※この作品はR-18です。

イシュメルガ=リィンでやりたい放題   作:それって

17 / 19
9月・自由行動日/おうちリーシャ

 

 帝都ヘイムダル全域を走る《導力トラム(路面電車)》は、中央駅から北の皇宮まで続く中央通り(ヴァンクール大通り)を境に、東西で四半円(クォーター)状に循環している。その東中側、路線に寄り添うように続く石畳の道が《アルト通り》と呼ばれる。7月の特別実習で宿舎にした、旧遊撃士協会・東支部がある地区だ。

 

 中産階級の住宅街。他の街だったら、ろくにお店もないような区画だが、大都会ヘイムダルはそんな通りにもピアノ教室(エリオットの自宅)や、お洒落な喫茶店があったりする。

 

―――音楽喫茶《エトワール》。

 

 品の良いレコードが流れる、その名の通りのムーディなお店だ。

 ピアノの置かれたミニステージもある。

 カウンター席とテーブル席が半々の中、俺はカウンター席をチョイスした。

 

「あ……もしかして結構来たことありましたか?」

「そうですね……。来るのは久しぶりですが」

 

 生暖かく微笑まれたので、あちゃあ、と言うポーズをしておく。

 

 先日、ARCUSの番号を交換してくれたクレアさんを誘って、初めての《お茶》をしている。

 

 俺は少し緊張していた。――年上の女に侮られないデートの作法というのは、わりと難しい。

 今まで何でも喜んでくれるチョロい女とばかりデートしてきたが、今のクレアはそこまでではない。本来は段取りや女を座らせる位置など、細かく男がリードすべきポイントがあるようだ。

 

 忙しい彼女を呼び出した口実は《学院祭の出し物》の相談。クレアは真面目な上に影を背負っており、過去を明かしてくれたわけでもないので、下手に触れられない話題も多い。普通に話しているとなんか雰囲気が湿っぽくなってしまう。

 

 そこで、俺は努めて明るく振る舞い、『トールズOG(卒業生)のお姉さんにアドバイスしてもらう』という方針を選んだ。天然陽キャであるミリアムも彼女の癒しとなっているわけだから、悪くない判断のはずだ。上手く打ち解けられてきている気がする。

 

 クレアはその出自から楽器方面に強い。と言っても俺たちがやるのは新興の《導力楽器》。やや畑違いかとも思ったが、相応の知識を持っていて、講堂の音響で気をつける点、練習場所の重要性など、卒業生ならではの有益な助言をもらえた。しかし、ほどほどに会話に花が咲いてきたところにクレアのARCUSに通信が入った。

 

「失礼。―――はい…………はい……。わかりました。直ちに向かいます。

―――リィンさん。すみませんが、急用が出来たので今日はこれで」

 

 俺は眉をハの字にして残念そうに答える。

 

「……そうですか。残念ですが、お仕事頑張って下さい、クレアさん」

「本当にすみません。また後日、埋め合わせさせて頂きます」

 

 勘定は自分が、という俺を無視してクレアは《デキる大人のお姉さん》ムーブでテーブルに2000ミラをぽんと置き。申し訳なさそうに、しかし一度も振り返らずヴァンクール大通りの方に駆けて行った。

 

「……はぁぁ……………」

「ハハ、振られたか。残念だったな」

 

 大げさに溜息を付くとカウンターでコップを磨くマスター(ヘミング老人)に同情された。

 

(………まあ、想(・)定(・)の(・)範(・)囲(・)内(・)だが………)

 

 

 クレアにできた急用。

 おそらくは―――帝(・)国(・)解(・)放(・)戦(・)線(・)が(・)『(・)ギ(・)デ(・)オ(・)ン(・)救(・)出(・)作(・)戦(・)』(・)を(・)決(・)行(・)し(・)た(・)の(・)だ(・)ろ(・)う(・)。

 

 

 鉄道憲兵隊(TMP)に逮捕された幹部《G》――ギデオンは当然TMP管轄の留置所にいる。クレアが俺とデートしているということは、その間、《帝国解放戦線》はTMPのトップの不在を突けるということである。俺はクレアと会う日程をクロウにそれとなく伝えて(自慢して)いた。

 

 ……学院祭に向けて、俺たちが準備を進める《導力ロック・バンド》。クロウには衣装デザインを任せている。しかし、俺の想定よりも同組織はガタガタになっているらしく、クロウはそちらに気を取られているのか、どうも進捗が悪い。そ(・)れ(・)は(・)困(・)る(・)。かといって。

 

 流石にテロリストどもの作戦に関与する気は無い。が、ギデオンが捕まったのは、俺の行動にも起因している。あのテロリスト二人を勢いのまま殺しておけばこうはならなかった。中立に振る舞うつもりとはいえ、若干の慚愧もあったので、これぐらいの手助け(カジュアル裏切り)はしてもいいだろう。

 

 クロウが俺を信じなければ?

―――それも良し。普通にクレアと絆を深めるつもりだった。

 

 チェスのムーブの基本として、一(・)手(・)で(・)複(・)数(・)の(・)含(・)み(・)を(・)持(・)た(・)せ(・)る(・)というものがある。すべての攻めを受けきるのは不可能だ。片方の狙いには対応できても、もう片方の狙いは通してしまう。それを繰り返し、小さな成功を稼いで、王(キング)の退路を断っていく。

 

 今回は、まさにそれだ。

 

 性欲が溜まった状態だと、また暴走してヤリ目(H目的)が見え透いた、布石どころか悪印象を持たれるがっつき直結ムーブをしてしまう恐れもあったが……アイリのお陰で、今の俺には余裕がある。やはり『セックス足りて礼節を知る』というのは至言だな。

 

 これでクロウに貸しを作ると同時に、クレアさんは俺に負(・)い(・)目(・)を作った。次は多少強引に誘っても応じてくれると考えられる。

 

 喫茶店の時計を見るとまだ15時―――時間は、あるな。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 《導力トラム》と列車を乗り継ぎ、一度トリスタに戻った俺は、ミリアムとクロウが寮にいないことを確認し……シャロンにアリバイ工作を頼んでから、《精霊の道》でクロスベルに飛んだ。

 

 いつも通り、マインツ方面の人気のない場所に出て、徒歩で市街へ。この因縁の地は、歴史的経緯から多様な文明の遺構が打ち捨てられたように野ざらしになっている。東クロスベル街道やウルスラ間道の遺跡などにも飛べるが、ここが一番目立たず、アクセスも良いので気に入っていた。

 

「―――醤油ラーメンひとつ。玉子追加で」

「君か。久しぶりじゃないか」

「はは、ご無沙汰してます」

 

 港湾区の公園前でやっている、オーゼル氏の屋台ラーメンに顔を出した。

 クロスベル・グルメで東方料理といえばまず《龍老飯店》の名前が挙がるものだが、ここも指折りの店だ。むしろ麺に関して言えば、こちらの方が日本の(ニューウェーブ的な)味に近いので気に入っていた。

 「いただきます」と手を合わせてから割り箸を手に取り、無言で啜る。

 

「………ははっ……………!」

 

 思わず笑みがこぼれてしまう。ここは担々麺と味噌に力を入れているみたいだが、俺はあえての醤油派。この黒いスープにこそ、黄金に輝く玉子麺が映える。

 

(来る度に麺の美味さが進化してるというか……)

 

 IBCビルの目の前にあるので―――以前はリーヴに会った帰りに利用することが多かった。時間さえあればもっと通ってその進化の過程を満喫したいものだが、この人……『一度来た客の顔は絶対に忘れない』という異能?を持っている。前回のリィンも《クロスベル戦役》の頃、数回利用しただけで覚えられていた。なので、人を連れて入りにくいのが難点だ。

 

 少し早めの腹ごなしを終え、繁華街・裏通り経由で中央広場に出る。ここにはレストラン、デパート、オーバルストアがあり、ここだけでも大半の用事が済ませられる。

 

 深夜にクロスベルにきた場合は、こういったカタギのお店は営業時間が終了しており、当然閉まっている。す(・)べ(・)て(・)の(・)関(・)心(・)が(・)帝(・)都(・)に(・)向(・)い(・)て(・)い(・)る(・)今(・)。昼のクロスベルを満喫する、絶好(最後)のチャンスが廻ってきたというわけだ。

 

 

 今日は、エニグマ(戦術オーブメント)の調整を行おうと思う。

 

 

―――先代《戦争卿》から奪ったエニグマは最新型の《ENIGMA(エニグマ)Ⅱ》だった。

 偶然にも《戦争卿》は俺(リィン)と同じく、時(・)属(・)性(・)。だが、専(・)用(・)ス(・)ロ(・)ッ(・)ト(・)は(・)幻(・)属(・)性(・)―――という変則的な改造(チューニング)が施されていた。これはトヴァルが得意とする、旧式オーブメントの改造に近い"裏技"と推測される。

 ややこしいが、《本来時属性の者が専用スロットを他属性に偽装》しているタイプであるため、小手先の調整で使い回すことが出来ている。

 

 しかし、これで俺の所持する戦術オーブメントは合計4台。携帯電話感覚で考えると、ホストでもそうそう持たない数だろう。流石にかさばるな……と思った俺は整理することにした。

 

(スロット強化済みのエニグマⅠと《戦争卿》の改造エニグマⅡ、どちらを残すかだが―――)

 

 これまでの投資がパー(スロット開封とクオーツは集め直し)になるので少し悩んだものの……、新型に完全移行を決めた。

 

 理不尽な規格変更でクオーツを捨てさせられるのは、未来のリィンにとってはもう慣れっこ。大半の機能は当然ながら新型の方が優れている。それに伴い、通信時に使う、レトロな伸縮式アンテナが除去されたのも取り回し的には地味に重要な変更点だ。

 

 対して旧型(エニグマⅠ)を使い続けるメリットは――セピスの節約以外には特に思い浮かばない。エニグマを使う主目的である『ホロウスフィア』はどちらでも使用可能だ。一応、旧型にしかない強力なレアクオーツもいくつかあるが、それもマスタークオーツには及ばない。

 

 

「いらっしゃいませ!」

 

 オーバルストア《ゲンテン》。《ゲンテン工房(旧来の工場然とした工房)》から今年新装されたばかりという店内は、近未来的な(大手家電屋のような)キラキラした売り場になっており、客が作業できるスペースは見当たらない。

 

 カウンターでマスタークオーツや必要な合成を注文後、クオーツ調整器を自分で操作したいと申し入れるとバックヤードの作業場に案内された。店長の方針で、売り場からこういう泥臭い部分は隠しているそうだ。リィンとして、これまで深く考えずに利用してきたが、意外にしっかりした経営戦略があるんだな……。

 

「うん、こんなところか……」

「ふふ、熱心ね。最近は機構が複雑になりすぎて自分でやりたいって人、中々いないんだけど」

 

 エニグマのスロットと睨めっこしていると、この店お抱えの女性エンジニア、ウェンディがフランクに話しかけてきた。顔立ちは整っているが、青い作業着を着ているのでガテン系という雰囲気だ。ただ、それが似合ってもいる。

 

「はは、どうも。―――導力器本体があってもマスタークオーツが手に入らなかったので、融通してもらえて助かりました」

「あ(・)の(・)社(・)長(・)さ(・)ん(・)の関係者なんでしょう? 丁重にもてなせってさ」

 

 俺の目当ては『クロウ』。アイツ(バンダナ先輩)ではなく、マスタークオーツの方の《クロウ(SPD強化型)》だ。

 

 クロスベル警察なら(碧の軌跡では)、『エニグマⅡの講習』を受けることでタダで貰うことが出来る。

 一方の俺は、クロスベルでは外国人(一般人)なので事情が異なる。そもそもマスタークオーツは少数生産の希少品。しかも8月に発表されたばかりであるため、クロスベルにおいては政府筋(クロイス家)の働きかけで警察・警備隊、遊撃士等に優先で支給されるわけだ。販売を断られることも覚悟していた。

 

 しかし―――リーヴが先日、この店にTOB(敵対的買収)をしかけていた。

 

 それ自体は新米遊撃士ナハト&クロエの活躍もあって阻止されたのだが、リーヴは「ゲンテンからは手を引くわ」と言いつつも、一定株はこっそりと保有しつづけているらしい。株主の口利きということで特別待遇してもらったのだった。持つべきものは友達だ。

 

 

 

M-slot

● クロウ Lv 1

slot

■┃┃HP2

■┃┃探知    -幻-

■┃┃妨害2    -時-

■┃┃EP2

■┃┃駆動2

■┃┃封技の刃

 

 2番目の幻偽装スロットは後々使えるかも知れないので、ひとまず放置する。何はなくとも、『ホロウスフィア(ステルス・アーツ)』だ。エニグマⅡにおいてもこの導力魔法に必要な属性値(幻x5、風x3、水x3)に変化はない。だが、エニグマⅡには『妨害3』がなく、『妨害2』では風x2で1不足してしまう。《クロウ》はLV1でも風x1を持っているので、それを補うことが出来る。ただ、マスタークオーツは戦略上付け替えることも想定される。将来的には通常クオーツのみで属性値を充たした方が良いだろうな。

 

 余ったスロットには、少し迷ったが、『封技の刃』を付けた。以前活用したように、日常生活において『ファイアボルト(火炎攻撃アーツ)』が使えるとちょっとした火種として便利だ。エニグマの『攻撃』(身体強化系クオーツ)はARCUSと異なり、パーセンテージで上がる一方、攻撃を上げれば防御が低下(STR+9%、DEF-3%)してしまう仕様のため、使いどころを選ぶ。その点、刃系(状態異常付与系)クオーツは無難と言える。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 調整を終え、オーバルストアを出る頃には、すっかり夜になっていた。

 この地のシンボルでもある、巨大な《大鐘(ベル)》が真ん中に設置されたクロスベル中央広場は、多数のオーブメント灯で照らされており、他の都市に比べると夜でも大分明るい。

 

(……ついでだ、リーシャに会っておくか)

 

 彼女の住む旧市街に向かう途中、東通りには遊撃士協会がある。クロスベル遊撃士や試験班の状況も見ておきたいと思い、少し覗いてみたが……、生憎オカマの受付(ミシェルさん)しかいないようだったのでそっ閉じした。

 

 

―――アパルトメント・《ロータスハイツ》――――。

 

 

 旧市街、《ナインヴァリ》の隣にあるボロアパート。

 リーシャの部屋は、階段を上がって一番端の201号室。奇しくも学生寮の俺の部屋番号と同じ。

 

「居るか?」

「えっ―――リィン君!?」

 

 扉をノックすると中から驚いたような声が聞こえてきた後、バタバタと慌てたように足音がして勢いよく扉が開かれた。そしてそこには……寝る前だったのか、薄着の下から大きな双丘を覗かせたエロい女がいた。

 

 

「元気そうで何よりだ。二週間ぶりぐらいか」

「はい、お陰さまで」

 

 テーブルクロスの敷かれたテーブルに二つのカップ。

 ボロいアパートだが、腐ってもここはクロスベル。三口(みつくち)の導力コンロが備え付けだ。

 慣れた様子で湯を沸かし、お茶を煎れてくれた。

 

「へぇー、緑茶とおせんべいか」

「はい。東通りにあるお店で分けて貰ってるんです。紅茶の方がよかったですか?」

「いや、緑茶も好きだ」

 

 ユン老師が持ち込んだ東方趣味で、ユミルでも結構飲んでいた。

 思いがけず、リラックス(CPが回復)してしまう。

 

 リーシャの部屋。ふつうに狭いな。ベッド脇に置かれた、カーネーションの花瓶以外目を引く物はない。

 あとは、この前言っていた調味料や食器がやけに多いぐらいか。料理好きというのは本当なのだろう。

 人心地つくと、

 

「……? あの……これは《定期報告》なのでしょうか……?」

「ああ――? そうだな」

「そう、ですよね……わかりました」

 

 了解しつつもリーシャの表情には微かな疑問が残る。……そういえばリーシャに掛けている暗示は、"日常"では忘却するという継続タイプだ。

 前提となる《俺が絶対の主であること》は、彼女の子宮に徹底的に分からせているので、もはや多少理屈が破綻していようが暗示が外れることはないだろうが……、日常の象徴たる自室に押しかけられれば、流石に混乱するか。

 

(うーん。暗示の内容を変更すべきか?)

 

 当初は適当にパコって飽きたら解放するつもりだったのでそれで良かったが、なんだかんだ愛着が湧いてきてしまっている。他の男に触らせたくないと思う程度には。

 

 ……《特務支援課(ロイドたち)》はミシュラムバカンスを終えて、通常の業務を再開している頃。

 例のドスケベイベント(日焼け止めクリーム事件)の結果を聞いておく。

 

「主様の指示通り、断りました。セシルさんはそのままロイドさんに塗られていましたが……」

「セシルさんは、家族という認識だろうしな」

「でもエリィさんは、私が断ったことで恥ずかしくなったみたいで……私たちは二人で塗り合うことになりました」

「おお、じゃあエリィさんも回避できたってことか?」

「は……ロイドさんに塗られていないという意味では」

「……そうか。よくやったリーシャ」

 

 よかった。ちゃんと回避されたようだ。

 エリィさんまで助かるのは期待していなかったのでナイス機転だ。

 

「…………ぁ……………」

 

 席を立ち、リーシャの黒髪を撫でてやる。

 褒められるとは思っていなかったのか少し不思議そうにしている。

 

 ご褒美を与えないとな。

 俺はそのまま左手にある彼(・)女(・)の(・)ベ(・)ッ(・)ド(・)に(・)無(・)遠(・)慮(・)に(・)腰(・)掛(・)け(・)た(・)。

 そして、「横に来いよ」の意でシーツをぽんぽんと叩く。

 

「……あ……………」

 

 主の意を得て、おそるおそる抱きついてくるリーシャ。うむ、シャワーの後なのか、今日は汗臭くなく良い匂いだ。相変わらず柔らかいな……。

 

 そのまましばらく、リーシャの髪に顔をうずめて匂いをくんくんと嗅ぎ、ロケットおっぱいや太ももを我が物顔でまさぐっていると、何やらモジモジし始めた。

 

(あ、あの、主様、ここでは……)

「んー?」

 

 まあ、言いたい事は分かる。このボロアパートの壁は薄そうだ。ベッドをギシギシさせたり、リーシャが嬌声を上げたら筒抜けだろうな。

 

 なので俺は、その唇を奪う事で口を塞いだ。

 

「んぅ!?…………ん……れろぉ……じゅぷっ、れるれるっ、ぢゅっ♥」

 

 舌を差し込むとすぐに激しく絡めてくる辺り、こいつもすっかりキスが好きになったものだ。

 唾液のアーチを人差し指で切りながら、

 

「今日はここでするぞ」

 

 と俺は無慈悲な宣言をした。

 

(で、ですが、流石に聞こえてしまうかと……)

 

 困ったように小声で忠言してくる(主に抗議はできない)リーシャを雑になだめ、そのまま白いシーツの敷かれたベッドに押し倒す。

 

 遮音ラジオは持ってきていないので、リーシャが声を我慢できるかどうかに懸かっている。

 まあ仮にバレて《床ドン・壁ドン(うるさい近隣住民に対する抗議の方)》をされたとしても暗示をかければいいし。

 

「クク、期待していたんだろう? ほら、もう濡れてるじゃないか……」

 

 遠慮なくリーシャのパンツの中に指を滑らせて、割れ目をなぞると、くちゅりと水気を含んだ音がした。そのまま一気に脱がせていく。

 

(あっ♥ ち、違います!)

 

 慌てて否定するが、既に準備万端なのは明白である。

「ふーん」と言いつつ、クリトリスをつまみ上げる。

 

「―――ッ♥」

 

 続けざま、今度は膣内に中指を入れる。

 

「―――~~~ッ♥」(ひぃいいいっ♥)

 

 必死に両手で口元を抑えて声を押し殺すリーシャ。

 

「はは、こんなにしておいて違うというのか?」

 

 十分に滑っている。前戯は要らないな。

 俺もスラックスを脱ぎ捨て、勝手知ったるリーシャの股を開き、おまんこに即ハメした。

 

 ずぶぶっ♥

 

「!!!!」(ああぁあぁあぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ―――♥)

 

 眼を見開き、びくんっと身体を大きく跳ねさせ、絶頂を迎えるリーシャ。

 まただよ……。

 

「こら、また挿入だけでイったな?」

 

 ずんッ!!

 優しいモードは前回のサービスだぞ。勘違いされては困るな?

 今回は彼女がイっていても構わず、抽送を続けさせてもらう。

 上から押しつぶすように、巨(おお)きすぎる両胸を揉みしだきながら、リーシャに侵入する。

 

「~~~~~っ♥ ひっ!?」

 

 リーシャは水揚げされた活きの良いエビのように、懸命に足の指を不規則にピンとさせたり、じたばた震えさせて快楽を逃がそうとしているが、リーシャの膣壁は俺のチンポをいつも通りに『ようこそお越し下さいましたぁ♥』と熱い抱擁で迎え入れてくれる。

 

 狭い、シングルベッドでの正常位。

 

 激しいピストンはできないが、リーシャの恥穴は度重なる調教によって既にVARY EASY(絶頂がサクサク進むバランス)に成りはてている。腰と腰を擦り合わせるような、よわよわな動きだけで十分ブレイク状態になってしまうクソ雑魚おまんこだった。

 

 にゅるる~~~と、そこから半分ほど引き抜き、再び、ずんッ!

 

「―――ッッッ♥」

 

 きゅんきゅん♥と俺の物を締め付けまくるおまんこと反対に、脱力して崩れさるリーシャの肢体。背中を抱き留める。

 

「おっと、流石に雑魚マン過ぎるぞ?」

(ごめんなさいっごめんなさいっ♥)

 

 顔を寄せると、小声で謝っているリーシャ。

 それを聞いた俺は、挿入感を深めたまま一時停止する。

 

「ロイドにも謝れよ」

「……え……?」

「日焼け止めクリームぬらせてあげなくてごめんなさい、と」

 

 こつんっ。深く挿入したまま、耳元でささやき、奥を小突く。

 お叱りを受けていることを躰の最奥で理解させる。

 

(は、い、ごめんなさいロイドさん……! ん、主様の命令だったのでぇ♥)

「っていうかさ。普通の女は言われなくても拒否すると思うけどな……」

(ご、ごめんなさい……?)

「命令がなかったら付(・)き(・)合(・)っ(・)て(・)も(・)い(・)な(・)い(・)男(・)に(・)身(・)体(・)を(・)触(・)ら(・)せ(・)る(・)とか、ビッチのすることだぞ?」

(あっ、また大きく……どうかゆるしてくださぃいっあるじさま!!)

 

 主の命令通り拒否したのに、なぜか前世の行いを怒られる理不尽に涙目なリーシャ。

 実際思っていた感想でもあるので、SEKKYOUにもチンポにも熱が入る。

 ククク、謝り癖をつけてやろう。

 

 絶対的な主の帰還を察知し、降りてきた子宮を探し当てるように先端をぐりぐりすると、挿入状態のままにもかかわらず、ぷしゃっぷしゃあああ♥と盛大に潮を吹いた。凄い水圧だ。

 

「ッッッッ――――ぁあああ♥」(あぁあまたイグゥウ゛ッ!!!)

 

 とうとう堪えきれずに声を漏らしてしまうリーシャ。

 やれやれ。俺は口元を抑えるリーシャの手を引きはがし、唇を奪った。

 

「んぅ♥――――う゛!? んふーー!! んふーー!!」

 

 そのまま密着ピストンを再開すると、リーシャの鼻息が激しく吹き掛かってくる。必死かw

 

「ちゅばっ、ちゅぅうう~~♥」

「――ッ! ん゛ーーーーッッ♥」(あああああああああああ♥)

 

 トドメの口撃をしながら、リーシャの一番深い処に打ちつけ、侵略吐精を開始する。

 時を同じくして、大きく背中を仰け反るリーシャだが、上の口も俺に塞がれているため、腕の中でビクビク痙攣することしかできない。

 

 びゅるるる、どぴゅーーーーーーーーー!!!!

 

 たっぷりと濃いものが出ている感覚が自分でもわかる。

 誰がお前の主か。改めて、思い知らせるようにお腹の奥まで精液を流し込んでやる。

 

 

「はぁはぁ、………ん………はぁ、はぁはぁはぁ……はぁはぁ……♥」

 

 ようやく口を離すと、酸欠気味なのかリーシャは肩で大きく呼吸している。

 

「はぁ、はぁ……………はぁ………♥」

 

 リーシャの子宮はクロスベルよりも先に、この俺の帝国チンポに陥落していた。

 自らに完全に隷属しきった女に湧く、慈しみの感情。俺はよだれを垂らしながら放心するリーシャを顎クイし、優しくキスをしてあげた。

 

「ちゅ……ん……♥」

 

 幸せそうに小刻みに痙攣し続けるリーシャのとろけ肉鞘からゆっくりと抜刀する。

 まだ1回出しただけだが、キレのある気持ちの良い膣内射精ができて満足感があった。やはりリーシャとの身体の相性は良い方なのだろう。

 

「ふぅ……」

 

 一息つく。俺はチンポに付着しているリーシャの本気汁と精液の残滓を、彼女のベッドのシーツを『ティッシュ代わり』にして拭き取った。この女のプライベート空間を侵食するようなマーキング行為。昏い愉悦を覚えている自分に気付く。

 

(改めて思ったが。女の部屋でやるのって結構、興奮するな……)

 

 リーシャのドスケベフェロモンが充満するワンルームに、自分の精臭が馴染んでいくグローバルな「交わり」。今まで、ヤリ部屋は安(・)全(・)性(・)重(・)視(・)で選んできたわけだが、女が普段生活している部屋でやるのがこれほど乙なものだったとは……。エリゼや、イリーナの時は他が属性過多すぎたせいで気付けなかった。

 

「…………ぁ……………♥」

 

 既にリーシャは深イキしすぎており、レイプ後のような酷い惨状だ。俺に酷使されすぎて、やや黒ずんできた小陰唇を少しなぞってやるだけでぴゅっ、ぴゅっ♥ とだらしなく無様愛液が噴出する。流石にこんな敗戦クソザコ土下座おまんこでの2連戦はキツそうだったので、

 

「あー。次は、リーシャのパンツを被せて手コキ奉仕でいいぞ」

 

 と言うと、あからさまにほっとしているリーシャ。

 

「今日も私の膣内に出していただき、ありがとうございます主様……」

「どういたしましてだ」

 

 いつものように服を脱がしあって全裸。ベッドに寝転がる俺の片足に、大きすぎる胸とふとももを巻き付けるように寄り添うリーシャ。

 

 リーシャは俺の一物に、自分がさっきまで履いていた黒い暗殺者ショーツを被せるとスナップをきかせてシコシコする。リーシャとはひたすらおまんこで生ハメセックスしてきたので手コキ自体の熟練度は低い。とはいえ騎乗位での挿入時などで散々握ってきているので、流石に理解っている手つきだ。

 

「んっ………ふぁ♥」

 

 軽く身を起こし、こちらもリーシャのチートな爆乳を弄ぶ。イった後の女は、指先で軽くなぞったりしているだけでたまらないようでぴくんっと反応してくれる。今日は乳首を吸いたい気分だ。手コキされながらも乳袋に顔を寄せてしゃぶりつき、コリコリとしたピンクの突起を甘がみする。

 

「っ……そんなに吸っても何も出ませんよ♥」

 

 チュウチュウと赤ん坊のように吸い、口を大きく開けて乳輪を舐めまわす。夢中で貪るうち、両乳とも俺の唾液まみれになった。別段、日焼け止め効果は無いが。

 

「キスしろ」

「はい、失礼します……ちゅ、ちゅる……♥」

 

 おっぱいを堪能したので、今度は寝そべり、ゆるくキスしてもらう。

 

「ちゅ、ちゅ~ちゅこちゅこちゅこ……♥」

 

 雑に舌でフェイントを入れるとそれにも完璧に対応するべく、リーシャの舌が品性の欠片もなく暴れ回る。

 

「はぁ、極楽……」

「主様……んっ、お加減はよろしいでしょうか」

「うん、いい。そろそろイクから激しくしてくれ」

「はい、主様……どうぞ、私の下着の中で♥」

 

 カップルのような小声での囁き。俺のチンポにパンツを被せて握るリーシャの手をさらに上から握って、リーシャのパンツのクロッチ部分にこすりつけることをイメージして、射精した。

 

「ちゅ、ちゅう、ぢゅうう♥ ずちゃあ……れろれろれろえろっ♥ ちゅう♥」

 

 射精中もリーシャの熱烈な追いディープキスは留まることを知らない。教え込んだ通りだ。

 

「………っ………ふふ、いっぱい出ました」

「ふぅ……気持ち良かったぞ、リーシャ」

 

 

 ……ピロートーク代わりに、抱き合ったまま近況報告をさせた。

 

 リーシャたち(アルカンシェルの劇団員)は、10月の《リニューアル公演》のために練習漬けの毎日を送っている。そして、やはり《血染めの(ブラッディ・)シャーリィ》に目を付けられている。――こ(・)の(・)ま(・)ま(・)い(・)け(・)ば(・)、(・)彼(・)女(・)の(・)破(・)滅(・)は(・)目(・)前(・)で(・)あ(・)る(・)。

 

 《銀(イン)》の主要取引先である、《黒月(ヘイユエ)貿易公司(ぼうえきこうし)》支社長のツァオ・リー。彼もまた、既にその正体がリーシャだとうすうす感づいてしまっている。《銀》がアルカンシェルの営業時間中、連絡に応じないためだ。シ(・)ャ(・)ー(・)リ(・)ィ(・)を(・)襲(・)撃(・)前(・)に(・)排(・)除(・)し(・)た(・)と(・)し(・)て(・)も(・)、彼から脅迫を受ける可能性もある。

 

 伝説の魔人と謳われているが、どうも……リーシャはその辺、年相応で隙だらけの女に思える。リ(・)ー(・)シ(・)ャ(・)は(・)、(・)暗(・)示(・)な(・)ど(・)掛(・)け(・)な(・)く(・)て(・)も(・)、(・)脅(・)迫(・)レ(・)イ(・)プ(・)し(・)放(・)題(・)だったんじゃないか。

 

『アルカンシェルのスターが殺し屋などと知られれば……どうなるかな?』

『くっ……下衆め!』

 

 イリアさんや劇団を人質に取られ、悪徳貴族の性奴隷にされてしまうリーシャ。そういうエロ同人が、大量にあった気がするし。考えながらも、リーシャの巨(おお)きなおっぱいを揉む。

 

(んっ……主様?)

 

 中指と薬指の間で乳首をふにふに。切なげに俺を窺うリーシャ。

 

 もっとも、並みの竿役だったら、この女を雌伏させようとしたところで―――逆に皆殺しにされるのがオチだろう。だから、こ(・)れ(・)は俺だからこそ掴めるおっぱいである。

 

 でも、それなりに実力も併せ持っているツァオであれば―――? アリアンロードによる"仮面割り"が無かった場合、ツァオだけが真相に辿り着き、脅迫して手込めにしてしまうことも可能かもしれない。

 

 ツァオは《太陽の砦》でサバイバル共同生活をしている状況下でも、このエロが服着て歩いているリーシャに手を出さなかったようだ。他にも、折角手懐けた他家の娘を利用せずに袖にしていたことから、EDか同性愛者説もあるが―――希望的観測に縋るわけにもいくまい。何にせよ、折角作った肉便器を他人に奪われるのは、独占厨として面白くない。逃げ道は作っておくとしよう。

 

「俺はまたしばらくクロスベルには来れなくなる。もし《銀》の正体がバレて、脅迫を受けた場合は応じずに、エレボニア帝都近郊のトリスタという街に来い。いいな?」

「はい、主様……」

 

 この後……今月分の揉み収めのつもりでリーシャの胸を揉んだり、顔を埋めたりしているうちに、やっぱりムラムラが収まらなくなってきたので、前回利用した住宅街の別邸に連れて行き、滅茶苦茶セックスした。もちろん内容はリーシャに演技をさせての脅迫レイプごっこだ。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 9月19日、日曜日。

 今日は俺にとっては二ヶ月ぶりとなる、《自由行動日》。

 

 本来なにをしてもいい日だが、みんなクラブ活動をやっており、俺(リィン)の場合は―――生徒会長(トワ)が当日、『リィン君が一日でこなせそうなクエスト』を厳選して寮の郵便箱に入れてくれるという、親切システムになっており、思うようには休めない。

 

 とはいえ、来月は学院祭。実(・)質(・)こ(・)れ(・)が(・)最(・)後(・)の自由行動日となる。

 悔いがないように自由行動するとしようか。

 

 

 本日投函されていた依頼書を見ていく。

 

(アンゼリカ先輩の指名依頼に『手料理のプレゼント』……。

 ああ、これはミ(・)ン(・)ト(・)の(・)依(・)頼(・)か。なんか、懐かしいな)

 

 

 Ⅲ組(平民クラス)のノー天気ガール、ミント。ルーレの技師(エンジニア)家系であり、将来は有能な導力技師に成長、ヴァリマールのメカニックを引き受けてくれるのだが……、この時期はドジッ子属性が強すぎ、叔父にあたるマカロフ教官に世話を掛けている。

 

 そんな『叔父さん(マカロフ教官)のために手料理を作って元気づけたい』――その見本として絶品料理をフルコースで(スープ、メイン、デザート)持ってきて、というクエストだ。

 

(あんまりレシピ集めてないけど……まあシャロンに頼めばなんとかなるか……)

 

 俺は、男の料理は"女の気を惹く必殺の一品"があればいいと思っているので、オール絶品指定というのは手に余る。

 

 

 食堂の厨房に行くと、メイド服の彼女と―――先客がいた。

 

「――シャロンさんと、ラウラか。珍しいな―――って大丈夫か!?」

「あら、リィン様」

「む、リィンか……いや、軽く切ってしまっただけだ」

 

 制服にエプロン姿のラウラの手が、血塗れだった。

 

(―――ラウラのお弁当修行か)

 

 ラウラはこの頃、雑貨屋で『みっしぃのぬいぐるみ』を買ってみたりと、普(・)通(・)の(・)女(・)の(・)子(・)ら(・)し(・)さ(・)を追及している。もう少し後に彼女を稽古に誘っていれば、最近シャロンに教わっているというラウラの手作りお弁当をごちそうしてもらえたかもしれなかったが、間が悪く、その製造現場に鉢合わせてしまったようだ。

 

 俺のクエスト内容を説明すると、それなら丁度良いということで、お弁当ではなく、俺たち三人でお昼ごはん兼フルコースを作ろうという話になった。

 

(ラウラのお弁当、食べたかったけど……まあこれも巡り合わせか)

 

 シャロンがいつも作ってくれている食事には何の不満もないが、「同級生の女の子の手作りお弁当」は男子学生としてゼラムパウダー以上の価値がある。

 

 悪戦苦闘するラウラを尻目に、少し離れて素材の仕込みをしていると、シャロンがそっと背後に忍び寄ってきた。……ん?

 

(あの、ご主人様は、わたくしの身体に飽きてしまったのでしょうか?)

 

―――――ゾクゥ。いきなり耳元で囁かれ、背筋に寒気が走った。

 

 振り向くと、久々の悪戯ムーブに成功したとばかりに手で口元を押さえて微笑むシャロン。

 

(い、いやそんなわけ―――って、しばらくは控えると言っただろっ!)

(うふふっ♪ つい、出来心ですわ♥)

 

 この女……。しかし、シャロンの神察しを思うと、感(・)付(・)か(・)れ(・)て(・)い(・)る(・)可能性もあるな。

最近別の女を抱いていることに若干の後ろめたさを感じつつもラウラの方を窺うと――、

 

 彼女は――――お米を洗剤で洗おうとしていた。

 

 などということもなく、不慣れそうな手つきながらも普通に米を研いでいる。まあ、Ⅶ組、というか名門トールズに居る時点で、ありえないレベルでポンコツという人はそういない。

 

 しかし米か。エレボニア帝国の飯事情はパン・洋食中心。米料理もないわけでもない。だが、初心者があえて挑戦するようなものでもないはずだ。

 

「ガレリア要塞の食事で《ハヤシライス》というものがでてな。他は保存食で不味かったのだが、これだけは非常に美味だった。自分でも作ってみたくなったのだ」

「……なるほどな。まずはライスから極めるというわけか」

「ふふ、その通りだ」

 

(あの《日の丸(ごはんにうめぼし)弁当》は、そういう事情(伏線)だったのか……)

 

 実際、少し先の未来(閃の軌跡Ⅱ)では、ラウラは独自料理『真心ハヤシライス』を作れるようになっていた。知られざる彼女の努力に気づき、胸が温かくなった。……そんな彼女に俺が裏でしている仕打ちはさておき。

 

 

 ミントの『なるべく体力が回復するものを――』というオーダーを受け、シャロンの協力によって『スペシャルカレー』が完成。他の品目に関係なく『ミントスペシャルΩ』が爆誕した。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 《ギムナジウム》の道場、有角の若獅子の校旗の前で向かい合う二人。

 今日はフェンシング部は休みなので、貸し切り状態だ。

 

 ライダースーツを着た(制服を着ている姿は見たことがない)男装の麗人、アンゼリカ・ログナーの武器は、素手。泰斗流(たいとりゅう)拳法の使い手。かの《不動》のジンと同じ流派だ。

 

 アンゼリカ先輩の『個人的な依頼』は、俺に手合わせして欲しいというもの。

 彼女とは前回ほど親しくなっていないので、この依頼は来ないことも考えられた。

 

(……単純に、手頃な試合相手が欲しかったのか?)

 

 

 相対する俺は―――《捌の型(・・・)》で行く。

 

 剣を失くした時に使う緊急用の型。泰斗流の実力者相手に通じるかどうかは、未知数。拳を構える俺を見て、アンゼリカは訝しむ。

 

「ほう……君の獲物は"刀"と聞いていたが?」

「俺の使う《八葉一刀流》には、その名の通り八種類の型があります。

 その八番目の型は、《無手》――。剣がない状態でも実力を発揮できて一人前ということです。師匠には徹底的に叩き込まれていますから、問題ありません」

 

 それに無手の女性にこちらだけ太刀というのは―――プライドに障る。あちらが格上だった頃なら兎も角、今の俺(リィン)は彼女の頂点性能(ロスヴァイセ)を知っている。アドバンテージはこちらが上。試してみたくなった。

 

 ここは、上位者ムーブで行かせてもらうとしよう。

 

「フッ、そうか……では始めるとしよう……」

 

 毅然として答えると、好戦的な笑みを浮かべるアンゼリカ。

 俺達の間に静寂が流れる。

 先に動いたのは、アンゼリカだった。

 

「―――君にトワを任せられる(私のライバルたりえる)のか、見極めるためにも!」

(そっち(トワ方面)だったか……)

 

 間合いに入った瞬間、蹴り技を交えたコンビネーションを放ってくる。

 

「ヒュヒュ―――ッ!」

 

 だが、これはフェイント――それも否、横に避ければ無呼吸の戦技(クラフト)『ゼロ・インパクト』が来る。やる気満々じゃないか。俺は自ら後方に転倒して彼女の読みを外した。

 

「なっ!?」

 

 驚くアンゼリカに対し、素早く立ち上がると同時に"螺旋(一の型)"のひねりを加えた掌底を放つ。"起き攻め"――獲物を構える必要のない、無手ならではの高速軌道。

 

「破ァァァッ!!」

「くぅうっ!?」

 

 手甲でガードしたようだが、"螺旋"は八葉に限らず、東方武術全ての基本にして、対生物においてその破壊力は随一。躱しきれるものではない。

 

 アンゼリカは大きく吹き飛ばされた。

 追撃をかけるべく踏み込むと、し(・)か(・)し(・)、今度は回し蹴りが飛んでくる。

 

「フンヌゥウウッ!!!」

「―――!」

 

 刹那、アンゼリカは闘気を爆発させ、女性が上げてはいけないような龍の咆哮を上げた。

 咄嵯に飛び退いて回避するが、衝撃波で少し体勢が崩れた。

 

「しゃあっ!」

 

 続けてくるエルボー起点のコンボ。

 初動を躱せばどうということはない、とはいえ身体強化戦技(クラフト)を積んだこの女の突剛Aの連拳は既に十分な凶器と化している。まともに受けるわけにはいかない。虚を突き、切り返す。

 

 アンゼリカは蹌踉(よろ)めくも、その場で堪えた。

 

「フフ……私の師匠を思い出すよ。こちらもブランクがあるとは言え、今の一撃でも当たってくれないか」

「いえ、こちらも驚かされました」

 

 《観の眼》は全ての攻撃を回避する。"理(ことわり)"に踏み込んでいる相手なら別だが、彼女はその境地にはいない。驚いたのはアンゼリカ先輩のタ(・)フ(・)さ(・)にだ。こちらの拳撃は突剛Bに届く程度だろうが、ニ度当てて、ここまで削れないとはな。

 

(このタフさ……断定はできないが……)

 

 そして―――彼女は彼我の実力差を弁えないほど弱くもない。

 お互い決定打を与えられぬまま数合を重ねたのち、《龍の闘気(ドラゴンブースト)》を切らした先輩があっさり降参して、その場は終わった。

 

 

 

 

 

「――――お疲れ」

 

 男(・)子(・)更衣室は、自由行動日は基本(水泳部男子の管理が雑なのだろう)、開けっ放しになっている。勝手に借りて、軽くシャワーを浴びた。タオルで頭を拭きながら出てくると、窓際のベンチに銀髪の少女が座っていた。ラベンダーに似た、紫の花の鉢植えを、太ももの上に乗せている。

 

「ああ―――咲いたのか」

「ん。おすそわけ」

「はは、ありがとな」

 

 そう言って褒めるようにフィーの頭を撫で……。

 

―――流石に撫ですぎな気がしてきたな。"ナデポ"は伝統的なハーレム系異界者(オリ主)しぐさでもあるとはいえ、自分できっつ……と思わないでもない。それに、フィーが末期のアルティナ(なでなで中毒)化したらどうするか問題もある。ただでさえ属性被ってるんだぞ。

 

「……撫でないの?」

「子供扱いだったかと思ってさ」

「ん……悪い気はしてない、かな。わたし、褒められて伸びるタイプだし」

 

 フリーズした俺を見上げ、首を傾げる仕草が可愛かったので、結局撫でておいた。

 

(まあ、大人扱いして撫でるのを辞めたら女心がどうとか言われた気もするし……)

 

 

 フィーの所属する園芸部の花壇は《ギムナジウム》の隣にある。

 

 今日のフィーは、自分で育てた花をお世話になっている人――サラやⅦ組女子、保健室の先生(昼寝用ベッドを提供してくれている)にプレゼントするという微笑ましい活動をしていた。

 

「リィンが素手で戦ってたの、久々」

「さっきの見てたのか?」

「……まあ。あれだけ隣で闘気を出されれば」

 

 そして、少し近寄ると、

 

(―――でもアンゼリカ先輩。やっぱり《C》じゃないみたいだね)

 

 《ガレリア要塞》の《C》とは全然違った。

 少し残念そうな顔をしているフィーを見て、俺は苦笑した。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 最後の『旧校舎地下の調査』依頼。これについては夏季休暇前、ユーシスに回してもらうように言ってあったので俺の所には来ていない。

 

 旧校舎探索は時間が掛かるため、午前中に所用や他のクエストをこなして、昼下がりぐらいに集まることが多い。まずは、ユーシスに声をかけて合流した。

 

「今日はお前がリーダーをやるか?」

「いや……今更俺が仕切るのも違うだろうから、引き続きユーシスがやってくれるか?」

「フン、そもそもこ(・)れ(・)は(・)お(・)前(・)が(・)俺(・)に(・)課(・)し(・)た(・)ク(・)エ(・)ス(・)ト(・)だ(・)ろ(・)う(・)。ならば、見ているがいい」

「―――ああ、見せてくれ。成長したユーシスの実力を」

 

 

 トールズ本校舎から見て、北の裏山側にある旧校舎。その外観は、古城。トールズ士官学院は皇帝が自ら設立させ、かつては貴族男子が大多数を占めていた騎士学校である。朽ちても未だその威風の影がある。

 

 ここは、いわゆる《ダンジョン》になっている。それは、ゼムリア世界では、珍しいことではない。人間に使われなくなった建造物には容易に魔獣が巣くってしまう。非常に人口の多いクロスベルですら、アパートが魔獣に乗っ取られることもあるのだから。

 

 だが、この旧校舎には今年4月に地(・)下(・)が見つかった。しかも以降は毎月、一層ずつ解放されて、徘徊する魔獣もだんだんと強敵になっていくという、軍学校の訓練施設としては(ご都合を一手に引き受けた)至れり尽せりの施設となっている。

 

 Ⅶ組は学院からここの調査を依頼されている。理由は単純に――な(・)ぜ(・)か(・)、Ⅶ組の生徒が居ないと地下空間に入れないようになっているためだ。

 

 

「さっきぶり。今日は来るんだ?」

「ふふっ、よろしくお願いしますね」

 

 旧校舎入り口の階段の上で既に待っていたフィーとエマ。

 この二人にユーシス、ガイウスが旧校舎探索のイツメン(いつものメンバー)だ。

 フィーは訓練施設として《旧校舎》を気に入っており、エマは―――。

 

「リィンさん、ラウラさんと仲直りできたんですね」

「仲直り? うーん……そもそも仲違いしていた自覚がなかったんだが……。

 もしかして顰蹙買ってたか?」

「さて、どうでしょう?」

「ん。ぶっちゃけウザかった」

 

 そんなエマの濁しを無駄にして、ぶっちゃけるフィー。

 マジか……。

 

 

 前回(未来の記憶)でもそうだったのだが、マキアス(第二チェス部)、エリオット(吹奏楽部)、アリサ(女子ラクロス部)、ラウラ(水泳部)はあまり旧校舎探索に参加していない。主に部活内容が原因だ。みんな、こちらを優先するとは言ってくれているものの、ペアになっている相手や全体の練習に迷惑が掛かってしまうので、現実的には頼めないタイミングもある。

 

 園芸部(フィー)、文芸部(エマ)、美術部(ガイウス)の面々はその点、自由がきくのだ。

 

 だが、そんな中。

 ガイウスが集まって来たみんなの顔をみて、一考したのち、言った。

 

「―――ユーシス、リィンも。

 今日は人数が集まっているようだから、オレは美術部の方に行こうと思うが、構わないか?

 学院祭の出し物の下準備をしているんだが、実質オレともう一人の女子(リンデ)しかいなくてな」

 

 美術部の部長(クララ)は、自分の彫刻にのめり込むあまり、それ以外の作業を一切しようとしない非常に癖の強い先輩だ。文化祭の出し物も一年生に丸投げであり――結果、ガイウスとリンデだけで大量の展示物を運んでいるらしい。

 

 とはいえ、スケジュール的には余裕はある。午後、リンデを一人で作業させるのは忍びないとは思いつつも、ユーシスの勧誘下手で集まりが悪いのを察して、今回も参加しようとしてくれていた、という事情のようだ。

 

「―――そうか。大丈夫だ、そっちを優先してくれ」

「……ここ数ヶ月、お前がいてくれて助かった。礼を言う、ガイウス」

「フフ、気にするな。足りない時はいつでも呼んでくれ」

 

 ガイウスは寡黙だが、時折こちらがはっとするような気遣いをしてくる……本来ならモテまくって恋敵にもなりえたかもしれない天晴れな男だ。ユーシスも感じ入る部分があったのか、殊勝にも礼を言っている。

 

 ガイウスには導力楽器(オーバル・ベース)の練習もして貰っている。俺たちは後で手伝いにいくことを約束し、彼を見送った。

 

 そして新たに加わった二人―――

 

「ま、先月の感じなら、これだけいりゃ余裕だろ。気楽にやろうぜ」

「にししー、頑張ろうねユーシス! リィンに、いいんちょに、フィーも!」

 

 あくびをかみ殺すクロウと、元気いっぱいに『誰々に誰々』構文で全員を呼んでくれるミリアム。この二人と、エ(・)マ(・)は(・)そ(・)も(・)そ(・)も(・)旧(・)校(・)舎(・)の(・)調(・)査(・)が(・)目(・)的(・)なのでモチベーションは言わずもがなだ。

 

 

 建物の中に入り、一つ扉を抜けた先に昇降式の転位エレベーターがある。

 操作端末になっている石版には《0・Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ》までの数字がセフィロト状に表示されている。

 

「"第6層"のランプが点灯しているな……」

「はい、先月は光っていませんでしたね……」

「ふむ…………」

 

 今日は第6層の攻略だ。先月俺は休んだので詳しい話は聞いていなかったが、第5層の封印が解かれているのは事前に確認している。

 

「順当にいけば、これが最後になるのか」

「奥に何があるのか楽しみだね」

 

 俺たち六人を乗せた床が、奈落を目指して落ちていく――――。

 これがあるので、どの道、あまり大所帯では入ることが出来ないのだった。

 

「では、行くぞ」

「おおっ!/おおっ~♪」

 

 ユーシスの声かけを受け、皆が歩き出す。

 主にミリアムが原因で、なんだかんだと賑やかな雰囲気だった。

 

 

 それに後方師匠面で後ろから付いていこうとすると、

 

「リィン」

「ん?」

「サンキューな」

 

 クロウが、いつもの軽い調子でそう言った。

 




リーシャの催眠が深まった!
好感度(絆ポイント)ランクアップ!
★★★★☆


《設定変更のお知らせ》
常時修正はしているのですが、今話までではじめの表現から大きく変えてしまったものを書き残しておきます。

【2話】陰毛描写のある小説として紹介されていた(詳細情報)のに気づいて、改めて見直したら、リーシャだけ陰毛について描写がなかったので、少し加筆しました。

【3話】多分、誰も気にしてなかったとは思いますが、エニグマのクオーツ設定を零の軌跡(エニグマⅠ時代)ベースで自然な構成に変更しました(ちょっと加筆もしてます)。

修正前:妨害2、治癒、固定スロット4・2・1
修正後:妨害3、HP2、中央スロット1+固定3・2・1

【4話/11話】《第一の試し》にマキアスもいたことになりました。
理由:この時点ではここでしか入手できない戦利品の『アダマスシールド』(5話で言及)をユーシスが居なかったマキアスに渡すのはちょっと不自然と考えられる。

【10話】ARCUSの火スロットのクオーツを変更しました。
理由:閃仕様では氷結と火傷が重複しないため。

修正前:朱雀刃
修正後:封技の刃

【17話】改造エニグマⅡの幻専用スロットの記載を追加しました。
理由:忘れてた。

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