「さて、まず貴方達に説明しなければならないのは、転移者の能力に関してよ」
「転移者の能力?
それはまぁ」
「それが、どうやって決まるのか、あなたは分かるかしら?」
そう、シェリーからの質問を聞いて、俺は首を傾げる。
「えっと、まぁ、その人次第なのかな?」
「ある意味、正解ね。
転移者の能力のほとんどはランダム。
だけど、魂の質によって、それは変わるわ」
「そうなのか」
まぁ、確かに同じ能力でも、人によってはかなり違う可能性がある。
それを考えれば、俺自身も、それに該当する。
「能力に関しては本当にランダムよ。
どんな能力が出るのか。
だけど、その質だけは、違うわ」
「というと?」
「魂は、輪廻転生をされない限り、多くの経験を積めば、その力は高まる。
その経験が多ければ、多い程に、その質は高まるわ」
「ちょっと待ちなさいよ。
それだったら、こいつの魔力提供はどう、説明するのよ」
そう、ベルベットは俺に対して言う。
「そうね。
私も疑問に思ったのは、そこよ。
この世界の住人を、転移者と同等かそれ以上の強さにする魔力提供。
そんなの、普通は不可能よ」
そう言いながら、シェリーは俺を見つめる。
「キド、あなたはこれまでの人生、どれぐらい死にかけたの」
「死にかけたって」
「魂は、敗北の経験が強くさせる事もある。
あなたの行った魔力提供は、それこそ、どれぐらい死んだのか、分からないぐらいの経験で成り立っているのよ」
「そこまで」
俺はその言葉に思わず、首を傾げる。
「それ程なの」
「そう言われても、俺は本当に、どこにでもいる普通の高校生だったからな」
「そうなの?」
「ああ、ただ、どうも色々と巻き込まれるだけなんだよな」
「それでも、普通はこれ程の能力には発展しないよ」
シェリーの言葉に、俺は少しだけ考える。
確かに、この世界で魔力提供のおかげとはいえ、本当によく生きていたと思う。
「とにかく、詳しい検査は機国で行いましょ」
「そんな事、できるのか?」
「あそこはそういう方面には強いわ。
おそらく、あなたの魔力提供の謎も解けるはずよ」
「まぁ、確かに」
どちらにしても、目的地が機国である以上は、そこに行くしかないだろう。
「そう言えば、あなた、名前は?
キドって、確か、日本で言う所の名字でしょ」
「んっ、俺の名前?」
そう言われたら、こうして名前を聞かれるのは久し振りだった気がする。
「俺はキド。
城戸真司だよ」
そう、俺は自分の名前を告げた。
その時に、僅かに、近くの雫から、何かが覗き込んだ。
そんな気がした。