機国へと向かう目的が、また一つできた。
道中では、再び王国からの刺客が来ないようにと、ベルベットの警戒はこれまで以上に強かった。
特にスナイパーによる狙撃を警戒している。
「それにしても、この周辺で隠れるのは果たしてあるのか、ないのか」
「どうだろうな。だけど、油断はできない。あいつらは俺達の知らない能力を持っている可能性があるから」
そう言いながら、俺は辺りを見渡していた。
「あのさぁ……。そんなに見回してても、意味はないと思うんだけど?」
ベルベットの言葉に、キドは苦笑しながら答える。
「いや、それはそうなんだが、癖というか、結構心配になってくるんだよ」
「……気持ちは分かるわよ。私だって同じだし……」
キドは周囲を見渡すのをやめて、ふぅ……っと息をつく。
「けど、結局の所、警戒しても同じ。
出てきたら、潰す。
それだけだから」
ベルベットはそう言って、歩き出す。
その足取りに迷いはなく、自信に満ち溢れていた。
「そうだな。警戒していても仕方がない。それならいっそ、堂々と歩いていた方がいいか」
俺はそう言って、歩こうとした。
けど、その一歩前に進もうとしたら、何かが足下で聞こえた。
ゆっくりと見ると、それは明らかに銃弾の跡。
そして、それが意味していたのは。
「言った傍から」
その言葉と共にベルベットは俺達を抱えて、そのまま走り出す。
「うわっ、ベルベットっ」
「舌を噛まないでよっ。
狙撃された以上、隠れる所がないこの場所でどうにかするには!!」
同時にベルベットが向かったのは、おそらくは狙撃を行った人物がいるだろう場所。
「狙撃者をなんとかする事!」
そうしながら、襲い掛かる狙撃の銃弾を、ベルベットは俺達を抱えたまま避ける。
その動きは明らかに常人のものではなく、まるで曲芸師のように軽やかに避けていく。
しかもそれだけじゃない。
木々の間をすり抜け、時には岩壁すらも飛び越えていく。
それと共に見えたのは、機械に無理矢理取り付けられた少女。
それは身動きも取れず、機械の動きを支えるように。
「これじゃ、まるで逆ね」
人間を支援する機械ではなく、機械を支援する為の人間。
そう、悲しい光景に対して、ベルベットは、すぐにその機械を破壊する。
破壊した事によって、解放された少女。
俺はすぐにその子を抱える。
「よっと、あれ、朝田なのか?」
そこにいたのは、俺のクラスメイトの朝田だった。
だが、その髪の色は黒ではなく水色。
髪を染める不良ではないはずの朝田がなんで。
「知り合いなの」
「あぁ、クラスメイトだ。
だけど、髪の色が明らかに違う」
「そう、という事は、また王国の洗脳まがいね」
「あぁ」
イオの一件もあり、俺は同意するしかない。
そもそも、彼女は昔のトラウマで銃に関係する物に強い拒否感があったはずだ。
「本人の体質とは関係なく、おそらくは銃に関係する能力があったんでしょうね。
それを無理矢理する為に」
「そうか」
その言葉を聞いて、俺は朝田を抱える。
「どうすれば」
「制御するしかないでしょ。
その為にも、あんたがやるべき事、既に分かっているでしょ」
「あぁ、けど、それが正しいかどうかは」
「そんなの迷っている時間をくれる程、この世界は優しくないわよ」
そう言ったベルベットの言葉には確かに重みがあった。
同時に俺もまた、覚悟を決めるように、行うしかなかった。