荒れた山道を通っていた。
ここから武国へと行くのは、かなり難しい。
本来ならば、歩きで行くのは困難であり、馬車などを使用したい所だ。
しかし、俺達は逃亡犯。
命を狙っている王国が、どこで監視をしているのか分からない以上、簡単に馬の手配などはできない。
その為、こうした山道でも徒歩で進むしかないのだ。
まぁ、食料も十分にあるし、問題はないのだが、そろそろ野宿の準備をした方が良いだろう。
そう思いながら進んでいると、前方より人の気配を感じる。
どうやら盗賊のようだ。
「おい! そこの女を置いていけ!」
声を上げると同時に武器を構えて威嚇してくる。
数は十人程度か。
その最中に対して。
「まったく、こういうのは本当に厄介なんだから」
そう言いながら、ベルベットは左手に剣を取り出す。
「キド、あんたは下がってなさい」
「あぁ」
俺自身は、普通の高校生と変わりなく、こういう戦闘に向いているとは言えない。
ここは素直に従う事にしよう。
「へっ……女2人に男一人の旅とは良いご身分じゃねぇか。
それに女に守られているとはねぇ」
下卑た笑みを浮かべる盗賊共に向かってベルベットが駆け出す。
一瞬にして間合いに入ったベルベットはそのまま盗賊の一人に向けて剣を振るう。
それは、あっという間に盗賊の腕を切り落とす。
「ぎゃああああああ!」
「この程度?」
血飛沫を上げて悲鳴を上げる仲間を見て、残りの連中は一斉に後退りをする。
しかし、そんな事はお構いなしにベルベットは切りかかった盗賊の腕を掴み、持ち上げて他の奴らに叩きつけた。
その光景を見るが。
「きっ貴様あぁぁ!!」
それは怒りなのか恐怖かわからない叫び声を上げながら残った二人がベルベットに飛びかかる。
「弱いわね……こんなものかしら? 期待外れだわ」
そう呟いたベルベットは振り下ろしてきたナイフを避けずに掴む。
そのまま力任せにへし折った。
「ひっひぃいい!?」
「さようなら」
怯んだ二人に対して容赦なく蹴り飛ばした。
だが、2人は死んでいない。
それは、俺との約束である誰も殺さない。その意思がベルベットの中に残っている証拠だった。
「くそっ、こうなったら、さっきの奴隷をっ」
「そういうのは、本当に嫌いなのよ」
そう、奴らは何かをやろうとした。
だが、そんな隙を逃さないようにベルベットは瞬く間に距離を詰めて一人に足払いをかける。
「うわぁあああああ──ぐぇえ……」
倒れた所を思いっきり踏みつけ、地面に叩きつける。
「この野郎!」
もう一人の盗賊が武器を振りかざして襲い掛かる。
しかし、ベルベットはそれを難なく避けた。
そして反撃に拳を叩き込むと盗賊の顔面を打ち砕く
容赦がないなぁ。俺だったら躊躇してしまうぞ。
「あー」
「どうした?」
盗賊を倒した所でベルベットが声を上げる。
「面倒ね」
そう、ベルベットが見たのは盗賊が捕らえていた何かだった。
見ると、ボロボロの布服を身に纏っており、その腰には剣が。
「これって」
「奴隷ね。
まったく、人間も魔物も変わりないわね」
そう、それを行った盗賊に対して憤りを感じていると、その少女を抱える。
「この子の首にあるのは」
「奴隷の首輪ね。
魔力がほとんどない奴に対して、強制的に命令に従わせる道具よ」
「……奴隷?」
「そうよ。こんな子に酷いことをして」
「えっと、あの……」
私の言葉を聞いてか、女の子が戸惑っている。
ああ、これは悪い事をしたなぁ。
私は少しばかり気まずくなって、目を逸らす。
「この首輪を外す方法はあるのか?」
「あるにはあるわ。
鍵で外すのが一番安全よ。
けど、こいつらから鍵は見つからないわね」
そう言ってベルベットさんは、その首輪を見る。
「ぐ……うぅ……」
「じゃあどうすれば良いんだ?」
「こいつ自身の魔力を高めて、首輪の許容量を超える事ね」
「許容量を超える?
それって、もしかして」
「あんたの魔力提供の出番という訳よ」
なるほど……そういう方法もあるのか。確かに俺なら可能だ。
だけど、なんというか。
「それって、彼女に対しては」
「そこは、あんたの仕事でしょ」
「うぅ」
俺はベルベットの言葉にため息を吐く。