「それで、あんたはなんであそこで延々とモンスターを出し続けるような目に合っていたの」
イオの能力を安定させてから数日後、ベルベットはこれまで我慢していた質問を行うように問いかける。
あれからイオの体調が回復するまで、洞窟を拠点で休んでいた。
「えっ、イオの能力がそういうのに向いていたとかじゃなくて?」
「数日いただけでも、こいつの性格の良さは私でも分かるわ。
何よりもこいつの能力をわざわざ暴走させる意味がまるで分からないわ。
むしろ首輪でもなんでもさせて、言う事を聞かせる方が良いに決まっているわ」
「あっ」
ベルベットの言葉を聞くと共に俺は確かにと納得する。
イオの能力は今は安定しているが、暴走した原因はそもそも王国の奴らが暴走させる何かを食べさせたのが原因だ。
だからこそ、別に能力が安定していない訳ではない。
「実はその、気になった事があって、調べていたら、それが王国の人達には都合が悪かったみたいなの」
「調べていた事?」
俺はその事に首を傾げる。
「キド君は、最初の転移者が現れたのはどれぐらい前か知っている?」
「えっ、最初の転移者?」
そう言えば、話題に出ていたけど、一体どれぐらいなのか、俺は詳しく知らない。
「推測程度だけど、500年前程。
その時代に来たの」
「えっ500年も!!」
その一言に俺は思わず驚きを隠せなかった。
「その転移者から多くの技術を得た王国なんだけど、その中には現代の知識も勿論あったんだよ」
「へぇ、現代の知識もか。
転移者って、結構現代人が多いんだなぁ」
「そう、だからこそ情報は十分にあったんだよ。
けど、この500年、何も進歩していないんだよ」
「えっ?」
進歩していない?
どういう事なのか、俺は首を傾げる。
「転移者が持ち込んだのは現代にあるスマホなどの日常に使う物が多くあったの。
さらには、私が調べた限りでも、テレビの中にしかないようなレーザーとかを簡単に放つ道具まであったの。
だけど、どういう訳か、この世界の文明は一切進んでいないの」
「えっと、それは戦争していたから?」
「キド君、悲しいけど、人間は戦争で文明を発達させたの。
そして、この異世界ではその戦争では空想のような魔法で戦っているから、本来だったらその文明は大きく発達しているはずなの」
「そう言えば」
そこまで発達しているんだったら、あの子がいた村でゴブリンが襲われても対抗できる程の物があるはずだ。
リグレットさんも銃を使っていた事を考えたら、科学は発展しているはずなのに。
「王国がそれを許さなかった。
それだけでしょ」
「えっ、なんで」
「そんなの、それで反乱しようとか、考える奴を止める為でしょ。
最初の転移者ががどこにでもいる庶民だとして、王族でも関係ない態度をしていれば、それを危険視し、発展させないようにするでしょ」
「あっそっか」
ベルベットの言葉を聞いて、俺は改めて納得した。
「私達の世界でも、転移者がいた可能性もあるし、結構無関係とは言えないかもしれないからね」
「えっと、待ってくれ!
なんで、俺達の世界にも転移者が?!
訳が分からないぞ」
「私も、貴方達の世界で転移者がいるのは、驚きしかないけど」
「いや、これも推測だよ。
ただ、もしかしたらアトランティスや現代でも不可能とされたオーパーツ。
あれらが転移者経由で作られた物だと考える事ができると思うんだ」
「イオって、結構そういうの詳しいんだ」
「いや、私はそういうのはまだ。
だけど、もしかしたらクラスメイトで詳しい子がいるかもしれないよ!
協力的だと良いけど」
「あぁ、確かに」
俺はこういうオカルト系統はあまり得意ではないから。
「けど、とりあえずは出てきたら。
悪いけど、こういう隠れている相手での不意打ちは通用しないから」
「・・・そうですか」
ベルベットがそう言うと、現れたのは少女だった。
腰まで伸びている金髪にベルベットの格好と似ていた黒いドレス。
「それで、気配の消し方から考えても暗殺目的だけど、やるの?」
「それが依頼ですから。
そこにいる裏切り者を始末するようにと」
その言葉と共に少女の腰まで伸びた髪はそのまま鋭い刃となって、こちらに向かって行く。
対して、ベルベットはその攻撃に対して、魔物の手を瞬時に出し、受け流す。
「キドが裏切り者って、話にもならないわね」
それと共に、懐へと突っ込む。
少女もまた、その髪を束ね、巨大な拳へと変えて、受け止める。
「なぜですか?
王国に所属しながら、魔物を逃がす。
そして、多くの損害を与えたと聞きますが」
「その魔物ってのが、私だよ!
この異形の手を嫌った奴らが、勝手に化け物扱いで無実の罪でねぇ!!」
その言葉と共に、少女を吹き飛ばす。
「キドにしたって、そうよ。
王国の奴らが勝手に呼び出して、役立たずだから牢屋に閉じ込めた。
そして、私と共に脱走しただけ。
最初から仲間になったつもりも、部下になったつもりもないわよ」
「・・・ふむ、では次の質問です」
同時に少女はそのままイオに向けて言う。
「昨今の魔物騒動。
その犯人を匿うと聞きましたが」
「確かに実行犯はいる。
けど、そいつも王国の奴らが暴走させたからだ!」
「互いに本当かどうか、判断はできません。
私としても、証拠がない以上は「何を迷っているんんですか」んっ?」
同時に聞こえたのは、胡散臭い雰囲気をした魔術師だった。
「証拠ならば、この私の映像魔術で見せたはずです。
この映像での行為が全ての事実。
奴は凶悪な魔物や犯罪者、さらには敵国を囲い、王国を滅ぼそうとする!
そこにいる魔物もまた王国を滅ぼす為に動く悪人!
ならば、倒さなければなりません!!」
そう、演技とも言える大声を出す。
「・・・ふむ」
目の前にいる少女は、そのまま魔術師と俺を交互に見る。
依頼者の言葉を信じるか、俺達の言葉を信じるか。
その判断だろう。
はっきり言えば、ここで俺ができる事なんてない。
ならば、説得できる手はこれぐらいしかないか。
俺はそのまま真っ直ぐと歩く。
それには周りが疑問に思っているようだが、俺は真っ直ぐと暗殺者である彼女の前に行くとそのまま座る。
「何のつもりですか?」
「いや、話をする為。
俺は俺自身の身に起きた事しか話せない。
俺が本当に思って、どう行動したのか」
「だからと言って、ここまで近づいた以上、罠だと考えるはず」
「いやぁ、俺って、戦う手段って、ないんだよね。
そいつが俺の戦っている光景を見せると思うけど、俺が戦えたのはレンのおかげ。
レンがいなければ、俺の能力は魔力提供だけだから」
「魔力提供?
ゴブリンなどが持つあれの」
そう、暗殺者である彼女は、冷たい目で見る。
「はい、その通りです。
なんだか恥ずかしくなるので、そこまでにしてください」
改めて、恥ずかしくなったので、俺は俯いてしまう。
「まぁ、そういう事。
だから、俺が持つのは、こうして自分の命しか代価はない。
それぐらいしか、俺自身ができる証明はない」
「馬鹿なんですか」
「言われ慣れているよ」
俺はそう、笑みを浮かべて返事するしかない。
「・・・なるほど、確かに馬鹿みたいですね。
悪事を働く事ができない程に」
それと共に少女はそのまま魔術師の方に目を向ける。
「さて、あなたには聞きたい事ができましたが」
そうしていると、奴は既に姿を消していた。
いや、違う。
洞窟の入り口に既に逃げていた。
それと共に、洞窟に向けて、巨大な炎の爆発が襲い掛かろうとしていた。
「あいつっ」
「なるほど、一緒に始末するつもりでしたか」
それに対して、彼女は舌打ちをする。
だが、どうすれば。
「今だったら」
そう、イオが言った一言と共に、俺達は一瞬、浮遊感を感じる。
同時に俺達は別の場所にいた。
「これって」
「なっ、なぜ、貴様らが」
そこには、先程までの魔術師がいた。
疑問に思って、俺は後ろを見てみると、そこには青い巨大な竜がいた。
「えっと、それは」
「その青竜かな。
キド君との行為の後で、その呼び出せるようになって、もしかしてと」
「はぁ」
ゴブリンを無尽蔵に召喚できるのから一変。
まさか、ドラゴンを呼び出せるとは。
「さて、やる事は分かっているわね」
「えぇ、勿論」
同時にベルベットと少女はそのまま狙いを魔術師に向けていた。
それは既に死刑宣告と同様だった。
その間に起きた出来事に関しては、俺もイオもただ呆然と見ている事しかできなかった。