武国から、次の目的である機国に向けて、出発をした。
ここから数日がかかるという事もあって、俺とベルベットの二人は道中は敵からの襲撃がないか、警戒しながら進む事になる。
ベルベット曰く、「ここらは盗賊団が多い地域だから、気を付けて」だそうだ。
その言葉通り、野盗や山賊、海賊といった連中に襲われた。
しかし、そんな相手など物の数ではない。
「──―ふっ!!」
「ぎゃああああっ!?」
「ぐへぇえっ……」
襲ってきた賊達に対して、ベルベットは軽々と蹴散らしていった。
その戦闘能力は、ここまで敵なしだった。
だけど、それでも油断はできない。
「転移者は、こちらには来ていないようね」
「まぁ、確かに」
ここまでの道中、王国からの刺客である俺の元クラスメイトである転移者。
彼らの持つ能力は、常識を逸脱しているものだった。
「でも、それならそれでいいじゃないですか?」
「……そうね。奴らがいないって事は、それだけ私達が安全に進む事ができるんだもの」
「だけど」
油断ができない。
それが、これまでの戦いの中で学んだ事の一つでもあるからだ。
だからといって、この辺りで野宿をするわけにもいかない。
一応、近くに町があるらしいのだが……。
その時だった。
「グルルルルッ……」
茂みの奥から聞こえてきた獣の声。
それは、狼のような鳴き声をしていた。
「……出たわね」
「みたいですね」
俺はそう言ってしまう。
そう、俺達が言っている間にも、向こうの狼は、真っすぐとベルベットを襲い掛かる。
だが、狼が攻撃を仕掛けた相手が悪かった。
「ふんっ」
ベルベットは軽く鼻息を出すと同時に、襲ってきた狼の首を掴む。
そして、そのまま力を込めて握り潰すように絞め殺す。
その一連の動作を見ただけで、彼女がどれだけの力を持っているのか分かる。
「「うわぁ」」
その圧倒的な戦闘能力に、俺は思わず呟く。
だが、その時に、俺はふと疑問に思った。
「えっと」
後ろから聞こえた声。
振り返ると、そこにいたのは一人の女性がいた。
この異世界では珍しい白衣を身に纏った女性に、俺は驚いて声を出す。
同時にベルベットは俺を守るように、そのまま女性に向けて、睨む。
「あなた、何者?
言っておくけど、敵である以上は」
「敵じゃないわ。
私は、ある意味、あなたと同じ逃亡者よ」
「逃亡者?」
その言葉に俺は首を傾げる。
「王国から逃げて来たという事」
「えぇ、私はシェリー。
あなた達の言う、王国の元研究者よ」
そう名乗る彼女に、俺は眉間にシワを寄せながら口を開く。
すると彼女は苦笑しながらこちらを見る。
しかしすぐに表情を引き締めると、こちらを見つめてきた。
彼女の視線を受けて、俺は警戒を強める。
それはそうだ。
目の前にいる彼女が、本当に信用できるのか分からないからだ。
だがそこで、ベルベットが前に出てきた。
そして彼女をジッと見つめると、
「……なるほどね」
そう呟いたのだ。
一体どういう意味なのか。
するとベルベットは、俺に視線を戻して言った。
「キド、こいつは信用できるかもしれないわ」
「そうなのか」
普段だったら、俺が信用できるまで待つ流れだったけど、ベルベットの方から先に口にしたってことは、それだけ信頼してるんだろうな。
「久し振りと言ったら良いのね」
「えぇ、そうね、ベルベット」
そう、シェリーとベルベットはまるで知り合いの様子だ。
「知り合い?」
「私が王国に捕らわれていた時に治療という名の人体実験を担当した女よ」
「えぇ」
それって、本来だったら敵対しても可笑しくないけど。
「それで、あんたが逃げ出すなんてね」
「私がやりたくてやっていると思っていた?」
「さぁね」
そう、軽口で言い合っているけど、かなり状況は厳しいと思う。
「それで、あなた達はこれから機国へと行くつもりね」
「だとしたら」
「私も同行しても良いかしら?」
「なんですって?」
その言葉に、ベルベットは眉をひそめた。
「あそこのやり方は気に入らなかったのでね。
機国からスカウトがあったから、そこに向かう予定だったの。
ただ、その最中、護衛はさっきの狼に殺されたの」
「それで、その代わりという訳ね」
その言葉に、シェリーは頷く。
「それにしても、キド君ね。
始めに聞いた時には、魔力提供だと聞いたけど。
ベルベットをここまで強くするとは」
「興味あるの」
「えぇ、それは勿論」
その言葉と共に、シェリーの表情は、まさにマッドサイエンティストの表情だった。
「えぇ」
その言葉と共に、俺は、これまでのパターンで理解できた。