機国との本格的な同盟により、これまで逃亡していた俺達はついに反撃に出る事になった。
これまで、転移者によって、戦況を支えられていた王国だが、俺という存在によって、戦況は一気にひっくり返った。
戦闘経験も、戦いに対する覚悟もあったが、転移者の圧倒的な能力による差によって、それを生かす事ができなかった者達。
だが、俺の『契約』の能力は、その差を埋めていた。
そうした戦いの最中、俺達が辿り着いたのは、王国にいる王がいる場所。
そこにあったのは。
「鏡?」
そこにあったのは鏡の柱のような存在。
それが一体何なのか、疑問に思う。
それは、一緒に来ていたベルベットも同じだった。
「何なのよ、一体」
「それは、お前達が言う、黒幕のような存在だ」
その言葉と共に、鏡から声が聞こえる。
見ると、そこには茶色いコートを身に纏った男が立っていた。
その男には、どこか見覚えがあった。
「あんたは」
「こうして話すのは久し振りだな。
いや、この場合は初めてというべきか」
「あんたは一体」
「俺は神崎士朗。
この世界に来た、最初の転移者の抜け殻だ」
「最初の転移者の抜け殻」
その言葉に、俺は思わず、首を傾げる。
「かつて、この世界は、お前達の世界と全く同じだった。
まるで鏡映しの世界。
その時の俺は、ここをミラーワールドと呼んでいた」
「ミラーワールド?」
「そう、ここは、ある少女の願いを形にした世界。
だが、その少女は死に、俺はその子を生き返らせる為に来た。
しかし、この世界では何も生み出す事ができなかった」
「何もって、ここにはベルベットや皆がいるじゃないか」
「お前達はこの世界で命を落とした者達の思いによって、作り上げた存在。
その思いが、こうして本来だったら、現実と同じ光景だったはずのミラーワールドを大きく変えた」
「ここは、異世界は異世界でも、俺達の世界の、鏡映しの世界だって言うの」
「まったく、笑えないわね。
シェリーが言っていた言葉が、当たっているなんて」
「それだったら、俺も」
「いや、お前達を含めた転移者は現実に存在した。
そして、このミラーワールドでかつて命を賭けて、願いの為に戦った存在だ」
「願いを賭けて」
「数えるのも馬鹿らしいぐらいに、戦いは繰り返された。
だが、それらの結果は、思い通りにはならなかった。
そして、最後の戦いで、ミラーワールドは閉ざされた」
「それじゃ、ここは」
「人間が、欲望となる存在がいなくなった世界。
そこでは、多くの人々の思いが募り、別の世界へと発展した。
閉ざされたもう1つの世界が、正体だ」
「だったら、なんで転移者がここにいるんだ」
「人間が、自分の中で抱えている欲望が、この世界へと引き寄せた。
現実の世界では生きづらいと感じた者。
それらは、地獄の蓋が開かれた事をきっかけに、活発になった」
同時に神崎は、俺の方を見つめる。
「お前はどうする。
城戸真司。
かつて、幾度となく命懸けの戦いに参加し、その戦いを止めようとしたお前ならば、この鏡を破壊するか」
「そうすれば、どうなるんだ」
「転移者は全て元の世界に戻る。
同時に、この世界は完全に元に戻る」
「そうか、だったら、俺は、破壊しない」
そう言い、見つめる。
「あんた、元の世界には未練はないの」
そう、ベルベットは、俺を見つめる。
「確かに、未練はある。
だけど、もしもこの世界を造り出したのが、俺達だったら、その責任を果たさないといけないとな」
「はぁ、あんたは、本当に変わっているわね。
けど」
その言葉と共にベルベットは、変わらない馬鹿な俺に見る。
「例え、私が人間じゃないとしても、どこまでもあんたと一緒にいてあげるわ」
「あぁ、これから、よろしく頼むよ」
その言葉と共に、俺達の、戦いがまた、一歩始まる。
今回で、異世界脱獄転生は打ち切りのような終わりをさせて貰いました。
ある意味、異世界設定で合うのではないかと書かせて貰い、これ以上はたぶん続けられないと思い、終わらせて貰いました。
短い間でしたが、応援、本当にありがとうございました。