COMIC CITY 大阪 123 鋼の錬金術師 新刊 作:木桜 春雨
医者に診せようと彼女は思った、汽車に乗って歩いて、ここに来るまでは、それほどでもなかったのだ、だが、街へ着いてからは男の様子がおかしいと感じていた。
口数は少なくなり、話しかけても上の空で、具合が悪いのかと聞いても大丈夫だという。
見知らぬ土地で、どこに病院があるのかわかららない。
街の案内所などあれば教えてくれるのかもしれない、だが、先立つもの、金は残り少ない。
自分が直接、病院、医者に看てほしいと頼んでも外国人だから怪訝な顔をされるかもしれない。
日本でもテレビやネットでニュースになっていたのだ。
持っていたものを売って通貨を手に入れる事ができたのはのが幸いだ、それに言葉が通じるのもほっとした。
だが、ここは外国、知らない土地だ、自分の連れは金髪で青めのオヤジだ、アジア、日本人の自分が、アメリカ、ヨーロッパに来てしまった、そんな感じだ。
悪徳医者なら足下をみられてぼったくられてしまうこともあるだろう、正直、迷っていた。
「先生、ありがとうございます」
思わず足を止めて、声のした方を見ると母親らしき女性と子供が男性に頭を下げている。
目が思わず釘付けになった。
離れているから会話は聞く事はできない、だが、もしかしてと思って急いで女に近づき尋ねた。
お医者さんですよという女の言葉に、男の後を追いかけた。
だが、具合の悪い人がいると、いきなり街中で知らない人間が話しかけて大丈夫だろうか。
子供が病気になって親身になって看てくれる、優しい先生ですよ、女性の言葉を思い出し、こうなったら当たって砕けろだ、声をかけようと思った。
ところが、広い通りに出たところで、大柄な男が男性に近づいて一緒に歩き出したのだ。
知り合いらしく話しながら歩いている様子を見ると、声をかけるタイミングがなかなか見つからない。
どうしよう、だが、諦める訳にはいかない。
男の様子は目に見えて分かる怪我をしたとかではない、外傷がないことが、目に見えないから余計、不安なのだ。
そんなことを考えていると、不意に目の前が真っ暗になった。
驚いて顔を上げると目の前に男が立っていた。
「おい、後をつけていたな」
サングラスをかけた白い髪の男は声も低い、まるで、ヤクザか、マフィアのようだと思ってしまった。
何者、明らかに自分を不審者と思っているような言動だ。
違うんですと言いかけたが、信じてくれるだろうか、男は見た目からして怖そうな、いや、迫力に思わず怯んでしまう。
そのとき、大男の背後から小柄な男性が姿を見せた瞬間、思わず、大きな声で叫んでしまった。
声をかけられた大男は振り返り相手を見ると軽く頷いた。
イシュヴァール復興の為に仕事をするようになり、セントラルの軍支部にも顔を出すことが多くなった。
元は武曽、そして無口で無愛想という性格なのか友人は決して多くはない、それは見た目もあるのかもしれない。
白い髪に赤い目を隠す為に普段から黒いサングラスをかけているものだから初対面の人間は引いてしまうのも無理はない。
往診の帰りだよ、その言葉にスカーは何か言いかけたが、言葉を飲みこんだ。
マルコーという医者は困っている人間をみすてることができない、お人好しといってもいい。
街中でも怪我をしている、病気の人間の治療を見ると治療するのだ。
だが、それは誰でもというわけではない。
「時間外労働だが、内緒にしてくれると助かるよ」
イシュヴァールの難民がセントラルに来ているんだ、マルコーの言葉にスカーは、そうかと小さく頷いた。
二人で歩いているとしばらくしてスカーは気配を感じた、後をつけている者がいる。
「マルコー」
小声でつけられていると呟くと、驚いたようにマルコーの足が止まりそうになるのを、歩けと促す。
「お願いします」
自分に向かって、突然、頭を下げた女性にマルコーは驚いた。
初対面の女性は自分に話しかけようとするが、スカーの方をちらりと見ると困惑したような表情を浮かべた。
「あー、スカー君、ちょっと」
視線で合図するとスカーは離れていく。
「私に何か用かい」
「は、はい、看てほしい人がいて、お医者さんでしょう」
マルコーは一瞬、迷った。
「今すぐかい、今、手持ちの薬も最低限で足りないかもしれない、それに今日は、この後、都合が」
「いえ、明日でも病院を教えてくれたら連れて行きます」
再び頭を下げてくる相手にイシュヴァールの人かなとマルコーは尋ねた、髪や目は黒い、だが、肌の色、話し方のアクセントが違うと感じたのだ。
「スカー君、ニホンという国を知っているかな」
何の用だったんだとスカーはマルコーに尋ねようとした、だが、それよりも先に聞かれてしまった。
国の名前なのかと聞くと、そうらしいとマルコーは頷いた。
「看てほしいと言われてね、名前も変わっていたな」
「イシュヴァール人じゃないのか」
「まあ、世界は広いからね」
「相手が困っているようだと思っていたら、きりがないぞ」
「分かっているよ、だがね」
そういってマルコーは握っていたものをスカーに見せた、三枚の金貨だ。
「必ず行くからと言われてね、外国人なら本当に」
困っているのかもしれない、口にしないマルコーの言葉を察したのか、スカーは何も言わなかった。
イベントのモチベーションを上げる為、少しずつUpしています。