イシュメルガ=リィンでやりたい放題 作:それって
大陸中央最北の国、レミフェリア公国。
ノーザンブリア自治州の東隣、ノルド高原の北、オレド自治州の西にあり、隣接する国が多い。
それでいて、なぜクロスベルやノルドのような、二大国に翻弄される衝突地帯になっていないかといえば、公国軍8万人というそこそこの軍事力を持っており、医療輸出国という無難さ……なにより、単純に侵攻する価値の薄い、自然要害に囲まれた寒冷地だからである。
色々な意味で、極寒の
前回のリィンにとっては、各国首脳が出席した《
しかし、暁の軌跡では、この場所を舞台に大事件が描かれる。暁の軌跡はパラレル世界とも言われていたが、この世界線において、《エルフェンテック》、《ライアットVC》が実在する以上、一連の事件も起こりうると考えるべきだった。
畢竟――レミフェリアは、一歩間違えると
そのタイミングも
このため、俺には《エルフェンテック》を使うという構想が最初からあった。一石三丁を狙った《ユミル改造計画》も、これから説明しにいく《RF合弁構想》も、元はと言えば、この事情が前提となっている。
予想外にエリゼとの蜜月に溺れてしまって、少々遅れてしまったが、そろそろ手を付けないとならないレッドラインに達していた。しかし、ユミルでは愛しい義妹が親鴨の後を着いてくる子鴨のように俺から離れないので、《精霊の道》を使う事が出来ず……。
エリゼの部屋――――――――。
「兄様……んっ……本当にいってしまわれるのですか?」
「うっ、エリゼ。分かってくれ」
少女らしく、くまさんやうさぎさんのぬいぐるみが置いてあり、そのつぶらな瞳が俺たちを見つめていた。そんな女の子の部屋丸出しの空間で、義理の兄妹が全裸で抱き合っている。
今日はコンドームを装着して普通に兄妹セックスしていた。
いや、普通ではないか?(兄妹セックスの時点で)
対面座位でエリゼのおまんこを貫きながら――、お尻に回した片手でも
いわゆる二本差しだ。肛内に挿入中の中指には
「んっ………あんっ……ああっ」
ほとんど動きのない、スローペースの抽送。それでも豊富すぎる愛の潤滑油で、くちゅっくちゅっ♥と粘膜がこすれる音が鳴り、上の口からも蕩けた声が上がる。
アナルの開発には時間が掛かる。拡張のためには、❝挿れている時間❞が大事だ。
だから激しく動かすことなく、とにかく繋がりっぱなしの時間を長く作る必要があった。
それはエリゼにとっても大歓迎だったようで、親たちの目を盗んで、とうとう禁忌していた実家セックスにまで至ってしまった。犯罪者の行動がどんどん大胆になるアレだ。
一応、遮音ラジオは持ってきているので、防音に関しては問題ない。
「兄様ぁ……好きです。だいすきです。行かないで下さい……んちゅ……ちゅ」
対面座位は、女が手足を男に巻き付けて、離れたくないアピールをする恋人体位だ。
その動けない中で、浅ましくも自ら腰を上下させ、朝と寝る前にも交わす濃厚なラブラブ兄妹キスをしながらの懇願に、俺は屈しそうになる。
しかし、だからこそ。断腸の思いで、
「ああ、俺もエリゼが好きだ。これはお前を守る為でもある。だからこそ、行かせてくれ……!」
太くて硬い
「うぅ、うう……♥ イってください。私の
わなわなとした様子で射精を乞うエリゼ。話がすり替わっているが……
この世で最も愛しい義妹をぎゅっと抱きしめ、その尻穴に指を突っ込んだまま、俺は射精した。
「っ……―――♥」
そんな俺をエリゼもまた、体のすべてを使って抱きしめかえしてくれる。
コンドームは、射精したらおちんちんが小さくなる前に抜いて外さないと避妊にならないと言う。と言っても、俺の巨イナル一物は連続で勃起が維持されているわけだ。一般例は当てはまらない。連続使用してもOKなのか? とも思いつつ、一回の射精量も多いので安全マージンを取って一回ずつ後始末をしている。
やはり、地味に面倒だ。しかし、エリゼにピルを飲ませるわけにはいかない。そうなると快感が落ちるとしても、兄としてゴムセせざるをえなかった。
「ふふ、たくさん出ましたね……♥」
縛って精子が出てこれないようにした使用済コンドームをつまみ上げ、生け捕りにされたぷりぷりの俺の精子たちをみて、エリゼが莞爾として笑った。
我が義妹はこの使用済コンドームを持っていたいとやべぇ要望をしてきたが……、流石に持たせておくわけにはいかない。腐って異臭騒ぎになるだろうし。
俺は
そうして……。
《ユミル改造計画》を練り直す必要ができたし、協力を仰いできた企業に行って再び話し合わなければならない―――。そういう口実で、俺はなんとかユミルを抜け出すことになった。
屋敷から目と鼻の先のユミル駅。「ひとまず隣町のルーレに行くだけだから、見送りは要らない」と言ったところで、気のおけない家族が放っておくはずもなく。エリゼと両親、ついでにいつも乗り場を掃除している駅員のラックにも見送られてしまう。
「兄様、お気を付けて……なるべく早く帰ってきて下さいね?」
「エリゼの方こそ、危ない場所に行かないと約束してくれ。
「やれやれ、お前たちときたら……」
「ふふっ、いつの間にか素直になったものね」
半年前は、あれほどすれ違っていたのに。俺たちの豹変ぶりを、ルシアが笑い、テオとラックが呆れるほど、俺たちはケーブルカーが到着するまで、しばしの別れを惜しんでいた。
それが、前々回、イリーナとの交渉に続く。
――――――――――――――――――――――
8月中旬、『西ゼムリア通商会議』を月末に控えるクロスベル。
RF社側の承諾を得た後、俺は何度かこのオフィスに足を運んでいる。
合弁構想はエルフェンテック側に利がある。であれば、こちらは即決かというとそうでもない。リーヴはレミフェリアを飛び出してきた家出娘のような状態であり、加えて
しかし、あらゆるリスクを考慮しても、エルフェンテックにそれ以上の利益が転がり込むのは明らかであり……、最終的には乗る気になってくれた。大陸二位のRF社との提携によってエルフェンテック社の地位は確固たるものになる。株価もうなぎ登りよ!とウッキウキのリーヴに、俺は更なる爆弾を投下した。
「――――お父様と、お母様が………!?」
流石に動揺した様子で、ガタッと席を立つ金髪の少女。
俺はそれを一瞥し、冷静に語る。
「注意して欲しいんだが、《戦争卿》は既にレミフェリアとクロスベルの権力中枢にまで入り込んでいる。そして同時に、
「…………ええ、ごめんなさい。続けて」
リーヴは
彼女のフルネームは、リーヴスラシル・フォン・
彼女は
彼女にとって『両親の病死』は、リィンにとっての『あの石碑』のエピソード同様に、自らの価値観の根底を形作るものだ。レミフェリアは医療大国なのに、この国は君主の病すら救えなかった。貧困を野放しにする弱国である事実と医療に対する無力感。それが、彼女が
なのに、他殺。
自らの最も大切な者を殺した仇が、身近にのうのうと生きていたのだ。
さも『私は君の理解者だ』という白面をして。
根底が揺らぐ。だから今日まで話せなかった。精神にバランスを欠いた人間が経営する投資会社など、破滅一直線なのだから。
聞かされてショックを受けないわけがないが、しかしリーヴは、すぐに平常を取り繕った。
頼もしい。それがこの
―――リーヴは14歳で社長をやっているが、代表取締役ではない。代表
「その人は昔から良くして貰っている方だわ……。
にわかには信じられないけど……でも貴方のことだから確信があるのね?」
「ああ、これを見て欲しい」
流石に状況証拠だけでは、一から取引上の信頼を築いてきたリーヴはともかく、大公を説得できない。
「俺としては《戦争卿》だけを先に暗殺したいと思っている。
倒すべき勢力は
敵はとにかく逃げ足が速い。逃がさないためにレミフェリアに入国する❝表向きの理由❞を用意すべきであり、今回のことは格好の口実にできる。
どこにスパイがいるかわからないので、アルバート大公との直接会談が望ましい。それを実現するために、公女としての君が必要だ。そう願い出る。
「……あれ? ちょっと待って。じゃあ、貴方、いつからそれを知っていたの?」
「――――最初に君と会った時点で知ってはいた。なぜ黙っていたのかといえば、信じてもらえなかっただろうし、
それと君の
「…………(パクパク)」
そういうわけで、いよいよレミフェリアの諸問題を片付けることになる。この問題はクロスベルとも密接に関わっているため、針の糸を通すようなピンポイント作戦にならざるを得ない。
なにせ彼らは、クロイス家と
マリアベルが《戦争卿》と契約を続け、《赤い星座》に乗り換えなかったルートでは――この街は大量の死傷者を出す。そして、それだけ《風の剣聖》は英雄視され、ディーター・クロイス"大統領"に熱狂的な支持が集まり、しかし
だからこそ、キーアは《
そのため……キーアを
―――――――――――――――――――――
イリーナとシャロンが、ルーレから定期便に乗ってクロスベルを訪れた。
事前の打ち合わせ通り、「エルフェンテックとの提携交渉のため」である。IBCビルのテナントには、フロアこそ異なるが、RF社の営業部も入っており、同じく複数フロアに入るエプスタイン財団との接点にもなっている。このため、イリーナのビル入りはどこからも奇妙には映らない。両社トップの仲立ちは難なくスムーズに行うことができた。
そして、俺たちは――リーヴのエインセル号でレミフェリアに電撃入国した。
表向きの理由は《合弁会社》設立に当たっての会談。帝国にも共和国にも目を付けられたくないレミフェリア政府は、通常なら、
だから、話し合いの場を設けるのはごく自然なことであり、
―――それゆえに敵を欺くことが出来る。
レミフェリア首都南部、高台に位置するアーデント空港――――。
エインセル号の着陸はできたものの、入国手続きには半日かかった。
リーヴの公女特権によるゴリ押しを、お役所仕事脳の公国軍が認めずに、搭乗者全員に対する審査を求めたからだ。もちろん会談のアポイントメントは取れている。『
結局、時間を無駄にされ苛立ったイリーナが、
「流石は会長ですわ♥」
「はぁ……想定が甘いわね。身内だろうと事前に連絡しておくのは基本でしょう」
「ぐぬぬ……」
さすがイリーナ、有能である。そして、このきりっとしたやり手女社長をこの前散々イキ狂わせてやったのだと思うと、得も言えぬ熱が下から沸き上がってくる。
それに引き替え……
「
「うっっさいわね! それもこれも現大公が悪いのよ。暗殺されそうになっていることだって、おじ様の統治の脇が甘いということでしょ。やっぱりあんな男にこの国を任せておけないわ……」
すっかり騙されていた自分のことを棚に上げて、意気込むリーヴだった。
空港を出た後は俺とシャロン、リーヴとイリーナたちで二手に別れる予定だ。
リーヴたちは公宮に行き、まず建前通り、
リーヴはとある行き違いから
最低限、リーヴの協力さえあればいけると考えていたが……ダメダメだな。やはりイリーナは必要だった。イリーナにもいくつか大公に対して有利に立ち回れる情報を教えている。それらをどれだけ切らずに済むかが腕の見せ所だろう。せいぜい頑張ってもらいたい。
そして、俺とシャロンは――、
「―――ところで、例のARCUSは用意してもらえました?」
「ええ。シャロン」
「はい、こちらに」
シャロンが《RF》の刻印が入ったケースを開く。そこには、頼んでいた
『特別』といっても、戦闘データ記録システムを除去しているだけで、いつも使っているものに比べて優れている部分はない。流石に未知の強敵と戦うのに旧型エニグマでは不安があったので、イリーナに別のARCUSを用意して貰ったのだ。
●命中2
●妨害2 -時-
●行動力3
●封技の刃 -火-
●クロノバーストR -時-
カバーを開くと、
シャロンと戦術リンクを結んでおく。シャロンも自分用のARCUSを所持しており、同じような構成だが、生存率を上げるために刃系を外し、回避重視にしてもらっている。
「リィン様をして、
「……正直、わからない。呆気なく倒せるかもしれないが。最悪の場合は……《白面》や《破戒》を
「それは……」
イシュメルガ・リィンの力の片鱗、そして、同じ
―――《戦争卿》。西ゼムリアの各国で暗躍する武器商人。そして、そこそこ有名な猟兵団《ニーズヘッグ》の頭領でもあるため、名前だけは知る人ぞ知っている。
その強さは
俺の見込み通りであれば、❝A級遊撃士時代の《
けれども―――
ヤツは異界の神でもなければ、
しかし、俺の側が《戦争卿》を殺し損ねた場合。ヤツは教授ばりの洗脳能力、肉体の不老化・
《卿》は、単純な強さの軸に留まらない天才科学者でもある。できれば暗示で操って手駒に加えたかったが……、彼の持っているテクノロジーの一つに《改良型グノーシス》と《洗脳チップ》というのがある。前者の乱用で❝女神の枷❞が外れている目算が高く、後者には夢が踊りつつも、
それでもアルベリヒのように完全従属させる手もなくはないのだが、イシュメルガはアルベリヒに結構な霊力を
ゆえに、俺はここで《戦争卿》を―――
策を十分に練った上で、保険を掛け、シャロンにも同行してもらう。足手まといにならず、かつもっとも信頼を置けるのは、シャロンだ。そして❝最悪❞だった場合。帝国にしかない
―――――――――――――――――――――――――――――――
昼下がり。
快晴青空の下、公都アーデントの
そこを、漆黒のコートを身に纏った仮面の男が、歩いていた――。
メイドを3歩後ろに従えて。
アーデントは大まかに、大企業のビルが立ち並ぶ近代的な『新市街』と中世的な街並みを残す『古都』という二つのエリアに区別される。『下町』はそのどちらにも属さない、半端な地域だ。
クロスベルでヒットしている小説『闇医者グレン』のモデルとなった舞台でもある。クロスベルの旧市街と雰囲気は似ているものの……小説からうかがえるようなスラムと言うほどでもない。実際、遊撃士ギルドや通信社もこちらにある。その程度には、治安が良いということだ。
背の低い建物が目立つ中、比較的新しめの雑居ビルも疎らにある下町中央通り。そこで、《戦争卿》と思しき風貌の男を見つけた。
―――否。《観の眼》の自動補正。
運良く、周囲に人はいない。
「……」
❝温泉の力❞は未だこの身にあり、
ルーレで藤一文字に改造を施した『影一文字』を抜刀―――それを紅炎に染め上げる。
藤一文字より、軽く強靱。現状、Uマテリアル製でこれ以上の太刀は作れないだろう。
「
火龍のうねり。ユミル渓谷で使用した時よりも出力は下がっているが、それでも常人を一撃で終わらせるに足る剣気が爆ぜた。そして、爆炎が晴れると―――そこに奴の姿はない。
――――上。
「―――やはりか」「面妖な――!」
頭上。ヤツはビルの外壁に、蜘蛛のように
首の可動域を超えてねじ曲げ、ギョロリと俺を睨み据えるその男。……どう見ても尋常な手合いではなかった。人間の振りをした化け物だ。
「ナンダ、貴様は―――」
「はじめまして、《戦争卿》。俺は……《
問答無用だが、挨拶はなるべくするのがこの世界の作法だ。一度納刀し、今度は高速の指向性を持ったかまいたちを放つ六の型を見舞う。その衝撃波を
はぁぁ…………
「《
「―――わかりましたわ、《
男の厚手のコートから無数に伸びる鉤爪を、シャロンの仕掛けていた鋼糸がすべて弾く。その上で俺が放った二度の斬撃はヤツに
「《告死戦域》―――❝蛇❞の《
「……悪いが、お前の野望はここで潰えることになる」
「《身喰らう蛇》は我々の計画に不干渉のはずだろう……どうなっている!?」
「……
―――お前は《幻炎計画》の邪魔になると、
思惑通り、
「チッ……つまり、蛇としてではなく、《執行者》の❝自由権の行使❞とやらか」
「詳しいですわね―――
「ふむ。それならば……」
かの《楽園》潰し以降、《
そして、それならヤツは
「
狂気をはらみつつも傲慢を滲ませた啖呵を切り、ヤツは左手を構える。―――ヤツの魔装の義手に隠された導力砲『アビスキャノン』が、シャロンをロックオンした。
―――《観の眼》。いつかの、炎に身を焼かれるシャロンが思い浮かぶ。
(死ぬな―――このままでは)
俺はとっさにシャロンを姫抱きして避けた。
次の瞬間―――背後のビルの
「な――――」
唖然とするシャロン。
……多少の犠牲はやむを得ないと腹を括って市街地戦を挑んだが、この威力は……。
さらに、《卿》は何らかの薬品――おそらく『
それら全てをシャロンを抱えながら避けていく。
……肉体が若返っていることで、リィン・シュバルツァーの剣は、
だが、敵は剽悍にすぎる。この異常な速度での連続行動……。
《
早期に決着させないと死人が大量に出る。
悠長に見極めている余裕はない――――シャロンを降ろし、決断する。
「駆動、
―――、―――――――――斬ッ!」
仮面が外れる。
ソレが地面に落ちるより先。頭上に魔法の針時計が顕現し、俺の時間が――――
ここに即時駆動されるは、『
「はっ―――、行きますわよ――! ―――、 っ―――!」
ロングスカートの端を持ちつつ、駆けるシャロン。彼女の攻撃系
「これはッ―――クロノ―――ドライ――――ブでは――――!?」
《戦争卿》の周囲を取り囲むように、僅か数秒の間で不自然な「間」と瞬間移動が多重に発生していく。シャロンは間合いを取りつつ鋼糸を操る『カラミティクロス』で。俺は消耗の少ない四、六の型で敵のシールドを消耗させることに専念する。
『クロノバースト』はARCUSの覇権を決定付け、エニグマⅡを駆逐する一因となったほどの強力なアーツだ。
そして、ついに
「―――、―――、――――
内戦でリィンが最も多用した、敵を幾重にも切り刻む、八葉一刀流の奥義。至近距離で立ち止まって斬撃に集中するため、より高位の存在と戦っていく上で、あまりに致命的な隙となるので後に使用しなくなったが……武芸の手練を持ち得ない《戦争卿》のような手合いには罷り通るッ。
「キ、キサマアアアアアアア―――!」
「……やはり死なないか!」
痛覚はほとんどないのだろう、余裕を失った敵に浮かぶ感情は❝恐怖❞と怒り。
周囲は血の海だ。終ノ太刀はガードされずに完全に決まった。
物理的にダメージが入っていると言うことは、《
まるで、世界から死ぬことが許されていないかのように、瀕死で生き残っているのだ。氷がみるみる溶けていく。頭部が再生されていく。再び、空中に《槍》が出現する。
「私は……より、よき未来を―――こんなところで、終われ――――」
「そんな―――」
「シ――《死線》、❝
「! 承知しましたわ――!」
戦術リンク。
ヤツに変化はない。
構わず、そこに追い打ちを掛ける。
「――――弐の型・疾風!」
それでようやく――――
「―――――――――。」
無音。
事切れた。ヤツの生命を完全に絶ち、物言わぬスクラップにしたと《観の眼》が告げている。断末魔すらあげることを許さず、俺は《戦争卿》にトドメを刺した。
「ふう……」
「……なんという………」
十数秒。完全に戦闘が終了したのを確認し、女の子座りで倒れ込むシャロン。
やった、とは言わない。フラグになりそうだから。
今回、用意したこちらの策『
ここで倒せて良かった。
しかし、なんとも後味は悪い。
「これは一体……」
「きゃあああああああ」「人が死んでるわ!」
「人殺しだ!」
野次馬が湧いてきたか。
ガキンッ、俺は刀で瓦礫を強くたたき、視線を集めた。
足下のシャロンの眼を左手で隠す。
黄金の瞳孔。
「お前たち――――《ここで見たことは忘れろ》」
「「「「……はい、わかりました」」」」
時間稼ぎの暗示。
だが、《卿》がぶちかました『アビスキャノン』で大穴が空いており、死人も出ている。これは隠蔽不能だな。時間が無い。
「すぐに新市街に行こう」
―――――後は、
―――――――――――――――――――――
8月18日水曜日。
帝都郊外の街トリスタにあるトールズ士官学院。リィンがお休みして爛れた日々を送っている中、Ⅶ組にチャラいバンダナ先輩のクロウ・アームブラストと謎の元気っ子ミリアム・オライオンが編入してきていた。
「―――あれ? あいつはいねぇの?」
「リィンのことか? あいつなら夏休みだ」
「あれま、
「坊ちゃんはやめろ……フン、親と折合いが悪くてな」
クロウの絡みに珍しく応じているユーシス。いつものユーシスならシカト案件だが、クロウには先月旧校舎で助けてもらったので、ユーシス当社比で相手をしてやっているのだった。
「……」
自分の机からそのやりとりをぼーっと眺めるジト目少女。
フィーは、帰郷前のリィンが言っていたことが気に掛かっていた。
『《C》がトールズ関係者じゃないかと疑っている』
リィンはテロリストリーダー《C》と戦闘しながらもエリオットとARCUSで連絡を取っていた。フィーたちには妹を過剰に案じての行動に見えていたが、よく考えると違った。あれは、エリオットをあえて残し、クリスタルガーデンに居た
それに気づいた時、フィーは総毛立った。
文字通り、
……一人だけ夏休みを満喫するズル休み男、リィン・シュバルツァー。
入学式のオリエンテーションで一人でボスを打ち倒し、サラの威厳(元から無かったが)を打ち砕いて涙目にした《八葉一刀流》なる剣術の使い手。
中伝などと嘯いているが、とんでもない。あれは確実に皆伝者であろう。とはラウラの談。フィーとしても同感であり、おそらく
最初の頃、リィンは、ラウラ、ユーシスと三人で剣の稽古をしていた。しかし、途中からラウラが外れて一人でしょんぼりしていた。リィンになぜラウラが抜けたのか聞いたら「男の事情」などとはぐらかされた。
それで、リィンは女子から「何こいつ?」的に思われてクラス内で微妙な感じになっていた時期もある。それでも彼は意に介さずユーシスを鍛え――。かと思ったら6月以降、それもぱったりと辞めてしまった。
――――ノルドで国境テロがあってからだ。
残りは先輩たちぐらい。そのうち体格的にありえたのは、二名。アンゼリカ・
……リィンは恐らく、そのどちらか、または先輩組が共犯というところまで目星をつけていた。
その彼が、悠長に夏休みを楽しんでいるものだろうか?
一方で、その片方のクロウが転入してきた。情報局の少女と一緒に。
(クロウ…………だから《C》なの? だとしたらそのまんますぎ……)
まさかね。と思いつつ、クロウを観察してしまうフィーであった。
フィーのAPが1上がった。