エロRPGにTS転生した俺、快楽に身を委ねるかバッドエンド回避か、気持ち♥よすぎて♥困っちゃう♥ 作:夕凪カサネ
夜になった。
神殿の中は月明かりもささないので、基本、真っ暗だ。
とりあえず、薪になるものを俺とマキナは集めて、火をつけた。
「さむ……!」
ここは東南アジア風の世界観であるから、てっきり夜も暑いのかと思っていたら、やたらと寒い。遺跡の内部だから、というのもあるんだろう。俺がブルッと体を震わせると、マキナは布を持ってきて、後ろからかぶせてくれた。
うおお、すごい気遣い。イケメンのやることだ。事実、マキナの転生前の男は、イケメンだった。うっかり惚れてしまいそうになる。
いやいや、だけど、お互い元々は男同士なんだ。そんなこと考えるのはキモすぎんだろ。
「しかし、驚いたぜ。オレ以外にも、まさか転生者がいるなんてな」
対面に座ったマキナは、遺跡内で捕まえた蛇を串に刺したものを、火にあぶり始めた。蛇料理なんて初めてだけど、あれ、食えるのか? 俺がちょっと引き気味に、マキナのことを見つめていると、彼女はフッと微笑んだ。
「意外と美味いんだぜ、蛇肉。食わず嫌いしないで、食べてみな」
「す、すごいわね……そんなの食べようっていう発想が、まず出てこないから……」
「ウォーキング・デッド、観たことあるか? オレは全シーズン観てるぞ。あれ、面白いから、元の世界に戻ったら観てみな。ってか、お前、その喋り方はなんとかならないのか? お前も元々は男なんだろ」
「う、うん、そうだけど……しょうがないの、自然とこの喋りになっちゃうから」
「そういう意味じゃあ、俺はラッキーだったな。炎の戦士マキナは、オレっ子だから。たぶん、ゲームの設定に合わせて、オレも喋り方が若干変化しているんだろうけど、自分ではわからない」
「いいなあ……」
「しかし、まあ、色々と衝撃だぜ。オレは、神様とやらにまだ会ってないからな。わけもわからないまま、このゲームの世界に放り出されて、サバイバル生活、ってところだ。種明かししてもらえているお前は、かなり優遇されてるみたいだな」
「そうでもないわよ」
はあ、とため息をつく。
パチッ、と薪の爆ぜる音が聞こえた。
「しょっぱなから敵ボスに犯されて、ゲームオーバーになって、さっそく神様に存在をデリートされそうになったんだから。ほんと、容赦ない」
「のっけからヤられるとか、すげえな。修羅の国か」
「もう、むちゃくちゃ。最終的に、私、ラスボスの子どもまで産んじゃったんだから」
「ボテ腹エンドとはヘビーだな。『稲妻の戦士ヒカリ』にそんなエンディングはないのに」
「ほんと、それ」
もう一度、俺はため息をついた。
でも、なんだかんだで、すごくホッとしている。俺と同じ転生者が目の前にいるからだ。この先もずっと俺一人だけだったら、耐え切れずに潰れていたことだろう。それが、同じ転生者で、しかも「稲妻の戦士ヒカリ」についてのオタ話が通じるという気の合いよう。
未来に希望が出てきた。
「ところで、お前は、『炎の戦士マキナ』をプレイしたことはあるか?」
「あー……それは、まだなの」
「なんだよ。もったいない。ゲームとしてはそこそこしっかりしてるぞ」
「シミュレーションRPGだったかしら」
「そーそー。昔ながらのヘックス戦。けっこう演出とかもしっかりしていてな……」
マキナは嬉しそうに、「炎の戦士マキナ」について語っている。
あー、もったいない。こうして見ていると、サバサバした男前の綺麗系お姉さんなのに。中身は、男なんだよなあ……しかも、クーリアに、見せられちゃったし、元々の姿を。その記憶さえなければ、抱かれてもいいくらい……
って、おいおい、何を考えてるんだよ!
すっかり俺は、「稲妻の戦士ヒカリ」の淫靡な世界に毒されてしまったようだ。油断すると、エロのことばかり考えてしまう。マキナにしたって、当然、今晩レズプレイが始まるものと覚悟していた。でも、相手はそんな気配を全然漂わせてこない。「炎の戦士マキナ」にどれだけエッチシーンがあるのか知らないけど、どうやら、「稲妻の戦士ヒカリ」のように、エロに次ぐエロ! というわけではなさそうだ。
蛇肉も食べ終わったところで、うーん、とマキナは背伸びした。
「さて、そろそろ寝るぞ。明日に備えて休んでおかないとな」
「う、うん」
心のどこかで、マキナとエッチなことをするのを期待していた俺は、ちょっと拍子抜けしてしまった。
火はそのままにして、マキナは布を敷き詰めた簡易な布団の上に横たわった。
俺も、同じく横たわる。地面のゴツゴツが重ねた布の下からも浮き彫りになっていて、なんとも落ち着かないが、それでも久々のゆったりした時間に、気持ちもリラックスしていた。
「なあ、元の世界に戻りたいか?」
「え?」
「俺は戻りたいと思ってる。やっぱり吉牛が食えない世界なんて、味気ないからな。お前は牛丼、食べたくないか?」
「あ……食べたい、かも」
さっき蛇肉を食べたばかりなのに、急にお腹が減ってきた。蛇肉も意外とジューシーで悪くなかったけど、牛肉にはかなわない。牛丼が食べたい。つゆだくの肉増しで、ガッツリと……。
「早くまた食べたいな。ネギだく牛丼」
「ネ、ネギだく⁉」
「なんだよ、美味いんだぞ、ネギたっぷりで」
「私はネギよりもお肉が欲しいかな……」
「ふーん。お前ってさ、元の世界だといくつなんだ?」
「十七歳」
「若っ! 俺は三十五歳だぜ。もうオッサンだよ、オッサン」
「ううん、三十五歳だったら、まだまだじゃない」
「ははは。一回り以上年下に、そんな風に慰められるなんてな」
マキナは快活に笑った。
元の世界では、燕尾マキオ、って名前だったっけ。いい人そうだ。歳の差はあっても、すごく仲良く出来そうな予感。安心できる。
安心したからか、俺は眠気を感じ始めていた。スッと目を閉じ、意識が眠りの世界へと落ちていく。
いつしか、俺は夢を見始めていた。
それは元の世界での、さえない学校生活を思い出すような内容だった……。