COMIC CITY 大阪 123 鋼の錬金術師 新刊 作:木桜 春雨
もうすぐ自分は生まれ変わる、完全な体を手に入れて完璧な存在になることができる、ホムンクルスを何人食らった。
一人、二人、最後の一人は、もうすぐ自分と同化するだろう、そうなれば、最後はフラスコのこびとだけだ。
簡単じゃないかと思っていた、扉を開けるのは簡単ではなかった。
だが、ようやく成功して、あの瞬間、流れ込んでくる熱量と力は、今まで感じた事のないものだった。
世界が違うというだけで生き物というのは、そんなことを思ってしまった。
いや、震えたのかもしれない。
セントラルに来ると気配を感じられた、近い、もうすぐだ、こびとを取り込めば、それで終わり、いや始まりだ。
しかし、気になる、何故、わからなかったのだろう。
何かが、いや、そんな筈はない、人間は自分の存在に気づいていない、だから大丈夫だ、ほら、もうすぐやってくる。
この建物に向かって、セントラルの中央へ。
「医者だと、何を」
男は首を振った。
「大丈夫、すぐに看てもらえるから」
嫌だと言えば簡単に断れるのに何故か、それができない、仕方なく男は告白した、自分は人間ではない、ホムンクルスだと。
不思議そうな顔をしたが、人造人間と聞かれて、そうだと答えた。
「造られたっていっても人間て呼び名がつくんだから、人でしょう、細かい事を気にしてるのね」
自分の言葉が通じていない、理解されていないと思いながら、男は歩き出した。
昨日の女性は病人を連れて来るだろうか、時計を見ながらマルコーは窓の外を見た。
軍の敷地内なので入るのを躊躇っているのかもしれない、外国人ならあり得ると思い、診療室から出たマルコーは建物から出てみることにした。
部屋を、建物の外に出ようとしたとき、マルコーと呼び止められた、振り返るとスカーが近づいてきたが、その表情が険しい。
何かあったのかと思ってしまった。
どうして自分はここにいるのか、何者なのか、最初の頃は疑問ばかりでわからなかった。
飢えを満たす為に周りにあるものを全て食べた、知識、生き物、石や砂、とにかく何でもいいから手当たり次第に口の中に、体の中に取り込んだ。
自分は生き物なのだと実感したが、次第に物足りなくなってきた。
知恵だけでなく知識もついてきた、人間、ホムンクルス、錬金術、合成獣、キメラ、色々な事を知っていく中、気づいた、自分の姿が変わって
いく中、気づいた。
このために自分は生きていたのだと。
やることはホムンクルスと、それを生み出した者を、自分の中に取り込むことだ、そうすれば今よりも強くなれると。
だから探し、見つけ出した、すぐにでもと思ったが、負ける訳にはいかないと力を蓄えることにした。
ところが、地下に居るはずだった、こびとは突然、いなくなった、探そうとしたが、気配を感じられない。
死んだのかと思ったが、もし、そうなら分かる筈だと思った。
正直、苛ついた、だが、数日前から気配を感じられるようになった。
そして今、自分はセントラルにいる、こびとの気配も感じる。
そしてここにやってくる筈だ、感じられるのだ。
気配が、足音がする、ところが、一人ではない。
誰だ、何者だ、もし邪魔になるようなら排除だ。
こびとのそばにいたホムンクルスは全て取り込んだ、最後の一人は完全には、だが、時間の問題だ。
同化すればもっと強くなる、今、以上に。
こびとが自分を見て、驚いた顔をする、何かを感じとったのかもしれない。
このとき、違和感を覚えた、妙な気配、空気を。
もしかして、いや、あり得る、女に声をかけた。
「邪魔をしたのは、おまえ、か」
返事の代わりに女は不思議そうな顔をしながらも無視して通り過ぎようとする。
その瞬間、声が聞こえた、悲鳴だ、それも一人、二人ではない、大勢の、そして、何かが壊れ、割れるような音だ。
それは以前にも聞いたことがある、こうなる前の自分、力を得る前のことだ。
閉じた筈だ、なのに。
門の側で女が倒れているのを見てマルコーーとスカーは驚き慌てて近寄ろうとした。
「おまえ、そう、貴様、邪魔したのは、おまえか、女あああっ」
怒りの声があがり、男は手を伸ばした、まるでナイフが刺さるように女の胸に手が差し込まれた。
「邪魔を、するからだ」
死んだ、女はあっけなくだ、心臓に穴が空いたからだ、いい気味だ、
「おまえは、もしかして、私の一部、いや、欠片か」
「一部、だと いいや、私が、本物だ、私こそが」
最後の言葉を言わなかったのは、そのときではなかったからだ、目の前のこびとができなかっことを自分は、やってのけた時、どんな顔をするだろう。
それを考えたら嬉しくてたまらない、なのに。
こびとは、どこか哀しそうな目で見た後、地面に倒れている女に視線を落とした、心臓にぽっかりと穴が開いている、即死だ、自分に関わったばかりに、こんな目に遭ったのだ。
生き返らせることができたのかもしれない、以前なら、だが、今は、その力もない。
食って取り込んでやろうと思ったとき、声がした。
自分を呼ぶ男の声に、まさかと思いながらもこびとは呼びかけた。
呻き声に混じり、答える男の声に呼びかけた。
「息子よ、そこから、出てこい」
あいつの中だ、自分の作り出した子供たちを取り込んだのか、こびとの目、視線の先、男の腹が少しずつ膨らみ、そこから浮き出るように肉が盛り上がり、人の顔が浮かび上がってきた。
「キング・ブラッドレイ、来い、父の元へ」
「駄目だ、これは私の一部となる、あとすこし、少しで」
駄目だ、止めなければ、そう思ったとき、倒れていた女が起き上がった。
マルコーとスカーは信じられない光景を前に困惑した、地面には女が倒れている、明らかに即死だと思われた女性だ。
ところが、死体は起き上がった、ぽっかりと心臓に穴が空いたままだ。
歩き出す女の姿に驚いたのは、その場にいた全員だ、だが。
「死人が、何故」
自分に向かって歩いてくる女の死体を来るなといわんばかりに男は手を伸ばして、顔を殴りつけた。
だが、倒れた女は再び立ち上がる、そして男に近づくと腹に向かって両手を伸ばした。
男は気配と視線を感じた。
血まみれでボロボロになった服、体中は傷だらけの大人だけではない、子供たちの姿を目に前にスカーとマルコーは驚いた。
だが、何かをするわけではない、ただ、見ているだけなのだ。
「な、なんだ、おまえら、まさか」
女の手が、自分の腹、男の顔に伸びてきた。
信じられない力だ、引きはにそうとしているのだと分かった男は一歩、二歩、後ずさりしようとした、だが足が動かない。
まるで、死人たちの視線に釘付けにされたような感じだ。
自分の顔を掴む手の感触にブラッドレイは目を開けて女を凝視すると、無理だと言おうとした。
女の顔は無表情だったが唇がわずかに開いた、何か言っているようだが、聞こえない 、だが、そんな自分を見て笑った気がした。
少し前まで泥水の中に似ているような感じだった、汚濁と腐敗した悪臭は嫌悪するもので、抜け出したいと思っているのに、それができなかっ
たのだ。
だが、女の両手が自分の背中に回されていることにブラッドレイは安心した、抜け出すことができたのだと思ったとき、安堵感が押し寄せた。
この後はシリアス、少しラブラブ路線でいきたい。