※この作品はR-18です。

obsessive(PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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―――社会科学部 社会心理学科

1年クラス―――

 

―――1限終了後

 

 

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「あんた達、夫婦漫才でもしてるつもり?」

 

 

窓際最後部席の舞白、その隣の席に座る縢。

そして目の前で両手を両腰に当て、酷薄な表情を露わに、2人を見下ろす霜月の姿。

 

 

始業前の数十秒前に滑り込みで教室に到着した2人。しかし、すでに担当教員は教卓の前で待機しており、あまりにも"いい加減"で遅刻常習犯な2人にさすがにご立腹だった。

よって、この1時間。2人は教室の外に立たされていたという……

 

「それとも、大昔のドタバタコメディアニメの主人公とヒロインでも演じてるつもりなの?」

「朝からぎゃーぎゃーうるせえな!別にお前に迷惑かけてねえだろ?」

 

偉そうに机に肩肘を立てて霜月に歯向かう縢。その態度に"はぁ!?"と声を上げる霜月。

ぎゃーぎゃーと騒ぎ立て、仕舞いには舞白に指さし、責任転換する縢。

 

 

「そもそも舞白のせいだからな!?あんな危険なルートを普通近道に選ぶか?お前は猿か!」

 

舞白の言う近道。それはとんでもないルートだった。

壁をよじ登って、飛んで―――パルクール経験者でも乗り越えるのが困難な障害物だらけ。

 

「でも結果的に間に合ったでしょ?外に出されたけど。」

「お前が俺を踏み台にしたせいで腰をやっちまったんだよ!…あれさえ無ければ、もっと普通にスマートに教室に入れたんだ……絶対クラスの女子全員に幻滅された……」

 

ガックリと肩を落とし、今にでも口から魂が出てきそうな様子。その様子を女子2人組は可笑しそうに笑い、2人同時に縢の肩をポンポンと宥めるように叩く。

 

 

「そんな今更カッコつけたって無駄無駄。」

「そーそー、美佳ちゃんの言う通り。転入したその日から秀星の本性なんてすーぐ分かったんだから。」

「……てかお前ら、俺転入してまだ1ヶ月足らずなんだけど……距離近すぎねえ?」

 

縢の発言にバッ!!と勢いよく視線を向ける2人。そして同時に同じことを思えば、全く同じ言葉を発する。

 

 

 

「「近寄ってきたのはそっちでしょーが!」」

 

まるで自分たちから興味を持って進んで近寄ってきた、と言わんばかりの相手の発言にぎゃーぎゃーと文句を言う女子2人組。

縢は両耳を手で押え、机に突っ伏す仕草を見せる。

 

しかし、縢はどことなく嬉しそうな様子だった。

 

 

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縢が転入してきたのは先月の事。

あの日のことは舞白も霜月も鮮明に覚えていた。

 

 

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6月中旬―――

 

 

 

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「……縢秀星です。」

 

クラス中の学生が見守る中、教卓前で無愛想に名乗る少年。髪の毛は鮮やかなオレンジ色。ツンツンと跳ねた髪の毛をヘアピンで止め"Theチャラ男"という印象。

まだ制服も出来ていないらしく、前の学校のシャツに緩いネクタイ、グレンチェック柄のパンツ。鞄だけは新しく、その姿からかなり急遽の転入という事が伺える。そもそもこの学校に転入生が来ること自体珍しく、学内でもかなり有名な話だった。

 

 

 

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「なーなー、おーーい。こーがみさーん」

「…………今授業中なんだけど…」

「大丈夫だっての、1番後ろの席だし小声だからあのハゲには聞こえねーよ」

 

ハゲ……それは今教鞭に立っている物理の教師だろう。

 

そんな転入生は初日から隣の舞白にちょっかいを掛けまくっていた(尚、理由は不明)

あまりにも近い距離感、そして馴れ馴れしさから半ば"鬱陶しい"なんて思っていたが、ここまで来れば逆に興味が湧くこともしばしば……

 

 

「ねー、彼氏とかいんの?」

「…………」

「もしかしてクールキャラ?俺クールな子好きなんだわー。好きな食べ物は?好きな―――」

「………………ッ……」

 

全く引かない彼に苛立ちを見せる舞白。すると手にしていたタブレットに舞白は何かを打ち込むと隣の縢に見せつける。

 

 

"この後の小テスト、全問正解したら話してあげる"

 

きっと彼は馬鹿だ。(見た目判断、そして最低)

そしてこれを見れば必死になって少しは大人しくなるだろう。

今回の授業内容、彼は全く聞いている様子はないし、そもそもタブレット端末どころか、教材すら一切触れていない様子……

 

 

なんて考えていたものの―――

 

 

 

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「いえ〜〜い、やり〜〜ぃ!!!」

 

 

授業終盤で行われた小テスト。しかもこの物理の教師は意地が悪い、テスト内容はめちゃくちゃ難しいことで有名、しかも引っ掛け問題も多い。

 

それにもかかわらず、初日で隣の彼は全問正解、満点を叩き出した。クラス中の生徒たちも"嘘でしょ?"という反応を見せると、彼の見方が少し変わった様子だった。

 

……縢秀星……恐らくは秀才。

人は見かけによらないとはこういう事だろう。

 

 

 

 

「ほーら。約束は約束だからな?俺の友達第1号って事で。」

 

ニヤニヤと笑みを浮かべ、満足気な様子。しかし、何故か分からないが"そこまで不快じゃない"

分け隔てなく、誰とでも対等に関わろうとする彼に、微かに惹かれる部分があった。

 

 

「―――せっかくのお隣さん同士。仲良くしよーね?マシロちゃん。」

 

 

 

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―――公安局ビル

刑事課一係オフィス―――

 

 

 

 

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「((縢秀星。生年月日、2090年12月3日……))」

 

自身のデスクのモニターに映し出される"今朝の男子生徒のID情報"。オレンジ色の髪色、ヤンチャそうな風貌……

 

舞白の口から一切この人物について聞かされたことは無かった。仕事が忙しい時は、家に帰ってゆっくり会話を交わすことができないこともしばしば。それでも家に帰れない日があったとしても、"今日はどうだった?"と必ず聞くようにしていたが……

 

俺に話すと都合が悪いことでもあるのだろうか。

 

 

「((家族構成は父母、そして妹が1人。6月に日東学院高等教育課程社会科学部から新麻生に転入……。最終考査のポイントは…全国5位か。備考欄には大幅な色相悪化……))」

 

公安局員だからこそ閲覧出来る一般市民のID情報。まさにそれは"職務乱用"と言っても過言では無い。

ズラっと並べられた情報に一通り目をやれば、現れた同僚に気づくと咄嗟にID情報が映し出されていた画面を直ぐに切り替える―――

 

 

「おい狡噛。昨日の報告書は?」

「とっくに終わらせて提出済だ。」

「……舞白の事で仕事が疎かになってなくて安心したよ。」

 

相変わらずガミガミと口うるさい同僚。隣のデスクに腰を下ろすのは親友でもある"宜野座伸元"。朝一に発生した事件を片付け、やっと戻ってきたらしい。

 

「佐々山達は?」

「佐々山と六合塚は昼休憩。征陸は休みだ。……こっちはお前が遅れて出勤するとかで大惨事だったんだぞ。」

「悪かったな。」

「原因は"舞白"だろう?お前も手を焼きすぎだ、……ある程度、目を離すことも必要―――」

 

「俺には俺のやり方がある。あいつには俺しかいない。分かってるだろう?」

 

"アーカイブ室に行ってくる"と狡噛は呟くと、オフィスから姿を消す。

 

そして何となく不機嫌そうな相手を、親友の宜野座は敏感に察知していた。

 

「…………全く―――」

 

"手を焼きすぎだ"

 

妹の舞白ももう16。あと数年すればシビュラの職能適性によって相応な職を割り当てられ、自分で生きていく力を十分に身につけることになる、

 

確かに、今はまだ兄の狡噛の力がなければ彼女は路頭に迷う。生活面に関しては兄を頼るしかない。…なんせ、あの狡噛が親族との縁を全て無理やり切ったようなものだ。

……理由は俺も聞いてるが……"やり過ぎ"なんだ。

 

過剰なまで干渉する兄。それに依存する妹。傍から見れば妹思いの良き兄、それを慕う可愛い妹。

 

 

「((特に最近は……何だかな……))」

 

 

宜野座の猜疑深い表情。

疑いたくないが…それを素直に、穏やかに見守ることが出来なくなっている自分がいた。

 

 

 

 

「……今度、アイツが当直の日にでも会いに行ってみるか。」

 

 

 

 

 

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