エロRPGにTS転生した俺、快楽に身を委ねるかバッドエンド回避か、気持ち♥よすぎて♥困っちゃう♥ 作:夕凪カサネ
「ねえ……さっきから、何をコソコソ話しているの?」
レベッカは眉をひそめて、俺達のことを見ている。
このクール系美少女に睨まれるのは、悪い気がしない。静かで落ち着いた喋り方も魅力的だ。なんなら彼女に罵られたら、それはそれでゾクゾクしそうな気がする。マキナがハマっている気持ちもよくわかる。
「ううん、なんでもないの! ただ、私達は、旅の戦士なんだけど、仲間を探していて」
「もしかして……私のことを、スカウトしたいとか、そういうこと……?」
「そーそー! 一緒だったら冒険とかも楽だと思うし――」
いきなり、俺達の真横で、スキンヘッドの男が椅子をドカッ! と蹴り飛ばした。
いけね、こいつのこと、すっかり忘れてた。
「ざけんな……! 俺の顔に水なんてかけやがって! ぶっ殺すぞ!」
怒りで顔を真っ赤にしているスキンヘッドの男。頭が禿げているから、なんだか茹で蛸みたいだ。
「うるせー!」
マキナさんがキレた。
「てめーみたいなモブがいつまでもでしゃばってくるんじゃねえよ! いま、レベッカの貴重な生ゼリフを堪能しているところなんだ! 静かにしてろ!」
「モ、モブだとぉ⁉ 俺をそこらへんの有象無象と一緒にするな! 俺の名は――」
勢いで名乗りを上げようとしたスキンヘッドの男だったが、黙れ、とばかりに、マキナさんが男の腹に思いきり蹴りをぶち込んだ。ぐふう、と男は呻き、あっさりと膝を折って、その場で崩れ落ちる。
「それで……? どうして、あなたは私のことを知っているの?」
あ、レベッカが話を元に戻してきた。
この話題はあまり掘り下げないでほしい。マキナさんは、ともすると、異世界転生のことを平気で話しそうになる。このゲームの世界の住人達に対しては、あまり転生については言わないほうがいい気がする。この世界の外にも世界がある、と知ったとき、ゲームのキャラ達はどんな変化を迎えるのだろうか。あまりよくない影響を与えそうだ。
「ゆ、有名人だから」
正直、レベッカが有名な人物かどうかなんて知らないのだけど、適当に言ってみることにした。
ちょっと疑わしそうな顔で、俺のことを見てきたレベッカだったけど、その顔がちょっと緩んだように見えた。
「ふうん……私、有名なんだ……」
あれ、なんだかちょっと嬉しそう。意外とノリが軽いのか。
「私の力が、必要なの……?」
チラッチラッとレベッカはこっちを見ている。なんだか仲間になりたそうな雰囲気だ。けっこう、この子、いい子かもしれない。
「必要! 必要だ! ものすごく必要!」
もはや興奮しすぎて、マキナさんは語彙力を失っている。
「まあ……そこまで言ってくれるのなら……仲間になってあげても、いいかも……」
ちょっと照れくさそうにレベッカは言う。
こうして、水の戦士レベッカが、俺達の仲間に加わった。
「稲妻の戦士ヒカリ」シリーズは、基本的にはヒカリ一人だけで冒険している。仲間、という概念は三作目で初めて登場するが、その三作目では一緒に戦うというより、ヒカリと融合してその力になるというものだ。いわゆるパーティを組む、というようなものではない。
だから、こんな風に仲間が入ってくるのは、すごく新鮮だった。
「とりあえず、オレ達のテーブルに来な。今日はオレがおごるから、好きなもの食べてくれ」
「ありがと……」
相変わらずクールな表情で、何を考えているのかわかりにくいレベッカだが、どこか嬉しそうな雰囲気は漂わせている。
ちょこんと椅子に座ると、次々と注文をし始めた。さっきまで自分の席で、何か食べていたであろうに、さらに追加で食事を頼み始める。けっこう食いしん坊なのかもしれない。
「オレはマキナ。こっちはヒカリ。よろしくな、レベッカ」
「うん、よろしく……。それで……あなた達は、なにか目標とかあるの……?」
さっそく運ばれてきたキャベツのスープを飲みながら、レベッカはそう尋ねてきた。
「目標?」
「なにか欲しい財宝があるとか……お金をいくら稼ぎたいとか……」
「だとしたら、オレは、大魔法使いに会いたいかな」
「大魔法使い……?」
「それこそ次元を飛び越えられるような魔法を使える、魔法使い」
異世界転生のことを話し出すか、と思ってヒヤヒヤしていたが、マキナさんは黙っていてくれた。俺に向かってウィンクしてくる。なんだかんだ、空気を読んでくれるあたり、やっぱり優秀な人だ。
「そこまですごい魔法使い……って言ったら、思いつくのは一人だけど……」
「お、そんなのいるのか⁉」
「辺境の地リンドには、ある塔が立っている……その塔の主が、大魔法使いヴァレリア……たぶん、この世界で一番すごい魔法使い……」
「リンド。聞いたことないな」
「私も行ったことはない……そこに、行きたい……?」
「行きたいな。お前もそうだよな、ヒカリ」
俺は頷いた。もしもそのヴァレリアが、次元を超える魔法を使えるのなら、本来の「稲妻の戦士ヒカリ」の舞台へと戻ることも出来るはずだ。
とにかく、俺はドゥームやアイリ、クンルンと戦わないといけない。できるだけ早く、まずはドゥームの塔に戻る必要があった。
「私も……そういう意味では、ヴァレリアに会えるのなら、頼みたいことがある……ちょうどいいね……」
こうして次の目的地は定まった。
けれども、マキナさんは、どこか浮かない顔になっている。
「リンド、ねえ……このゲームの世界に本来存在するものじゃないなら、迂闊に行くのはやばいかもしれないけど……行くしかないか」
その言葉は、俺の胸にも一抹の不安を残したが、他に当てがあるわけでもない。
食事を終えた俺達は、ひとまず一旦宿に戻って、明日からの旅に備えるのだった。