東雲は今日も花村の家に来ていた。
「東雲、これ見てよ」
そう言って花村はパソコンを指差す。
画面には2ちゃんねるが映っていた。
スレッドのタイトルは『【悲報】彼女の友達と浮気してたらバレた』だった。
どうやら修羅場スレらしい。
レス数こそ少ないものの、リアルタイムで書き込みが行われているようだ。
東雲は画面を見つめたまま口を開く。
「……面白い?」
「うん! 凄く!」
花村は興奮した様子だ。
「こういうのってさ、普通に生活してるだけじゃ絶対遭遇しないじゃん? だからすごく面白いんだよね」
「ふーん……」
「あとね、この人なんか特に笑えるんだよ」
そう言うと花村は『浮気男★24』というスレッドを開いた。
タイトルには『彼女にバレました』と書かれている。
そのレス番号121を見た途端、東雲の目が大きく見開かれた。そこには首に噛み跡がついた自分の写真が載っていたのだ。
それは昨日、東雲自身が撮ったものだった。
慌てて写真を保存し、他のスレにも目を通す。すると、似たような画像がいくつか見つかった。
「ねえ、これってどういうこと?」
東雲の声は震えている。
「えっ? 何のこと?」
「なんで私の写真がここにあるかって聞いてんの!」
怒鳴り声を上げる東雲を見て、花村は不思議そうな顔をしている。
「なんで怒ってんの?」
「あんたがやったんでしょ!?」
「違うよ。だって俺、東雲の写真なんて持ってないし」
「でも……ここに載ってるのは私だし……」「だから違うってば。そんな怒らないでよ」
花村は困ったように笑う。
「ほら、もうすぐ夕飯の時間だよ。行こうぜ」
そう言いながら花村は立ち上がる。そして東雲の手を引いた。
「ちょっと待って……」
東雲は花村に連れられて近くのファミレスに入った。
2人は向かい合って座っている。
「東雲、何か食べたい物ある?」
メニューを差し出しながら花村は尋ねる。
しかし東雲は何も答えない。
「俺はハンバーグセットにするけど東雲は何に……」
「いい加減にして!!」
東雲は再び怒鳴り声を張り上げた。
店内にいる客たちの視線が集まる。
店員たちも心配そうにこちらの様子を伺っている。
それでも東雲の怒りは収まらない。
「私は本当に知らないから! こんなの勝手に貼ったのそっちでしょ!」
「だから違うって言ってんじゃん! しつこいなあ!」
花村も負けじと言い返す。
「だいたいさ、証拠もないのに人を犯人扱いするなって親とか先生によく言われなかったのかよ!」
「それは……」
東雲は言葉を失った。確かにそうだと思ったからだ。
しばらく沈黙が流れた後、花村が口を開いた。
「まぁ、確かに彼女の自慢スレに写真を載せたのは悪かったと思うよ。ごめんな。そこは謝る」
東雲は無言のまま俯いている。
「でもさ、悪いのは東雲なんだぞ? いくら友達だからって男の家にノコノコ上がり込む方が悪いだろ?」
東雲は黙ったまま何も言わない。
「それにさ、俺は別に東雲の彼氏じゃないわけじゃん? それなのにどうしてそこまで責められないといけないわけ?」
「それは……」
東雲は再び言葉を詰まらせた。
「だから、そういうところだよ! 俺のことを信用してないから、東雲はいつまで経っても付き合えないんだ!」
「……」
東雲は何も言えない。
「とにかく、この件についてはお互いに忘れようぜ。それでいいだろ?」
「うん……」
力なく答えると、東雲は席を立った。
会計を済ませて店を出ると、外はすでに真っ暗になっていた。
家に帰る気になれず、東雲はそのまま駅前へと向かう。
繁華街に出ると、すぐに1人の男が声を掛けてきた。
「お姉さん、今ヒマですか?」
大学生くらいだろうか。軽薄な雰囲気の男だ。
東雲が無視しても男はしつこく付きまとってくる。
東雲が腕を振り払うと、男はバランスを崩した。
地面に尻餅をつく男を見て、通行人たちが足を止める。
「いてぇ……。おい、何すんだよ!」
男は立ち上がり、東雲に向かって叫んだ。
周囲の人々がざわつき始める。
その時だった。
「東雲、何してるの?早く帰ろう」
振り返ると、そこには花村の姿があった。
東雲の腕を掴むと、花村は歩き出した。
男の方を振り返ることもなく、2人は早足でその場を離れた。
しばらく歩いたところで花村は足を止めた。
「東雲、大丈夫か?」
「うん、平気…でもあれくらいなら自分でどうにかできたし」
東雲の言葉を聞いて、花村は小さく溜息をついた。
「あのな、ああいう時は警察を呼ぶなり逃げるなりしなさい。あんな男、お前の力じゃどうにもならないだろ?」
「そんなことないし!」
東雲はムキになって反論するが花村に押し倒されて地面へ押し付けられた。
「東雲みたいな非力で可愛い女の子は男に狙われやすいんだよ。もっと自分のことを大切にしなさい。分かった?」
「……はい、分かりました」
東雲が素直に返事をしたのを聞くと、花村は東雲を解放した。
「よし、それじゃあ帰るか」
「ねぇ、花村」
東雲が尋ねる。
「ん? 何?」
「なんで私が襲われてるって思ったの?」
「そりゃあ、東雲が困ってるように見えたからさ。助けに行っただけだよ」
「ふーん……それじゃあ私に惚れてんのかなーって思ってたのは勘違いってことでいいのね」
「はぁ!?」
花村の表情が強張った。
「俺、そんなこと言ったっけ?」
「言ったよ! 花村は私のことが好きなんじゃないかと思ってたって! 私の勘違いだったんだよね。ごめんごめん。私の勘違……」
言い終える前に花村は東雲の口を塞いだ。
「うるさいな! 好きに決まってんだろ!」
「え……」
東雲の顔が赤く染まる。
「俺は東雲のことが好きだよ! 悪いか!俺はずっと前から東雲のことが好きだ!!」
花村の大声に通行人たちは一斉に振り向いた。
「ちょ、ちょっと声が大きいって……」
東雲が恥ずかしそうに抗議する。
「うるせぇ! 俺だってこんな場所で告白するつもりはなかったよ! でもしょうがないだろ?!お前のせいだからな!」
「うぅ……」
東雲は顔を伏せて何も言わなくなった。
しばらく沈黙が流れた後、花村が口を開いた。
「東雲、俺たち付き合わない?」
「……は?」
東雲は驚いて顔を上げる。
「な、何言ってんのあんた。私たち友達でしょう?」
「友達はキスとかしないだろ?」
「そ、それはそうだけど……」
「俺は東雲と付き合いたい。ダメ?」
「……」
東雲は黙り込んでしまった。
「東雲? 聞いてる?」
「わ、私は……」
東雲は少し考えるような仕草を見せた。
「私は花村とは付き合えない。花村はただの友達だから」
「は? それどういう意味だよ?」
花村は東雲を睨みつける。
「そのままの意味だよ。私は今までも、これからも、でも…まぁ、どうしても私とシたいって言うんだったら、その、してあげないこともないけど……」
東雲は照れ臭そうな笑みを浮かべながら答えた。
「は?」
花村は何を言われたのか分からないといった様子で呆然としている。
「もう、鈍いなぁ。セックスしたいんでしょ?」
「な、なに言ってんだお前! 俺がいつそんなことを……!」
「あれ、違ったんだ。てっきりそうだと思ったんだけど」
東雲は悪戯っぽく笑う。
「違うよ! 俺は東雲と付き合いたくてだな……」
「あ、そういえばさっきの人まだいるかも。その人に頼もうかな」
東雲は再び歩き出す。
「待ってくれ!」
花村は慌てて東雲の後を追った。
「なんだよ」
「東雲、さっきの話だが、本当に俺と付き合えないのか?」
「うん、無理。諦めて」
「東雲、頼むから。なんでも言うこと聞くから。俺と付き合ってください」
花村は深々と頭を下げた。
「何でも……?」
東雲は立ち止まる。
「ああ、俺にできることならなんだってするよ」
「……分かった。考えてみる」
東雲はそれだけ告げると再び歩き始めた。
「マジで!? ありがとう東雲!」
花村は嬉しそうに叫ぶ。
東雲は花村に聞こえないように呟いた。
(嘘に決まってんじゃん)
こうして、2人の交際が始まった。
「はい、今日はここまで」
担任の教師が授業の終わり放課後を告げる。
生徒たちは一斉に立ち上がり、教室を出て行った。
「ねぇねぇ、今日の帰りどうする?」
女子生徒のグループが話し始める。
「カラオケ行かない?」
「あ、いいね。賛成」
「東雲さんは?」
「ごめん、私用事あるから今日はパス」
「あ、そっか。じゃあまた明日ね」
「うん、バイバーイ」
東雲は鞄を持って立ち上がる。
「東雲」
花村が声をかけた。
「ん?」
「一緒に帰ろうぜ」
「……いいよ」
2人は並んで歩く。
「ねぇ、花村はさぁ」
「なに?」
「私と付き合いたいって言ったよね」
「言ったよ。俺は東雲のことが好きだって言っただろ?」
「でもさ、結局付き合うことにしたんだよね」
「ああ、東雲が俺の彼女になってくれるってことだろ?」
「そ、そうだけど……。なんか変な感じ」
「なにが?」
「いや、別に」
東雲は首を振った。
「それで、なんでいきなりそんなこと言い出したの?」
「んー、なんかこのままじゃいけない気がしたっていうか、東雲ともっと仲良くなりたいなって思って」
「ふーん、そういうもんか。よく分かんないけど」
「あ、そういえばさ……」
花村は何気なく切り出そうとしたが、東雲の顔を見て言葉を止めた。
東雲の顔が真っ赤に染まっている。
「東雲、顔赤いぞ? 大丈夫?」
「う、うるさい! あんたが恥ずかしいこと言うからだろ!」
「恥ずかしいって、なにが?」
「……ば、馬鹿じゃないの?」
東雲はそっぽを向いてしまった。
「なんだよ、怒ってんのか?」
「……べつに」
東雲は頬を膨らませている。
「まぁ、いっか。なぁ東雲、今度どっか行かない?映画とか」
「嫌だ」
「え? 何で?」
「だってあんた絶対エッチなことしようとするでしょ?」
「しないしない。ただデートしたいだけだよ」
「……本当?」
「ほんとだよ」
「……分かった。考えてみる」「よし、決まりな」
東雲は少し嬉しそうな顔をしていた。
翌日、学校では東雲と花村の話で持ちきりだった。
「おい、聞いたか?」
「うん、花村くんと東雲さんが付き合ってるって話?」
「マジで?もう付き合ってると思ったわ。昨日一緒に帰ったらしいよ」
「私も見たけど、手を繋いでたわ」
「なにそれ、超羨ましいんですけど!」
「でも花村くんてちょっと軽いところあるからなぁ」
「でも東雲さんの彼氏になったんだから、結構一途になるんじゃない?」
「だといいんだけど……」
生徒たちが噂をしていると、担任の教師が現れた。
「はい、みんな席について。ホームルーム始めるよ」
教師の言葉で生徒たちはそれぞれの席につく。
(さすが東雲、人気者だな)
花村はそんなことを考えながら東雲を見つめていた。
「じゃあまた明日」
「うん、ばいばい」
東雲と別れ、帰路に着く。
花村は家に帰ると、すぐにパソコンの前に座った。
マウスをクリックしてインターネットに接続する。
検索エンジンを開き、「高校生 恋人 作り方」と入力して検索ボタンをクリックする。
画面には無数のページが表示された。
花村はその中から一番上のサイトを開く。
「お、これいいじゃん」
そこには「恋人ができた時にする10の手順」という少し怪しいタイトルが書いてあった。
1:まず相手の趣味や好きなものを調べましょう
2:共通の話題を作り、会話を広げていきます
3:相手にプレゼントを渡してみよう
4:毎日メールを送る
5:電話をしてみよう
6:相手の誕生日にはデートに誘い、告白をしましょう
7:キスをする
8:セックスをする
9:結婚する
10:子供を作る
「……やっぱりこういうのは、段階踏まないとダメなのかな」
花村は呟く。
「まぁ、とりあえず1から順にやってみて、無理そうだったり、キツかったりしたら2から3へって感じで進めていけばいいか」
花村はまず「1.相手の趣味や好きなものを知ろう」を実践してみることにした。
「東雲の趣味はなんだっけ?」
携帯電話を取り出し、東雲に電話をかける。
「趣味?バンドと読書かな」
「他には何か無いのか?」
「うーん……。特に思いつかないけど」
「そうか。ありがとう」
「ねえ、それだけ?」
「ああ、ごめん。またかけるよ」
「……」
東雲は不機嫌そうに黙ってしまった。
「バンドねぇ、どんな感じのバンドが好きなんだろう」
次に東雲に会った時、それとなく聞いてみた。
「別に普通のロックバンドだよ。なんか文句でもあるの?」
東雲は睨むような目で花村を見る。
「いや、別にないけど。東雲ってパンクとかメタルとかって好きなのかなと思ってさ」
「ロックならなんでも好き。でも、そんなこと聞きたいわけじゃないんでしょ?」
「まあね。それで、なんていうバンドのファン?」
「ニルヴァーナ。知ってる?」
「いや、知らない。なんか凄いバンド名だな。どういう意味?」
「うーん、よく分かんない。でも、ボーカルが自殺したこととかで有名になって、最近復活したの」
「へぇ、そうなんだ。じゃあさ、他にオススメのバンドはいる?」
「私はニルヴァーナはすごい好きだし、他のバンドのことも大好きだけど、このAfterglowとか」
「ふぅん。なんか、普通にカッコイイ名前だな。ちなみに、どういう意味があるの?」
「えっと、確か『夕暮れ』だったと思う。昔、バンドやってた友達が教えてくれたの」
「……そっか。ありがとう」
「もういいでしょ、今日はそんなこと聞くために電話してきたわけじゃないよね?」
「うん、まあそうなんだけどさ。今度、そのバンドのライブがあるんだよ。一緒に行かない?」
「ライブ? 別にいいけど、チケット高いんじゃない?」
「俺が出すから大丈夫だよ。じゃあ、次の土曜日空いてる?」
「空いてるけど…本当に行くの?」
「もちろん。楽しみにしてるよ」
「分かった」
「あとさ、もしよかったらで良いんだけど、その日は髪型変えたりして来てくれる? 東雲のこと、みんなに紹介したいし」
「……」
「東雲?」
「うん。わかったよ。よろしくね」
「うん」
(よし、これで東雲とのデートは決まりだな)
花村はガッツポーズをした。
(それにしても、東雲ってバンドも好きなのか)
花村はベッドの上で仰向けになり、天井を見つめながら考えていた。
(東雲って結構かっこいいよなぁ。髪長いけど、顔立ちもいいし。バンドやるくらいだから性格も良いだろうし、ちょっと怖いところはあるけど、そこがまた魅力的っていうかさ。それに、スタイルだって……)
そんなことを考えていると、携帯にメールが届いた。
東雲からのメッセージである。
『土曜日は必ず開けておくように! 絶対だよ!』
(こわっ!! なにこれ!? なんでこんな怒ってるの?)
花村は恐怖を覚えながら返信する。
『了解。必ず予定を空けておきます』
『よろしい。じゃあ、また明日学校でね。お休みなさい(^_-)-』
絵文字が可愛らしい。
「ふぅ……」
花村は大きく息を吐き、目を閉じた。
「うーん、どうしたもんかな……」
放課後、教室には西園と花村の2人だけが残っている。
「何悩んでんだ?裏切り者の花村さんよぉ」
西園は花村に詰め寄った。
「裏切り者って……別に俺は裏切ったわけじゃないだろ」
「はぁ!?お前は俺たちを裏切って、東雲ちゃんとくっついたじゃねぇか!」
「まぁ、確かにそういう見方もあるかもしれないけど、付き合うことに決まったのは成り行きみたいなものだし」
「成り行きだろうとなんだろうと、東雲ちゃんと付き合い始めたのが裏切り以外のなんだというんだ!!」
「それはそうかもだけど、そもそも、なんで東雲と俺がくっつくことが前提なんだよ」
「うるせぇ、リア充が!爆発しろ!それか女子紹介しろ!可愛い子限定な」
「あー、はいはい。分かりましたよ」
「それで?何を悩んでいたのかな?」
「ああ、実は……」
花村が説明を終えると、西園は言った。
「なるほど。つまり、東雲にプレゼントをあげたいから悩んでいたと」
「そう。でも、東雲に欲しいものを聞くのは怖くて聞けないし、何かいい案は無いかなと思ってさ」
「うーん……。そうだなぁ」
西園は腕を組んで考える。
「例えばさ、花村って東雲の好きなものとか知らない?食べ物とかCDとか」
「好きなものは分からないけど、音楽はよく聴いてるみたい」
「音楽はどんなジャンル?」
「ロックとか、パンクとかって言ってた気がする」
「なんじゃそりゃ。まあ、とりあえず、その辺のリサーチから始めないとダメっぽいな」
「やっぱり、そうなるか…でも、どうやって調べたら良いんだろう」
「ネットで検索すれば出てくるんじゃないか?」
「いや、俺パソコン持ってないんだよ」
「マジか。じゃあ、誰かに借りるとか」
「誰に?」
「そんなの、クラスの奴らに決まってんだろ。確か愛園がノートパソコンを持ってたはずだぞ」
「えぇ……あいつの?」
「他に誰がいるんだよ」
「うーん……」
「まあまあ、嫌そうな顔すんなって。ほら、さっさと行くぜ」
「う、うん」
「あ、いたいた…おーい愛園ちょっといいか?……」
「なに?」
「悪いんだけどさ、このパソコン貸してくれないか?」
「いいけど……なんに使うの?」
「いやぁ、俺の友達がさ、彼女に誕生日プレゼントあげたいんだってさ。だから、色々リサーチしたいらしくて」
「へぇ、リア充爆発しろ」
「まあ、そう言わずにさ。頼むよ」
「分かった。はい、どうぞ」
「サンキュー。じゃ、頑張れよ」
「おう」
「……あの、西園くん。1つだけ聞いてもいい?」
「ん?」
「どうして裏切り者の支援をするんだい?キミは親友だと思っていたのに」
「…………」
「えっと、愛園さん。これはどういうことなのかな?」
「ごめんね。私も花村くんに協力することにしたんだ。だから、花村くんは諦めてくれたまえ」
「いや、意味わかんねぇから。何を諦めるんだよ」
「もちろん、東雲さんの情報を我々に提供してもらうことをだよ。東雲さんのスリーサイズ、好きなタイプ、好きな体位、その他諸々全てだよ」
「そんな情報、知るわけ無いだろ!」
「そんなはずはないよ。だって、花村くんと東雲さんは付き合っているんだろう?それならあんなことやこんなことのひとつぐらいはしているだろう?」
「そ、それは……」
花村は顔を赤らめる。
「ふむ。やはりね。では、そういうことでよろしく頼むよ」
「よろしく頼まれても困るって……」
「大丈夫。我々は決して君たちの邪魔をしないから安心してくれたまえ」
「いや、現在進行形で妨害してんだろ」
「花村。気にするな。俺たちはお前の味方だ」
「西園まで!?」
「さぁ、行こうか。花村くん」
「ちょっ!待って!まだ心の準備が!……助けてくれ!東雲!」
「残念だがこのに東雲さんは居ないよ…あきらて僕達と一緒に来るんだ」
「いやぁぁぁぁ!!!」
教室に花村の叫び声が響いた。
土曜日。
東雲とのデート当日である。
「おはよう。花村」
待ち合わせ場所には先に東雲の姿があった。
東雲は白いブラウスにベージュ色のロングスカートという清楚な服装だった。
「お、おう。早いな」
「そうかな?いつも通りだと思うけど」
「いやいや、十分早く来すぎだろ」
「そうかな?」
「そうですよ」
「そう、でも花村だって同じくらいに来ていると思うんだけど」
「俺はいいんだよ。俺は」
「えー。ずるいなぁ」
東雲は不満げに言う。
「そういえば、今日の服似合ってるな」
「ありがとう。昨日選んでおいたんだ」
「へぇ、わざわざ?」
「うん。せっかくのデートだし、少し気合いを入れようと思って」
「おお!可愛い!可愛いよ東雲!」
「もう。大袈裟なんだから」
「本当のことだし」
「はいはい。ありがと」
「うわ、軽く流された…ちょっとショック」
「冗談。嬉しいよ」
「そうですか。そりゃよかったです」
「ところで、今日はどこにいくの?」
「ああ、確か近くにライブハウスがあるからそこに行く予定だけど」
「そうなんだ」
「なんか嫌なことでもあったのか?」
「え?どうして?」
「いや、元気なさそうだからさ」
「そんなこと無いけど。ほら、早く行こ?」
「お、おう」
2人は歩き出す。
「あ、そう言えばさ」
「ん?」
「誕生日プレゼント用意してきたんだけどさ、貰ってくれるか?」
「え?うん。もちろん」
「良かった。これなんだけどさ」
「あ、CD?」
「うん。俺が今一番聴いてるバンドなんだけどさ。結構いい曲揃ってるから聴いてみて欲しいなぁなんて思ってさ」
「そうなんだ。じゃあ、帰ったら早速聴くね」
「おう。感想聞かせてくれよ」
「分かった」
「ここがそのライブハウスかぁ……大きいね」
「まあ、それなりに有名らしいからな」
「楽しみ」
「お、開演時間ちょうどだな」
「ほんとだ」
ライブが始まった。
「すっごかった……」
「だろ?俺も初めて行った時感動したよ」
「本当に凄いよ…私達のバンドとは比べ物にならないよ」
「そうか?俺的にはどっこいどっこいだと思ったけどな」
「そんなことないよ。やっぱりプロは違うなぁ」
「まあ、確かにな」
「ねぇ、花村」
「ん?」
「私、決めたよあんたのこと受け入れてあげる」
「え?」
「ほら、前に言ったでしょ。私はあなたが好きだって。その気持ちは変わらない」
「東雲……」
「だからね。私の彼氏になってくれないかな?」
「……マジで言ってるの?」
「もちろん」
「……分かった。東雲、俺と付き合おう」
「うん。これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしく」
「それでね。1つだけ頼みたいことがあるんだけど……」
「何?」
「あのね、キスして欲しいなって……」
「え?」
「ダメ?」
「ダメじゃないけど……」
「なら、早くしてよ」
「わ、わかったよ」
花村は顔を近づける。
そして、2人の唇は重なった。
「ねえ、花村」
「どうした?」
「大好きだよ」
「俺もだよ」
こうして花村と東雲は恋人同士になったのであった。
終業式が終わった。
明日から夏休みが始まる。
「よし!遊ぶぞ!」
花村が意気込む。
「おい、花村。遊びに行くのもいいが課題はちゃんとやっておけよ」
「分かってるって。大丈夫大丈夫、それより西園こそ大丈夫か?宿題とか」
「問題無い。既に終わらせている」
「流石ですね。西園さん」
「当然のことだ」
「東雲さんは?もう終わった?」
「うん。一応は終わっているかな」
「おお、偉い」
「ふふ。今年は色々と忙しかったから早めに済ませていたんだ」
「そっか」
「あ、そういえば、花村くん。誕生日プレゼントありがとう」
「おう。喜んでいただけましたでしょうか?」
「うん。もちろん」
「そうか。良かったよ」
「それでさ、ちょっと相談なんだけど明日空いてる?」
「ん?別に予定は無いけど」
「じゃあさ、一緒に買い物に行って欲しいんだけど」
「お、おう。いいけど、なんで?」
「実は、夏服が欲しくてさ。でも、1人だと迷っちゃうだろうし、もし良かったら2人でどうかなと思って」
「そういうことか。了解」
「ありがとう」
「それじゃあ、どこ行く?駅前に新しいショッピングモールできたじゃん。そこ行ってみる?」
「うん。そうしよう」
翌日。
2人は駅に集合した。
「おはよう。花村」
「おはよう。東雲」
「今日は誘ってくれてありがとね」
「いやいや、気にしないでくれ」
「それでさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ」
「なんだ?」
「えっとさ、その……手繋いで歩かない?」
「え?」
「ご、ごめん。嫌だったよね……」
「ああいや、全然嫌じゃないよ。むしろ嬉しいくらいだし……」
「本当?」
「ああ。だからさ、その、手を繋ごう」
「うん」
2人は指を絡めるようにして手を繋ぐ。
「えへへ」
東雲と花村は歩き出す。
「なんかさ、こういうのいいな」
「そうだね」
しばらくすると目的の場所に着いた。
「うわぁ……めっちゃあるなぁ」
「そうだね……これ全部見て回るのは大変かも」
「うーん……とりあえず、見るか」
「うん」
「あ、このワンピース可愛い」
「確かに良いな」
「こっちのブラウスも可愛くない?」
「確かに」
「ねぇ、花村。こっちとこっちどっちが良いと思う?」
「どっちも良いなぁ……俺としてはこっちのスカートの方が似合うんじゃないかな」
「そう?じゃあ、試着してみようかな」
「お、まじか」
「花村、感想聞かせてくれる?」
「分かった。楽しみにしてるよ」
数分後。
「着替えてきたよ」
「お、見せて」
「うん……」
東雲は恥ずかしそうな表情を浮かべながらカーテンを開ける。
そこには白いシャツの上に薄いピンクのノースリーブのニットを着て、下には黒いフレアスカートを着た東雲の姿があった。
「ど、どう?」
「……凄い綺麗だ」
「そ、そんなこと…ありがとう」
「めちゃくちゃ似合ってたぞ」
「そ、そうかな?自分ではよく分からないけど……花村に褒めてもらえたなら安心かな」
「おう。自信持てよ」
「うん」
「よし、それじゃあ次はこれなんてどうかな?」
「これは…ちょっと刺激が強すぎないか?」
「大丈夫だよ。ほら、こんな感じでどう?」
東雲は黒のキャミソールにデニムのショートパンツを履いていた。
「確かに東雲っぽいといえば東雲らしいな。俺は好きだけど」
「ならこれにする」
東雲は試着室に入り、元の服に着替える。
「花村、買ってくるから外で待ってて」
「分かった」
しばらくして会計を終えた東雲が出てきた。
「よし、それじゃあ次はどこに行こうか?」
「うーん……」
「花村はどこか行きたいところはある?」
「そうだ、CDショップに行かないか?」
「いいけど、どうして?」
「前に東雲が好きだって言ってたところがあったろ。そこの新作が昨日入荷されたみたいでさ」
「うん。覚えてくれていたんだ」
「そりゃあ、好きな人のことだからな」
「ふ〜ん。そうですか」
「あれ?照れてます?」
「うるさい」
「痛っ!殴ることは無いだろ!」
「ふん!」
「あはは……」
「あ、ここだよ」
「おお、すげぇ」
そこは様々なジャンルの音楽が流れる場所であった。
「私、よくここで色々聴いてるんだ」
「へぇ〜」
「何か気になるのあったら教えてあげるから」
「マジで?助かるわ」
「まずは、どんなの聴きたい?」
「そうだな……最近流行りの曲とかかな」
「じゃあ、これとかは?ちょうど新曲も出たばかりだし」
「あ、これ知ってる。良い曲だよな」
「うん。花村も好きだと思った。他にもいくつか持ってきているけど聴く?」
「もちろん。東雲のおすすめ聞きたいし」
「うん。任せて」
それから東雲はいくつかの曲を薦めてくれた。
「東雲ってさ、結構音楽の趣味幅広いよな」
「そうかな?」
「ああ。ロックだけかと思ってた」
「まあね。でも、私は色々なジャンルを聴かないと気が済まないタイプだから」
「なるほどね」
「花村は何を聴いているの?」
「俺?俺は最近はJ-POPばっかりかな」
「へえ、意外だね」
「そうか?」
「うん。どちらかというと洋楽のイメージがある」
「あ、分かる。なんかカッコいいもんね」
「東雲は洋楽の方が良いのか?」
「うーん……邦楽の方が歌いやすいから好きかな。英語の歌詞の意味もよく分からないし」
「確かにそれはあるかもな」
「それにさ、日本語の歌詞の方が心に響くっていうか……上手く言えないんだけどね」
「なんとなく言いたいことは分かるよ」
「うん。それでね、花村には私のオススメの曲を何曲か歌って欲しいなって思ってるの」
「お、まじで?」
「ダメ?」
「いや、むしろ大歓迎」
「良かった」
「あ、そういえば東雲はカラオケ行ったことあんの?」
「うーん……友達と何度か。でも、そんなに回数はないかな」
「そっか。じゃあさ、今度一緒に行こうぜ」
「いいよ」
「やった」
「ねえ、花村。今日は楽しかった?」
「ああ、めちゃくちゃ楽しいよ」
「なら、良かった」
「東雲は?」
「うん。私もめっちゃ楽しんでるよ」
「そっか」
「うん」
「なあ、東雲」
「どうしたの花村?」
「いや、これからどうしようかなぁって」
「どうするの?」
「いや、せっかくだしもう少し東雲と一緒に居たいなぁって思ったんだよ」
「花村の家に行ってもいいよ」
「まじで?」
「マジで」
「それじゃあ行くか?」
「うん。早く行こ」
「おう」
そして、2人は手を繋いで歩き始めた。
「なあ、東雲」
「どうしたの?花村」
「その……手繋がない?」
「もう繋がってるじゃん」
「いやまあそうなんだけど……」
「はい、これで良い?」
東雲は指を絡めるようにして握ってきた。
「あ、ありがとう」
「いえいえ」
「東雲ってこういうこと慣れてそうなのに慣れてない感じがするな」
「失礼な。私だって普通に緊張するしドキドキするよ」
「東雲が?」
「うん。悪い?」
「全然悪くないし可愛いと思うぞ」
「ふん!」
「痛っ!また殴った!」
「花村が悪いから仕方ない」
「理不尽だろ……」
「あ、そうだ。忘れるところだった」
「ん?」
「はい、これあげる」
「なんだこれ?」
「さっき買ったネックレス。花村に似合うと思って」
「おお、マジで?サンキュー」
「…別に、大したものじゃないし」
「いや、嬉しいよ。大切にする」
「うん。そうしてくれると私も嬉しい」
「東雲が選んでくれたものだもんな」
「そういう意味じゃない」
「分かってるよ」
「ふん!」
「痛っ!」
「ほら、早く中に入ろう」
「はいはい。了解です」
「ただいま〜」
「あれ、おばさんは?」
「お母さんは今日は夜勤でいないよ」
「そっか。とりあえず俺の部屋に行くか?」
「うん。分かった」
「適当に座ってくれ」
「はーい」
「あ、そうだ。東雲にプレゼントがあるんだ」
「え?なに?もしかして誕生日とか記念日でもないのに?」
「まあ、ちょっと待っててくれ」
「うん」
俺は急いで自分の部屋に戻り、東雲に渡すためのプレゼントを持ってくる。
「東雲、これやるよ」
「これは?」
「開けてからのお楽しみだ」
「ふ〜ん」
そう言いながら東雲は包みを開ける。
「これ……キーホルダー?」
「ああ。お揃いで付けようと思ってさ」
「ペアルックみたいになるけど大丈夫?」
「問題なし」
「そっか」
「嫌か?」
「嫌じゃない。凄く嬉しい。でも、こんなことされたの初めてだからビックリしただけ」
「それは良かった」
「花村、付けてみても良い?」
「もちろん」
東雲は俺から貰った猫のキーホルダーをバッグに取り付ける。
「どうかな?」
「めちゃめちゃ似合ってるよ」
「えへへ。ありがと」
東雲は満面の笑みを浮かべた。
「それじゃあ次は私の番ね」
「お、何かくれるのか?」
「うん。花村にはお世話になってるしね。はい、どうぞ」
そう言うと東雲は服を捲り上げて腹を見せる。
「ど、どうした?」
「……えい」
そう言いながら東雲は俺の頬をつねってくる。
「いてぇ!?」
「……花村、反応遅い」
「すまん……」
「はい、やり直し」
「わ、分かった」
今度はしっかりと東雲を見る。
東雲は真っ白な肌をしており、細いウエストをしている。
そして、そこには可愛らしい臍があった。
「どう?」
「最高です」
「よろしい」
「じゃあ、触っていい?」
「ダメ」
「そんなぁ……」
「はい、次どうぞ」
「分かりました……」
俺は恐る恐る東雲の腹部に手を伸ばす。
「んっ……」
東雲は少し体を震わせる。
「どうした?」
「なんでもないよ。続けて?」
「おう」
そして、俺は東雲の腹部に触れる。
とても柔らかい。いつまでも触れていたくなるような感触だった。
「東雲の身体めっちゃ気持ち良いな」
「……変態」
「なんでだよ?」
「花村のエッチ」
「いや、だって……」
「冗談だよ」
「全く……心臓に悪い……」
「ねえ、花村」
「なんだ?」
「もっと強く握って良いよ?」
「いや、流石に強く握ると痛いだろ?」
「私は痛くても良いよ」
「いや、良くないだろ」
「花村にならいいよ」
「東雲?」
「私、花村のこと好きだから」
「…………」
「花村?」
「ごめん……」
「どうして謝るの?」
「いや、だって……」
「花村、顔あげて?」
俺はゆっくりと東雲の顔を見た。その瞳は蠱惑的で、俺は吸い込まれそうになる。
「東雲……」
「うん。花村は優しいね」
「優しくなんてない……」
「ううん。花村は誰よりも優しいよ」
そう言って東雲は微笑む。
「ねえ、花村。キスしてもいい?」
「……まだ心の準備ができてません」
「私も。でも、したい」
「いや、でも……」
「お願い」
「……はい」
東雲は目を瞑る。
俺達は唇を重ねた。
「もう1回」
「はい……」
再び口づけを交わす。
それから何度繰り返したか分からないくらい何度もお互いを求めあった。
「他のところは触らないの?」
「どこを?」
「例えば胸とか」
「東雲が良いって言うまで我慢するよ」
「そう?じゃあ、もう少しだけ待ってね?」
「分かった」
俺がそう答えると東雲は嬉しそうな表情をした。
「耳、舐めてもいい?」
「うん」
俺は東雲の耳に舌を這わす。
「あっ……んっ……」
東雲は艶かしい声を上げる。
俺は東雲の綺麗な首筋にそっと触れる。
「んっ……ふぅ……」
東雲は体をビクッと震わせた。
「花村……そこ……ダメ……」
「本当に?」
「……本当」
「嘘つけ」
俺は東雲の首元を強く吸った。
「ああああああ!」
「ほら、やっぱり感じてるじゃん」
「意地悪……」
「さっきの仕返しだ」
「もぉ……」
「東雲、可愛いよ」
「ばか……」
俺は東雲をベッドに押し倒す。
「東雲、俺……」
「いいよ。きて?」
「分かった」
東雲は俺を受け入れる体勢をとる。
俺は東雲の中に挿入した。
「んっ!あぁ!!」
東雲は苦しげな声を出す。
「大丈夫か?」
「うん。大丈夫だから続けて?」
俺は腰を動かし始める。
「あぁ!!んっ……あんっ……んんっ……」
東雲はシーツを掴みながら必死に耐えている。
「東雲……好き……好きだ……」
「花村……嬉しい……私も……大好き……」
俺の動きが激しくなる。
「はなむら……もう…」
「愛してる」
そう言いながら肩に噛み跡をつける。
「だめ……イク……イっちゃう……はな……む……ら……すき……だいす……き……」
「俺も好きだ。ずっと一緒にいよう」
「あぁぁぁぁ!!!」
そして、2人で果てた。
「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
東雲は絶叫しながら潮を吹き出した。
「東雲、最高だったよ」
「はぁはぁ……」
東雲は荒く呼吸をしている。
「東雲?」
返事がない。どうやら気絶しているようだ。
俺は東雲の隣で横になる。
すると、東雲は抱きついてきた。
俺は東雲の頭を撫でる。
「お疲れ様」
そう言って軽くキスをする。
「ありがとう」
そして、俺たちはそのまま眠りについた。
***
目が覚めると既に昼を過ぎていた。隣には東雲が眠っている。
寝顔はとても穏やかで、まるで天使のような可愛さだと思った。
俺はしばらく見惚れていたが、起こさないようにそっとベッドから抜け出した。
シャワーを浴びてからリビングへ向う。
そこには東雲の姿があった。
「おはよう」
「おはようございます」
「身体、平気?」
「はい」
「良かった」
「あの、花村くん」
「どうした?」
「昨日のこと、忘れてください」
「え?」
「忘れてっていってるの」
「いや、無理だろ」
「どうして?」
「だってあんなに激しく愛し合ったんだぞ?忘れられるかよ」
「バカ……」
東雲の顔は真っ赤に染まっていた。
「東雲、こっち来て?」
「なに?」
東雲は不思議そうな顔をしながらもこちらに来た。
俺は東雲を抱き締める。
「ちょっと……」
「嫌か?」
「別にいいけど……」
「東雲、可愛いよ」
「ばか……」
そう言って東雲も俺のことを抱きしめてくれた。
「ねえ、花村」
「なんだ?」
「また、しようね?」
「そうだな」
「今度は私が上になってもいい?」
「それは流石に……」
「冗談だよ」
「心臓止まるかと思った」
「ふふっ」
東雲は悪戯っぽく笑う。
「次は譲ってあげないから」
「ああ」
俺達はもう一度強くお互いを確かめ合うかのように口づけを交わした。
不安である