深夜の森の中。
未だに王国の追っ手が迫る中でも、とにかく安全に休める場所を探すように、俺達は森の中を歩いていた。
この時代での長距離での旅に慣れているベルベット達と、現代から異世界転移をしてきた俺とシオンでは体力の差があるので、かなり疲労が溜まっている。
「それにしても、王国から隠れる事ができる場所って、あるのかな?」
「王国と言っても、未だに支配されていない場所はあるわ。
何よりも、王国の支配に対して、不満がある場所もあるから、そういう所で隠れば良いわ」
そうベルベットは言うけど……。
まだ、俺達が目指している場所は未だに分からない。
だけど、今はとにかく歩くしかないだろう。
そして、歩き続けて数時間後──。
ついに、夜が明けた頃だった。
目の前には大きな湖が見えてきた。
しかも、その湖の周囲には木々はなく、草原が広がっている。
ここならば、王国の追っ手が来ても、すぐに対応する事ができるので、俺達はそこで休憩をすることにした。
俺は地面に腰を落として座り込むと、大きく息を吐いて疲れを取る様にする。
そんな時だ。
「キドっ」
「うわっと」
すると、俺はレンに倒される。
それと共に、俺の頬に何かが通り過ぎた。
後ろを見ると、そこには木には小さな穴が開いていた。
おそらく、それは攻撃だろ。
「追っ手が来たか」
同時にベルベットは瞬時に腕を魔物の腕へと変えると同時に攻撃を行ったと思われる人物に向けて、仕掛ける。
隠れていたと思われる木は破壊され、その後ろから攻撃してきた人物が見えた。
金髪を「U」に似た髪飾りで纏めてアップヘアにしており、肩を大きく露出させたモノクロの衣装と羽衣のような赤い帯が特徴。
その人物の両手には銃があった。
異世界では初めて見る武器であり、その銃を真っ直ぐとベルベットへと向けていた。
その人物の二丁拳銃は目の前にいるベルベットに狙いを定めており、いつでも発射できる態勢に入っていた。
だが、ベルベットはそれを見ても動じることなく冷静に対応する。
放たれた弾丸はベルベットに向かっていくが、彼女はそれを軽くかわすと一気に接近する。
相手はベルベットの行動に対して反応が遅れてしまい、ベルベットの攻撃を許してしまう。
まず最初に腹を殴られると、次に顔面を蹴られ最後に首を掴まれるとそのまま地面へ叩きつけられた。
だが、未だにベルベットに抵抗するように、その銃を真っ直ぐと向けて引き金を引く。
しかし、それは無意味だった。
「悪いけど、あんたじゃ私には勝てないわよ」
「ッ……!」
ベルベットの握力によって銃身が潰され、銃弾は地面に落下すると粉々になって消えていく。
それでも未だに諦める様子はなかった。
「そう、だったら」
そのままベルベットはそのまま拳を振り下ろそうとする。
「ちょっベルベット!
さすがに殺すのは駄目だ!」
そう、俺は思わず止める。
それに対して、ベルベットは少し舌打ちを、そして女性は俺を見て驚いたように見つめる。
「なんで、止めるの?」
「いや、その殺すのはさすがに……」
ベルベットの目つきが怖いです。
「でもこいつ、私を殺そうとしてきたんだよ? なら殺されても文句言えないよね?」
「それはまぁそうなんだけども……」
確かに、いきなり襲ってきた相手を殺すのは間違っていないかもしれないけれど。
「貴方達は王国の追っ手じゃないの」
「いや、なんというか、むしろ正反対で追われている方です」
女性は俺に対して不思議そうに呟く。
「……そうだったの。
けど、なんで王国に追われているの?
まさか、犯罪者に?」
「いや、結構理不尽な理由で。
いきなりここに転移されて、役立たずと言われましてね」
「……そう、それはごめんなさい。
私はリグレット。
理由は、追っ手に追われているのはまぁ復讐が理由かしらね」
それ以上はリグレットさんは語らなかった。
きっと話したくないんだろう。
それにしても、この人もまた何か抱えてそうだな……。
「ところで、どうしてこんな所に?」
「王国の奴がここに来ていないか偵察に来たんだけど。
そうね、だったら、アジトに来る?」
「アジトに?」
そうリグレットさんがこちらに促す。
「本当ですか、助かりますよ」
「ちょっと、キド、あいつを信用するの?」
そう言いながら、リグレットさんの方を見つめる。
「どちらにしても、このまま野宿するよりも良いと思うよ。
何よりもあの人はなんか信用できる気がするから」
そう、俺が言うと呆れた様子でベルベットも溜息をつく。
「分かったわよ。
だけど油断しない様に気を付けてよね」
そうして俺達はアジトへと向かう事になった。