※この作品はR-18です。

エロRPGにTS転生した俺、快楽に身を委ねるかバッドエンド回避か、気持ち♥よすぎて♥困っちゃう♥   作:夕凪カサネ

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第2話 淫魔王ドゥームとミストの町

「あ、起きたんですかあ?」

 

 柔らかく、甘ったるい声が、聞こえてきた。

 

 ドアを開けて、部屋の中に女の子が入ってくる。エプロン姿の、素朴な雰囲気の、可愛い子だ。

 

「えっと、ここは……?」

 

 と、言ってから、自分の声にあらためてびっくりした。当たり前のことかもしれないが、女戦士ヒカリの声そのものだ。俺は、完全に、ヒカリになってしまっている。意識だけが俺、という奇妙な状態。

 

「ミストの町ですう」

「あの、そうじゃなくて」

 

 聞きたいのは、なんで現代日本にいた俺が、こんな中世ヨーロッパ風の世界にいるのか、ということである。

 

 まず間違いなく、俺はゲームの世界に転生した。そのきっかけは、あの隕石なのだろう。なんなら、直前まで「稲妻の戦士ヒカリ」をプレイしていた影響もあるかもしれない。

 

 それを、目の前の女の子に教わろうとして、やっぱり俺はやめることとした。彼女だって、聞かれても困るだろう。

 

「ああ、ここのことですねえ! ミストの町唯一の宿屋ですう。私は、ここの宿を営んでいるエレナですう」

「私、なんでここに?」

「うちの宿屋の前で、倒れていたんですよお。だいぶ弱っていたみたいなので、勝手に連れてきて、休んでもらってましたあ」

「ありがとう。ところで、ミストの町、って言ったよね」

「ええ、そうですう」

「エレナ。教えて。淫魔王ドゥームはこの先の塔にいるの⁉」

 

 脳内では、「この先の塔にいるのか⁉」と男口調で聞いたつもりだったが、実際に喉から発せられたセリフは、ヒカリらしいまろやかな言い方になっていた。どうやら、頭の中で考えることと、言葉となって出てくるものは、違ったものになるらしい。

 

 それはさて置き、淫魔王ドゥームである。

 

 このエロゲ「稲妻の戦士ヒカリ」シリーズ一作目における、ラスボス。元々は淫魔インキュバスであったのが、邪神の力によって魔王と化してしまい、無数の触手がうごめくおぞましいモンスターとなったのだ。

 

 そして、このドゥームによって、ミストの町は壊滅状態となり、若い少女達はみな拉致されて、女性の愛液を食糧とするドゥームのために、果てなき調教地獄を受ける羽目となってしまい……

 

 その一連の話を聞いて、なにそれ許せない! と発憤して、ドゥームの塔へと少女達を助けに行くのが、第一作目のオープニングである。

 

「淫魔王ドゥーム……!」

 

 たちまちエレナは眉を曇らせた。なんだか目が泳いでいるようにも見える。

 

「どうして、その名を、ご存知なのですかあ?」

「やっぱり。ドゥームに襲われた直後なのね、このミストの町は」

「はい……つい一ヶ月ほど前、モンスター達が押し寄せて……あっという間でしたあ」

「若い女の子達がさらわれた。そうでしょ」

「すごい。なんでもお見通しなんですねえ、あなたは」

 

 それから、エレナは、俺の目を覗きこんできた。

 

 透き通るような水色の瞳。どこか幼さを感じさせつつも、底には知性を漂わせている。綺麗だ。

 

「えっと、そういえばあ、あなたのお名前はあ?」

 

 俺か? 俺は、ヒカル……

 

「私? 私はヒカリ。遠く東の島国から旅してきて、この大陸にやって来たの」

 

 うおおい、そう来るか。俺個人のことを語ろうとすると、勝手に、ヒカリ専用のセリフに変換される。

 

「ヒカリさん。いい名前。ヒカリさんはこれからどうされるんですかあ?」

「どうするか、か……」

 

 さて、困ったぞ。

 

 と思った瞬間、目の前の空間に、ピッという電子音とともに、いきなり文章が浮かんできた。

 

▷「ミストの町を救う」

 「黙ってこの町を去る」

 

(え? こんな選択肢があるなんて、聞いてないって!)

 

 どちらかを選べというのだろうか。

 

 こんな選択肢、「稲妻の戦士ヒカリ」の冒頭には存在しなかった。すでにオープニングの時点で、ヒカリはドゥームの塔の前に立っており、中へと突入する寸前になっているのである。そもそも迷いを抱くことはなかった。

 

 だけど、いま、俺には二つの道が突きつけられている。

 

 町を救うか、この町を去るか。

 

(町を救う、ってなったら、ドゥーム達と戦わないといけないんだよなあ……)

 

 そうなったら、ゲームを遊ぶように、とんとん拍子でレベルアップして、なんの危うさもなくダンジョンを攻略、なんてこと出来るようになるのだろうか。いまいち自信がない。万が一、うっかり負けでもしたら、待ち受けているのは調教の日々。最後は肉奴隷となって終わる。ゲームの世界の出来事なら、単なる抜きポイントで終わるだけの話だが、自分がもしも誰かの奴隷になる、と考えると話は別だ。

 

 「ミストの町を救う」

▷「黙ってこの町を去る」 ピッ

 

 念じただけで、カーソルは動いた。

 

 どうやらこの選択肢の文章は、エレナには見えていないらしい。彼女は、急に黙りこんだ俺のことを、不思議そうに見つめている。

 

(でも、これがゲームのオープニングだったら、町を去る選択肢なんて選んだら、間違いなくバッドエンドなんだよなあ)

 

 ふつう一般のゲームは、そういうものだ。その先のストーリーなんて用意してもらえない。

 

 じゃあ、「稲妻の戦士ヒカリ」の場合は、どうなる? もしも町を去ることにしたら、その瞬間、俺のゲーム内人生は終わりを告げるのか? 試しに選ぶ、なんて軽率なことをしてしまっていいのか?

 

 と、悩んでいる内に、突如、ブブー! という警告音とともに、選択肢はカーソルごと消えてしまった。

 

「あはは、目が覚めたばかりで、まだ頭も働いていませんよねえ。わかりました、いまはまだゆっくりしていてくださいねえ」

 

 エレナはそう言って、にこやかに手を振ると、部屋から出ていった。

 

 残された俺は、ぽかんとした表情で、突っ立ったままでいる。

 

「え⁉ なに、これ⁉ 選択肢を選ばない、っていう選択もあるの⁉」

 

 いまどきのゲームでは当たり前のようにある機能。第三の選択肢。しかし、大概の場合は、用意された選択肢を選ぶ前に時間切れとなったことについての、ペナルティのような結果が待っている。

 

 果たして、選択肢を選ばなかったことによる結果は、どんなものになるのか……?




読んでいただきありがとうございます! 引き続き、宜しくお願いいたします!
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