エロRPGにTS転生した俺、快楽に身を委ねるかバッドエンド回避か、気持ち♥よすぎて♥困っちゃう♥ 作:夕凪カサネ
「水の戦士⁉ それって、水の精霊の加護を受けている、ってこと⁉」
「そーだよ。オレらと同じだな」
「え、うそ、このスピンオフの作品で、炎の戦士と水の戦士が、一気に揃うなんて、思ってもいなかった」
「ダブルヒロイン的な感じで、タイトルこそ『炎の戦士マキナ』だけど、実はもう一人レベッカもいるんだ。そこがまたこのゲームの面白いところ」
「それで、いま目の前で起きているのは、そのレベッカが仲間になるイベント、ってことなのね」
「ああ。というわけで、ちょっくら加勢してくるぜ」
とうとう剣を抜いて、キレ始めたスキンヘッドの男。
それに対して、レベッカは動じることなく、物静かに、相手している。
一触即発の雰囲気の中、マキナはのんびりとマイペースに、二人の間へと割りこんだ。
「ちょっと失礼。邪魔するぜ」
「なんだ、てめえは!」
「オレはマキナ。人呼んで『炎の戦士マキナ』。よろしくな」
「邪魔するな! これは、俺と、そこのレベッカの問題だ! 部外者は引っ込んでろ!」
「そういうわけにもいかねーよ。レベッカはオレの嫁だからな」
「は……⁉ よ、嫁……⁉」
スキンヘッドの男は戸惑う。
レベッカもまた、無表情のまま、「?」と首を傾げた。
「私、あなたとは初めて出会ったのだけど……」
「オレは、前からお前のことを知ってたぜ、レベッカ」
「どうして、私の名前まで知ってるの……?」
「ファンだからな」
「ファン……?」
ああ、なるほど、と俺は理解した。
マキナが放った「オレの嫁」発言は、本当にレベッカがお嫁様ということではなく、いわゆるオタクが推しキャラに萌えている心をひと言で表すときに使う表現としての「オレの嫁」なのだろう。
つまり、マキナは元の世界で、このゲームに相当入れ込んでいた、ということになる。まさか、メインヒロインであるマキナよりも、サブヒロインであるレベッカのほうが推しだったとは。
「喧嘩なら、オレが買うぜ」
「だから、なんなんだよ、お前は! 俺はダンジョンに潜った報酬として、正当な取り分を要求しているだけだ! それを、レベッカが拒んでやがるだけだ! 俺は何も悪いことはしてねーよ!」
「いいや、お前が悪い」
「はあ⁉」
「こんなに可愛いレベッカが、悪いことをするはずがない。つまり、悪いのはお前だ、ということになる」
すごいレベッカにメロメロじゃないか、マキナ。
「うるせえ! 殴るぞ!」
と言いながら、スキンヘッドの男は躊躇することなく、マキナへ向かって殴りかかってきた。
その拳を、パシッ! と手の平で真っ向から受け止めると、そのままグイッと手を捻って、男の腕をあらぬ方向へとねじ曲げた。
「いてててて⁉ いってええ!」
腕をひねり上げられたスキンヘッドの男は、悲鳴を上げて、痛みを訴えている。
その一連のアクションは、すごく格好いい動きだった。マキナ、なんて呼び捨てにしている場合じゃない。リスペクトを込めて、マキナさん、と呼ぶべきだと俺は感じた。
「な、なんだよ! ちくしょぉ! 離せぇ!」
「やだね。だって、離したら、お前はレベッカに殴りかかるだろ? オレの嫁にそんなことはさせねーよ」
「うおおおお!」
なんとか気合と根性で、マキナさんの腕を振りほどいた男は、腰に帯びている剣を引き抜くと、マキナに向かって斬りかかる。
怒りで我を忘れているスキンヘッドの男に対し、マキナさんは手から炎をボンッ! と出して、威嚇する。ほんの一瞬、男は攻めかかるのを躊躇したが、一度刃を向けた以上、引っ込みがつかなくなり、わああ! と叫びながら、マキナさんへの攻撃を続行する。
その顔面に、どこからともなく飛んできた水が、バシャッ! とかかった。
ポタポタと水滴を垂らしながら、男はポカンとした表情で突っ立っている。
水は、レベッカの手から放たれたものだ。
「みんな……落ち着いて……」
心底面倒くさそうな表情で、レベッカはクールに言い放つ。
そんな彼女を見て、マキナさんはゾクゾク、と体を震わせた。相当萌えているようだ。
「いいぜ、それそれ、そのセリフ、その声。たまんないな、レベッカ」
「さっきから……なんなの……?」
「よし、この際だから言うぜ」
ズイッ、と顔を突き出し、レベッカを真正面から見据えたマキナさんは、いきなりとんでもないことを口走った。
「マジで、オレの嫁になれ!」
「……はい?」
本気で困惑の表情を浮かべて、レベッカはそんな風に冷たく返してきた。
いや、その反応、無理もない。俺もかなり混乱している。これまで、大人びていて、しっかりものだったマキナさんのイメージが、どんどんガラガラと崩れていく。
「いや、ほんと、好きなんだよ、お前のことが。ずっとずっと、こういうチャンスが来ないかなって、思っていたんだ。そうしたら、まさかの本物に出会えて、嬉しいやら、なんやら」
「どこで私のことを知ったの……?」
「それはな――」
ちょっと待ったああ!
俺は慌てて、マキナさんの腕を引っ張り、レベッカの前から引き剥がした。そして、お互いにヒソヒソ声で、感情的にぶつかり合う。
「おい、なにすんだよ……!」
「あなた、いま、異世界転生のことを話そうとしていたでしょ……!」
「悪いのかよ、話して……!」
「相手はゲームの世界のキャラよ……! 厄介なことになるかもしれないじゃない……!」
なんとなく、俺達が転生者であることは、この世界の住人に知られてはいけないような気がしていた。