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時計の針は深夜2時を指す
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真っ暗闇のリビング。
冷房さえ付けられていないその部屋はじっとりと不快な暑さに覆われ、泣き声の交じった喘ぎ声が響き渡る。
そして部屋は揉み合った形跡があり酷く荒れていた。ダイニングテーブルの下には割れたガラス製のカップが2つ。本棚に整えられていた数冊の本たちは床に散らばり、衝撃で表紙が破れているものも――
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「ぁ…………あぁ…………はあ……ッ……」
「う……うっ…………うぅ……」
冷たく硬い床にうつ伏せに倒れる舞白の姿。後ろ手に組まされた両手首はネクタイで強く締められており、その赤く腫れた跡を見るに長時間かなり強い力で巻かれているのが分かる。
「腰、下げるな。」
「……っ……もう…………やめ、よ………ッ――あ!…」
力なく沈んでいく腰を強引に持ち上げられれば更に強く打ち付けられる。奥深くを行き来する兄の"それ"に舞白は拒否することなど出来なかった。
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"近親相姦"
この状況を世間一般的な言語で言うならばこの言葉が当てはまる、
歪んだ関係性になったのは舞白が13歳、狡噛が19歳の時。
好きな人が出来たと、幼いながらに淡い恋心を口にしたあの時、それが全てを狂わせ引き金となった。
嫉妬と憤怒。
それは煙のようにジワジワと広がり、やがて自身を覆い込んでいた。
最初はイマイチよく分からなかった。
自分の兄が自分に行なった行為そのものを理解できなかった。"痛くて怖かった"。そんな感想しか思い浮かばない程に自分は無知で、あまり記憶はない。
両親がおらず、兄しか頼ることができない妹にとって"兄という存在がすべて"で絶対的存在。違和感はあったとしても、決して"嫌"と口にしたことは無かった。
ただ"この行為"は"イケナイモノ"
きっと、これはダメな事なんだとそれくらいしか考えられなくて、誰にも言うことは出来ない。
それからというもの、兄は時たま自分と行為を行うようになった。自分自身も拒んだことはなく受け入れてきた。
そこに恋心というものは勿論無く、愛情というものも感じられない。兄から感じるもの、それは――
支配したい
閉じ込めたい
自分だけのものにしたい
誰にも渡したくない
完全なる支配欲がそこにはあった。
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「……ぃや……だッ……もう、……ゃめ……」
「ああ?」
「おねがぃ……も……やめ――ッあ!あぁあ!」
涙と涎で顔はぐちゃぐちゃだった――
やめて、という言葉は兄を余計に興奮させる。
自分に許しを乞うようなその姿が……狡噛にとっての支配欲が満たされていく瞬間だったのだ。
「うっ…うっ……!ぁあっ!あぁぁあ!」
「体は正直に…俺を迎え入れてるようだが?」
「ちがっ……うっ……違う!!」
いつもより抵抗を見せる妹に対し、狡噛もさすがに機嫌悪く眉を引き寄せる。
すると強引に背後から舞白の上半身を持ち上げ、目の前の全身鏡にその姿を見せつけるような体勢をとると、舞白は更に表情を歪ませる。
「よく見てみろ」
「ッ……」
伸びる手に顎を捕まれ、更に背後から腰を強く打ち付けられる。
全身鏡に映る自分のその姿は見るに堪えない。実の兄に犯される光景に無意識に涙が溢れ出していた。
「実の兄に犯され、悦ぶその姿を誰が愛す?」
「……うっ……う……」
「お前だって、本当に嫌ならこの俺を強く拒絶すればいい話だろう?」
「あっ……ぁっ……あ!」
「俺から姿を消すなり、親戚の家に逃げ込むなり、もしくは憎いなら俺を殺せばいい。――でも、お前はその行動に走ることなく、ただただ俺を受け入れ続けてきた。」
"ズポッ"と抜かれるそれに圧迫感がなくなる腹部。舞白は必死に兄から逃れようと傍らのソファに腕を伸ばそうと必死に手首に巻かれたネクタイを解こうと強く両手を動かす。
しかし、ズキズキと痛む腹部に堪える事は出来ず呆気なく再び兄の手によって体の自由を奪われてしまう。
「俺は、お前を愛してるんだ。」
手首に巻かれていたネクタイが解かれていく。超時間後ろ手に組まされていた腕はすぐに言うことを聞かず、まるで麻痺したかのように動かない。
「……痛い…………お兄ちゃん……」
ゴロンと体を仰向けに転ばせ、見下ろす兄に視線を向ける。
「――愛してるんだ。」
頬に伸びる大きな手。
そっと撫でる温かい手は優しい兄のものだった。
「違うよ……ッ……やっぱり……私たちは間違ってる……」
「…………」
「これは……私たちがお互いに……誤った愛を求め合っていただけ。"度を越えた狂った愛情"……間違いだよ!」
頬を撫でる大きな手。
感覚が戻りきっていない左手を兄の手に添えると、懇願するように強く言葉を放つ。
「もうやめようよ!……私たちは……間違って――」
その手はゆっくりと舞白の首元へと降りていく。細くて華奢なその首に狡噛の手が掴みかかれば、容易に息の根を止めることが出来るだろう。
「――間違い、だと……?」
「……っ……」
暗闇でも分かる。狡噛の狂った瞳の色。
獣が獲物を見つけた時の鋭い視線。
大きな両手が首を掴むと力が加わっていく。徐々に締められていく細い首に、メリメリと狡噛の指がめり込むほどに強く締められる。
「……ッ……ぁ…………ぁ……」
そして再び、自分の蜜壺に兄のモノが入ってくると同時に、苦しみと快楽に堕ちていく。
意味がわからない無茶苦茶なその感覚は舞白の頭を掻き乱し、正常な判断さえ困難になる程に――例えるなら、それはまるで薬物に堕ちていくような、すべてが"ぶっ飛ぶ"ような――
「……ほら……嫌なら抵抗してみろ」
グググッと最奥を強く突かれる。
体格差のありすぎる相手に抵抗などできるはずも無い。
……いや、それは言い訳なのだろうか。
「お前は、…一生…俺の隣にいればいい……ッぁ……」
耳元で囁かれるその声に、言葉にだらりと体の力が抜けていく。
同時に理由が分からない涙が溢れて止まらない。
いつも優しく包み込んでくれる兄の手は、今自分の首を強く締めている。
「逝け……逝け!逝け逝け逝けイけイけイけイけ!――」
「――――ッ……」
口の端から滴る涎、無意識に仰け反る体、
音が遠くなる感覚、視界が白く染っていく。
――――ッ――!!!!
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微かに聴こえる"海の音"
――もしかして、私は死んでしまったのか?
いや、違う。
この音はいつも聴いている音だ。窓の外から聴こえる波の音、さわさわと涼しい潮の交じった朝の風に揺れるカーテンが擦れる音。
身体中が重く、痛い。
窓から飛び込む冷たい風が余計にそれを浮き立たせる。
「――ろ……しろ」
「……………う…」
「舞白――」
優しくて、暖かい大きな手。
狡噛の、兄のその手は舞白の頭を優しく撫でる。
「……お兄ちゃん」
ソファに横たわる体。
舞白は狡噛の膝の上に頭を乗せ、体には柔らかなタオルケットが掛けられていた。
まだ薄暗い部屋。ハッキリと兄の顔は見えない。
だがかすかに感じる。
酷く悲しそうで、哀れみを感じる表情。
自分の行った行動を憐れだと、罪悪感に駆られるその顔は"いつも通り"だった。
「――悪かった……
……すまない……、すまない……ッ」
"らしくない"兄の姿。
恐らくこの姿を知る者は自分しか居ないだろう。
冷静沈着で、頭が良くて、とっつきにくいようで実はすごく優しい人。
特定の誰かに執着なんて"有り得ない"
だけど、きっとこれが本当の姿なんだ。
そうさせてしまったのは、妹である自分の存在なのだろうか。
「……いいよ。大丈夫だから。」
ゆっくりと上半身を起こす。ふと壁掛け時計に目をやると時刻は朝の5時過ぎを指していた。
どうやら、いつの間にか気を失っていたらしい。しかもかなりの長時間。
じんじんと痛む首、そして下半身。手首を見ると真っ赤に痕がついていた。恐らく首も同じく真っ赤になっているだろう。
「……………」
気を失っている間に着させてくれたであろう、ぶかっとしたTシャツから兄の匂いが漂う。
甘いその匂いが鼻をかすめる――
「……うっ……うえ……ゲホッ、ゲホッ――」
「――ッ!舞白!」
その瞬間、腹から胃液が逆流する感覚に襲われ、口から無色透明の胃液を吐き出す。
ボタボタと床に吐き出される胃液を、じっとただ見据える舞白と焦りを見せる狡噛。
――今までこんなことは無かった。
行為があったとしても、ここまで精神を蝕まれるようなことは無かった。
「すまない……、許してくれ。
――愛してるんだ。……舞白……」
兄に抱かれる体。
力なくその腕に包まれる自分の体は限界だった。
「……許してくれ」
耳元で囁かれるその言葉。
気味が悪いほどに優しいその声に、力なく涙が溢れてしまう。
ダメだ、ダメだダメだ……
「舞白、……俺を許せ……お前しか、……俺にはお前しかいないんだ」
許すな。
……許したらダメだ。
また繰り返しだ――
優しく撫でられる頭。
穏やかな声色に、放たれる弱々しい言葉。
狡い、……兄は狡い
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"お前はそれを"愛情"と錯覚してるだけだ"
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縢の台詞が脳裏を過ぎる。
互いに依存しすぎているこの関係はどう考えてもおかしいんだ。
分かってる
そんなの分かってる
だけど、……だけどお兄ちゃんには
――私しかいない
私にも、お兄ちゃんしかいないんだ――
「――――許すよ。」
ぐったりと、全身を兄に委ねる。
兄の肩に頭をだらりと乗せ、ゆっくりと目を閉じる。
妹の弱ったその言葉に、兄は満足気だった。
口元に弧を描き、利を掴つかむときのような狡猾な相を現わして来た。
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