王国。
そこでは、他国よりも多くの転移者を召喚する事で有名な場所である。
全ての転移魔術を作り出した国であり、通常ならば1度に召喚できる転移者の数は1人しか出せない中で、30人程の人数を一気に召喚する事ができるその国の軍事力はまさに無敵の城と入れる。
他国からの侵略行為で潤ったその資金はあまりにも多く、あまりにも非人道的な実験の数々も行われている。
しかし、それらの情報は決して国民に知られる事なく、国の不正は大きくなった。
そんな国で、一つの大きな事件が起きた。
それは、城の地下にある牢屋から最悪の魔物が解き放たれたというニュースだった。
そして、それを解き放ったのは、転移者の1人だという事も話題となった。
王国の国民にとって、転移者はまさに英雄のような存在であり、最悪の魔物が解き放った事は国民にとっては信じられなかった。
そして、それを信じられない人物もいた。
「キドが、脱獄させたって、本当なのか」
それはキドと同時期に異世界転移をしたクラスメイト達だった。
同時に転移したキドの姿がいない事に疑問に持った者はいた。
しかし、その中で彼に関しては2つのグループに分かれていた。
一つ目は、主にキドに対して気に入らないグループである。
キドは生粋の熱血バカな為に、曲がった事を嫌っていた。
その事もあってか、虐めやカツアゲなどを行う人物には真っ直ぐと立ち向かった。
それもあってか、彼を気に入らない人物は意外にも多くいる。
そして二つ目のグループは、キドに対して友好的なグループである。
一つ目のグループとは正反対にキドの生粋な熱血バカな所で助けられた事もあって、彼の事を慕っているグループである。
だが、真っ二つに別れている。
だが、グループが別れているとはいえ、全員がそれで固まっている訳ではない。
それは、その少女もまた同じだった。
「本当、可笑しすぎるよ」
そう言いながら、少女は城から抜け出していた。
フードで、顔を隠している為に素顔を見られる心配はない。
「そもそも、なんで牢屋にいた魔物の所にキドがいたのすらも、訳が分からない。
だったら、こんな城にいたら、危ないっ」
キドがいなくなった事に対しての不安と共に、少女はそのまま走り出した。
「おい、転移者の1人が抜け出したそうだぞ!」
「どこにいるっ!」
それと共に少女を探す衛兵の声が聞こえた。
その声を聞くと共に、すぐに城の入り口へと向かう。
既に警備兵が多くいる中で、少女はその小柄な体格からは考えられない程の動きを行う。
「ちっ、転移者の能力かっ」
「逃がすなっ」
そう叫びながら、追いかける衛兵だったが、彼女の動きについていけなかった。
それと共に城から、王国からそのまま逃げ出していく。
少女、乙坂シオンの力は簡単に言えば、肉体変化である。
その身を兎に似た存在、ジェントルマンへと変化させる事によって、人間の時には出せない身体能力を発揮する事ができる。
これによって、シオンは城から隠れながら、無事に脱出する事ができた。
既に魔物の脱走騒動もあり、警備に穴がある状況だからこそできた状況であった。
しかし、彼女の脱出が上手くできたのは近くの村までだった。
土地勘のない彼女に対して、日々の戦争を行っている事もあり、敵が隠れそうな場所を知る兵士が彼女を見つけるのは時間の問題だった。
どんなに身体能力が高くても、シオンは少女。
さらにはジェントルマンとなって逃走を続けた事によって、体力と共に魔力を使いすぎて、身体が動かなくなっていた。
兵士が迫る中で、必死に逃走しようとするが、彼女の体力は既に限界だった。
やがて、兵士が来ると共に、彼女が捕まりそうになる。
「キド」
そう、自分が信頼する存在の名を呟く。
その時だった。
兵士は悲鳴と共に逃げ出した。
何が起きたのか疑問に思っている間に、彼女の傍にいたのは信頼していた男、キドであった。
「おい、シオンなのか!」
「キド、無事で」
そう安心した声と共に、シオンが次に目をしたのは、明らかに自身よりも胸の大きな女性陣だった。
再会の喜びも束の間であり、彼女達とどのような関係なのか、気になるシオンだった。