皮を着させられ、男の体を失って一年が経過した。若頭との一件以来完全に心が折れてしまったカナエは、流されるままに仕事を続けている。最初に意地を張っていた代償か、同じ境遇の元男性たちは殆ど話しかけてこず、ただ孤独に客に抱かれ続けていた。
スタッフ曰く、皮を着こんでいる間は外見は変化しないらしい。確かに、カナエの見た目は育ち盛りの少女のように見えるのに身長は伸びず、体重も変化はないようだった。ただ、髪の毛や爪は伸びるので定期的にスタッフに手入れをしてもらっている。
殆ど毎日指名を受けているとはいえ、このペースだと借金の返済には5年以上かかるらしい。その間、ずっとこんな生活を続けるのだろうか。ここでは娯楽は少なく、麻雀や将棋といったボードゲーム、テレビや雑誌、後は古いゲーム機くらいだ。酒やタバコは禁止されているし、金銭は持たされないので博打に興じることも出来ない。
確かに、少女の体から受ける快楽は尋常ではなく、それに溺れているという自覚もある。だが、カナエはどうしても自分の体に忌避感を感じてしまっていた。
(クソッ、なんて様だよ・・・・・・惨め過ぎる・・・・・・)
今の生活を受け入れてしまっている自己嫌悪で、カナエは憔悴している。しかし、その程度で仕事は休めない。幸か不幸かカナエはそこそこ指名が多く、丸一日休める日は殆ど無い。今日も今日とて、指名が入れば男の待つ部屋へと向かわねばならないのだ。
カナエが一仕事終えて待合室の椅子に座り、疲れた様子で目をつむっていると、派手な服装のギャル・・・・・・ミーコがいつものように話しかけてきた。カナエに積極的に話しかけてくるのは彼女くらいのものだ。
「よー、随分疲れてるなぁ。そんなにキツいなら何人かこっちに回してくれてもいいんだぜ」
「・・・・・・疲れてるって分かってんなら話しかけてくんなよ。それに、ここはそういうシステムじゃねえだろ」
目を開けてジロリとミーコを睨む。ミーコはいつも通り明るい表情で、お構いなしにまくしたてる。
「そう言うなって。ストレス溜まってんならこうやって会話することも大事だぜ?なんならハグでもするか、ハグ!ストレス軽減出来るってテレビで言ってたし!」
抱き着いてこようとするミーコを手で押しやるカナエ。見た目こそコケティッシュなギャルだが、ミーコもカナエと同じ、『皮』を着込んでいる元男だ。他の同僚とも仲が良く、ここのまとめ役のような立場でもある。
「ベタベタすんな。余計ストレス溜まるっての」
「ちぇっ、つれねぇなぁ」
ぐいぐいと押しのけられ、抱き着くことを諦めたミーコは、少し表情を引き締めてカナエに言う。
「だけどよ、マジでキツいんなら言ってくれよな?見知った奴が潰れるのはごめんだからさ」
真剣な口ぶり。あまり見ないミーコの真面目な態度に、カナエは僅かに動揺した。
「・・・・・・なんだってそう構ってくるんだよ。見知った奴っつっても所詮は他人じゃねえか。しかも、本来の姿も知らないような」
「そう言われてもなぁ。嫌なもんは嫌なんだよ、しょうがねえだろ」
(こいつ・・・・・・前から思っちゃいたが、根っからのお人よしか?)
内心呆れながら、カナエはぞんざいに手を振ってミーコを追い払う。
「あー、分かった分かった。潰れそうなら頼ってやるからとっとと離れろ」
「おーう、頼むぜ。んじゃ、今日もいっちょ返済の為の労働といきますか!」
カナエの背中を軽く叩き、ミーコは別の者に声を掛けに向かった。そんな様子を、カナエはぼんやりと眺める。
(あぁいう馬鹿は食い物にされるのが普通だと思ってたんだがなぁ・・・・・・)
男だった頃、チンピラのように生きていたカナエが馬鹿にしていた人種。しかし、実際ミーコのおかげで多少は心が軽くなっているというのも事実だった。
(随分女々しくなったな、俺も。はっ、見た目通りって訳だ!)
自嘲しながら、昔を思い出す。そういえば、こうなる前に金を借りた、和装の妖しげな少女のことが脳裏をよぎった。
(思えば、あのガキもこの店に一枚噛んでるのか・・・・・・?まともな雰囲気じゃなかったしな)
もしかしたら、自身がこうなったのはあの少女のせいかもしれないと、カナエは考える。しかし、今考えても仕方のないことだ。と、
「カナエさん、ご指名です」
スタッフが呼びに来た。どうやら、休憩はここまでらしい。重い腰を上げて、カナエは客の待つ部屋に向かうのだった。
「・・・・・・は?」
部屋で待っていたのは、どう見ても成人していない、中性的な顔立ちの高校生ほどの少年だった。今までここまで若い客はいなかった。遊び慣れてそうな大学生が精々だ。スタッフに困惑混じりの視線を送るが、素知らぬ顔で部屋を後にされてしまう。
「あ、あの・・・・・・よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる少年。あまりにも初々しいその態度は、初体験ですと伝えているようなものだ。
「あ、あぁ・・・・・・」
スタッフが何も言わなかったということは、いつも通りでいいのだろう。しかし、いつも通りと言ってもこの一年にカナエが相手にしてきた客は、その殆どが主導権を握ろうとしてくるタイプだった。目の前の少年はどう見てもそういうタイプではない。どうすればいいか分からず、とりあえずカナエはベッドに座っている少年の横に座った。
「なぁ、お前」
「はっはい!」
ちょっと声を掛けただけで飛び上がるような反応を見せる少年。
(や、やり辛え・・・・・・)
カナエはそう思いながらも、ひとまず会話をしてみることにした。
「随分と若いが、料金払えんのか?タダ働きはごめんだぜ」
「あっえっと、大丈夫だと思います、はい。知り合いがこういう所も経験しておけって払ってくれるらしいので」
(いや、どんな知り合いだよ)
内心でツッコむ。気を取り直して、色々と質問してみることにした。
「じゃ、こういう店は初めてか。俺らが皮着てこうなってるってのも知ってるんだよな?」
「は、はい。凄い技術があるんですね・・・・・・世界は広いなぁ」
能天気に言う少年。カナエは肩透かしを食らい続けている気分になってしまう。
「いや、お前がそれでいいならいいんだけどよ・・・・・・初めての相手が元男で本当にいいのか?」
そう尋ねると、少年は俯いて黙り込んでしまった。何か不味いことでも聞いてしまったかと少し焦るが、しばらくすると少年がぽつぽつと話し始める。
「実は・・・・・・僕、女性が苦手で・・・・・・いや、普通に話とかは出来るんですけど、その、彼女との初体験の時に、勃たなくて・・・・・・。結局それが原因で別れてしまったんです」
「お、おぅ・・・・・・」
「それで、中身が男性だと分かっていれば大丈夫なんじゃないかって、知り合いにここを教えてもらったんです」
(それは流石に考えが飛躍し過ぎてねぇか?)
カナエは思うが、口には出さない。ようは勃たないかもしれない初心な客をリードしろということだろうと解釈し、仕方なく自分から動くことにした。
「あー・・・・・・じゃあ、アレだ、とりあえず脱ぐか。それとも着たままがお望みか?」
「えっ、と・・・・・・お任せします」
「そうかい。じゃあ、じっとしてろよ」
カナエは少年の服に手をかけ、手早く脱がしていく。この一年で何度もやってきたことだからか、かなり手慣れているようだ。
「あっ・・・・・・」
少年は、服を脱がされているだけで時折悩ましげな声を発している。それを聞きながらも、カナエはあっという間に少年を全裸に剥いてしまった。少年のペニスは、彼が先ほど言ったように小さく縮こまっている。
「んー・・・・・・まぁ勃ってないか。で、俺の服はどうする?お前が脱がせるか?」
「お、女の子の服の構造とか分からないので・・・・・・お任せします」
その返事に肩をすくめたカナエは、さっさと服を脱いで全裸になる。平坦な胸に、くびれの少ない体。女性としての魅力はあまり感じないであろう姿が露わになった。生まれたままの姿で向き合うカナエと少年。仁王立ちしながら、少年に問いかける。
「どうだい、ちったあ興奮したか?」
「・・・・・・いえ、すみません」
言葉の通り、少年のモノは反応すらしていない。男の相手をするのには未だ嫌悪感のあるカナエだが、反応が無いのはそれはそれで釈然としない気分になる。
「はぁ・・・・・・しょうがねえな」
溜め息をつき、ペニスに手を伸ばす。勃起していないそれを見るのは、カナエとしてもあまり無いことだった。ぐにぐにとした感触が手のひらに伝わり、そのまま指先で弄ぶ。皮を被ったままのペニスは、それでも大きくはならない。
「ご、ごめんなさい・・・・・・!気持ちいいとは、思うんですけど・・・・・・」
おどおどと言ってくる少年。やはり、精神的な問題なのだろうか。
「謝んな。じゃあ、こういうのはどうだ?」
カナエは、一旦ペニスから手を放して少年に向き直る。両手で彼の頭を掴み、ぐいっと引き寄せ唇を合わせた。
「んんむぅっ!?」
驚く少年を気にせず、舌を侵入させ歯茎を舐めとる。反応して分泌される唾液を吸い、逆に自分の唾液を送り込んだ。戸惑うように蠢く舌を自分の舌で絡めとり、ぐちゅぐちゅという音が互いの脳に響く。そのままたっぷりと数分間、カナエは少年の口内を貪った。
「んぷ、っは・・・・・・」
ようやく唇を解放し、カナエは少年を見やる。頬が上気し、とろんとした目つきでぼんやりしている彼は、しかしペニスは反応していなかった。渋い顔をしながら、カナエは次の一手を考える。
「あー・・・・・・しょうがねえな。おい、ちょっとベッドに寝な」
言われた通りにベッドに横になった少年に、カナエは覆いかぶさって頬を舐める。
「んっ・・・・・・」
そのまま首筋、鎖骨と舌を這わせていく。汗のしょっぱい味が口に広がるが、カナエには慣れっこだった。そして、そのまま唾液でてらてらと光っている首筋に噛みつく。
「いっ!?」
ビクッと少年の体が震える。それに構わず、カナエは噛みついたまま少年の乳首をつまみ、くりくりと刺激していく。
「えっあっちょ、な、何を?」
「んぐ・・・・・・うっせーな、黙って受け入れてろ」
首筋から口を離し、再び体を舐めていくカナエ。少年の首筋には、血こそ出ていないもののくっきりと歯型がついていた。
「あむ、れろ、じゅるる・・・・・・」
「ひぅっんん・・・・・・!?」
そのまま、カナエはマーキングするように少年の体を舐め回し、硬くなり始めた両乳首を刺激し続ける。その度に少年が悶え、声を押し殺そうとするのがカナエにとっては新鮮だった。
(今までの奴らは好き勝手に犯してくるか命令してくるかだったからな)
こうして主導権を握ったことは今までに一度も無かった。少し面白くなり、カナエは乳首に吸い付いて甘噛みする。
「つぅっ!?」
男の喘ぐ声が不快に感じないのは初めてのことだった。涙目で、息は荒く、頬は上気している。そんな少年を見ていると、カナエは己の嗜虐心がくすぐられるのを感じていた。乳首に吸い付いたままゆっくりと少年の股間に手を伸ばすと、勃起とはいかないまでも、やや膨らみ始めたように見えるペニスが指に触れる。揉むようにしごきながら、それと同時に乳首を下で転がすと、少年は上ずった声で慌てたように言ってきた。
「あっあのっ、もう十分ですから!一旦休憩をっひぃんっ!?」
「しねぇよ、こういうのが望みでここに来たんだろ?」
少年の言葉を遮るように、乳首をつねり上げながらカナエが言う。普段の仕事の時とは違う、心から愉しそうな笑みを浮かべながら。
(ヤベぇな・・・・・・こいつの顔立ちが中性的だからか嫌悪感も湧かねえし、なんか分かんねぇけどゾクゾクする・・・・・・)
高ぶる気分のまま、少年のペニスを巧みにしごいていく。徐々に血液が充填され、大きくなっていくそれを感じながら、カナエは再び少年の唇に吸い付いた。
「んむっ」
舌を絡ませて唾液を交換しながら、片方の手で乳首を刺激し、もう片方の手でペニスをしごく。大きくなる毎に皮が剥け、綺麗なピンク色をした亀頭が姿を現した。カナエは立派に屹立したそれを見て、満足気に笑う。
「んっぷ・・・・・・なんだ、ちゃんと大きくなるじゃねえか」
「う、うぅ・・・・・」
少年は顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているが、カナエは構わずに彼の股間に顔を近付ける。むせ返るような雄の匂いにクラクラしながらも、平均よりも大きいそれをペロリと舐めた。
「ひぃっ!?」
少年の喘ぎ声に気を良くしたカナエは、ペロペロとアイスキャンディーのようにペニスを舐め上げる。ビクビクと震える少年を見ながら、大きく口を開けて一気に咥え込んだ。
「あっあぁっ!?なんか、ヌルヌルしてっ!?」
深くまで咥えながら、竿を刺激しつつ亀頭を舌で弄ぶ。口に広がる味は、何故かいつもと違って美味しく感じられた。
「じゅるっ、ずぞっぐぷぅっ!」
頭を動かしストロークしながら、少年のペニスを味わう。カナエがここまで積極的にフェラをするのは、この一年で初めてだった。
「あっ駄目ですっ出ちゃうぅぅ!!」
すぐに限界を伝えてくる少年。膨らむ亀頭を喉奥でしごきながら、カナエはストロークを速めていく。そのまま、カナエの口内で少年のペニスが爆発した。
「あっうわぁぁぁぁっっ!!?」
ドロリとした体液が口内を満たし、青臭いような苦いような味が広がる。頬を窄め、啜り上げながらカナエは潮を吹いて軽く絶頂した。
「んむっっぷぅうううううっっ!」
精液の味、匂いがカナエの脳を侵蝕する。目をギュッとつむり、体を強張らせている少年の姿を見るだけで、カナエの心の中に愛おしさが湧き上がってくる。その勢いのまま、一滴も残さないよう精液を吸い上げ、ようやくカナエはペニスから口を離した。
放心しているような表情の少年に、カナエはそのまま口を近付け、精液塗れの唇を少年の唇に重ね合わせる。口内に残った精液を流し込み、少年はされるがままに自身の精液を嚥下した。
「ぷはぁっ!どうだい、自分の精液の味はよ?」
まるで勝ち誇ったような表情でカナエが言う。少年は視点の定まらない瞳で、うわ言のように呟いた。
「す、すごかった、です・・・・・・なんか、しょっぱいような、変な味・・・・・・」
「ははっ、そりゃあ何よりだ。だがまぁ、本番はこれからだぜ」
「え?それって・・・・・・うわっ!?」
小さくなり始めたペニスを握り、唾液でぬめったそれを再び擦り上げていく。
「ちょっ待ってくださいお姉さんっ!?今敏感でぇっ!?」
少年の言葉に、思わずカナエは笑ってしまう。潤んだ瞳でイヤイヤと首を振る様子にもだが、何よりこんなちんちくりんである自分がお姉さんと呼ばれたことが、何故だか愉快だった。
「敏感だからいいんだろうが。そら、ちゃっちゃと勃たせな!」
小さな手のひらでゴシゴシとしごく。唾液が潤滑剤となり、ペニスを満遍なく刺激された少年は悶えながらもあっという間に勃起してしまった。
「おいおい、お前のモノは随分元気じゃねえか」
立派に屹立したそれを指で弾く。びくりと体を震わせた少年は、戸惑いと期待感が入り混じったような視線をカナエに送った。
「あ、あの・・・・・・」
「そんな物欲しげな顔すんなって。心配しなくても、しっかり犯してやるからよ」
言いながら、カナエは少年の腰に跨る。そのまま腰を落とすと、濡れそぼった膣口とペニスがぐちゅりと触れ合った。
「あっお姉さん、こ、コンドーム付けないと」
「いらねえよ、俺たちは妊娠しないんだ。それよりもせっかくの初体験だ、しっかりと味わいな」
ゆっくりと腰を落とし、少年のペニスを小さな膣が飲み込んでいく。膣内が柔軟に広がり、熱く大きいそれを受け入れていった。
「あっうぅ・・・・・・!」
「んっ・・・・・・ふぅぅ。なんとか全部挿入ったな」
互いの性器が密着し、根本まで飲み込まれているのが分かる。カナエがお腹をさすると、ぽこりとペニスの形が浮き上がっていた。
「どうだい、童貞を捨てた感想は?」
悪戯っぽく聞いてくるカナエに、少年は堪えるような表情で答える。
「なんかっ、熱くて、うねうねしてて・・・・・・すぐ出ちゃいそうです・・・・・・!」
「おいおい、出来るだけ我慢してくれよ?俺も楽しみたいから、なっ!」
腰を動かし、膣壁でペニスを締め上げる。抜けるギリギリまで腰を上げ、一気に落として子宮口をペニスで抉ると、少年とカナエの喘ぎ声が重なった。
「「んああああっっ!!」」
(なんだ、こいつのちんこっ・・・・・・?妙にフィットしやがる!)
相性がいいのか、カナエはいつもよりも強い快楽を感じていた。それ以上に、足りないものがピッタリと満たされたような多幸感が湧き上がってくる。
「おっお姉さんっ・・・・・・!」
縋るように呟く少年。カナエは、何故だか心が満たされていくような気分になった。
(なんか、変だ、俺・・・・・・)
自覚していながらも、止める気は起きない。むしろ、もっと欲しくなっていく。円を描くように腰をくねらせ、互いの性器を刺激しながらカナエは少年の乳首にむしゃぶりついた。
「あっ駄目ですお姉さんっ!?」
声に構わず、舌先で転がしたり吸ったりする。当然何も出てこないが、腰を上下させながら、カナエは口内で乳首を弄んだ。自然と手を伸ばし、少年の手を掴むと指を絡め合わせ、恋人繋ぎのような形になる。無意識の内にやっていることだが、カナエの表情はとても幸せそうに見えた。
「うわぁああぁぁ!?」
少年の悲鳴を聞きながら、ぎゅっと手を握ってペニスを締め付ける。そのまま膣壁でしごき上げ、乳首を甘噛みしていく。少年は与えられる快感で顔を真っ赤にし、喘ぎ声とともに荒い息を吐いていた。
「んじゅるっっちゅぅうううっ!」
気持ちよさは感じている。しかし、満ち足りた気分の方がより強かった。カナエは、この一年で培った技術で少年を責め立てる。気持ちよくなりたいし、気持ちよくさせたい。体の奥底から湧き上がる何かに従って、カナエは腰の動きを速めていく。
「駄目ですっお姉さん出ちゃいますっ!!」
切羽詰まった少年の声。カナエは乳首から口を離し、少年に言い放つ。
「いいぞっほら出せっ!たっぷりブチまけろっっ!!!」
亀頭が膨らみ、射精の予兆を伝える。カナエは思いっきり腰を落とし、子宮口で亀頭を咥え込んだ。
「あっ出ますっ出るぅぅぅっぅぅぅうううう!!!!」
「出せっ出せよっくうぅぅぅぅぁぁぁぁあああああっっっ!!!」
二回目の射精とは思えない程に、大量の精液が子宮に流れ込んでくる。粘ついたそれを、膣内が蠢いて全てを子宮に送ろうと啜り上げた。
「ふ、うぅ・・・・・・」
ゴクゴクと子宮が精液を飲み込んでいくのが分かる。力が抜け、少年の胸に倒れ込んだカナエはどこか満足気な表情をしていた。全身を密着させ、少年の心臓の音を聞きながら、ポツリと呟く。
「悪く、ねえな・・・・・・」
この一年で久しく感じていなかった満ち足りた気分になりながら、カナエは少年に体を預けていた。
「あ、あの!今日は、本当にありがとうございました!」
あれから。二人してシャワーを浴びて体液を洗い落とし、服を着替えると、少年が直角になる勢いで頭を下げてきた。
「おいおい、頭上げろって。こっちは金貰ってるんだからよ」
苦笑しながら返事をすると、おずおずと頭を上げながら少年が言う。
「で、でも・・・・・・すごく気持ちよかったですし・・・・・・お姉さんが初めての相手で、本当良かったです」
少年は恥ずかしげにはにかむ。ドキリと心臓が跳ねた気がして、カナエは困惑した。普段ならこの手の言葉は不快感こそあれど、真剣に受け止めることは無かった。だが、今のカナエにとっては彼の言葉と笑顔に嬉しさを感じてしまっている。
「・・・・・・そうかい。まぁ、お前がどう思おうが勝手だが」
ふいと顔を背け、照れ隠しのように言う。自分が何かおかしいことには気付いているが、どうすればいいのかは全く分からなかった。
「あっそうだ。お姉さん、教えてほしいことがあるんです」
「あん?なんだよ、言ってみな」
「その、名前、まだ教えてもらってなかったな、って」
そういえばそうだった。なし崩しで行為を始めてしまっていたので、自己紹介をしてしなかったことをカナエは思い出す。
「あー・・・・・・俺はカナエってんだ。まぁ、源氏名だけどな」
「カナエさん・・・・・・!ありがとうございます!あっえっと、僕の名前は柏田律っていいます!よろしくお願いします!」
「いや、よろしくお願いされてもな。なんだよそのテンション」
ツッコみを入れながらも、こういうどうでもいい会話を楽しんでいる自分に驚く。
(本当に、なんかおかしくなっちまってるな、俺)
「あー、りつ、だったか?浮つくのは構わねえが、お前みたいな奴はあまりここに来ない方がいいぜ」
カナエの言葉に、律は驚いた表情の後、泣きそうになる。
「ご、ごめんなさい、やっぱり迷惑でしたか・・・・・・?」
「ちげえよ、こっちは歩合制だからな、客が来るのは大歓迎だ。だけど」
ぐいっと顔を近付ける。涙で潤み始めた律の瞳には、幼い顔立ちに似合わない粗暴な雰囲気の少女が映っていた。
「あんまのめりこむなよ。お前、随分お人よしみたいだからな。そういう奴は食い物にされて酷い目に遭うって相場が決まってるんだ」
自分に言い聞かせるように話すカナエ。
「で、でも・・・・・・カナエさんはいい人みたいですし」
「はっ!俺をそう見てるんじゃますます駄目だ!いいか、こんな所には通わずに真っ当に生きな、律。まともに生きていけるんならそれに越したこたぁないんだからよ」
律の瞳に映る少女は、酷く辛そうな表情をしている。それを振り払うように、カナエは律から離れた。
「で、でもっ」
ピピピピピッ!
律が何か言おうとしたところで、時間を告げるベルが鳴る。扉がノックされ、スタッフが入ってきた。
「あ・・・・・・」
何かを言いそびれた律を見送りながら、背中に声を掛ける。
「さっきの俺の言葉、忘れるんじゃねえぞ。あばよ、律」
「か、カナエさん・・・・・・」
後ろ髪を引かれながらも、スタッフに促されて退室していく律。カナエ自身も待合室に戻ろうと部屋を出て、何度も通った廊下をトボトボと歩く。
(なんで、あんなことを言ったんだろうな、俺は)
あの少年、律は随分とお人よしで、文字通り食い物に出来そうだった。むしろ、あぁいう奴を食い荒らして粋がっていたのがかつての自分だったはずだ。
(固定客になりそうだったのによ・・・・・・それに、あいつとのセックスは、なんか他とは違うって感じがしたし・・・・・・)
自分で自分が分からない。カナエは首を振り、変な思考を振り払おうとする。
(ふん、どうせ今日限りの仲だ、考えたって仕方ねえ。あれだけ釘を刺したんだ、もう来ないだろうしな)
努めてさっきまでのことを忘れようとするカナエ。何故か泣きそうな表情になっていることを、本人が気付くことはなかった。
「ってなんで来てんだよ!?しかもこんなすぐに!!」
一週間後。指名されて部屋に行ったカナエが目にしたのは、あれだけ来ないよう言い含めておいたはずの柏田律の姿だった。
「ご、ごめんなさい・・・・・・!でも、もう一度カナエさんに会いたくて」
子犬のように見つめられると、カナエも強くは言えなくなってしまった。とりあえず、ベッドに座っている律の横に腰を下ろす。
「あのなぁ・・・・・・ここは結構な額するはずだぜ?学生の懐でどうこうなるもんじゃないだろ」
「えっと・・・・・・実は、そうでもないというか・・・・・・」
「あん?親が金持ちだったりすんのか?」
言いよどむ律に、カナエは乱暴に問いかける。しかし、律の答えは予想だにしないものだった。
「あの、その・・・・・・僕、俳優みたいなことをしてるんです」
「俳優、だぁ?」
「はい。元々は子役だったんですけど、成長してもドラマとかに使ってもらえて。だから、そんなにお金には困ってないんです」
恥ずかしそうに言う律。それを聞いたカナエはあまりいい気分ではなかった。
「はー、成程ねぇ。ガキの頃からしっかり稼いでたわけだ。立派なもんじゃねえか」
俺と違って、と言いかけて飲み込む。正直、妬ましいという気持ちが脳内でぐるぐると回っているのをカナエは感じていた。
(才能があったのか運がよかったのか知らねえが、ようは勝ち組ってわけか。反吐が出るぜ)
そんな様子を知ってか知らずか、律はどこか悲しそうにしながら言う。
「そんなんじゃないですよ。元々は、親に無理やりやらされてたものですし。TVに映ったりするのも、本当は嫌だったんです」
「・・・・・・」
「それで、まぁ。彼女にもフラれて、精神的に落ち込んでる時に悪友からこの店を紹介してもらって。カナエさんに、会えたんです」
澄んだ瞳で律が見つめてくる。どこか居心地の悪さを感じながら、カナエはあえて嫌な言葉遣いで言い放った。
「で、風俗にハマっちまったってか?人生棒に振る奴の生き方だぜ、そいつぁ」
「わ、分かってます。分かっては、いるんですけど・・・・・・」
目を逸らし、再び言いよどむ律。その煮え切らない態度にカナエが苛立たしげに続ける。
「分かってるならなんでまた来たんだよ。俺が言ったことを忘れちまったのか、あぁ?」
「お、覚えてますよ!でも・・・・・・」
「でも?なんだよ、言ってみろ」
攻撃的になってることを自覚しながらも、責めるように言い募るカナエ。律は何かを決意したように、また目を合わせてきた。
「・・・・・・好きに、なってしまいました」
「・・・・・・は?」
真剣な表情で、カナエを見つめながら律は言う。カナエは、言われている意味がよく分からなかった。
「好きになっちゃったんです、カナエさんのことを」
再度言われる。呆けたような表情のまま、カナエは固まってしまった。
(こいつが?俺を?好き・・・・・・って、はぁ!?)
「おいおいおい、冗談キツいぜ。俺が元男ってことは知ってんだろうが」
回らない頭で思考しながら、なんとかそれだけ返す。しかし律は、
「知ってますし、冗談じゃないです!僕は、カナエさんに、惚れたんですよ!一目惚れ・・・・・・とはちょっと違うけど、貴女のことが好きになったんです!」
溢れる熱意と共に言い切られ、怯むカナエ。しかし、なんとか言い返そうとする。
「いや、そいつは・・・・・・初体験だったからおかしくなってるんだよ、お前は」
「知りませんよそんなこと!貴女が元男だってことも、先日は仕事で僕をああいうことをしたってことも分かってるんです!分かってるけど、好きになっちゃったんだからしょうがないじゃないですか!」
ずいと上半身を乗り出して、頬を赤くしながら叫ぶ律。カナエは、落雷に打たれたような衝撃で言い返すことは出来なかった。
「・・・・・・ごめんなさい、熱くなっちゃって。付き合ってくださいとか言うつもりは無いんです。カナエさんにも事情があるでしょうし。ただ、どうしても思いを伝えたくて・・・・・・」
我に返ったのか、罪悪感を表情に浮かべながら律が言ってくる。カナエは、先ほどの告白の影響で固まったままだ。
「・・・・・・あれ?カナエさん?あの、大丈夫ですか?」
「っあぁ、いや、なんでもねぇ」
律の心配そうな声に、なんとか再起動するカナエ。だが、言われたことが衝撃的過ぎて、どう咀嚼すればいいか分からない。
「あー・・・・・・えーっと、つまり、アレだ。お前は大馬鹿ってことだな」
どうにか言葉をひねり出す。律は、その言葉に苦笑しながら答えた。
「そう、ですね。馬鹿かもしれません。・・・・・・えっと。お願いなんですけど、またこうやって指名してもいいですか?えっちなこととかじゃなくて、カナエさんと話がしたいんです」
「そいつは、まぁ、構わねえけどよ・・・・・・」
カナエは混乱していた。自分のことが好きだとのたまい、挙句セックスをする気が無いという律は、彼女の理解の範疇を超えていたのだ。
それから、律はなんでもないような世間話を始めた。最近食べた美味しいものだったり、読んでいる漫画のことだったり。本当に、どうということはない話題ばかりだ。
(なんなんだよ、クソッ・・・・・・)
律の話に気のない返事をしながら、カナエは考えようとする。何故、彼が自分のことを好いているのかを。しかし、全てが予想を超えている状況で、何かが分かるはずも無かった。
「カナエさん?どうしましたか?」
考え込んでいるカナエに、律が話を中断して心配そうに声を掛ける。セックスをしていた時は泣き顔ばかりだったが、普段の彼はころころと表情がよく変わるようだ。カナエは、そんな律を見ていると、細かいことはどうでもいいような気分になっていった。
「ん・・・・・・いや、やっぱり分からねえわ。お前がマゾのロリコン趣味とかでもない限り、俺を好きになる理由は無いと思うんだが」
「それは・・・・・・自分でも説明が付かないんです。恋って、そういうものなんでしょうか?」
「俺に聞かれても知らねえよ。・・・・・・ただ、まぁ」
ぐに、と律の頬をつまむ。突然のことに、律は目を丸くしてカナエを見つめてくる、
「ひゃ、ひゃなえふぁん?」
「酔狂な馬鹿が俺に恋してるってことは覚えといてやるよ。お前が俺を指名し続けるんならな」
そうカナエが言うと、律はぱぁっと顔を綻ばせた。頬を引っ張られている為、変な表情になりながらも嬉しそうに返事をする。
「あ、ありがとうございまふ!」
「何喜んでんだ、金づるにするって言われてるんだぞ」
もう片方の頬もつまみ、両側からぐにぐにと引っ張る。男子高校生にしては柔らかいその頬は、思っていたよりも伸び縮みするようだ。
「ふぁふぇふぇふぁふぁい」
「ははっ、何言ってるか分かんねえよ」
じゃれるように、律の頬で遊ぶカナエ。先ほどまでの葛藤が不思議と氷解しているのを感じながら、そのまま律とじゃれ合うのだった。
結局、時間までカナエと律はそのまま性行為をせずに過ごした。大した話もしていないのに体感時間はあっという間に過ぎてしまい、終わりを告げるベルが鳴る。
「もう時間か・・・・・・それじゃあ、また来ます、カナエさん」
「おう、また金をドブに捨てに来な」
名残惜しそうな顔をしながらも、スタッフに促され部屋を後にする律。カナエは、彼が部屋から出るまでじっと見つめていた。彼女自身も、名残惜しさを感じているかのように。
(俺は、あいつを気に入ってんのか?)
一人になった部屋で、カナエは自問自答をする。
(いや、あぁいうお人よしの馬鹿はむしろ大嫌いだったはずだ。なのに、なんでだろうな。あいつと過ごす時間は、案外悪くねえ)
部屋に立てかけてある姿見に目をやる。難しそうな表情をした少女が、そこには映っていた。
(だけど、あいつだって結局の所、俺が女になってなければ好きになることも無かっただろう。精々、俺が男に戻る為に貢がせればいいんだ)
相反する考えが渦巻き、自身が動揺していることに困惑するカナエ。首を振って立ち上がると、待合室に戻る為に部屋を出た。
(あぁクソ、俺にどうしろってんだよ!俺はホモじゃねえし、そもそもあいつとは仕事の関係だろ!だってのに、なんで・・・・・・)
廊下を歩いている中、不意に立ち止まる。カナエは苦々しげな表情で呟いた。
「なんで、こんなに苦しいんだよ・・・・・・!」
悲痛な呻きに、返事をする者は誰もいない。カナエは、壁にもたれながら答えの無い苦悩を続けるのだった。