※この作品はR-18です。

イシュメルガ=リィンでやりたい放題   作:それって

13 / 19
運命の日:VVSS/ガレリア要塞

 

 七耀暦1204年8月31日。《西ゼムリア通商会議》2日目・本会議。

 

 世界初の40F高層ビル《オルキスタワー》の35Fに設けられた国際会議場。

 そこを二つ(・・)のテロリスト勢力が襲撃した。

 

 飛行艇から会場にいる各国の要人に向けて機関銃が放たれる。

 

 しかし、ビルの窓ガラスはこのような事態に備えて防弾仕様であり、貫通に失敗。屋上から会議場に直接乗り込んでの共同強襲作戦も、クロスベル側の周到なカウンターテロ作戦が功を奏して早期にバリケードが築かれ、膠着状態となる。

 

 対空レーダーを突破し、ビルの見取り図も入手しておきながら……

 不可解なレベルの詰めの甘さ(・・・・・)、あるいは運の悪さ(・・・・)。

 彼らの作戦は、完全に失敗した。

 

 

 オルキスタワーの真下にある、地下8Fシャフト層。会場を襲ったテロリストたち―――《帝国解放戦線》と共和国の《反移民政策主義》は、しつこく追ってくるクロスベル警察どもを捲き、この都市のインフラを支える地下道から脱出を図ろうとしていた。

 

 

「二手に別れるぞ」

「ああ―――健闘を祈る!」

 

 

 区画分岐点。

 ここからはジオフロントの各方面に出ることができる。西のD区画が帝国方面、東のC区画がカルバード方面。《帝国解放戦線》は、当然、D区画を逃走経路とする。 

 

 D区画は、これから訪れる車社会に備えた《地下駐車場》として建造されているため、空間としては広い。そこに―――赤黒い鎧の集団(・・・・・・・)が待ち構えていた。

 

 ここまでは、鉄血宰相と《赤い星座》の読み通り。

 ここからは、前回と異なる歴史が紡がれる。

 

 

「ハッ、流石にそう簡単に逃がしちゃくれねえか」

 

 今回、実行部隊を率いる幹部《V》――ヴァルカン(・・・・・)は必死に思考している。同志たちを一人でも多く逃がす術を。こいつら(赤い星座)がヤロウ(鉄血宰相)の護衛に付くことは事前に判明していたことだ。元々捨て石となる可能性の高い布陣だった。もちろん、自分を含めたこの場の全員が死を覚悟している。

 

 考えることは好きではないが、ヴァルカンは頭が悪いわけではない。仲間への情はある。しかし、自分が生き残った方が最終的な勝率が高ければヴァルカンは躊躇無くそうする。

 

 《赤い星座》や《ニーズヘッグ》といった高位の猟兵団は、軍隊顔負けの新兵教育プログラムと施設を持っている。対する《帝国解放戦線》は――基本的には《鉄血宰相》に恨みを持つという共通点で集まっただけの民兵である。ゆえに戦闘能力に秀でる《V(自分)》は替えの効かない戦力であり、自分が時間を稼いだところで他の同志が落ち延びれるかは賭けになる……。

 

(だが、ギデオンの旦那が捕まっちまった以上、ここで全滅すると最後の作戦にぎりぎり届かねぇ)

 

 自分だけが生き延びる可能性とこのうち誰かが《C》に情報を伝える可能性―――天秤に掛け、ヴァルカンは決死する。

 

 選んだのは無難な煙幕弾。閃光弾、催涙弾も選択肢にはあったが、《赤い星座》には通じないはず。地下において広範囲に広がる煙幕弾は諸刃の剣ながら―――猟兵の観点から見ると最も対策しにくい悪あがきである。

 

「征け。《C》たちを助けてやってくれ」

「同志《V》、済まない……!」

 

 敵は十数人。味方の数に、そこまで差はない。

 D区画から市外に出る経路は無数にある。

 狼煙が上がる。

 

「こ、こいつ煙幕弾を―――!!」

「全員は逃げ切れん、三方向に散れ!」

「了解(ヤー)!」

 

 

 南方を抜けようとする同志たちの先に、男が立ちふさがる。

 

 

「―――おっとォ、させると思うか?」

 

 

 シグムント・オルランド……!

 

 ヴァルカンと並び立つ赤髪の大男、《赤い星座》団長。

 巨大な手斧を二刀流というクレイジーなスタイル。そしてヤツは素振りだけで(・・・・・・・)周囲の煙幕を振り払うと、同志たちは一瞬で八つ裂きにされた。斧が振われるごとに鮮血が飛び、ばらばら死体が積み上がっていく。

 

 

「ひ、ひぃいい」「そ、そんな……」

「怯むな、征けえええええ!!」

 

 

 ガトリング砲で弾幕を作り、背後の一部隊だけを生かすことを決めたヴァルカンが叫ぶ。

 

 奇しくもあの時(・・・)と似通った状況である。

 

(だから、全滅は――させる気はねぇ!)

 

 ヴァルカンの全身から黒い闘気が迸る。

 

 

「ほう……《黒の闘気》か」

 

 最強ランクの猟兵が纏いし色。シグムントは冷静に観察する。目の前のこの男、それなりに修羅場を潜った猟兵であることは間違いなかった。だが、"西風"でも"竜"でもない。

 

 闘気を全力でまき散らしながら、連れてきた精鋭たちを千切っては投げ、機関砲をぶちかます。獅子奮闘するヴァルカンに、さしものシグムントも舌を巻いた。あ(・)の(・)甘(・)っ(・)た(・)れ(・)にこの気概があれば。

 

「ああ、思い出した。貴様《アルンガルム》だな」

「……ハッ、《赤い星座》の団長サマに覚えられていたとは光栄と思うべきか」

「かの団は宰相の手によって全滅したと聞いた。そりゃあ死兵と化す、か?」

 

 ヴァルカンは猟兵団《アルンガルム》の元団長にして、最後の生き残りである。ギリアス・オズボーンを脅しつける依頼で返り討ちに遭い、仲間たちは皆殺しにされた。自分だけお(・)め(・)お(・)め(・)と生き残ってしまったヴァルカンには……もはやギリアスを討つ道しか残っていなかった。逆恨み、自業自得と言う言葉は百も承知。

 

 

「――――へぇ。ねえ、パパ、こいつ私に殺らせてよ」

 

 

 歩み出たのは赤い長髪を雑に結っている野性味ある小娘。

 シグムントは一瞬憮然とするが、まあ娘なら倒せるか、と言う調子で手を挙げ、他の団員を下がらせた。

 

「手負いの獣だ、侮るなよ」

「わかってるって」

 

 決死の覚悟を決めた猟兵は、何よりも強い。

 だが、それは僅かな期間で消える灯火だ。

 

「なんだこのガキ……いや、こいつは《血染めの(ブラッディ)シャーリィ》か」

「あはは、ご名答♪ 少しは楽しませてよねえ?」

 

 一対一の構図。

 

 片や大型のガトリング砲を丸太のような腕に装着し、鈍器としても振り回す巨漢。

 片や小さい体躯に異様な怪力でチェーンソーライフル《テスタ=ロッサ》を携える戦闘狂。

 

「逝っちゃええええええッ!」

「逝くのは、テメエだッッ!」

 

 ギュォオオオンとチェーンの稼働音を地下に響かせる《テスタ=ロッサ》。伝承の緋の騎士と同じ名を持つこの武器は、鋼鉄の重ライフルを真っ二つにするほどの切断能力を有するが、それをして目の前の男のガトリング砲は、硬い。火花が散る鍔迫り合いになる。意外に思ったシャーリィは一旦引く。

 

「それ、何製?―――いや、例の工房製かぁ! 信じられないぐらい頑丈じゃん♪」

 

 ヴァルカンのガトリング砲は《赤い星座》にも(・・)《Sウェポン》を供給する《黒の工房》によってオーダーメイドされていた。

 

 黒の工房はギリアスの支配下にありながらも、一(・)年(・)前(・)か(・)ら(・)帝(・)国(・)情(・)報(・)局(・)と(・)の(・)連(・)絡(・)を(・)絶(・)ち(・)、猟兵やテロリストに武器を供給している。そんなデタラメな動きをしているためにギリアスは味方をも欺くことができているが、同時に《C》に出し抜かれる隙を作ることにもなっているのだ。

 

「はあっ、武器屋はコウモリが多くて困るねぇ」

 

 聞いておいて自己解決する少女のクソムーブを不快に思い、顔を顰めながらも、ヴァルカンは時間を稼げるなら好都合と思い直す。

 

 だが、この人喰い虎は、決して甘くは無い。

 

 

 

「ホラホラ、少しは攻めなよォ!」

「ッ……何!? くぅ……」

 

 

 既に何合い目か。

 ちょこまか動くシャーリィに翻弄され続けている。

 

 彼女の《テスタ=ロッサ》は、近接のチェーンソーだけではなく、中距離の銃撃も可能なマルチウェポンである。ろくな反撃ができないヴァルカン。

 

 そして、裏芸もある。シャーリィの 『フレイムチャージ(火炎放射)』をもろに浴びた大男の皮膚は醜く、焼き爛れていた。常人なら既に死んでいてもおかしくない死に体だが、ヴァルカンは立っている。元より常に燃えているような男である。ガ(・)キ(・)の(・)火(・)遊(・)び(・)に負ける道理はない。

 

「アハハッ。まあそれなりに楽しかったけど、そろそろしつこいかな? 死んじゃえ~!」

 

 しぶといけど、それだけかぁ。シャーリィは依然闘志が消えないこの不細工な男に少しだけ苛立ち、テスタロッサを大きく振りかぶった。

 

 その間際。

 

 ヴァルカンはニタリ、と壮絶な笑みを浮かべた……。

 それ(・・)は、テメェの獲物だけじゃねえぞ。

 

「冥土の土産だ! 喰らい、やがれぇえええええ!!」

 

―――超戦技(Sクラフト)『デストラクト・キャノン』。

 

 ヴァルカンの武器は、《テスタ=ロッサ》の火炎放射同様に、通常のガトリング砲であれば、搭載するはずのない《変形キャノン砲》を備えている。使用者の激しい怒りに感応する導力火炎弾。――本来は鉄血宰相にぶつけるはずだった執念の焔。

 

「――――しまっ―――――」

 

 ヤバっこれ、死んだかな?

 巨大な焔を前に立ち尽くす少女の影に。

 

 しかし、彼女を蹴っ飛ばし、焔の前に立ちふさがった護衛(男)がいた。

 

「―――ガレスッ!?」

「シャーリィ様……、無事で」

 

 赤黎い鎧の男。《赤い星座》幹部、《閃撃》のガレス。尻餅をついたシャーリィを見やるとほっとしたような表情を浮かべる。

 そして胴(・)体(・)に(・)穴(・)の(・)開(・)い(・)た(・)彼は、そのまま倒れて、あっけなく息絶えた。

 

「これは……」

「クソ、邪魔しやが……かはッ……後は頼んだぜ、《C》…………」

 

 轟音。

 

 怒りの焔は、先ほどの煙幕弾(・・・)で仕込んだ微量のガスにも引火し、この狭い空間に連鎖的な爆発を引き起こす。シャーリィの『フレイムチャージ』でも起爆しかねなかったため、先ほどは動揺したが、女神(エイドス)がサービスしてくれたようだ。そして、そんなものを至近距離で撃てば……ヴァルカンも満身創痍であり――

 

「――ッ――!!」

 

 ただちに疾駆したシャーリィの斬撃は、男の分厚い首を簡単に跳ね飛ばした。

 

 

 

 ヴァルカン、死す―――。

 

 ギリアスの偽装死に油断し、死に場所を求めた前回と同じく―――男は、この世界線においても、見当外れなところで散った。

 

 いや……ギリアスに一矢報いるという意味では、マシかもしれない。

 帝国解放戦線のメンバーが僅かだが生き延び、次に繋げるという意味で、彼は重大な役割を果たすことができたのだから。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 時は少し遡り――。

 

 

帝国時報

◆【速報】テロリスト幹部、逮捕

 帝都での皇族誘拐未遂事件を起こしたテロリストグループ、自称『帝国解放戦線』幹部の男、ミヒャエル・ギデオン容疑者が逮捕された。

 

 鉄道憲兵隊によると、男は元帝國学術院の准教授。一昨年、ギリアス・オズボーン宰相に対する中傷ビラを撒くなどの嫌がらせを繰り返し行い、懲戒免職されていたという。そのことを恨みに思い、テロリストグループに関与したと見られる。その他数名の幹部は依然逃走中とのこと。何か有益な情報をお持ちの方は早急に通報されたい。

 

 

「…………」

 

 うーん、調(・)整(・)ガ(・)バ(・)っ(・)た(・)な(・)。

 

 帝都において、俺たちトールズⅦ組が捕縛したテロリストの下っ端二人。そこから一部情報が漏れたのが決定打らしい。早期に決着したせいで《C》の策略(足バースト)を鉄道憲兵隊(TMP)が喰らわなかったのも影響があったと考えられる。

 

 要は、帝国解放戦線を追(・)い(・)つ(・)め(・)す(・)ぎ(・)てしまった。

 しかし、向こうには《結社》第二柱、《蒼の深淵》ヴィータ・クロチルダが協力しているのだ。その程度は軌道修正してくれるとも思っていたが……ダメだったみたいだな。

 

 

(いや、違うな―――これは、TMP側。ク(・)レ(・)ア(・)大(・)尉(・)か(・)?)

 

 

 ヴィータは魔女の禁忌を犯している。不完全ながら"因果視"が可能だ。しかも、エマに対して『来たるべき時まで自身に繋がる情報を見つけられない』という"呪い"を掛けたように条件指定での介入ができる。それゆえに慢心し、ルーファスに斬られるポンコツな部分もあるわけだが……。

 

 一方で、クレアの方も内戦の後、《黄昏(・・)》の前(・・)から無意識(・・・)の因果律制御(アンチオーダー)を行って《風の剣聖》を完封している。クレアやレクター、先天的異能を持つ《鉄血の子供達》が現時点で覚醒すれば、ヴィータを出し抜くこともできるかもしれない。……イシュメルガ? いや、吾(・)で(・)は(・)な(・)い(・)。

 

 そもそも、ゼムリア世界、因果律に介入できる存在が多すぎなんだよな。

 

 キーアや、一部の古代遺物(アーティファクト)に比べれば、所詮、彼女たちの能力は、戦術級の特殊能力(コマンドクラフト)。力の根源は、ともに大元のところでは巨イナル一(二つの至宝)である。俺(・)に(・)は(・)通(・)じ(・)な(・)い(・)。ゆえに侮っていたが、不完全や無意識というのは成功したりしなかったりするのが厄介だ。

 

 因(・)果(・)介(・)入(・)系(・)能(・)力(・)者(・)同(・)士(・)が衝突した場合、どうなるのか?

 

 能力の強さが圧倒的にかけ離れている場合は、当然強い方が勝つだろう。しかし、ことはそう単純ではない。"出力"が同一軸かつ、複数である場合。たとえば、ある能力がひとつの因果をねじ曲げて"結果A(グッドエンド)"に導こうとしているとしよう。その因果がAに到達する前に、別の敵対的な能力が因果線に干渉し、"結果B(バッドエンド)"に繋ぎ直そうとしてくる。そうなると結果A(グッドエンド)を得るためには、もう一度能力の行使が必要になってしまう。そして、そんな改変合戦が繰り返されていると、時としてどちらも想定しえない、支離滅裂な"結果C(アナザーエンド)"が生まれてしまうこともある。

 

 前回のリィンが身をもって体験した――《鉄血の子供達》のう(・)ち(・)、(・)三(・)人(・)が使ってきた《アンチオーダー》は、どうだったか。

 

 《巨(おお)イナル黄昏》の中、幻想機動要塞のバックアップがあってすら常時発動型(永続パッシブ)ではなかった。一定時間しか効果の無い(ターン制限付き・カウント型の)"枷"(デバフ)など、そうと知っていれば対策できる。現に彼らとの戦闘では、アンチオーダー発動中は切り札を温存し、守備に徹するということだけで事足りた。

 

 つまるところ、巨いなる力の残滓を用いた不(・)完(・)全(・)な因果律制御(相手を不運にするデバフ)には、現状、致命的なレベルのクールタイム(使えないタイミング)または回数制限があるのだ。そうなると単純な力のぶつけ合いではなく、戦略性が生じる。ブレードで言うなれば《ボルト》や《ミラー》をいつ使うのか、使わせるのか、という駆け引きが。

 

 そして、それを《C》が断片的にでも悟っていたなら、凶(・)悪(・)な(・)作(・)戦(・)を(・)途(・)中(・)ま(・)で(・)成(・)功(・)さ(・)せ(・)て(・)お(・)き(・)な(・)が(・)ら(・)大(・)敗(・)を繰り返す《帝国解放戦線》の意(・)味(・)不(・)明(・)さ(・)にも説明が付く。

 

 

――気を抜いた方が負け……コイツはそういうゲームだろ?

 

 

 ……《C》の足バースト(崩落攻撃)を鉄道憲兵隊(TMP)がもろに喰らって壊滅する因果が本来であり、それをクレアが因果律制御で回避したのが前回(・・)の結果だったとすれば。それが今回は温存された結果、因果律制御がギデオンの逮捕に使われたとすれば。

 

 ヴィータが因果視でその因果律の改変を察知しているならば。前回、クロウの正体が、"相手の本質や正解を感覚的に見抜く"レクターと対面しておきながら直前まで露見せず、"統合的共感覚"を持つクレアもが後手に回り続けていたのが、ヴィータの掛けた呪いの作用だったならば。

 

 このいずれかがそうであるなら、帝国解放戦線の目的とは、表面上のテロではなく―――。

 

 

 

 

 不意に足をつねられる。

 

「っ!?」

「んぷ……ずちゅ……」

 

 時事誌を読む俺の足下には金髪の少女が跪いており、俺の巨いなる一物をくわえつつも、眉を歪めて睨んでいた。……デジャブだな。

 

(っていうかなんでまた頭脳戦みたくなってるんだ。やめやめ)

 

 ここはエインセル号。この前もお邪魔したリーヴの自室である。

 

 一度ユミルに帰り、エリゼを帝都に送り届けた後。《エルフェンテック社》が入っているIBCビルは、30日の共和国(カルバード)大統領の視察の都合で、企業関係者も追い出される形で休行日になっていた。俺は面白くなさげなリーヴをクロスベル外に連れだし、時(・)短(・)を(・)図(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)というわけだ。

 

 レミフェリア公女様の船といえど、帝国の空港には着陸規制があるため、帝国時報の入手が遅れてしまった。そして、もう特別実習への参加は諦める(・・・)しかなくなった。

 

「アンタね……私にこんなことさせながら優雅に新聞読んでるんじゃないわよ」

「ああ、ごめんごめん。でもこんなことを頼めるのもリーヴだからというか」

「分かれば良いのよ……はむ!」

 

 キッと睨みながらも竿をしこしこ♡しながら同時に亀頭を咥え直すリーヴの髪を俺は撫でる。

 睨まれフェラはいい。

 

 だが、撫でているとだんだん彼女の目尻が下がってしまった。己の一物に奉仕する女の頭を撫でるのは、優越感と支配欲をくすぐられるシチュであるが、リーヴにしても撫でるの有効率が、結構高めのようだ。

 

「んんっ……ん……ちゅぱ……またペ(・)ニ(・)ス(・)が大きくなったわ……」

 

 あー……、お前、"そっち派"か……。

 

「……待て、リーヴ。これは"ペニス"じゃなくて"おちんぽ"だ」

「え? でもサ……家庭教師からはペニスって習ったわよ?」

 

 一旦、一物から口から離し、口答えしてくるリーヴ。彼女の秘書サーシャは幼少期の家庭教師でもある。ちょうどアリサとシャロンみたいな関係性で、リーヴは彼女に絶対的な信頼を寄せている。保健体育についてももっぱら彼女から教育を受けたのだろう。

 

「まあ、間違ってはいないが……学術的名称と、実践の現場で使われる呼称が異なるのは、君もよく知っているだろう?」

「そういうもの? じゃあ、おちんぽと言った方がいいのかしら……」

「その方が興奮するので頼む。……でも他の人の前で言うのはダメだぞ。それは、はしたないからな。二人きりの時だけ使える言葉だ」

「はぁ……男女のマナーって面倒臭いわね……ひゃ!?……」

 

 コンセンサスが得られたところで、再びおちんぽを唇に当てて催促すると今度は黙って咥えてくれた。裏筋にざらざらとした舌の感触が纏わりつく。おちんぽブラッシング。

 

「……んふぅ……んちゅ……じゅぽぉ……」

 

 舐めながらもこちらの顔色を上目遣いに観察するリーヴ。それは媚びるような雌の顔ではなく、あくまで純粋に友人が得ている快楽を見極め、改善していくための《快楽コルサルタント》としての鑑定眼だった。

 

 舐めるだけの浅いフェラは正直、刺激的にはいまいちだ。パイズリと同じく、フェチとの相乗効果であり、低威力ブレイク攻撃に近い。が、リーヴは天才少女である。竿部分を手コキするというマルチタスク、男を射精に導くコツをあっという間に習熟してしまう。

 

「おお♥」

「んふふ……」

 

 思わず上げた声に、目論見通りよとばかりに笑うリーヴ。単調にならない程度に小さな手で包み込むようなアクセントが加えられ、まるでおまんこに挿入しているような感覚。少女はそのまま亀頭に唇と舌による濃密なキスを続け、くちゅくちゅといういやらしい音を部屋に響かせた。

 

 そして、限界が訪れる―――。

 

「出るぞ、口で受け止めてくれリーヴッ」

「きなふぁい」

 

 どびゅーーーっ!びゅるるるるっ!!

 押さえつけすぎないように少女の頭を抱え、俺は吐精した。

 

「おおおおぉ」

「……ん……ん」

 

 教えた通りに、お手々によるゆるコキを継続しつつも、亀頭からは口を離さず口内でそれを受け止めてくれる。

 

 俺はリーヴの美しさと間抜けさが絶妙なフェラ顔を満喫しつつ、射精の余韻に浸った。

 

「……んえええっ、不味!」

「……」

 

 もっとも彼女には友達の精子を飲む趣味はないので、全部吐き出してしまうが。

 それでいい(・・・・・)。当然の如く精飲してくれる女ばかりでは飽きるしな。

 

 

 ―――。

 

 

 フェラ教練を終えて、リーヴを抱っこしながらのピロートーク。

 発射したばかりの俺の列車砲は、彼女のムチムチな太ももに挟んで休ませ、膨らみかけのおっぱいを背後から揉ませてもらう。

 

「ん、くすぐったいわ。で、10月に資産凍結って本当なの?」

「ああ。今日テロが起こってディーター市長がクロスベル独立を宣言したら確実にその流れになる。だが―――」

「わかってるわよ。いきなりIBCから全部引き出すなんてことはしないから」

 

 言いつつも、いつものあくどい笑みを浮かべているリーヴ。

 

 クロスベルの資産凍結中、共和国では恐慌が起こり、さらに帝国で内戦が勃発する。そのような状況下の中、自分だけ十分な資産をレミフェリアやリベールに分散しておけるのである。このアドバンテージを最大限利用したら、どうなってしまうのかしら。夢が広がる子ども社長。

 

 リーヴは、主にヨナ(情報屋)がハッキングして得た内部情報を購入して、他の投資家を出し抜いてきたわけだが、導力ネット基本法の成立により、その手が使えなくなってしまった。『IBCビルに入居していることで迅速な取引が可能』という優位性も直になくなる。資産を他国に分散していくのは自然な成り行きである。

 

 俺の性処理に、一方的に付き合わせるばかりでは"友達"とは言えない。リーヴには"クロスベルからの引き際"を教える代わりに、《俺の指定するシチュ》で20回(50回提案だったところを20回に値切られた)抜いてもらうという約束をしている。

 

 この情報には、はっきりいってそこらの女社長が喜んで股を開くだけの価値があるわけだが……処女ロリ姫社長の手コキもミラで買えない価値がある。そして俺たちはビジネスパートナー兼友達なので、まあ帳尻は合っているだろう。

 

 ミラで直接セックスを買うなら、それは買春や愛人契約だが、彼氏のいない女友達のおっぱいを触らせてもらったりだとか、手コキやフェラ抜きは、2000ミラの夕食で友達のレポートを手伝うぐらいの取引と言えるだろう。(よくわからないが……)

 

 友情はミラでは買えないが、友情や愛情による行為にミラが絡むことはあるということだ。

 

 

「ああ、それと"クロス・プロジェクト"には参加した方が良いかもな」

「来月作られるかも知れない官民合同の試験班だっけ?

 でもRFとの合弁で株価は回復してるし……ウチが参加するメリットが見えないわね」

「RFも結構乱高下するからな。例の追放コンビ(警察・警備隊の元司令)じゃないクロスベル警察とのツテもできるし。

 まあ、合わなければ来月数週間だけで良いさ」

「ふーん、考えておくわ」

 

 明日には忘れてそうなトーンだが、リーヴにとっては財産となりえるチームだ。《戦争卿》の陰謀がなくともクロスベル遊撃士は普通に激務。クエストには事欠かないだろう。

 

 

 話が一段落したので、俺は目の前のプラチナ髪に顔を埋めた。やはり良い匂いがする。さらさらなお姫様ヘアーをくんかくんかしながら、彼女の太ももを手で抑えつけ、挟まれた俺の一物に圧力を掛ける。

 

「んっ……♡」

 

 すると甘い声を出すリーヴ。リーヴはクリトリスに俺のチンポが当たると、な(・)ぜ(・)か(・)幸せな気持ちになってしまうのだった。

 

 その幸せの感覚で未成熟なアソコから愛液が溢れ、それが潤滑油となり……、少女の処女おまんこには到底入りきらない巨大な一物と、ちんまりした淫核という絶望的な戦力差の兜合わせがくりくり♡と続けられる。

 

「これ、好きかも……」

「ああ、俺もだ」

 

 小さな女の子をバックハグしながら凶悪なカリチンポを処女膜にこすりつけるという変態行為によってもたらされる背徳感と精神的興奮。安易にハメるのとはまた違った良さがそこにはあった。

 

 だから、あくまで挿入はせず、少女を堪能するように優しくまさぐる。

 

「んふぅ……♡」

 

 いつしかリーヴは目を閉じて俺の首筋に顔を擦り付けるようにして快楽に浸っている。

 

(もうそろそろいいか)

 

 俺はリーヴの細い身体を後ろから抱きしめながら耳元でささやいた。

 

「《イっていいぞ》」

「―――ッ~~~!?」

 

 びくんとリーヴの身体が大きく跳ね、股ぐらをもじもじさせるが、俺にがっつり《だっこ》されているため、それはすべて俺のチンポに刺激を与える行為でしかなかった。その振動で俺の主砲も再び発射する。

 

 どぴゅるッ!びゅーー!!

 

「ひゃあぁあ♡」

 

 突然の熱い奔流にリーヴがそんな可愛らしい悲鳴を上げた。

 俺はそんなリーヴを抱き寄せ、よしよしと頭を撫でてやる。

 

「ちゃんとイケたじゃないか」

「ふー、ふー♡ こ、これがイクってことなのね……ん、ちゅ♡」

 

 身体をひねらせ、ほぼ真上を向いて、イかせてくれてありがとうのキスをしてくれるリーヴ。フェラした後のお口なのでちょっと抵抗感があったが、彼女の唇の柔らかさがそれを無視させた。

 

 刻限が来るまで、俺たちは身体をくっつけて本(・)来(・)あ(・)り(・)え(・)な(・)い(・)"絆"を高めた。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 同日、午後。

 

 《西ゼムリア通商会議》が開かれるオルキスタワーより西方向。

 エレボニア帝国最東端、ガレリア要塞・西門――――。

 

 演習用・自動操縦システム《Cユニット》。策略により、それを最新戦車"アハツェン"に取り付けさせることに成功したテロ組織《帝国解放戦線》は、演習場で戦車を一斉に暴走させた。

 

 駐屯する帝国軍・第Ⅳ機甲師団がその対処に追われる中……しかし、彼らの真の狙いは別にあった。

 

 《帝国解放戦線》の精鋭部隊が飛行艇で要塞を強襲。大量破壊兵器《列車砲》の制御を奪取。そしてオルキスタワーに向けて発射しようとしている。

―――各国の首脳諸共(・・・・・・・)、ギリアス・オズボーンを葬り去ってやるという恐るべき大量殺戮作戦。すべてはこのための捨て石に過ぎなかったのである。

 

 

 テロリストの襲撃を受け、集合したⅦ組の面々。

 そこで一歩、先んじて歩み出た者はリィンではなく。

 片手をスラックスのポッケにつっこみ、片手剣《カッツバルゲル》を下段に構える金髪の貴公子。ユーシス・アルバレア。

 

 

「―――状況は聞いての通りだ。

 俺たちはこの要塞の《二門の列車砲》を狙うテロリストを阻止する。

 

 各自、随伴する教官のサポートに全力を尽くすがいい―――!」

 

「「おおっ!!」」「言われずとも!」

 

 

 『ノーブルオーダー』。この者の導きについていけば成功すると確信させる、生まれながらに上に立つ者としての風格(カリスマ)。加えて、今の彼はそれに相応しい実力をも兼ね備えている。彼とライバル関係にあるマキアスさえ、今のユーシスには鼓舞されるものがあった。断じて口には出さないが。

 

 不在のリィンに代わりユーシスがリーダーを務めるA班はサラ教官に、B班はナイトハルト教官について、ガレリア要塞の中を疾駆する―――。

 

 

(B班はこちら(A班)よりも前衛が少ないが……)

 

 別れたB班のメンバーはフィー(双銃剣)、アリサ(導力弓)、エリオット(魔導杖)、マキアス(導力銃)、クロウ(二丁導力銃)。

 

 前衛はスピードタイプのフィーしかおらず、無力な民草(マキアス)もいる。ネガティブに分析するユーシスだったが、その分、ナイトハルト教官は凄腕の現役軍人である。彼と、抜きんでた実力を持つクロウが奮闘することを信じて、サラ教官との戦術リンクをこなすことに意識を切り替える。

 

 

「時間(じかん)が惜しい。ユーシス、私と戦術リンクしなさいッ。他の者は広い場所に出るまで温存ね」

「ああ」「はい!」「承知ッ」「わかった」「え~?」

 

 一人だけ不満げな声を上げるミリアム。

 狭い通路では先導する二人で戦わざるを得ない。ラウラとガイウスの長物やミリアムの傀儡では十分に実力を発揮できないとサラは見たのだろう。流石に判断が速い。

 

 下に大陸横断鉄道の線路が見える中央・貨物ホームを跨いで、連絡通路に行き着く。

 

 一見、何もないように見える空間。

 そこに、レグラム特別実習でも現れた"機械仕掛けの魔獣"が、突如として出現した。

 

 

「《人形兵器》とやらか……」

「ええ、こっちにもばらまかれてるみたいね―――速攻で片付けるわよ!」

 

 

 サラ・バレスタインは、《紫電(エクレール)》の異名の通り、"雷使い"である。

 彼女自身の戦闘センスも高い水準にあるが……その強さの源流は―――『雷神功』。

 闘気をない交ぜにした電気信号を己の末梢神経に浴びることで、常人ではありえない速度での動きを可能とするというもの。

 

 その速さ、そしてブレードと導力銃の変則二刀流により、彼女には苦手な射程がない。

 『電光石火』―――。跳躍も取り入れた三次元的な動きであっという間に敵を駆逐していくサラ。

 

 こちらも負けていられるか。

 

 サラの導力銃の射線に入らないよう気をつけながらも、彼女が撃ち漏らした小型の人形の攻撃をカッツバルゲルで撥ね除ける。

 

 かの男との修行では、当然サラ対策(・・・・)も範囲に入っていた。教官とはいえ、女に男二人がかり(マキアスと)でボロ負けした無様。それは負けず嫌いの彼に確かに慚愧の念を植え付け、闘志に火を付けさせたのだった。しかし皮肉にもそれは今、彼女をサポートすることに役立っていた。

 

 

――『雷神功』は確かに速いが、効果の切れ目が必ずある。そこを狙え。

 

 

 反動でふらついたサラに襲いかかろうとする敵に―――ユーシスは魔力を乗せた魔法剣《ルーンブレイド》を見舞った。

 

 帝国ではラウラのような――すべてを粉砕する剛毅な大剣が主流である。片手剣ではどうやっても威力で及ばない。それを魔法も取り入れ、最低限の部位だけを必要なだけ強化する――精密な魔力制御で補うのが《宮廷剣術》、動きの優雅さをも求められる自分(貴族)の剣である。そしてその魔力ブーストは敵の動きを先読みするほど効率が高まり、斬撃が研ぎ澄まされる。

 

 

(ここだッ)

 

 

 斬―――ッ。青白きその一撃で、機械の敵は綺麗に両断された。

 掃討、完了。

 

 

「へぇ、君もやるようになったじゃない♪」

「フン、いつまでもあの頃の俺と思うなよ。今なら貴女にも後れを取るつもりはない。

 俺が目指す先は、さらに上にある―――」

「ふぅん? まぁ、今はせいぜい期待させてもらいましょう」

 

 走りつつの雑談。いつもであれば大人げなく反応するサラだが、今は藁にも縋りたい危機的状況。やる気になっているなら何より。

 

「『俺が目指す先はさらに上にある』かぁ……なんか、ユーシス、カッコいいね!」

「ふふっ」「フッ、そうだな。俺もユーシスを見習わなくては」「ふむ、高みか……」

「ガキが……」

 

 緊迫した雰囲気に全く動じず、ユーシスの声色を真似るミリアムに、エマは微笑み、真面目な感想を言っていくガイウスとラウラ。それらの反応を見て、少し恥ずかしくなったユーシスは、入りすぎていた肩の力を抜き、悪態をついた。

 

 道中、発着場で解放戦線が乗ってきた飛行艇の爆発が起きたが、ミリアムの操る"白き傀儡"アガートラムの展開するシールド『アルティウムバリア』で事なきを得た。閃(・)の(・)軌(・)跡(・)最(・)大(・)の(・)謎(・)である伏線は人知れず通過された。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 一方、その頃。

 ナイトハルト少佐に追従するB班は、すでに左翼格納庫に到達しようとしていた。

 

『ガガ……』

「なにっ」「うわああ!!」

 

 少佐の戦車のような突進無双と後衛の援護射撃に駆逐されていく人形兵器とテロリストたち。

 

「ヒュー♪ 凄いっスね少佐」

「これがナイトハルト教官の実力……」

「わ、わかってはいたけど……」

 

 A班と差が付いた理由。

 

 第四機甲師団所属であるナイトハルトは当然ガレリア要塞内を知り尽くしており、最短で列車砲格納庫まで行けるルートを把握していたし、もう一つは狭い通路でもクロウ、マキアスを筆頭とする後衛組が的確に狙撃を成功させられる実力を持っていたこと。フィーにとっても、遮蔽物の多いフィールドは得意分野であり、銃剣で遠近両立した戦いが可能だ。

 

 すなわち、ナイトハルトが先導役であると同時に鉄壁の盾にもなり、全員が総攻撃できるチームなのだった。ユーシスの分析とは反対に、この状況においてはA班が不利だったと言える。

 

 制圧が終わるとフィーが先んじて列車砲の稼働を止める。

 

「例の幹部たちはいないようだな……」

「先月の、A班(フィーとマキアス)が相対したっていう?」

「ん。こちらは陽動かも」

 

 一騎当千の実力を持ちうる幹部たちの姿が確認できない。

 

 先日、ギ(・)デ(・)オ(・)ン(・)が(・)鉄(・)道(・)憲(・)兵(・)隊(・)に(・)逮(・)捕(・)さ(・)れ(・)た(・)ことで、帝国解放戦線は勢力を減らしていた。残った手勢では両方の占領は無理とみて、右翼の列車砲格納庫に戦力を集中した可能性も考えられた。

 

「ここは私が受け持とう。お前たちはA班に合流―――」

 

 しかし―――。

 

 

『そこまでにしてもらおう』

 

 

―――――現れたのは、黒づくめの仮面の男、《C(シー)》。

 

 男は上から飛び降りると、瞬時に仲間たちの拘束を解いた。

 

「《C》!?」

「同志《C》! 来てくれたのか!」

 

 リーダーの登場に沸き立つテロリストたち。彼らにとっても想定外の援軍だったようだ。

 

 

「あ、現れたわね……!」

「え……」

 

 《C》の正体として、同行者のバンダナ男を有力な被疑者と考えて警戒していたフィーは驚き、横にいる彼を見やるが、そのクロウも純粋に驚愕している体だ。

 

 

『帝国軍の――たしか《剛撃》だったか。

 それにトールズ士官学院の面々。

 

 知(・)っ(・)た(・)顔(・)も(・)居(・)る(・)が(・)、今一度、自己紹介をさせてもらおう。

 我が名は《C》。帝国解放戦線のリーダーである。

 

――――征け、同志たちよ。殿は私が任されよう』

 

「感謝する!《C》!」

「―――させるか!」

 

『いいや、罷り通らせてもらう(・・・・・・・・・)!』

 

 追いすがるナイトハルトに回り込んで、サーベルを片手剣ではじき返す《C》。

 ナイトハルトはそれで大きく吹っ飛ばされた。物凄い膂力だ。

 

「この前(帝都の時)と違う獲物――?」

「そういえば……」

 

『……諸君らの活躍のお陰で、今回は準備する時間が無くてね。

 

 間に合わせの武器だが、なに―――遠慮は要らない』

 

 フィーとマキアスの指摘に《C》は親切にも弁明し、手を眼前に、剣を下段に構えた。

 ユーシスが使う《宮廷剣術》の構えにも見える。

 刹那、可視化できるほどの赫黒い闘気(・・・・・)が男から吹き上がった。

 

「……ッ……!」

 

 なんと、禍々しい闘気。

 これは、《黒い闘気》とは別種のモノ……!

 

「こ、これは―――」

「油断できない相手だ。Ⅶ組B班総員、全力で当たれ!」

「「おおっ」」

 

 先輩にあたるクロウが居るので微妙な立場だが、ジュライ実習からB班をなんとなく仕切ってきたマキアスが号令を掛け、フィーたちも臨戦態勢を取る。

 

 《C》の背後、逃げていくテロリストたち。

 

『行くぞ……!』

 

 そして、《C》が地を蹴った瞬間――彼の姿が複数にブレて見えた。

 まるで複数の残像を引き連れるような動き。

 

(分け身!?)

 

『ふんッ!!』

「ああっ!?」「うわぁっ!!」「きゃああーっ!」

 

 たった一撃。

 

 《C》の力任せの一撃の余波(・・)でエリオット、マキアス、アリサの三人が吹っ飛ばされ、気絶した。戦闘不能は免れまい。

 

 残ったのはナイトハルト、クロウ、フィー。

 三人だけがかろうじて反応できていた。

 

 

「アリサ! エリオットに、マキアスも」

「よそ見をするなッ、尋常な相手じゃない!」

 

 

 ナイトハルトの叱責を受け、フィーは冷静さを取り戻す。

 確かに、この男の力は常軌を逸している。他人を気にしている場合では無かった。

 

 

 そこから、一度でも攻撃が当たったら終わりの死の舞踏(デス・ダンス)が始まった。

 

 

(この前(リィンに)は防戦一方だったのに……ここまで強いなんて)

 

 

 グレネードはキャッチされ、双銃剣による銃撃はすべて弾かれ、接近はできない。

 何をしても対応される。

 勝ち筋が見えない。

 

 

『どうした? その程度か、トールズ"Ⅶ組"とやら』

「ハッ―――言ってろ!」

 

 

 クロウはフ(・)ィ(・)ー(・)よ(・)り(・)も(・)素(・)早(・)く(・)、攻撃を先読みしてナイトハルト教官を援護している。

 底知れぬ実力を持っているとは思っていたけど……。

 一方のフィーは限界に近い。少女の顔を汗が滴り落ちる。

 

 

―――そこに、アリサ(・・・)の声が掛かる。

 

 

「みんな――頑張って!」

 

 自分以外の味方に祝福の矢を放つ『セントアライブ』。体力と闘気(CP)を分け与える補助戦技(クラフト)が疲労した3人へ降り注ぐ。

 

「アリサ!?」

 

 アリサにR(・)F(・)か(・)ら(・)特(・)別(・)に(・)支(・)給(・)されている『エンゼル(マスタークオーツ)』。彼女のものはLv4に到達しており、戦闘不能の直前に1回だけ「起死回生(リレイズ)」が発動する。

 

(っていうかこれって……)

 

 アリサ自身は与り知らぬ処だったが……おそらくは母様(イリーナ)の親心だった。

 だが、アリサの身体能力では、次の一撃は防げない。そう考えた彼女は気絶したふりで援護のチャンスを窺っていたのだった。

 

 

 

『おや。倒し損ねていたか、堕ちたまえ』

 

 そして、予測通り―――先ほどと同じことが再現され、アリサは倒れた。

 

 

 

 教え子が決死で作った刹那。

 ナイトハルトも勝負に出ざるをえない。

 

 

「はああああああッ――――砕け散れいッ!」

『…………ッ』

 

 裂帛の気合い。

 

 帝国正規軍に正式採用される《百式軍刀術》は、帝国二大剣攻めのアルゼイド流と守りのヴァンダール流の良いところ取りである。ラウラの使う『鉄砕斬』によく似たナイトハルトの兜割りを《C》は容易に受け止めたかに見えたが―――。

 

 

 ―――ピキッ。

 

 

 《C》の持つ片手剣が割れ、破片が下の空間に落ちていった。

 

 

「おおっ! やるじゃねーか少佐!」

「援護する!」

 

 クロウとフィーもこの勝機に賭けて援護射撃を行う。

 それをステップを踏んで回避する《C》。

 

『―――フン、やはり間に合わせではこの程度が限界か。

 そろそろ退散させてもらうとしよう。

 

 我らの波状攻撃をよくぞ防いだ。ひとまず、おめでとうと寿がせて頂こう』

 

「ま、待て!」

 

 と言って待つ相手ではない。

 

『フハハハハ、さらばだ』

 

 

 仮面を押さえながらも、貴族のような優雅な礼をした《C》は、手摺から華麗に一回転して飛び降りると、1Fの連絡通路方面に走り去っていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 世界史に刻まれることとなる、西ゼムリア通商会議を狙ったテロ事件。

 

 各国首脳の被害。無し(・・)。

 クロスベル警察の被害。負傷者数名。

 

 共和国側テロリスト《反移民政策主義》は全員拘束。

 帝国側テロリスト《帝国解放戦線》は幹部《V》を含む13名を射殺。

 しかし数名が生存し、逃走。

 

 これにより、僅かだが、スマートな共和国側の手腕が評価され、帝国側の残虐な"処刑"は周辺国首脳からの非難を招く事態になった。しかして、鉄血宰相が『共和国側の手際がよすぎる。グルだったのでは?』という陰謀論を仄めかすことにより、会場の空気は響めく。

 

 そして、双方痛み分けという雰囲気の中。

 ディーター市長による『クロスベル独立構想宣言』が行われた。

 

 その裏で、ガレリア要塞も《帝国解放戦線》の襲撃を受けたが、帝国軍および実習に来ていた軍学校の生徒の奮戦により、列車砲の起動を阻止して、撤退させることに成功した。

 

 奇妙なのは、ガレリア要塞を睨み据える、クロスベル側の砦であるベルガード門。

 黒い高速飛行艇がクロスベル方面に飛び去ったにも関わらず……目撃者はいなかったという。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 ――――とある日。

 

「クク、素晴らしい……導力チップによって暗示を自動化、魔獣の操作(コントロール)に転用するとは……!」

 

 巨大プラントに浮かぶ蜘蛛型の魔獣を一望し、黒衣の男が歓喜の声を漏らす。

 アーデント郊外の開発放棄区画。そこに《戦争卿》の拠点の一つがあった。

 

「発想はいいが、運用コストを考えるとここは破棄せざるを得ないな」

「……確かに、今後の"内戦"で活用するのは難しいでしょうな」

「ああ。共(・)和(・)国(・)に(・)放(・)っ(・)て(・)も(・)良(・)い(・)が(・)、万一チップが向こうの機関に回収されることを考えるとな」

「ふむ、物的証拠が残ることが課題ですか……」

 

 迂闊に表に出せないものだらけである《戦争卿》の技術のうち、《巨大魔獣》についてはレミフェリア政府に情報開示することに決めていた。そもそも、これは”ア(・)ー(・)デ(・)ン(・)ト(・)を(・)強(・)襲(・)さ(・)せ(・)る(・)こ(・)と(・)に(・)し(・)か(・)使(・)え(・)な(・)い(・)欠(・)陥(・)兵(・)器(・)”だからだ。

 

 無理矢理、転位術で各国に持っていき、暴れさせたとして―――帝国や共和国では《戦車》や《航空部隊》というあちらの最新戦略兵器の格好の餌食になり、正規軍の武勇を高める結果に終わるだろう。せいぜい、ノーザンブリア虐めぐらいか。やらないけど。

 

 さらに巨大生物を維持するには莫大な"餌"が必要だ。生かしておく理由がなかった。

 

 俺は本命である《魔獣を操るチップ》の機材や関連資料を回収し終えると実験体をすべて始末することにした。

 

「悪いな」

「―――――――。」

 

 生命維持装置を切り、魔獣をひと思いに絶命させた。

 




リーヴと同行中『エインセル号』を利用することができます。

『エインセル号』で新たに『ユミル仮設空港』に行けるようになりました。
『ルーレ空港』に行けるようになりました。
『クロスベル空港』に行けるようになりました。
『アーデント空港』に行けるようになりました。
『モンレイン空港』に行けるようになりました。
『エイヤ島』に行けるようになりました。
『グランセル空港』に行けるようになりました。
『ツァイス空港』に行けるようになりました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。