エロRPGにTS転生した俺、快楽に身を委ねるかバッドエンド回避か、気持ち♥よすぎて♥困っちゃう♥ 作:夕凪カサネ
「おう、寝ぼすけ。そろそろ朝メシできるぞ」
ジュウジュウと、フライパンの上で、目玉焼きが焼かれている。
マキナは手慣れた手つきで、皿の上に目玉焼きを乗っけると、俺の前へと置いてくれた。
すごくいい香りが漂ってくる。
「元気の出るハーブも混ぜてみた。口に合うかわからないけどな」
「あなたって、料理も出来るの?」
「一人暮らしが長いからな。自然とおぼえた」
ドッカと豪快に地面に座ったマキナは、自分の目玉焼きを食べ始めた。その食事の様子を見ていると、なんだか腹が減ってくる。
俺も自分の皿を引き寄せ、身を起こすと、木彫りのフォークを使って目玉焼きを口の中へと運んでいく。
美味い。スパイシーなハーブと目玉焼きは相性抜群だ。
「すごいなあ……色々知識もあって、料理も出来て……しかも、イケメンだなんて」
「褒めてもらえるのはありがたいが、オレは、ただの孤独なオタクのプログラマーだ。いくら能力を磨いたところで、人に認められなければ意味がない」
「こんなに優秀なのに? 認められないの?」
「社会ってやつは、めんどくさいもんでな。頑張っているかどうかより、人付き合いが上手いかどうか。それで評価が決まっちまうんだよ」
そういうもんなのか、と俺は思った。
日常生活で目につくのは、それこそユーチューバーとか、芸能人とか、そんな風に華々しく表舞台で活躍している人々なので、それなりに才能があって努力をすれば、いくらでも日の当たる世界へと出られるものだと思っていた。
だけど、マキナのように、ちょっと一緒に過ごしているだけでも、優秀さの片鱗を感じさせる人であっても、人に認められない。
人付き合いが上手いか、下手か、か……
「はあ……」
俺は思わずため息をついていた。
「どうした? ため息なんてついて」
「うん……ちょっと、気が滅入るような夢を見たから」
「どんな夢だ」
「元の世界での、高校生活。私、クラスではカーストの下のほうだから、しょっちゅう絡まれて、からかわれて、イジメの一歩手前のような目にあってきた。そんな、いやな思い出が、夢となって現れたの」
「へえ。オレからすれば、それこそ、いまのお前を見ていると実感湧かないけどな」
「どうして?」
「だって、どう見てもヒカリでしかないからな。稲妻の戦士ヒカリが学校ではスクールカーストの下のほうです、なんて言われても、いまいちピンと来ない。こんな美少女が学校にいたら、みんな心奪われちまうだろ」
「私、中身は男なんだけど」
「知ってるよ。だけど、オレは、本当のお前を知らない。いま、オレの目の前にいるのは、稲妻の戦士ヒカリだ」
「あーあ……このままヒカリでいられたらいいのになあ」
「それだよ」
「どれ?」
「このままヒカリでいられたらいい、って気持ち。オレも同じだ。けっこうマキナとしての自分を気に入ってるんだ。だから、元の世界へ戻りたいとは思うけど、それは本来の姿である燕尾マキオとしてではなく、マキナのままでありたい、と思ってる」
「そ、そんなこと、できるの⁉」
「知らないけどな。できるんじゃね? っていうか、オレ達、隕石で潰されて、命を落としたんだぜ。もう元の肉体はグチャグチャになって使い物にならないだろ」
ヒカリの体のまま転移できるのなら、どんなにかいいだろう。
こんな絶世の美少女だ、さぞかしチヤホヤされることだろう。それはとても心地良いことに違いない。スクールカースト底辺の俺からしてみれば、ものすごい待遇の上昇だ。
「じゃあ、マキナはその姿のまま、元の世界へ転移しよう、って考えているわけなのね。何か当てはあるの?」
「ひとつには、オレ達をこの世界へ招き入れた神様を利用する方法だな。でも、そいつはかえって確実ではない。なんやかんや、お前の話を聞いていても、神様連中は気まぐれみたいだしな。いまいち信用できない」
「他に方法は?」
「わからない。けど、こんな幻想世界だ。何でもありだと、オレは思ってる。それこそどっかの大魔法使いとかが、異世界転移の魔法を知っていたりするかもしれない」
「じゃあ、まずは情報収集ね」
「そういうこと。とはいえ、できればゲームの世界の中で完結したいところではあるな」
「ゲームの世界の中で完結? それって、つまり? 」
「悪い、言い方がわかりにくかったか。正確には、オレ達が知っているゲームの世界、ってことだ。これはオレが感じていることなんだが、他にも色んな世界と、オレ達がいまいる世界は、地続きになっているようだ」
「色んな世界……?」
「ゲーム由来の世界だけじゃない、ってことだよ。小説やアニメ、漫画……ありとあらゆるジャンルのものが、ごちゃ混ぜに組み合わさって、ひとつの巨大な世界が出来上がっている。そういうことだ」
「じゃあ、例えば、いま私達がいる『炎の戦士マキナ』の世界から、一歩外へ踏み出せば、下手したら全然知らない作品の世界へと入り込んでしまうかもしれない、ってこと?」
「ああ。そこがどんな世界であるかわからない以上は、むやみやたらに情報収集のためだからって、足を運ぶのは危険すぎるな。だから、オレ達が知っているゲームの世界で、何もかも完結させたいところではある」
はえー、と俺は内心感心していた。
やっぱり、マキナは優秀だ。こんなにも色んなことがわからない中で、冷静に状況を見極めて、自分なりの結論を出している。
これが社会人経験豊富な大人の力ってやつか。
「さ、朝メシ食べ終わったら、すぐに出発するぞ。準備しておけよな」
いつの間にか目玉焼きを食べ終わっていたマキナは、早くも立ち上がり、荷物をまとめ始めた。
俺もまた、慌てて残っている目玉焼きを平らげるのであった。