エロRPGにTS転生した俺、快楽に身を委ねるかバッドエンド回避か、気持ち♥よすぎて♥困っちゃう♥ 作:夕凪カサネ
夢の中で、俺は、学校の教室にいた。
自分の席でぼんやりと座っていると、クラスで一番のお調子者――というと聞こえはいいが、俺のようなタイプからしてみれば、デリカシーに欠けるうざったい男――である池田が、バシッ! と後ろから、俺の頭を叩いてきた。
「うぇーい、ヒカルー。どうよ最近、ゲームやってんのー?」
池田はチャラついた動きで、俺の前に回り込んで、椅子に座った。
うざい、どっか行け。
そういう風に強く言えたら、どんなにか、気持ちがいいだろうか。
でも、俺は、言い返せない。
「あ、ああ、やってるよ、ゲーム」
「マジかよ、暗えー」
ケタケタと池田は笑い声を上げた。
なんだよ。お前が聞いてきたから、答えたんだろ。
しかし、悔しいけれど、俺はこういう相手に対して、気が弱い。強く出られないのだ。
ああ、それにしても、もしも池田が、俺が「稲妻の戦士ヒカリ」なんていう古いエロゲーを熱心に遊んでいると知ったら、どんな感じでからかってくるだろうか。やはり馬鹿にしてくるのだろうか。それとも、本気でドン引きするのだろうか。キモッ、とか言いかねない。
と、池田は、なぜか勝手に俺のカバンの中をあさり始めた。
「お、おい、何するんだよ!」
さすがに俺は、これについては抗議の声を上げた。
池田は気にすることなく、カバンの中に手を突っ込んで、ガサゴソと中身を掻き回すと、ゲームのパッケージを取り出した。なんと、それは、「稲妻の戦士ヒカリ」のパッケージだった。古い時代、Windows95専用のCD-ROMであり、コンパクトなケースに収まっている。
なぜ、俺は、こんなものを学校に持ってきたのか。
夢の中だから、理屈は抜きなのだろう。とにかく持ってきてしまったのは事実だ。
「うえええ! なんだ、これ! マジオタクじゃん! キモッ! キモッ!」
池田はパッケージを振り回しながら、教室の中を駆け回り始めた。
「見ろよ! ヒカルのやつ、こんなの持ち歩いてるぜ! 超キモくね⁉」
たちまち、やつの取り巻きがワラワラと集まってきて、一緒になってギャアギャアと騒ぎ出した。
「おえー! こんなキモいの遊んでんのかよ!」
「ダメじゃん! ヒカル、ヤバいじゃん!」
「うひゃひゃひゃひゃ! すげー! ド変態だろ!」
俺は顔を真っ赤にして、取り巻き連中の中に飛び込み、「稲妻の戦士ヒカリ」を取り返そうと腕を伸ばした。
だが、池田が前に立ち塞がり、ドンッ、と胸を突き飛ばした。
俺は吹っ飛ばされ、尻餅をつく。
「いったあ!」
「『いったあ』だって! 言い方、女子かよ! ぎゃははは!」
怒りがこみ上げてくる。ここまでからかわれるいわれはない。許せない。俺は拳を握り締め、立ち上がった。喧嘩なんて、小学生のころにやったことがあるくらいだ。いつも連戦連敗。いじめられてばっかの日々だった。中学の時は多少マシだったけど、高校になってから、また暗黒時代が始まった。
池田。こいつさえいなければ。
もう、殴りかかってやろうか――と身構えたところで、
「何を騒いでるの」
学級委員長の女子、アスカさんが、俺達のいさかいの場に割りこんできた。黒髪ロングの、いかにも真面目な学級委員長、といった風情のアスカさんは、険しい表情でツカツカと入ってくると、「稲妻の戦士ヒカリ」のパッケージを池田の取り巻きから奪い取り、しげしげと眺めた。
「ふうん。これ、誰が持ってきたの?」
全員、迷わず、俺のことを指さした。
うわあ、マジか……学年一の美少女と評判の、人気の学級委員長アスカさんに、まさか俺の趣味がバレてしまうなんて……
「ヒカル君って、こういう趣味があるんだね」
「あ、あの、それは……」
「いいじゃない。別に。私は偏見ないよ」
「いや、その、えっと……」
「私のお父さん、小説家だから。エッチなのもいっぱい書いてるし」
おっと、そう言えば、アスカさんの親父さんって、そこそこ名の知れているライトノベル作家だった。あまり売れてないらしいけど、名前だけは有名だ。
「うおおーい、委員長もド変態かよぉ」
池田が好色な眼差しでアスカさんのことを見ながら、はやし立ててくる。エッチなのを書いているのは、アスカさんじゃなくて、アスカさんの親父さんだというのに、この短絡思考バカの池田は、自分の都合の良い方向へと強引に話を持っていくのだ。
「そうよ。ド変態。お父さんの小説よく読んでるから、エッチなことに興味あるの。それの何が悪いの?」
スパッと切れ味良く言い返すアスカさん。その堂々たる態度に、池田は何も反論できずにいる。
俺は、これが夢の中の光景であることを、どこかで自覚している。記憶の風景ではない。勝手に俺のイメージでねつ造したやり取りだ。アスカさんの親父さんがラノベ作家というのは本当だけど。
そして、俺は思い出した。この世界に飛ばされてきて、すっかり忘れていたけど、アスカさんのことが好きなんだった。こういうさっぱりした気持ちのいい女の子とお付き合いしたいな、と思っていた。
ああ……戻りたいな、あの世界に……
池田みたいなろくでもない野郎はいるけど……それでも、アスカさんみたいな素敵な子もいる……元の世界、悪くはない……
そんなことを考えているうちに、意識は現実へと引き戻され――
夢からさめた。