山口県のゴジラ襲撃から、半年ほどたった。
兵庫県、淡路島でも1ヵ月前、テロがおきた。
複数名の武装した極左過激派集団が淡路島の戦略自衛隊駐屯地を襲撃。
その背後には中国軍の特殊部隊がいた。
過激派の手引きの元、中国軍は淡路島を不法占拠した。
午後13時
ミサトは急遽特別作戦に参加していた。
作戦内容は不法占拠した過激派・中国軍から基地を取り戻すことだ。
彼女と部隊は、目標の地点にたどりついた。
かつては米軍と共同でやっていたが、最近アメリカでのゴジラ被害が深刻であるためもう自衛隊単独でほとんどをしていた。
双眼鏡を持ったミサトは、見張りの兵士が何かを話している様子をみた。
日本人だ。
失語症にかかった彼女は、読唇術で相手の言わんとしていることを学ぶ技術を得た。
『異常はない。』
見張りの男は言っているようだ。
「日向君はここで待機しておいて、怪しい行動をみせたら狙撃での援助をお願い。」
ミサトの副官である日向は首を縦に振った。
眼鏡をかけた彼は眼鏡をふくと、スナイパーライフルで男たちをみつめていた。
ミサトは草むらに隠れた。
中国軍人と思われる男二人が報告をしている。
中国語特有の騒々しい喋りが耳を突き刺した。
ミサトは中国軍の男が草むらに離れていくのがみえた。
彼女は、男を追いかけるとサバイバルナイフを持ち背後に立った。
「…悪く思わないでね。」
ミサトはそういうと、サバイバルナイフで男の首を斬りつけた。
男は悲鳴もあげることなく、首に大きな傷を産むと息絶えていった。
すぐさま、その場から離れたミサトは物陰に隠れた。
「!!!!!」
先ほど報告していた同僚が男の死体をみつけた。
ミサトは愛用のハンドガンにサイレンサーをつけると、男の頭部を撃った。
男の脳味噌はぶちまけると、息絶えた。
それと同時だった。
ばごおおおおおん!!!!!
爆音だ。
恐らくは誰かが基地にある何かを爆破した。
これは戦いののろしだ。
中国軍は焦りながら、アサルトライフルを乱射していた。
ミサトはサイレンサーを取ると、草陰から中国軍の軍人を一人ずつ殺していった。
その時だった。
ミサトの背後に気配を感じた。
シャベルを持った男が鬼のように立っていた。
その時だった。
パァン!!!!
スナイパーライフルの音。
日向だ。
ミサトは見えない日向にサムズアップをすると、役場に向かっていった。
その後、ミサトは役場で人質を回収した。
そして、日向達と合流するとすぐさまヘリで淡路島を去った。
あとは、残された師団の兵士たちの仕事だ。
ヘリの中でミサトは大きな欠伸をした。
「あー疲れたわねー、日向くん。」
「怪獣と中国、おまけに過激派ですからね。」
日向は人質たちに水筒を渡した。
彼らは笑顔とともに、その水を飲んでいた。
あるものは涙も浮かべていた。
「あ、そうだ葛城さん。これが終わったら久々に…。」
「ごめんね、日向君。私今『カレ』がいるからさ。」
ミサトはウィンクをした。
日向はためいきをつき、残念そうな顔をした。
「最近付き合い悪いですよー。」
「ごめんね…えへへ。」
ヘリが芦屋自衛隊基地に戻った。
そうすると、ミサトはすぐさま降りた。
そして、迷彩色のジャケットを脱ぐとタンクトップに戻っていった。
ミサトの豊満な胸、筋肉質な上半身が露出していた。
「あっつー!!!フー!!!!!!!!」
その光景に思わず見とれる男子兵士は多くいた。
「んじゃ、日向くんあとはよろしく。」
「了解しました。」
ミサトはそういうと足早に去っていった。
そして、すぐさま私用の車に乗り去っていった。
ミサトは上機嫌だった。
そして、基地内部にある市街地を抜けると団地に向かっていった。
基地の殺風景な風景から、活気にある風景に代わっていった。
芦屋自衛隊基地・第七団地「コンフォート」。
ミサトは駐車場に車を止めた。
そこは、ミサト以外ほぼ住民のいない空いた団地だった。
ミサトは軽やかに車からでると、向っていった。
もう夜になっている。
ミサトは自身の部屋のドアを開けた。
するとそこには黄色の、エプロンをつけた少年がたっていた。
「も~遅いですよー!!!ミサトさん!!!!」
碇シンジだ。
山口県で助けた少年はミサトの元で暮らしていた。
ミサトはそのエプロンをつけたシンジに愛おしさを感じると、汗だらけのタンクトップのままシンジの体に抱きついた。
「あーン、シンちゃーん、だーいすき!!!!!」
「ちょっとー!!!!!」
シンジはいきなり抱きついてきたミサトから離れようとした。
だが、ミサトは抱擁を解く気はないようだ。
「うーん、もうかわいいっ!!!!」
「汗臭いですよ!!!ミサトさん!!!!ごはん作ってる最中だから邪魔しないでよっ!!!」
シンジは明らかに顔を赤くして照れていた。
この反応がたまらない。
彼が、意識していない時に何度も抱きついては反応を見るのが最近の趣味だ。
最高の酒の肴だ。
彼がいるから、明日も生きていけるミサトはそんな気がしていた。
「先にシャワー浴びてからじゃないとご飯はNGだから!」
「いけずなシンちゃん、あっかんべー!」
ミサトは舌をペっと出すとシャワーに入ろうとした。
シンジはその舌の赤さに一瞬ドキっとした。
無意識的なのか、意識してるのかわからないけどちょっとセクシーだ…。
すると、シンジに追い打ちをかけるようにミサトは言った。
「あと、シンちゃん…!」
「はい。」
「覗いたら、今日は寝るまでハグハグだから!」
「絶対に、覗きません!」
シンジは「どっちが大人なんだか。」とため息をついた。
そして、夜ごはんを作っていた。
シンジはだらしなく、生活能力が汚いミサトにウンザリしながらも姉に似た気持ちを抱いていた。
しばらくは怪獣の襲撃もなくのんびりとした日々をすごしていた。
ミサトはたびたびシンジの父親探しに付き合ってくれた。
上司に掛け合い、父の捜索願いを出し続けていたが、シンジは正直のりきではなかった。
盛り付けが終えるとエプロンを脱いだ。
同じ頃に、シャワーを終えると、普段着に戻ったミサトが戻ってきた。
「おまたせ、碇シンジ君。覗いてた?」
「…しつこい!」
シンジは不機嫌そうに言った。
ミサトは後ろから抱きつくと、耳元でささやいた。
「シンちゃんなら…覗かれてもいいけど?」
「いい加減にして!」
「わかったわかった。」
シンジとミサトは晩ごはんを手早く終えた。
その日はミサトが洗い物の担当だったが、ミサトはテレビで流れているアニメペンペンを観ていた。
「あっ!また片付けてない!ミサトさん!」
「あーごめーん。」
「って、ビールですか!!!ダメですよ!!!今日は禁酒日の約束でしょ!」
「ケチー!」
ミサトはテキトーに受け流していた。
そんな時だった。
ミサトのケータイ音が鳴り響いた。
「はい…え!?本当!」
ミサトはシンジをみて微笑んだ。
だが、その微笑みには含みがあった。
「シンジ君…あなたのお父さんがみつかった。」
「…!本当?」
シンジは驚いた
父とはあまりいい関係ではなかった。
父は母が死んで3日もしないうちに浮気をしていた。
どうしようもないクズだ。
家に帰ってくるのは月1回。
そんなのが生きていたのか。
「…そうですか。」
「嬉しくないの?」
「…父は好きではありません。」
そんなシンジをみて、ミサトは申し訳なさそうに言った。
「あのね、シンジ君…。」
ミサトは決意した。
時には厳しいことを言う方が、彼のためだ。
「お父さんは…死にかけているの。最期にあなたにあいたがっている。」
シンジの動きは止まった。
そして、一瞬ミサトを見ると固まった。
「嫌です!」
「シンジ君。」
「絶対に嫌です!!!死んでもごめんです!!!!あいつは・・・母さんに黙って浮気をしていた!!!クズ野郎なんですよっ!!!!」
シンジはその時思い出した。
ミサトはこの半年間ずーっと、父を探すことに協力してくれていた。
ミサトは悲しそうな顔をしていた。
「み、ミサトさん・・・ごめん。」
ミサトは微笑みを浮かべるとシンジの背部に回り腕をからみつけ耳元でささやいた。
「…シンジ君、実は…私は15年前、日本で起きたゴジラ騒動の最期の生き残りなの。」
「…。」
「私は、その時、父に助けられた。結局父は私を置いて死んでいった。死体もみつかっていない。なぜなら…父は東京の街と一緒に消し灰になってしまったから。」
シンジはみつめた。
ミサトはそれをただ受け止めるだけだった。
「私も父とは仲が悪かった…、父は母の事なんてずーっと放ったらかし。あなたのお父さんと一緒。でも、その最期は…会えなかったのは凄く今でも苦しく思ってる。」
ミサトさん、そうだったのか。
背中から巻き付いてるミサトの二の腕にふれると、握りしめた。
「行きます。」
シンジの言葉を聞いたミサトは笑顔になった。
「…じゃ、いこっか。」
首を縦に振った。
ミサトはジープをひっさげた。
そして、シンジを助手席に乗せ、そう遠くない場所にある病院を目指した。
基地をこえ、獣道に入った。
そこで、ポツンとたっていた病院は『坂本総合病院』とだけかかれていた。
多くの兵士がいる。
ミサトはジープを止めると、シンジを連れて院内に入った。
シンジはその時、病院にいる患者をみた。
片腕がない、目がない、顔の半分がない人もいる。
まるで野戦病院だ。
シンジは圧倒された。
「ここには山口県での被害者も多くきているの。」
ミサトはそういった。
シンジは周囲を見回した。
「あなたのお父さんは666号室にいるわ。」
「ミサトさん?」
ミサトの足が止まった。
ひとりで行けということか。
「いってらっしゃい。」
「はい。」
ここから先はシンジ一人で進むこととなる。
シンジは病室をわけすすむと、そこにあった。
666号室。
シンジは病室をはいった。
その時彼は何か焦げ臭いにおいがするのを感じた。
まるでポテトを焼き過ぎたような、埃は燃えていくような…。
「こっちだ。」
ぶっきらぼうなしゃべり声。
シンジは確信した。
父ゲンドウだ。
「早く来い。」
相変わらず偉そうだ。
シンジはカーテンを開いた。
そこには父がいた。
全身を黒いやけどで多い、肉が焼け焦げている父だったが。
眼はむき出し状態だ。
左目はもう焼けきえているのか、もうない。
まるで人体模型が焼けたような姿。
皮膚はアトピーが行き過ぎたように赤くなっているところもあれば、黒焦げになっている部分もあった。
服らしきものはない。
下半身も全て焼けている。
男性器は黒焦げになっていた。
まるで焼き過ぎたステーキ、あるいは犬のジャーキー、そんな姿だった。
焦げ臭いにおいがシンジの鼻を刺激し、吐きそうになった。
「うえっ!!」
するとゲンドウは皮肉そうな声で言った。
「吐いてもいいぞ。それでいい。」
声は父のままだが、掠れている。
弱弱しくなっている。
シンジはゲンドウに向き合った。
「父さん…。」
ゲンドウは数少ない目を動かした。
「シンジ、よく聞け…もう俺は死ぬ…長くない。」
「…そ、そんなことない!父さんは…」
「もういい、シンジ聞いてくれ。」
シンジは黙った。
「俺は、親父として…最悪だった。夫としても…恋人としてもな…だが、だからこそ最後にお前に会いたかった。」
ゲンドウの焦げだらけの腕はのびた。
もう骨しか残っていないのか、痩せ細っていた。
「お前を愛していた、シンジ。何もできなかったことを許してくれ。」
シンジは自分の耳が信じられなかった。
まさか、父さんは僕が好きだった!?
シンジはふと思い出した。
母が生きていた時言った福井の恐竜博物館。
恐竜のマネをして幼児のシンジをおびやかす父。
たしなめる母。
そうだ、ボクは愛されていた。
「覚えている、福井のこと…一緒に恐竜博物館いったよね。いいところだった。またいきたいなあ。」
シンジは微笑んだ。
ゲンドウはジャーキーのように焼け焦げて燻製のような状態になったアゴをゆっくり動かした。
「ああ…。」
その時だった。
シンジは何かを言おうとした。
「父さん僕は…。」
その矢先だった。
ゲンドウの体はビクリを反応した、黒焦げの死体はピクリを動くと何度も何度も痙攣した。
「父さん!!!!」
シンジは悲鳴を上げた。
すると医者と看護師が入ってきた。
「大丈夫ですよ!!!碇さん!!!」
「申し訳ありません、下がってください。」
シンジはベッドを後にした。
ふと、父の顔は笑っているようにみえた。
もう自分のやりたいことは達成したという安心感があるようにみえた。
だが、次の瞬間父は痙攣をおこしてベッドが大きくゆれるのがみえた。
シンジは待合室にいたミサトの元に戻った。
ミサトは立ち上がった。
「どう?」
シンジは首を横に振った。
「…そう。」
やがて、シンジとミサトは黙ったまま3時間ほどが過ぎた。
シンジは暗い顔をして顔を伏せている。
ミサトはそんなシンジを少しみていた。
カツカツ…。
靴の音。
シンジは顔をあげた。
医者だ。
医者は生唾を飲み込んでいた。
「…残念ですが、碇ゲンドウさんは…御永眠されました。」
シンジは大きくため息をついた。
そして、立ち上がると告げた。
「先生、ありがとうございました。」
そして、一礼をした。
ミサトもそれに続いて一礼をした。
その帰りの車の中、ミサトとシンジは一言も話さなかった。
家に着くと、ミサトは声が漏れてしまった。
「シンジ君…。」
シンジはミサトの方を見た。
「…あなた、ずっとここにいていいわよ。あなたの気が済むまで…。私それだけしか言えないわ。」
「ミサトさん。」
シンジはミサトの言葉に少し救われたのか、笑顔を作った。
そこに涙はなかった。
次回は、次の水曜日に更新します。