「この近くで、奴隷商人がいる?」
そう、落ち着きを取り戻したラフタリアから教えられたのは、この近くに奴隷商人がいるという情報だった。
「私を捕らえた盗賊達は、その奴隷商人の所に私を売り渡すつもりでした。
元々は武国で鍛錬していましたが、鍛錬の帰りの途中で、捕らわれてしまい」
そう、ラフタリアはその事を思い出したのか、悔しそうに顔を歪ませる。
「それで、あんたはそいつらに復讐したいと?
悪いけど、こっちは慈善活動を行う程の暇じゃないのよ」
「それはっ」
そう、ベルベットの言葉に対して、悲痛そうにラフタリアは言う。
「私達も、王国から追われている。
その状況で他人を助けるなんて、よっぽどの馬鹿しか…馬鹿しか」
ベルベットは呆れるようにラフタリアに言っていくと共にゆっくりと俺の方へと視線を向ける。
ため息と共に、ゆっくりとこちらに目を向ける。
最初は目を閉じて、ラフタリアに諦めさせようと言っていたが、その視線と共に俺の事を思い出したように見つめる。
「ここにいたわ」
そう、頭痛をしそうに、頭に手を置く。
「いや、そりゃ、馬鹿かもしれないよ。
けど、さすがにこのまま放っておく訳にはいかないだろ」
ベルベットの一言に少しはむっとしたが、このまま引き下がったら駄目だと思い、俺は言う。
すると彼女は大きく溜息を吐いて、またもや頭を悩ませる。
そしてラフタリアの方へ振り返る。
そこには彼女が向かいたい理由がある。
それを無視する事は、俺にはできなかった。
だが、はっきり言って、俺には救う力があるかどうか分からない。
「人に頼りっぱなしで、申し訳ない。
だからこそ、ベルベット」
「あぁ、分かっているわよ」
その言葉に、ベルベットはため息を吐く。
「あんたのお人好しは、今に始まった事じゃないものね……しょうがないから手伝ってあげるわよ」
そう言いながら、ベルベットは再び歩き出した。
その背を追いかけるようにして、俺達も移動を開始する。
「え? ちょっ!?」
背後からはラフタリアの声が聞こえてくるが、そのまま向かう。
「それで、その奴隷商人の奴らはどこにいるの?」
「えっと、この近くの森の奥で滞在していると聞きます」
それと共に、俺達は森の中へと入っていく。
昼なのに、鬱蒼とした木々のせいで薄暗い。
時折聞こえる鳥の鳴き声以外何も音がしない不気味な場所だ。
こんな場所で商売をしているのか。
やがて開けた場所にたどり着く。
そこには小屋があった。
その中には多くの奴隷だと思われる人々が鎖に繋がれていた。
そして、その中心には一人の中年男性が座っている。
どう見ても胡散臭い男だった。
奴隷商なんて、大概はそんな物だろうが。
その周りには奴隷以外にも護衛の男達がいる。
その男達も奴隷の女性達を犯していた。
男はこちらを見て笑みを浮かべる。
「さて、行くとするか」
その言葉と共にベルベットは、そのまま真っ直ぐと向かって行く。
ベルベットの存在に気づいた護衛の男達はすぐに構える。
だが、ベルベットはあっさりと蹴り飛ばす。
「なっ、なんだこの女はっ」
ベルベットの存在に気づいた奴らは、すぐに武器を取って、襲い掛かる。
しかし、ベルベットは軽くあしらっていく。その様子はまるで、手慣れた剣捌きで襲いくる剣撃を弾いているかのようだった。
やがて、ベルベットは相手の剣を弾き飛ばすことに成功する。
すると、相手は剣を取り落としてしまう。
「くっ、だったら」
それと共に、奴隷商人が、1人の奴隷に手を伸ばそうとした。
「レンっ!!」
俺は、叫ぶ。
その言葉と共にレンはその身体を剣となり、俺はすぐに風を纏う。
同時に、奴隷商人を蹴り飛ばす。
「なっ、ぐっ!!」
奴隷商人は、すぐに俺に向かって襲い掛かろうとした。
だが、俺はそのまま自分を中心に台風を巻き起こす。
それによって、周りの奴らを吹き飛ばす。
「ふぅ」
俺はそう、息を吐いた。
それと共に、俺の目の前には先程の奴隷商人が人質にしようとした子供だった。
そこには黒髪の猫を思わせる少女が確かに立っていた。