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―――午後12時過ぎ
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全学科、全学年が一斉に集まる広い食堂。
各々が持ち込んだ弁当や食堂の学食を片手に、仲間たちと憩いの時間を過ごす。
その傍ら、いつもの3人組が食堂の定位置に何も言わずとも自然に集まり、空腹を満たしていた。
「やった〜!今日は好物のオムライス。」
「相変わらず栄養バランスが考えられた弁当ね。」
「………ふーーん」
舞白はパカッと弁当箱の蓋を開けると色とりどりの食材が詰められた中身に目を輝かせていた。主食のオムライス、そして野菜やタンパク源などなど……。
あまりにも出来すぎた弁当に霜月と縢はじっと見つめていた。
「舞白のお兄さんって本当になんでも出来るよね?しかも公安局のキャリア組だし、忙しいはずなのによく手の込んだもの作れるわー……」
「まあ…毎日じゃないし。私が適当だから気にかけてくれてるんだよ。」
"いただきまーす♪"と元気よく声を上げ合掌すれば、可愛らしい花柄がプリントされたスプーンを手に取り、口に次々と頬張る。そんな姿を隣に座る縢は焼きそばパンをパクッと咥え、若干怪訝そうな表情で"じとーっ"と見つめていた。
「手の込んだ手作り弁当に、シワひとつない制服。寝坊した時はわざわざ送迎付きでしょ?羨ましいわ」
「でも基本口うるさいし、大変なこともあるんだよ?」
「でもいいじゃない?想ってもらってる証拠だし―――」
対面側に座る霜月はひたすらに狡噛兄妹の関係性を褒めちぎる。むしろ羨ましい〜だなんて口にする霜月に、一瞬だけ、ふと困惑した愛想笑いを浮かべた。
紙パックの野菜ジュースを啜り、じっと隣で舞白を見ていた縢はその瞬間を見逃さなかった。
「お前の兄貴って"過保護"すぎねぇ?……ていうか、あと少しでシビュラの職能適性もあるんだしよ?そろそろ兄貴から離れることも考えねーと自立できねえぞ?」
「………へへ……
そう、……だよね―――」
縢の言葉に愛想笑いを浮かべ続ける舞白。オムライスの欠片を乗せたスプーンをそっと置くと、傍らのミネラルウォーターに手を伸ばす。
舞白のその瞳の奥には"何かがある"と察した。
「へえー。アンタも意外と真面目なこと話せるのね?」
「オイ霜月。てめえ俺をバカにするのも大概にしろよ?」
「少なくとも、私と舞白に比べたらバカじゃない。嫌なら他の子達のところに行きなさいよ?」
「うるせーな!次の定期考査―――」
ガヤガヤと賑わう食堂内、ふたりの会話。
だんだんとその音が遠くなっていく感覚。
無意識に両手を太腿の上に乗せると、ギュッとスカートの裾を掴む。兄が丁寧にアイロンで伸ばしたプリーツスカートが皺で崩れていき、型がついた皺に視線を落とす舞白。
「…………」
強く握られた拳。
それを密かに横目で眺めていた縢の表情も、密かに曇っていく―――
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―――放課後
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「―――うん。うん、分かった。……心配しすぎだよ、大丈夫。うん……了解。お兄ちゃんも仕事頑張ってね?」
ホームルームが終わり、教室から次々と生徒が出ていく。サークル活動やバイト、友人同士で街へ繰り出す―――
そんな中、舞白は兄からの着信に応え終わると、そっとデバイスをスカートのポケットに戻す。
「縢くん。今日も渋谷のゲーセン行くでしょ?」
「えー!私も行く!今日暇だし!」
「その後はいつものカラオケね〜!あ!他の科の子達も―――」
教室の端で女子生徒に囲まれる縢の姿……これもいつもの光景。やっぱりどう考えても彼は不良だ。よく補導されてるって話も聞くし…
「電話終わった?」
「うん。」
前の席の霜月は椅子に座ったままくるっと振り向く。そしてどことなく元気がないように見える舞白に対して、心配そうな視線を向けていた。
「どうしたの?」
「…へ?」
「何か、"心ここに在らず"ってカンジ」
「何言ってんのよ美佳ちゃん。……ていうか美佳ちゃん、サークル遅れるんじゃない?」
パッと教室の壁掛け時計に目を向けると焦りの目を向ける舞白。霜月が所属している"ディベートサークル"の開始時刻が迫っていることに気づけば、早く行かないと!と急かす。
しかし、霜月は何故か余裕そうに小さくため息を漏らしていた。
「アンタの電話が終わるの待ってたの。」
そう口にすると、ようやく席から立ち上がる霜月。どうやら、元気がない舞白を心配しての行動だったらしい。帰る時くらい、お互い言葉を交わしたい、だなんて健気な考えを持っていた。
「じゃあね、舞白。……明日は寝坊しないこと。自分の足で学校に来なさいよ?」
ポンポンと肩を叩き、ヒラヒラと手を振るう霜月。
それだけを言い残せば、教室から立ち去っていく。
ぶっきらぼうで言葉下手な霜月。だけど本当の彼女はとても優しいことを舞白は知っていた。その優しさに自然と笑顔が溢れる。
「なー?舞白。お前もたまには一緒に行こーぜ?」
するとその瞬間、女子生徒に取り囲まれている縢が手を挙げると、舞白目掛けて声を張り上げる。
それと同時に一斉に向けられる取り巻き達の視線に、ギョッとした視線を向けると、首を横に振るう。
「あー……私はパス。"また今度"ね?」
「また今度って……お前1度も―――」
"おい!"と舞白の元へ向かおうと足を踏み出すも、女子生徒に腕を引かれる縢。
「―――やめときなって縢くん。」
「……狡噛さん、誘っても絶対来たことないし。」
「帰ってもずーっと勉強してるんじゃない?…ほら、お兄さんって公安局のキャリアでしょ?」
「"全国1位のポイント"の為だったら、青春も捨てる覚悟があるんだよ。」
ヒソヒソと耳打ちされる内容に、ムッとした納得いかないような顔をするも、そそくさと帰る支度をする舞白にそれ以上無理強いはできない。
そんな言葉を気にすることも無く、学生鞄を肩にかけニッコリと笑顔を向ける。そして上げられた右手を縢に大きく振るう。
「また明日ね、"秀星"!」
そして逃げるようにそそくさと姿を消す舞白。
"いつもと変わらない"
だが、かすかに感じる彼女からの微かな影―――
転入して彼女と過ごしていく度に増えていく"違和感"
「ね?……ほら、早くいこーよ」
「…………そーだな。」
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