アンダーカバー(大人悪魔ほむら×大人さやかシリーズ) 作:さんかく@
特異点
「私達は特異点なのよ」
長い黒髪の美しい女性が、天井を見上げながら囁く。「床を共にしている」蒼い髪の女性がその囁きに反応して、黒髪の女性の方へ顔を向けた。二人ともシーツ以外何も纏わずにベッドで寄り添い合っていた。行為を終え、繋がっていた身体を離したばかりだ。
「…特異点?」
「ええ、そうよ…」
蒼い髪の女性の問いに黒髪の女性は天井を見上げたまま答える。美しい横顔。頬にはほんの少しだけ髪がかかっていて。白磁の様に白い肌が紅潮し、ほんの少しだけ汗ばんでいるのは、先ほどまでの激しい行為の名残だ。目を合わせない様にしているのは照れ隠しなのだろうか、と蒼い髪の女性はふと思う。身体を横向きにし、蒼い髪の女性は自然に黒髪の女性の身体に触れた。びくり、と一瞬身体を強張らせた後、黒髪の女性は身体を蒼い髪の女性とは反対側に向けた。
「ごめん、怒ってるの?…さっきは…」
――激しすぎたのだろうか?蒼い髪の女性は思わず、黒髪の女性の下腹部に触れて、ゆっくりと撫でた。しっとりと柔らかい彼女の下腹部、先ほどまで蒼い髪の女性はこの中にいた。
「いいえ…違うわ」
吐息を漏らしながら、黒髪の女性は囁いた。蒼い髪の女性からは、黒髪の女性の顔は見えない。見えるのは、その形のいい後頭部と華奢な肩だけで。ただ彼女の言う通り怒っている訳ではないらしい、その証拠に黒髪の女性は身体を蒼い髪の女性のもたれさせてきて。シーツの下では手が重ねられ、指を絡めてきている。もう片方の手で蒼い髪の女性が、黒髪の女性を背中から抱きしめるとほっ、とため息をついてその華奢な肩に頭を預けた。くすくすとようやく黒髪の女性が笑う。
「なあに?甘えているの?」
「そういうところよ」
「……まったく」
世話の焼ける犬ね、と呟くと、黒髪の女性は、蒼い髪の女性の方へ顔だけ向けた。恐ろしいほど美しい容貌にほんの少しだけ笑みが浮かんでいて。白い細い腕を器用に後ろに伸ばすと、蒼い髪の女性の頭に触れた。
「私、犬じゃないわ」
頭を撫でられながらも不本意なのか、蒼い髪の女性が口を尖らせる。その様は本人は否定してもやはり犬の様で、黒髪の女性は今度は歯を見せて笑った。
「その割には尻尾も振ってるわよ?」
「へ?…な、ないわよ、そんなの!」
お間抜けな反応にとうとう黒髪の女性は吹き出した。そうして目を細め、背後で苦み走った表情を浮かべている蒼い髪の女性を見つめると、小さく、とても小さく囁いた。
「……もう一回…する?」
「…うん」
シーツの中で蒼い髪の女性が、体勢はそのままにもぞもぞと動き始める。黒髪の女性は「人ならざる」力で背後の女性の身体を改変していた。くすくすと笑いながら目を瞑り、黒髪の女性は繋がる瞬間を待つ。黒髪の女性の腰に背後の女性の熱を帯びた屹立したモノが当たった。背後から荒い息が顔にかかると、黒髪の女性は目を瞑ったまま呟いた。
「…やっぱり犬ね」
蒼い髪の女性は返事をせずに、シーツの中で身体を沈めると、身体を黒髪の背中に押し付け、そのままゆっくりと背伸びをするように体をあげた。シーツの中で黒髪の女性がびくん、と跳ねた。あ…と小さく黒髪の女性の口から声が漏れる。それは普段の艶のある声というよりも、少女に近い声で。
そうしてシーツの中で今夜2回目の結合が始まる。黒髪の女性は唇を半開きにし、また声をあげた。目は固く閉じたまま。もう数え切れないほど背後の女性と人ならざる力でまぐわい続けてきているというのに、どうしても相方が入り口へ入って来た瞬間は声が出てしまう。肢体をぷるぷると震わせながら、…はああ…と黒髪の女性は息を長く吐いた。背後の女性の屹立したモノが、ゆっくり…ゆっくりと黒髪の女性の身体の奥へと進んでくるのだ。
「あ、…い……」
ぞくぞく、と黒髪の女性の体内から快感の震えが発生する。体内を押し広げられ、深く、更に深く侵入してくるモノが体内を突き破るのではないか、という不安と、それに相反する「期待」。その期待が脳で快楽へと変換されているのだ、と黒髪の女性は朦朧としはじめた意識で考えた。もう少しで、背後の女性の名前を叫びそうになるのを必死で堪えながら。まだ侵行は続いている――。
――大きく改変しすぎた
黒髪の女性は喘ぎ声を必死で抑えながら、思った。そうなのだ、交わり始めた頃はこんなに蒼い髪の女性の「一部分」を大きく改良していなかったはずなのに。次第、次第にそこは肥大化している。白い細い腕を蒼い髪の女性の頭から離し、黒髪の女性は手前のシーツを固く握る。シーツに刻まれる無数の皺。
初めての時は「気持いい」なんて思っていなかったはずなのに、今では――。
――これは私の願望?
そう思ったと同時に、黒髪の女性の体内で鈍い衝撃が起きる。奥へと到達されたのだ。黒髪の女性はとうとうひと際大きな声をあげて鳴いた。びくん、と反り返る彼女の肢体を背後の蒼い髪の女性が強く抱きしめる。同時に二人の女性は互いの名前を呼び合った。それから激しい律動が始まり、ベッドで軋む音と淫猥な音が規則的に鳴り響く。そうして二人の快楽に溺れた声も。出し入れが始まり数分ほどした頃だろうか、乱れながらも黒髪の女性が蒼い髪の女性に囁いた。
「ねえ…もっと…ゆっくり…」
「そうしたいけど…腰が…止まらないの…よ…」
「情けない…犬ね…」
ニイ、と黒髪の女性は口元を歪め笑みを浮かべた。汗ばんで紅潮した横顔に浮かんだその笑みはまるで鮫のようで。激しく中で出し入れされているはずなのに、どうやら耐性がついてきたようだ。対照的に背後の蒼い髪の女性は今にも蕩けそうな泣きそうな顔で。その顔を見て愉快になったのだろう、黒髪の女性はくっ、くっ、と喉を鳴らして笑うと、シーツから手を離し、背後の蒼い髪を撫で始めた。
「貴方のモノ…とっても熱いわよ?」
「…馬鹿…あんたこそ…」
そう、黒髪の女性の体内はものすごく温かく、そして柔らかい。まるで全てを吸い取られる様で先ほどから、蒼い髪の女性の腰にはぞくぞくと震えが始まっている。
「イッちゃいそう…」
蒼い髪の女性が黒髪の女性の身体をひと際強く抱き、腰を更に震わせた。射精の直前の状態だ。だが、それを黒髪の女性が制止する。蒼い髪の女性の腰に手を当てる。
「だめよ…まだイッちゃダメ」
「ひど…」
お預けをされた犬の様に、蒼い髪の女性は懇願の表情を振り向いた黒髪の女性に向ける。黒髪の女性は涼やかに微笑んで囁いた。
「このまま、お話をしましょう?さやか」