次に目を覚ましたとき一夏は、仄暗い空間にセカンド幼馴染と一緒に立ってた。
涙目になった鈴のリクエストで下着を……縞々のパンツを穿かせる。
ブラジャーのホックも留めさせられたし、中途半端に脱がされてるセーラー服の乱れも直した。
女のコを着替えさせるなんてことは、もちろん 織斑 一夏 にとって初めての経験だ。
難しい。
そもそもこうやって他人を着替えさせたことなんてない。
しかも見ないでとなると尚更だ。
酷く緊張する。
どうしても意識してしまう。
意識しないなんてことできるわけもない。
もう中学からの友人でもある 凰 鈴音 を、ただのセカンド幼馴染として捉えることは不可能だった。
胸の奥底がざわめく。
「一夏になら……」
パンツを穿かせ易いように鈴はスカートの裾を、絶対領域を冒すギリギリまでたくし上げる。
散々見られてもそこは女のコらしく、恥じらいを失うことはないみたいだ。
でも一夏さえ望むなのならまた見られてしまっても、見せてしまっても構わないというギリギリまでたくし上げる。
むしろ見て欲しそうだ。
オレじゃないオレに……そんなにアソコを見られたいのかよ。
怒りがある。
当然だ。
けれどそれは鈴に対してだけのモノではない。
鈴には自分を犯してた相手が、一夏としか映らなかったみたいだが、一夏には鈴を犯してた相手の姿が、いかにもさえないオッサンという、知りたくもない真実を思い知らされていた。
肉食のブタが幼馴染を貪る衝撃の光景を、部屋の襖越しに眺めてることしかできなかった。
あまりに救いがなさ過ぎて、受け止めてやる勇気がなさ過ぎて、とてもじゃないが真実を鈴に教えることはできない。
見ず知らずのオッサン。
オッサンにとって一夏はあの時点ですでに、一生忘れることのない存在だったが、一夏にとってはあの時点まで記憶の片隅にもない存在だった。
脳内ギガの無駄遣いとばかりに、零落白夜した卑劣なチカンのことなど、それはもうキレイさっぱりである。
あの時点まで。
価値なしと消去されてたはずのデータは即座に復元されて、偽りの愛に気づかない幼馴染への陵辱劇にいっそう苦しさをもたらした。
もしかしてオレのせい……オレのせいで鈴はこんなヤツに……。
正義というような、大仰な行いをしたつもりはない。
目の前で困ってる人を助けるという、人として当たり前のことをしただけだった。
だがそうしたことで逆恨みされ、鈴があんな羽目にあったのだとしたら……。
まだ少年らしい潔癖さで、一夏が悔恨の念に囚われるのも仕方ない。
自己嫌悪が転じてナニも知らないセカンド幼馴染への、理不尽な怒りになってしまう悪循環もやむを得ないだろう。
白式の私怨運用も辞さない。
襖を開けることができたなら実行してしまいそうな殺意を、オッサンに抱くのはそれこそ許されてしかるべき当然の権利だ。
幼馴染の純真と純情を捻じ曲げて、純潔を穢すなんて許せるわけがない。
それも自分だと偽ってである。
しかし、
――クソッ。
一夏の胸の内を苛んでる感情は、けっしてそれだけで説明できるモノではない。
ただのセカンド幼馴染でしかなかったはずのクラスメイトを、まだ曖昧模糊としてるが初めて特別な女のコとして意識したのはこのときだ。
これまでの一夏は姉への親愛の情や、友愛というモノは所有してたが、恋愛感情にはまるで無頓着の存在だった。
男性で唯一無二のIS適正を得たための代償かもしれない。
思春期であれば普通に芽生えるはずの感情が、ぽっかり欠落してるサイコパスを疑われるような少年。
それこそが一夏だった。
顔立ちはさわやかなイケメン。
高すぎず低すぎずの身長で、スタイルもシュッとしてる。
性格だってところどころズレてるものの社交的だ。
オンリーワンの男性IS操縦者であり、その周囲には自分に好意を持つ女のコしかいない。
この年頃であれば誰でもちょっとは夢見るだろう馬鹿げた妄想、ハーレムを実現させるための条件はクリアしてる。
しかもPTAとかBPOが煩そうな少年誌でなく青年誌レベルの、いや、成年誌レベルの酒池肉林だってドリームでもファンタジーでもない。
エロ漫画のような18禁のシチュエーションを、現実にするトライは一夏のスペックなら、けっして無駄でもなければ無謀でもないだろう。
が。
それでも一夏には異性に対する意識というか、気持ちが希薄で同性の友人との扱いの差異はほとんどなかった。
精神の成長が異常なほど未熟。
時折りでなく結構頻繁に訪れるラッキースケベに、ドキッとしたりはするが、その感情がそれ以上の感情に発展したことはない。
左右の脚の終着点までパンツを上げる。
股の付け根に到達したときうっかり、……うっかり力が込められて、パンツを引き絞るみたいに持ち上げてしまった。
まるでふんどしのように細くなった布地が、過剰に敏感になってる裂け目に喰い込む。
グチュチュッ。
「んッ!?」
セカンド幼馴染の漏らした呻き声と粘着音に、顔を伏せた一夏はスカートの奥から漂う匂いを吸い込みながら、――激しく勃起してた。
どころか現実の世界ではISスーツの股間はじんわり、けれど隠しようもないシミを作って濡れてる。
これが 織斑 一夏 の初めての夢精であり精通だった。
END.