※この作品はR-18です。

アンダーカバー(大人悪魔ほむら×大人さやかシリーズ)   作:さんかく@

21 / 43
ターン

常に何か思いつめている様な陰鬱なまなざし、固く閉ざした口元。モニターに映し出された暁美ほむらの横顔は恐ろしいほど美しかった。

 

――ほむら

 

さやかの表情が驚きから一変一気に険しくなる。映像は白黒で解像度も低いが明らかに彼女は魔獣と戦っていた。

 

「特殊部隊のヘッドセットのカメラに映し出された映像だ。さすがの私でもこんなものを見るのは初めてだがな」

 

モニターの横に立っているスーツ姿の男――星が腕を組みながら得意げに語りだす。高揚した表情からして本心であるのは間違いないだろう。寝台に拘束された美樹さやかを眺めながら彼は言葉を続ける。

 

「一体何が起きているのか正直私にも見当はつかない。しかし、この女性は君の連れだろう?君が遠出した時――確か郊外のペンションだったかそこで一緒にいたのを私は見ている。一瞬だったが――」

 

星がモニターを振り返り、そしてまたさやかに視線を戻す。

 

「あまりにも美しかったので印象に残ってるよ、一体何者だ?」

 

横たわりながらさやかは目だけ動かし星からモニターのほむらへと視線を移した。険しい表情のまま口を閉ざし何も語らない。

 

「まあいい、身元を割り出すのは後にしよう、ではタネ明かしの続きだが我々はまさにこれを求めていた。映像に映っている人類の叡智を超えた存在、そして力を」

 

モニターに繰り返し再生されるほむらと魔獣との戦い。

 

「極左、新宗教、カルト…我々公安は数多くの団体に潜入しあらゆるものを見聞してきた結果ある結論に至った、説明のつかない物事の裏にはなんらかの…いわゆる超常現象と呼ばれるものが関与しているとね」

 

星が面白そうに目を細め語りだした。

 

「…8年前、我々はあるカルト集団を追跡していた。少女をさらい『儀式』を行うことで力を得るといった教えを崇拝する悪魔教…彼らは多額の金で暴力団員を買収しあの場所を使い儀式に必要な少女を買っていた」

 

ギリ、とさやかが口を噛みしめる。

 

「当初はよくある富裕層の醜い欲望を叶えるための悪徳商法だと思われていた…だがその時あの事件が起きた。儀式が行われている風俗店ビルでの殺傷事件…暴力団員ら7人が死亡2人の男が瀕死の状態で発見された」

 

後ろ手で寝台の周り歩きだす星。さやかは視線で星を追う。

 

「細かく切り刻まれた肉片、そしてあり得ない方向へ体を捻じ曲げられた遺体…どう考えても人間には不可能なことだ。当時の初動の鑑識もだいぶ困惑していた。そして我々はこれは彼らのいう所の『悪魔』による仕業だと結論を出した」

 

さやかの表情が固まった。星の『悪魔』という言葉に反応したのだが生憎彼は気づいていない。

 

「いわゆる超常現象だ、儀式によってなんらかの存在が現れあの惨状が起きたと我々は認識している、そこで我々の求めている力の必要性は高まった『悪魔狩り』の為にもね」

「……正気ですか」

「ああ、もちろん。だからこそ我々は初動で食らいついたのだ。マスコミを操作し騒ぎを抑え、捜査の管轄も公安に切り替えさせた。穏便に調査するためにね」

「穏便に調査?あんなひどい儀式が行われていたことを隠蔽させて何が…」

 

星の手がさやかの襟元を掴みぐい、と引っ張った。顔をしかめるさやか。

 

「…口を慎みたまえまだ私のターンだ」

「わかりました」

「よかろう…そして我々は彼らを数年をかけて潜入、追跡したが結局彼らの尻尾はつかめず、末端を残し痕跡を消していた。残るは事件の起きた場所と当時の事件の関係者…だがあの場所からは何も発見されなかった『悪魔』の痕跡もね、そして君に白羽の矢が立った」

 

星がニイ、と口元を歪めた。そうしてさやかから手を離す。

 

「君は当時警察の取り調べで重傷を負った男二人は自分がやったと証言した。もし…その通りだとすると君は地下であの男達に遭遇し殺意を持って数分間で瀕死の重傷を負わせたことになる。素手でな」

 

星が己の手のひらを拳で叩いた。

 

「当時未成年だった君の証言は信ぴょう性の無いものとして取り上げられなかった。だが我々は証言は真実だと判断した。君はあの時あの場所でなんらかのあり得ない物を見、力を得たのではないかとね」

「悪魔が憑りついたとでもいうんですか、この私に」

「悪魔…ないしはまた別のものかもしれん、または君自身が元々なんらかの力を持っていた可能性も考えられる、それはわからなかった。だが君はこの事件…人知を超えた力が及んでいる事件を解決する鍵だとも我々は考えた。呼び水になるともね」

「それで私を公安に?」

「そう…そこで君を引き入れ、駒にすることにしたのだよ。あの場所で再び君を渦中に投げ込めば君が呼び水となって再びあり得ない力が引き寄せられるとね」

「…駒であり餌というところですか」

「さすがに冷静だな、ああその通りだ。君は供物なんだ美樹さやか。そして期待以上だった、あんなものに遭遇できたからな」

 

モニターに視線を移す星。

 

「『悪魔』とそれを倒す人知を超えた存在…我々は同時に二つを観測することができた。そして君もだ、どれだけの力を内蔵しているのか想像がつかない。そのために特殊部隊を差し向けたのだよ君を穏便にここに連れてくるために」

「ここはどこです?」

「公安が秘密裏に保有しているビルだ」

「私をどうする気です?」

「質問が多いな、まあいい私のターンはここまでにしよう、他にも質問はあるかね」

「公安は超常現象…あり得ない力を欲している…でもそれはそもそも何故です?」

「その質問には後で答えよう、他には?」

「…あなた達はずっと私をマークしていたんですか」

「君が警察官になってからだがね。通常のルートと違って半年足らずで刑事になってくれたものだから返って助かったよ。周囲に怪しまれずに済んだ…さあ、では残りの質問に答えていこう」

 

星が腕を組みながらさやかに顔を近づけた。

 

「君をどうするか…という質問だが、君は今こうして自分が拘束されている理由はわかるかね」

「…捕獲と同じことでしょう?あなたの言う「あり得ない力」で私が暴れださないように」

「それも正解だ、だがそれだけではない、私は確認したいんだ」

「確認?」

 

星の視線がさやかの顔から上半身へと移る。血でどす黒く変色したスーツと赤黒い染みのついたシャツ。

 

「致命傷レベルで被弾しているはずの君が何故まだ生きているかをね」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。