アンダーカバー(大人悪魔ほむら×大人さやかシリーズ) 作:さんかく@
「貴方にしては上手い言い方ね」
「ほんと?」
さやかは驚いた様子で黒髪の美女を見つめた。彼女が自分を褒めてくれるというのはなかなかない。
「ほんとよ、半分の嘘と半分の真実…魔法少女の真実を全て語ることは得策ではないわ」
優雅な仕草でほむらがティーカップに紅茶を注ぐ、アールグレイの香りが漂ってさやかは思わず目を細めた。
「で、その人事課長はなんて言ってたの?」
「信じるって言ってくれたわ」
「そう…」
良かったわね、とは言わないのがほむららしい所だ。さやかはそっと笑うと言葉を続けた。
「少しでも悲しみが軽くなってくれるといいけど」
「…貴方のそんな所」
「え?」
見上げると、どこか気難しい顔の悪魔がいて。一瞬惚けた様にその顔を見つめるも、さやかはすぐに真顔に戻る。
「そんな所が何?」
カチャリ、と返事の代わりにティーカップが置かれた。
「冷めないうちに飲みなさい」
「あ、うん」
ティーカップを手に取るさやかを眺めながらほむらは対面の席に座った。そうして白い丸いテーブルに肘をつき頬杖をつく。艶のある長い黒髪がさらりと揺れて。
「で、これからどうするの?」
さやかが一口ティーを飲んだ所ですかさずほむらがそう尋ねた。真顔のままさやかはカップを置く。そうして美しい黒髪の女性を見つめた。
「あんたには悪いけど…力を貸して欲しいの」
「構わないわ、貴方の考えていることくらい想像はつくから…」
はあ、と軽く息を吐き、そうしてニイ、とほむらは鮫の様に笑った。こうして笑うと更に美しさが増すから不思議だとさやかは秘かに思った。
「叶わないわね、あんたには」
さやかは苦笑する。そんな蒼い髪の女性を見てほむらはぽつりと呟いた。
「貴方のそんな顔、悪くないわね」
「え」
面白い様にさやかが固まって、ほむらは破顔する。
「貴方って全然私に慣れてくれないのね」
「そんなことないわ」
「あるわ」
そう言って、ほむらは身を乗りだす、それから数秒間、唇を重ねたまま動かない二人。
「何度こうしても…貴方顔が赤いもの」
唇を離し、だがそれでも触れるような位置をキープしながらほむらは扇情的に囁いた。
「そりゃあ…だって…」
こうなるともう元かばん持ちは徹底的に弱い、顔はだんだんと赤みが差すし、空色の瞳は悪魔を捉えつつもゆらゆらと揺れ、その表情は面白いほど情けないものに変わる。ほむらはこらえきれず、笑いだした。
「ほんと情けない人ね、でもそういう所が」
「そういう所が?」
「なんでもないわ、それよりやることはたくさんあるんでしょう?」
「そ、そうね…」
慌てて立ち上がるさやか。そうして一呼吸置くと、落ち着いたのかいつもの穏やかな顔に戻る。
「あんたの言う通り、たくさんあるわ、まず今夜は――」