクチュ鳴る音にそれを飲み込む嚥下音。なんでもないはずの音や感覚が、天野江の体が発しているものだと知っているとどうしても興奮してしまう。

「ふぅー・・・・・・ふぅー・・・・・・」

鼻息が荒い。情けない姿になっていそうで天野江に申し訳ないが、ここは我慢するしかないんだ。そう、自分に言い聞かせる。ここで天野江の体に手を出すのは、絶対にいけない。天野江本人に、顔向け出来なくなる。

無限にも思える時間の中、天野江が来ることを心待ちにしながら俺はひたすらに耐え続けた。

 

 

誰かに肩を揺すられている。ゆっくりと目を開けると、そこは俺の顔があった。寝間着姿にジャンパーを羽織っている。

「春日井君大丈夫!?」

『俺』は慌てたように言いながら、両手で肩を掴んで揺さぶってくる。多分、天野江だ。

「あ、天野江だよな・・・・・・?」

息も絶え絶えに言う。どれだけ時間が経ったか分からないが、なんとか耐えきれたらしい。

「うん、そうだよ!それより春日井君、一体何があったの!?」

まくし立ててくる俺の体の天野江に、俺は説明しようとする。かなり恥ずかしいが、ここで口ごもったらいらぬ誤解を与えてしまうかもしれない。天野江に対する恋慕は伏せながら、手短に話した。

「そう、だったんだ。・・・・・・ごめんね、辛い思いをさせたみたいで」

申し訳なさそうに言う天野江。・・・・・・しゅんとしている自分の姿を見るのは、中々に妙な感じだ。

「いや、俺が勝手にやったことだし・・・・・・。天野江こそ、大丈夫だったか?」

そう聞くと、天野江はちょっと俯いてから言ってくる。

「あ、あの・・・・・・えっと、その・・・・・・ごめん、春日井君!我慢できなくて、ここに来る前にトイレに行っちゃったの!!」

思い切り頭を下げる天野江。それって、つまり、天野江が俺のアレを見たということで・・・・・・。

ボッと全身が熱くなるのを感じる。さっきまで待っていた時以上に、恥ずかしさで顔から火が出そうだ。

「い、いや謝らなくても大丈夫。生理現象だから仕方ないしさ・・・・・・」

なんとか言い繕うが、それでも動悸は治まらない。まさか、付き合うとかそういう以前に俺のムスコが見られてしまうなんて・・・・・・。

「む、むしろ、ほら、汚いものを見せて逆に申し訳ないっていうか」

「えっと、いや、そんなこと無いよ。り、立派だったと思う!」

「り、立派!?」

天野江も混乱しているんだろう、互いにとんでもないことを口にしている。落ち着く為に、飲み物でも飲もうということになった。

「春日井君は待ってて、用意してくるから」

さっきの会話で気まずくなったのか、そそくさと部屋を出ていってしまう天野江。一人取り残された俺は、所在なさげに座ったままだ。

「はぁ・・・・・・」

溜め息をつく。どうしてこんなことになったんだ・・・・・・。もし、このまま戻れなかったらどうやって生きていけばいいんだろう。天野江のフリとかしなきゃいけないんだろうか。そういう考えがぐるぐると頭を回る。と、

「・・・・・・あれ?」

天野江が部屋を出る時に脱いだ俺のジャンパーが目に入る。なんだか、ポケットの所が膨らんでいるような・・・・・・。中を探ってみると、一冊の文庫本が入っていた。

「これ、回り回る恋・・・・・・?」

どうしてこの本がここに。天野江が持ってきたのだろうか。いや、あんなに慌てて来てくれた天野江が机に置いたはずの本を持ってくることは考え辛い。そこまで考えて、これを買った書店の怪しげな雰囲気と、店番の少女が話していた「曰く付き」のことを思い出し少しゾッとする。

もしかして、今の状況になったのはこの本が何か関係しているのでは?突拍子過ぎる考えではあるけど、入れ替わっている現状自体が訳の分からないものだ。いや、そうだとしても・・・・・・思考がぐるぐると堂々巡りしてしまう。

「お待たせ、春日井君。お茶しか無かったけど・・・・・・どうしたの、その本?」

ただならない目つきで本を見つめていた所に、天野江が帰ってきた。お盆には二つのカップとクッキー、お茶のポットが載っている。

「あーっと・・・・・・ジャンパーのポケットに入ってたんだけど、天野江が持ってきたのか?」

「?ううん、持ってきた覚えは無いけど・・・・・・最初から入ってたのかな?」

そんなはずはない。俺は、寝る前に机の上に置いたのを確かに覚えている。

ますます不気味さを感じ、本から手を放す。そんな様子の俺を不思議に思ったのか、天野江は盆を置いて回り回る恋を手に取った。

「初めて見る題名だけど・・・・・・これがどうかしたの?」

問いかけてくる天野江。俺だけで考えてても仕方ない。もしかしたら彼女に笑われてしまうかもしれないと思いつつ、俺は書店での経緯を話し始めた。

「・・・・・・えっと。考え過ぎかもしれないんだけどさ。実は・・・・・・」

 

俺の話を、天野江は神妙な顔で聞いてくれた。そして話し終えた後、彼女はぽつりと言う。

「その書店って、もしかしてクリーニング屋の横にあった?」

「え、あぁ、そうだけど・・・・・・もしかして知ってるのか?」

驚いて聞いてみるが、彼女は神妙な表情を崩さないままに言った。

「ううん、その逆。ここに来る前に、春日井君が言ってた道を通ったんだけど・・・・・・そこ、空き地だったよ」

「え?」

確かに、書店があった場所は空き地だった記憶はあった。俺の勘違いだと思っていたけど・・・・・・。

「あっごめん、春日井君が嘘ついてるって言ってるわけじゃなくて・・・・・・」

「いや、いいよ、大丈夫」

返事をするが、内心衝撃を受けていた。天野江の記憶力はかなりいい方だし、彼女がこんな時に嘘や冗談を言うとも思えない。じゃあ、俺が入ったあの書店は、一体何だったんだろう。

確かめるのは簡単だ。二人で、もう一度書店があった場所に向かえばいい。でも、もしそこに書店が無かったら?俺は恐ろしくなって、体が震え出した。いつもなら、ただの記憶違いや白昼夢だと自分に思い込ませるだろう。だけど、現に本はここにあって、俺たちは入れ替わるという非現実的なことになっている。どうしても、怖い方に物事を考えてしまう。

「春日井君、大丈夫?」

俺の顔で心配げな表情を浮かべる天野江に、返事をすることが出来なかった。もしこのまま戻れなかったら。その原因が、あの時書店に寄った俺にあるとしたら。そんな考えばかりが頭に浮かび、離れない。

「うぅ・・・・・・」

震えが止まらない。異常な状況のせいでおかしくなってしまったのだろうか。震えを抑えようと、俺は天野江の体を抱きしめる。細い腕に、全体的に柔らかな体。生まれてからずっと付き合ってきた俺の体とは全然違う。

「春日井君・・・・・・?」

「ご、ごめっごめん天野江・・・・・・なんか、急に・・・・・・っ!」

涙が滲み、ガタガタと震える。どうしてだ、俺はそんなに涙脆くないはずなのに。ぽろぽろと涙が零れ、カーペットに染みが出来ていく。何か話そうとするもしゃくりあげてしまい、上手く喋れない。思いがけないことに混乱しながら、それでも涙は次々に溢れてきた。

「あ、あれ、おかっ、おかしいな、なんで、こんな」

辛い、苦しい、悲しい。感情の制御が利かず、どうしようもない。ひっくひっくと泣きじゃくって、周りのことすら分からなくなっていく。悲観の濁流に押し流されそうになって、おれ、俺は、

「っ春日井君!」

何かに、抱きしめられた。温もりが伝わってくる。

「大丈夫、大丈夫だよ・・・・・・!春日井君は何も悪くないし、きっとなんとかなるから」

俺は、俺自身に抱きしめられていた。普段思うことも無い、自分の体のたくましさを感じる。

「きっとね、春日井君は私の体に影響されてるだけだから。私、子供の頃から驚くようなことが起きると泣いちゃったりしてて、でもお父さんやお母さんが抱きしめてくれると落ち着いたんだ。だから、ね?大丈夫、大丈夫・・・・・・」

背中をぽんぽんと優しく叩きつつ、天野江が言ってくる。天野江の体は、すっぽりと俺の体に包まれていた。

「う、ぅ・・・・・・ごめん、天野江・・・・・・」

自分自身の体に抱擁されているというのに、なんだか安心感が湧いてくる。さっきまでの感情が、少しずつ引いていく。俺が落ち着くまで、天野江はずっと優しく宥め続けてくれた。

 

しばらくして。どうにか落ち着いた俺は、天野江に差し出されたお茶を啜っていた。

「んく・・・・・・あ、美味しい」

「でしょ?お父さんがハーブティー好きでね、家に常備してあるんだ」

確かに、気分が和むような風味がするような気がする。普段はこの手のものは飲まないが、天野江の味覚だからか、とても美味しく感じた。

「・・・・・・さっきはごめんな。あんなに号泣しちゃって」

「ううん、謝らないで。春日井君がいつもは頼りになることは知ってるし、きっと私の体に入ってるせいだから」

「そんなことは・・・・・・」

ない、とは言い切れない。確かに訳の分からない状況とはいえ、あれほど動揺して泣き出してしまうというのは初めての経験だった。ただ、それにしたって男として情けないというか、なんというか・・・・・・。

「それより、さ。私、少し気になることがあるんだ」

天野江が話題を変え、回り回る恋を手に取る。

「気になること?」

「うん。この本って、読んだ人の願いを叶えるって曰くがあるんだよね?」

そういえば、恋を叶える曰くだとそのまま言ってしまうと告白に近いことになってしまいそうで、そういう風にぼかして話していた。後ろめたくなり、ちょっと口ごもる。

「あぁ、うん・・・・・・確かそんな感じ」

「なら、ちょっと変だと思う。だって、春日井君はこの本をまだ読み切ってないんでしょ?もしこの本のせいなら、読了もしてないのにこんなことにはならないんじゃないかな」

「確かに・・・・・・というかそもそも、天野江と入れ替わりたいなんて願い、俺は持ってなかったし」

嘘は言っていない。だけど、良心がチクリと痛む。

「じゃあ、提案なんだけど。この本、二人で読んでみない?」

「えっ」

驚く俺をよそに、天野江は俺の顔で真剣な表情を浮かべながら続ける。

「今の私たちにはこの本くらいしか手がかりが無いし、もし読み終わって願いが叶うなら今の状況もなんとかなるかもしれない。って、思ったんだけど。どう、かな?」

そう提案されるが、正直何が起こるか分からなくて怖い気持ちが強い。でも、さっきあれだけ情けない姿を見せてしまっているし、ここでビビッていたらいつまで経っても状況は変わらない気がする。

「・・・・・・そうだな。このままじゃあ何も進展しないだろうし、読んでみようか」

意を決して答える。そして、俺たちは回り回る恋を開き、二人で読み進め始めた。

 

「・・・・・・あれ?」

ある程度読み進めた所で違和感が湧く。

「どうしたの、春日井君。何か気になることでもあった?」

横にいる天野江が聞いてくる。一緒に一冊の本を読んでいる為顔が近く、自分の顔だというのに少しドキドキしてしまう。

「いや、ちょっと・・・・・・俺が昨日読んだ時と、内容が変わっているような」

俺が昨日読んだ時には、主人公は入る部活を探している時に、たまたま文芸部を見つけてヒロインと会う、という内容だったはず。それが、クラスで意気投合した二人が文芸部を立ち上げるという描写に変わっている。まるで、俺たちの過去と同じみたいに。

それを天野江に話すと、彼女は眉間にしわを寄せながら言う。

「もしかして、内容自体が変わってるの?でも、そんな・・・・・・」

恐ろしいものを感じながらも、なんとか二人で読み進めていく。その後も、細かい文章が俺たちと似通うように改変されていて、ついに未読の部分に突入した。

大体のあらすじはこうだった。文芸部で同じ時間を過ごす内に惹かれ合うようになっていく二人。しかし、互いの好意に気付けぬまま時は過ぎていく。そんな時、主人公はふらりと寄った書店でとある本に出合う。恋を成就させるという曰くのあるそれを買った主人公は、その日からヒロインと急速に仲を深めていき、結ばれる。といった内容だ。

「これ、途中まではかなり似てるな・・・・・・」

「うん。でも、主人公とヒロインが入れ替わるってことは起きてないし、どういうことなんだろう」

意見を交わしながら次の頁をめくる。と、

「「あ」」

声が重なる。そこには、キスから始まる主人公とヒロインの濡れ場が書かれていた。二人して沈黙する。

「・・・・・・と、とりあえずここまでにしておこうか?」

気まずくなって提案してみるが、天野江は顔を赤くしながらも言う。

「・・・・・・いや、もしかしたらこの先に何か手がかりがあるかもしれないから。ご、ごめんね、私なんかとこういうシーンを読む羽目になっちゃって」

照れ隠しのように言ってくる天野江。俺のせいで、また気を遣わせてしまったようだ。

「こっちこそごめん。今の状況をどうにかする為にやってるのに、変に考えちゃってさ。このまま読もう」

そうだ、変なことを考えてる余裕なんてない。この状況をどうにかするためにも、ちゃんと読み切らないと・・・・・・!

しかし。小説の内容はどんどん過激になっていった。先ほどまでは恋愛小説らしい内容だったが、今では官能小説のような淫靡な文章に溢れている。まるで、途中で書いている人が交代したかのようだ。

二人して、可能な限り無言で読み進める。文章は巧みかつ緻密で、情景が頭に浮かぶようだ。そのせいで、なんだか下腹部に熱が籠っていくような気さえする。と、そこで俺は体が訴えてくる感覚に気付いた。

「・・・・・・ごめん、天野江。一旦休憩にしてもいいかな。ちょっと、トイレ行きたくなっちゃって」

「あ、うん。そうだね、ちょっと休憩・・・・・・あ」

何かを思い出したような天野江の、俺の顔を見て、今言ったことの意味に気付く。今の俺がトイレに行くということは、つまり天野江の体で用を足すということであって・・・・・・。

「い、いやっごめん!我慢、我慢するから!」

「き、きき気にしないで大丈夫だよ!私もこの体で用を足しちゃったし!」

「いや、でも・・・・・・っ」

一度意識すると、一気に尿意が襲ってくる。我慢しようとして、もじもじと脚をくねらせてしまうがやはり耐えられそうにない。

「ほら、トイレに案内するから!私のことは気にしないで!」

天野江に促され立ち上がるが、下半身がゾクゾクとするような感覚で上手く歩けない。無理に急ごうとすれば漏れてしまいそうだ。

「っ駄目だ、動くと漏れそう・・・・・・!」

まさか、こんな急に。女性は我慢し辛いと聞いたことがあるけど、ここまでなんて。

「えーっと、えーっと・・・・・・!そうだ!春日井君ちょっとだけ頑張ってね!」

天野江はそう言うと、

「えっうわっ!?」

俺を持ち上げて、抱き上げた。俗に言うお姫様抱っこの形だ。

「すぐ連れてくから!」

蹴り破る勢いで扉を開け、廊下を走る天野江。俺は恥ずかしさと尿意でわけが分からなくなりながら、落ちないように俺の体に抱き着いていた。時間にしてほんの十数秒ほどでトイレに到着する。洋式の、綺麗に手入れされたそこで、俺はようやく降ろされた。

「春日井君は目つむってて!私が手伝うから!」

言われた通りに目をつむると、一気にパジャマのズボンと下着を下ろされる。次いで、ひんやりとした外気が天野江の大事な所に当たる感覚がして、俺の尿意は限界に達した。

天野江に促され座った直後。股間から勢いよく液体が噴き出した。

ショワァァァァァァァァァ

「は、あぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」

解放感と虚脱感。体の力が抜け、尿が流れるままに任せる。あれだけ感じていた恥ずかしさを忘れて、俺は天野江の体で思いっきり放尿していた。

「ふうぅ・・・・・・」

長い間、たっぷりと出し切った俺は息をつく。落ち着いてみると、なんで俺は天野江の体で用を足しているんだと異常な状況を思い出す。それも、当の天野江を目の前にして。一度落ち着いたはずの体が、また火照るような感じがした。

「・・・・・・と、とりあえず大丈夫だと思う。それで、この後どうすれば・・・・・・」

天野江に話しかけるも、何故か返事が無い。目をつむったままだからどうなっているのか分からず、不安になって続けて話しかける。

「あれ?おーい天野江、何かあったのか?」

「・・・・・・あっごっごめん春日井君!えっと、少し足を開いてくれるかな?拭いちゃうから」

少しの間の後、今度はちゃんと声が返ってくる。目をつむっているからか、自分の声で天野江の喋り方をされる違和感をより強く感じた。言われた通りに足を開く。かなり恥ずかしいが、天野江の体なんだから天野江に任せるなら安心だ。

「・・・・・・じゃ、じゃあ、拭くね?」

頷く。なんだか、さっきから天野江の反応が少し遅れているように感じるが気のせいだろうか。と、からからとトイレットペーパーを引き出す音が聞こえ、股間に触られる。

「んあっっっ!!??」

衝撃が、走った。

「んむ、むぅぅぅぅ!?」

咄嗟に口を押さえるが、殆ど意味は無い。トイレットペーパーで敏感な部分を擦られる度、感じたことの無い電流のような快感が湧き上がってきた。

我慢出来ず、足を閉じようとする。しかし、足はしっかりと抑えられているようで閉じることが出来ない。逃れることが、出来ない。

「うんんんぅぅぅぅっっ!!」

叫び声のような喘ぎを噛み殺す。まるでこちらを責めることが目的のような拭き取り方に、体がびくびくと震え続けた。耐えられなくなった俺は目を開けて、天野江の姿を探す。

「あまっのえぇっ!もっもういいからぁぁあんっ!?!!?」

涙で滲んだ視界に天野江の姿が映る。頬を上気させ、己の股間を凝視するその姿は興奮した男にしか見えない。

「ごめんね、拭いても吹いても出てきちゃうの・・・・・・!」

そう言いながら、天野江はまさぐるように俺の股間を刺激する。その目は、完全に据わっていた。

「だっだめっあまのえっっくぅんっ!!」

もうトイレットペーパーも無く、直に触ってくる。ビリビリと脳に電流が走り、股間からだらだらと液体が分泌される。さらに、俺の中に何かが入り込んできた。

「えっあっなっんだこれっはぁぁぁんんんっっ!!!!」

ずぶりと、細長いものが入ってくる感覚。そこは悦ぶように指をキュウキュウを締め上げて、男には無い器官から伝えられる快感で俺の精神をぐちゃぐちゃにかき乱していく。

「はぁっ、はぁっ・・・・・・!」

俺の嬌声に紛れて、天野江の吐息が漏れ聞こえる。もしかして、天野江は俺の体、男としての性欲に支配されているんじゃないかと思うが、それを聞くことも出来ずに喘ぐしかない。ぐちゅぐちゅと指の挿入が繰り返され、俺は快感の渦の中でただ悶え続けた。

「うぅ・・・・・・ごめん、ごめんね春日井君っ・・・・・・!」

責めが止まる。天野江の方を見ると、彼女はズボンを下ろし、張り詰めた俺のちんこを露出させていた。

「あま、のえ・・・・・・?」

「抑えられない、抑えられないのっ!今の春日井君が可愛すぎて、体がおかしくなっちゃったんだよ!」

ギンギンに漲っているそれは、いつもと違う角度から見ているからか、自分のものと思えないくらい大きく感じる。何より、今の俺にはとても魅力的に見えてしまい、目を逸らせない。

「う、うぅ、どうしよう春日井君・・・・・・?こんなのおかしいって分かってるのに、分かってるんだけど・・・・・・!」

天野江自身も、体から湧き上がる衝動に戸惑っている。涙目で、懇願するように俺に言ってきた。

「お願い、春日井君・・・・・・!これ、どうしたらいいのっ?」

どこか庇護欲をそそるような表情。俺の顔なのに、随分と可愛く思えてしまう。

「なぁ、天野江。もうちょっとこっちに来て・・・・・・」

俺は天野江を招き寄せる。おずおずと近付いてくる彼女の体に腕を回し、力いっぱい抱きしめた。何もかもが異常なこの状況で、まるで当然のように自分の顔にキスをする。

「んっ・・・・・・」

がさりとした唇の感触。それが俺の瑞々しい唇と触れ合って、心の底から幸福感が上がってくる。

「っぷは!春日井君、春日井くんっ!」

大型犬がじゃれてくるように、天野江が頬や首筋にもキスをしてくる。俺はそれをくすぐったげに受け入れながら、自身と天野江の下半身を密着させていく。

「っふぅ・・・・・・っ!」

ぐちゅり。互いの性器が触れ合い、熱が、脈動が、欲望が伝わってきた。

「かっ春日井君、いいの・・・・・・!?」

返事の代わりに唇に吸い付き、舌を絡める。何かが、いや、全てがおかしい。そんなことは分かっているし、これ以上進めてしまってはいけないとも思う。しかし、正常な思考は異常な状況に塗り潰されてまるで意味を為さなかった。腰を、ゆっくりと押し付けていく。

「~~~~~~っっっ!!!」

上の口で繋がりながら、下でも繋がっていく。怒張したものを迎え入れると、今までせき止められていた水が決壊するような快楽が襲い掛かってきた。

「あぁぁああっ・・・・・・!!」

男の呻くような声。震えながら、それでも腰を押し進めてくる。途中で何かが切れるような痛みを感じたが、すぐに快楽に流されてしまう。俺の喘ぎ声と天野江の呻き声が混ざりながら、やがて奥まで到達した。子宮が下りてきて、亀頭の部分とくっ付いている感覚がする。

「ふぅっ、ふぅ、ふぅ・・・・・・」

その状態で、しばらく抱き合った。満ち足りた幸福感で包まれて、疑問や違和感が消えていく。やがて、どちらからともなく腰を動かし出すと、再び激流のような快感が襲ってきた。

「んあぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっ、くぅっ!!」

「あぁ、気持ちいい、気持ちいいよう・・・・・・!か、春日井君はどう!?」

力強く俺の中に突き入れながら、天野江が聞いてくる。しかし、異性の快感に振り回されている俺は答えることが出来ない。全部、喘ぎ声になってしまう。

「あぁっきもっちんぐぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!」

ごりごりと、中が擦られる。突かれ、抉られ、はしたない声を上げてしまう。視界と共に頭の中が白く滲んでいき、快楽に支配されいくのを感じる。

「かっ春日井君っ!なん、なんか出そうっ・・・・・・!!?」

切羽詰まった声。きっと射精が近いんだろう。天野江にとっては初めての感覚、精通と似たようなものだ。鈍った腰の動きを補うようにこちらから腰を動かし、初めての射精を促していく。

「そっそのままでっいいからっもっと強くぅっっっ!!!」

両手と両足を使ってたくましい男の体に抱き着く。荒い吐息と、汗だくの体。雄の匂いなのか、吸い込むだけでくらくらとする。そのまま、小刻みに腰を動かした。

「あっだっだめっでちゃ、出ちゃうよぉっっ!!!」

声と共に、奥深くまで突き入れられる。それとほぼ同時に、

「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!」」

俺たちは、一緒に達した。マグマのように煮えたぎった粘液がお腹の奥にぶちまけられ、それを悦ぶようにちんこをギチギチに締め上げる。ドクドクと脈動する度に、俺たちは体を震わせて絶頂した。

 

 

 

「あぁっそれっ別のところが擦れてっくぅんっっ!!」

天野江の部屋。俺は、後背位で犯されていた。さっきよりも深く突き刺されている気がして、さらにある一点が擦れる度にチカチカと視界が瞬く。

あの後、二人して全然治まらなかった俺たちは部屋に戻り、服を脱ぎ捨て二回戦を始めていた。

「こっちもっなんか征服してる感じがしてすごいよぉっ!」

大きな体に覆いかぶさられながら、激しく突かれる。身も心も男に屈服してる感じがして、とめどなく気分が高揚していった。

「あっんんんぅぅぅうううう!!!」

胸が揉まれる。零れ落ちそうな大きさの双丘に指が食い込み、固くなった乳首を弄ばれた。三点から責められて、思わず目の前の枕に顔をうずめて叫ぶように喘ぐ。そうすると、好きな人の匂いが鼻腔に溢れて情欲がますます燃え盛っていく。

「あぁっ出るよっまた出るうぅっっ!!!」

「きっきてくれっきてぇぇぇぇっっ!!!」

どくどくと、一度目と変わらない量の精液が奥に流し込まれる。子宮が、何億もの精子を歓迎するように震えた気がした。

二人して荒い息を吐く。しばらくして彼女は腰を引き抜き、精液と愛液で汚れたちんこを俺の眼前に持ってきた。期待するような視線に答えるように、俺は躊躇なく口に含む。掃除をするように丁寧に舐め上げると、口の中一杯に淫猥な味が広がった。決して美味しいものではないが、腹が熱くなるような気分になる。そのまま下品な音を立てながら舐め続けると、萎えかけていたちんこが口の中で再び固さを取り戻していく。

「ねぇ、次はさ、正面から抱き合いながらやってみない?ほら、対面座位・・・・・・っていうのかな」

ギラギラとした目つきで言ってくる天野江。さっきとは別人のようだが、人のことは言えない。きっと、今の俺は完全に発情した雌の顔をしてるんだろう。

「うん、やろう。よいしょ、っと」

座っている天野江に跨り、ゆっくりと腰を落とした。すっかりほぐれた俺のおまんこは、精液を零れ落ちさせながらもすんなりとちんこを飲み込んでいく。

「は、あっ・・・・・!」

精液が潤滑剤となって、すぐに根本まで咥え込めた。天野江に抱き着きながら、回すように腰を動かす。愛液と精液がかき混ぜられ、白濁した泡が繋がっている場所から溢れてくる。

「これっは、いいな・・・・・・っ!」

さっきまでとは違って、寝転んでいる状態ではないので重力でより深く繋がっている気がする。少し不安定だが、がっしりと抱き合っている安心感が快楽をより加速させた。

全身を擦りつけ合うように、抱き合いながら腰を動かす。同時に相手の腰が突き上げられ、子宮口がコリコリと刺激される。

「んっくぅ!!?」

「えへへっ、私の体、奥が弱点みたいだね!」

天野江が無邪気に言いながら、子宮口の周辺を重点的に責めてくる。種類の違う快感に、俺は悶えながら抱き着く手足に力を込めた。

「ひ、っつあっんんんぅぅっっ!!」

電流のようなものとは違う、燃え盛る炎のような快感。体も心も焼き尽くされそうになり、細かく絶頂する。さらに、両乳首を指でつままれて高い場所から降りてこられない。

「イってるっ?イってるよねっ!?すごく締め付けてくるもんっ!」

ちんこがギュウギュウに締め付けられることでこっちが絶頂してることはバレているみたいだけど、返事も出来ずに体を痙攣させることしか出来ない。抱き着く力が緩み、後ろに倒れそうになった所を天野江が力強く抱き留めてくれた。

ビクビクと震える体を抱き留められながら、俺はゆっくりと体の力を抜く。腰の動きや胸への責めは一旦止まっており、その間になんとか呼吸を整えた。と、天野江が愛おしげな表情で頭を撫でてくる。

「ん・・・・・・」

心地いい。甘えるように頭を胸板にすり寄せると、耳元で天野江が囁いてきた。

「ねぇ、春日井君。お願いがあるんだ」

見上げるように俺の顔を、今は天野江の顔を見る。真剣な表情でこちらを見つめられるだけで、心臓が跳ねるような気がした。

「あの、その・・・・・・私との赤ちゃん、産んでほしいの。私、春日井君と結ばれたい・・・・・・!」

「赤ちゃん・・・・・・?」

そうか。そういえば、そうだった。今俺たちがしていることは、子作りだったんだ。そう思った瞬間、応えるように体が疼いた。既に天野江の精液で満たされた子宮から全身に熱が伝播し、ちんこを啜るように肉が蠢くのを感じる。

「っ俺と、天野江の、赤ちゃんっ・・・・・・!」

あぁ、それは、なんて素晴らしいんだろう。愛する人との、愛の結晶。

「そうか・・・・・・俺が、産めるんだ。天野江との赤ちゃんを、俺が産むんだっ・・・・・・!」

女としての悦びが体と心を支配していく。欲しい。俺と天野江の赤ちゃんが、愛する人との子供が、欲しくて欲しくてたまらない。

「天野江、天野江っ!孕ませてくれ、俺をお前の精子で孕ませてくれっっ!!!」

懇願し、腰をくねらせる。それに反応して、ちんこが一回り膨張する感じがした。

「よかった・・・・・・!じゃあ、思いっきりやるからね!!!」

その言葉と共に、天野江の腰が跳ね上げられた。ゴリっとした感触と共に目の前がスパークする。

「うああああああああぁぁぁぁああぁぁぁぁっっ!!!」

まるで悲鳴のような喘ぎ声。俺が出しているものだ。可愛らしい天野江の声には似つかわしくない、獣の咆哮に近い音。

「あぁっ先が、先が咥えられてるっ!子宮の入り口が吸ってくるよぉっ!!」

そう叫びながらも、天野江の腰は責めを緩めることは無い。

「はぁっ、はっひっつぅぅ!!んくぅうぅぅぅぅぅうぅっ!!」

目の前に顔がある。俺の顔だ。それなのに、たまらなく愛おしい。唇に吸い付いて舌を入れると、待っていたように舌が絡んでくる。唾液を交換し合いながら、俺たちは子作りに熱中していた。

「あぁっ気持ちいいよぉ春日井君っ!!好きな人と結ばれて赤ちゃんを作るのってこんなに気持ちいいことだったんだねっ!!」

「あぁぁっっおれっおれもぉっ!!きもっちいぃぃぃぃっっっああああぁぁぁぁぁっっ!!!」

混ざり合う。体も、性器も、体液も。魂すらも、全てが繋がっている気がする。

「そっそろそろぉっ!赤ちゃんの素、沢山出すからねっ!!」

ゴリゴリと子宮口を刺激しながら、亀頭が大きく膨らむ。それと共に胎内が蠢いて、天野江のちんこを啜り上げながら子宮口が亀頭を離さないようにすぼんで咥え込んだ。

「ああっぅうぅっきてっきてっきてぇっ!!」

懇願しながら、力いっぱいに抱き着いて密着する。汗や唾液、体液塗れでぬるぬるとしたお互いの体。天野江の、元自分の体の逞しさと力強さが伝わってきて、もう、限界だ。

「いくよ、いくよ、いくよぉっ!!っくぅぅっっ!!!」

「きたぁぁぁっぁっぁあぁぁぁぁっぁぁぁあぁぁぁぁっああぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

染まる、染まる、染まる。頭の中も、胎内も、何もかもが白く染まっていく。堕ちているのか、それとも昇っているのか。そもそも、自分が誰なのか。なにも分からない白のまま、俺は絶頂の波に流されていった。

 

 

「・・・・・・おや」

薄暗い店内。少女ははたきで棚の本の埃を落としていた。と、棚の中の本に目を付ける。

「あぁ、少し前の。戻ってきてたのかい」

回り回る恋、という題名の小説を、少女は手に取ってめくり始める。

「・・・・・・へぇ。こういうことになったのか。お熱いことだねぇ」

入れ替わってしまった二人が、愛し合って結ばれる話。先日とは違う内容のそれを、少女は楽しげに目を細めながら読んでいく。

やがて読み終わったのか、小説を棚に戻した少女はひとりごちる。

「うん、うん。幸せそうで何よりだ。商売人冥利に尽きるってものさ。・・・・・・と、噂をすれば」

少女が視線を外に向ける。ガラス越しに映る店先に、仲睦まじく男女が歩いている。恋人繋ぎをしながら、傍目から見てもとても幸せそうに見える二人はカップルのようだ。

「ははぁ、実際に見るとさらにお熱い。こっちまでのぼせてきちまうよ」

手うちわで頬を扇ぎつつ、少女は男女・・・・・・春日井と天野江に言う。

「どうかお幸せに、お二人さん。・・・・・・いや、三人かな?」

二人は声に気付くことは無かった。それどころか、書店の存在にも気付いていないようだ。

離れていく二人の背中を見送りながら、少女は再びはたきを振るい始めるのだった。

 

 

 

 

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