この部屋に戻ると、嫌でも昨日の夜のお風呂場の光景が蘇る。
ゆかりとの一幕、男女二人きりの空間。
ただの女の子じゃない、日本を代表する水本財閥の未来を担うご令嬢。
それも、アイドルにスカウトされて活躍するほどの美貌、プロポーション。
元々の家柄もあり、食材から栄養が徹底的に管理されて健康的に発育された体。
それがアイドルのレッスンにより更に鍛え上げられて、脂肪と筋肉のバランスが完璧ともいえるほどに整えられている。
それが雑誌のグラビアで一目みれば肌の艶や輝きなど、一瞬で普通の女の子とはレベルが違うことがうかがえる。
男の手など一切触れたことがない、清純という言葉がイヤというほど似合う純潔の箱入り娘だ。
いや、箱入り娘だった。
ここに来て、全てが変わった。
元々、その一途な気持ちには気付いていた。
あからさますぎて、駆け引きを知らなさすぎて、その猛烈な気持ちのドッチボールに日々打ちのめされていた。
チャンスさえあれば一歩踏み込んでくる、そんな娘だった。
でもたまたまいつも近くにいる男が俺なだけで、芸能界にならもっとカッコよくてイケメンでいい男ならいくらでもいる、そう言ったがゆかりは諦めなかった。
お嬢様仲間の琴歌を救った一件で、その好意が覚醒した。
そして、昨日の一幕だ。
ゆかりはチャンスをふいにすることなく、一歩踏み込んだ状況を作り出す。
一線を超えることを許した。
自らの体に一歩踏み込ませることを望んだ。
誰にも見せたことのない自らの全てをさらけ出した。
壁に手をついて俺に背中を見せた。
肩から腰にかけて反り返るその肢体は美しく、初めて見るその中学生のような成熟したてのプロポーションは若々しく瑞々しくて、眩しく浴室の照明の光で輝いていた。
徐々に腰を曲げて、お尻をこちらに突き出していくと、隠れていたその二つの穴がこちらの下半身を覗き込んできたのだった。
俺は抵抗したが、ゆかりは引かなかった。
このままではゆかりのプライドをズタズタに引き裂くことになる。
精神的に女としての自信を持てなくなってしまうかもしれない。
ゆかりの人生の分岐点であることが、ひしひしと伝わってきて、俺の頭の中が警鐘を鳴らしていたのだった。
ゆかりは、ズルい女だった。
俺は色々な常識をとりあえず置いておいて、ゆかりの腰に手を伸ばすことにした。
そのままゆかりはまったく抵抗することなく、腰を掴まれる。
くびれに腰骨、そしてその弾力のあるお尻の感覚が手に伝わってくる。
お風呂と興奮で高まった体温の感覚と、スベスベの肌が手に張り付くほどの瑞々しさが年相応の身体を感じさせたのだった。
そしてゆかりは自らのこちらに腰の高さを合わせて、受け入れた。
捧げた純潔と、滴る純血。
それが股を伝い、脚を伝い、お風呂場の床に繋がって赤い筋を作っていたのだった。
あまりの痛さに脚が震えてゆかりは動けないでいたが、痛いけど嫌ではない、嬉しいと言い、血が出ていて濡れていなくても繋がろうと必死だった。
その様子が痛々しく、引き抜こうと何とか動こうとしても、ゆかりは喘ぎ声どころか唸るような金切り声をあげて痛みに耐えるのだ。
ゆかりはそれでも繋がろうと無理やり動くが、状況は同じだから痛いだけだった。
膣内の肉が切れているのに、それを抉るように動くのだから当然だった。
そんな、苦い初体験にさせてしまったことが蘇ってくる。
「ぶえっくしょいっ!!」
考えていると、途端にくしゃみが出る。
別に空調が利きすぎてるわけでもなかった。
誰かが俺の噂でもしてるんじゃなかろうか。
わからない、こうやって日本を代表するご令嬢たちとこうして誰もいないし誰も来ない島に缶詰にされてるんだ、あいつらなり親御さんなりが色んなことを話してるだろう。
豪華すぎるお風呂で汗を流してから、俺は寝巻きに着替えて部屋のソファーに座ってあいつらの準備が出来るのを待っていた。
昨日のゆかりのように誰かが乱入してくる様子もなく、俺はゆっくりそしてゆったりと湯船に浸かって疲れを癒したのだった。
さすがに若いのに混じってビーチバレーは体力がついていかなかった。
腕を伸ばすと骨がポキポキと鳴り、体のスジがリラックスしているのがわかる。
俺はソファーの背もたれに深く腰掛けて背中をつけると、天井を見上げて一息つく。
「···やっぱ広いよな」
その部屋の天井は普段暮らしているアパートと比べると段違いに高く、まるで大企業の応接室のようだった。
美城プロの専務のオフィスを思い出す。
それはそうだ。
日本を代表する大財閥、西園寺グループが日頃の激務を癒すために作られた別宅なのだから尚更だった。
飛行機でしかアクセスできない島を一つ買い上げて、関係ない他人を一切シャットアウトし、思う存分己の趣味や、やりたいことに専念出来る空間だ。
この館に使われている材料は一級品のものばかりなのか、この座っているソファーやベッドなどからも普段嗅いだことのない高級な匂いが溢れてくるのだった。
ここなら何をしても外部に漏れることはない。
人目を気にせず思う存分羽を伸ばすことができる。
そんな空間に、大財閥のお嬢様三人と、男一人。
俺は思わず目を閉じて、物思いにふける。
この館の主である西園寺グループのご令嬢、西園寺琴歌。
お嬢様の割には好奇心旺盛で、その見た目とは裏腹な中身のギャップから俺の中のお嬢様といえばおしとやかで大人しいというイメージを丸々吹っ飛ばした張本人だった。
水本財閥ご令嬢、水本ゆかり。
行動力はいわずもがな、相当な負けず嫌いで、苦手なものがあれば克服しようと一生懸命になるのがいいところだ。
昨日の一件も、俺に対して他を出し抜こうと行動した結果なのだから、本当に凄い。
油断してるとヌルッとその手を伸ばしてくる。
涼宮グループの箱入り娘、涼宮星花。
三人の中では最年長で、見た目はおっとりしていて少し天然だが、琴歌を凌駕する好奇心の持ち主でグイグイくる。
そんな三人の中に放り込まれた一般人の俺。
完全に釣り合いが取れていなかった。
だが今回の旅行は三人たっての希望で招かれたものだった。
そこから三人の気持ちが、旅行を通して痛いほど伝わってくる。
今日の浜辺でもそうだった。
妙に密着してくるお嬢様三人。
脚なり肩なり、胸なり。
琴歌に至っては俺の脚の間に座り込んで、背中を預けてきた。
ビキニの水着越しとはいえ、下着とほぼ変わらない布面積のまま密着されたら、否が応でも肌と肌が触れ合う。
重要な部分は隠れてる、だが言ってしまえばそれ以外の部分が出ている状態で、それだけ体ごと密着すれば、女の子だと簡単にわかる。
そうすると三人の息使い、体温も感じてくる距離で、女の子特有の匂いも漂ってくる。
何だかおかしい。
三人がこれまで以上に距離を詰めてくる。
夕食の時も、明後日の朝までこの館には俺たち以外誰もいないし来ない。
何をしても、自分たち以外誰もわからないと琴歌は言っていた。
唐突にゆかりとの一件が蘇る。
それは男の性なのだろうか。
「···ゆかり」
「零次さん?」
唐突に後ろから話しかけられた。
驚いた俺は振り返ると、そこにはキョトンとした顔で俺を見つめるゆかりがいたのだった。
「なんだ?どうした?何で俺の部屋に?」
「呼んでも出てこなかったので、扉を開けてみたら、ソファーに零次さんの姿を見つけたんです。それで近づいてみたら私の名前を呼んでいたので」
「···そうか」
なんと聞かれてしまっていた。
俺は誤魔化すように視線をそらすが、ゆかりにはお見通しなのか俺の顔を見ながら微笑んでいるのだった。
「私のことを考えていたんですか?」
「いや、違う。いや···違わなくはないけど、なんと言うか···あ~」
昨日の事を思い出していたなんて言い出せなかった。
だがゆかりは俺の目線がお風呂場に向いていたことに気付いたのか、一瞬目を大きく開くと、少し俯いて顔を赤くしていた。
「···悪かったよ。どうかしてたんだ俺が」
「何で謝るんですか?」
「だってそうだろ?初めてなんてお前だったらもっとこう···若くてイケメンで、それこそ芸能人とか御曹司とか···」
俺がそう言い始めると、ゆかりはすぐに首を横に振り始めるのだった。
「私がそうしたかったから、そうしたんですよ。零次さん、何も悪くないです」
「でもなぁ、お前はよくても大人には色々あるんだ」
「零次さんの中では何が引っ掛かってるんですか?」
「もうなんていうか···色々だ。家柄とかお前たちとの関係とか、あと···お前も若すぎたんだ」
一言では到底説明できなかった。
ありとあらゆる状況や感情が絡まりあってる。
わかりやすいように説明しようとしても、どう説明していいかわからないでいたのだった。
そんな時、ゆかりは言う。
「大丈夫ですよ零次さん」
「大丈夫って?」
「琴歌さんが言っていたでしょう?ここで起きたことは外部には漏れないって。それとこの島は、普段私たちが住んでいるところとはルールが少し違うとも言っていました」
「ル、ルールって?」
「ルールはルールですよ?色々とあるじゃないですか。ほら、学校の授業で習うようなものとか」
それは法律のようなものかとゆかりに聞くと、ゆかりはニコッと笑いながら首を傾げた。
その時のゆかりの感情が読めなかった。
顔は笑っているのに、なんだかその心の裏に何か思惑を秘めているような。
「有事の際に自分たちで色々決めて自由に動けるようにと、琴歌さんのお父様たちがそうしたのだそうです。自由だから何をしても···''そういうこと''があってもここでは罪に問われないんだそうです」
「そうは言っても、お前たち相手なら背徳感が···凄まじくて」
その時、ソファーを挟んでいたゆかりが俺の前までやってきた。
すぐに目に入ってきたのはそのゆかりの格好だった。
ワンピースタイプの薄いネグリジェだった。
純白の綺麗な花のような模様が複雑にあしらわれた高そうな一品だ。
上は水色の下着がうっすら見えるほど薄く、下にいくほどレースが濃くなっていき大事な所は見えないように隠れる仕組みになっている。
近づいてくるとわかる、そのネグリジェから漂ってくる良い匂いと、そこから続いて引っ張られてくる、ゆかり本人の女の子の匂い。
シャワーを浴びてきたからか、ボディーソープのような匂いもしてきた。
「その背徳感も、ここなら何の問題も無いんです。むしろ、ここでないと楽しめないものなので、楽しんでしまえばいいと思います」
俺を見下ろしていたゆかりは、そのまま俺の隣へと腰を下ろした。
通りすぎざまにワンピースのスカートが空調で揺れて俺の鼻をかする。
きめ細かいレースのザラザラとした薄い感触がイヤでも女性を感じさせてきて、俺の頭の中の本能が動こうとしているのだった。
「零次さんは若い女の子は嫌いですか?もしかして···もっともっと大人の女性の方がいいとか?」
「そりゃあ若い女は嫌いじゃないけど、だから···若すぎるんだよ」
「そうですね···よいしょ···っと。どうですか?中々体験できないですよ?ここまで若い女の子って」
「そりゃそうだ、中学生みたいなもんじゃないか。そういう店でも体験できてたまるか」
ゆかりは俺の腕を持ち上げて、自分の肩へとまわして寄りかかってくるのだった。
こうやって隣に座っても、体の大きさがワンサイズ小さい。
狭い肩幅、腕を伸ばして肩を抱いても全然余裕があり、肩そのものが手の中に収まるほど小さい。
ゆかりの身体そのものが、女性として機能が最低限発達したばかりでこれから成熟していく段階なのだから当たり前だった。
俺の脇腹辺りから聞こえるゆかりの掠れた少し声色が高い呼吸音も、まだまだ成長途中な女の子を余計感じさせた。
「私のこと···嫌いですか?」
「···その質問はズルい」
ゆかりは俺の脇の間から顔を覗かせると、俺の表情を見てイタズラっぽく笑う。
子どものような無邪気な笑顔だ。
顔を逸らすと、ゆかりは脇をすり抜けて俺の首に腕をまわし、抱きついてくるのだった。
「ねぇ···嫌いですか?」
「···嫌いではない」
「よかった。昨日は···少し痛かったけど、嬉しかったです。私も初めてでしたけど、零次さんも私くらいの人との経験は初めてなんですね」
「初めてじゃなきゃ俺に問題アリだ」
昨日の様子から少しというレベルではなく相当痛そうだったが、嬉しかったという言葉からは嘘も気を使った様子も感じられなかった。
「今度は、零次さんのことも満足させられたら嬉しいです」
「···それはどうかな。またするとも限らない」
「いいんですか?こんな機会···中々ないんじゃないですか?私くらいの女の子と···遊ぶっていうのは」
「···それは、そうだけどさ」
するとゆかりは、俺の耳元まで顔を近づけて呟く。
「私、ランドセルを背負った感覚···なんとなく覚えてますよ。若すぎるので」
ゆかりを見ると、まるで俺をからかうような表情で俺を見ながら笑っていた。
自分の武器がなんたるかを完全に理解していた。
そこにアイドルの仕事で培った自分をアピールする技術とスキル。
それらが完全に組み合わさり、男を誘惑するのにはこれ以上ないくらいに完成されていたのだった。
まさに魔性だ。
イヤでも目線がゆかりの体へと落ちていく。
その若々しい身体に触れることができる。
女の子としては完璧ともいえるプロポーション。
だが完全には成熟していない女性器。
何色にも染まっていない、全くの無垢な秘部。
そこを自らのモノが貫き、染め上げる感覚。
それが普段の日常とは違うイレギュラーな環境で、ルールも何もかもが違い許されるという事実に自分の中で本能がほんのり疼くのを感じていた。
昨日はまだ最後まで達さなかったことだけが救いだった。
出すとか出さないとかそんなこと言ってられる状況ではなかったため、雰囲気もあったものではなく全くそういう気分でも感触でもなくなったのが幸いだった。
お風呂場の温度による火照りや状況もあって、あの時の感触をあまり覚えてない。
ただ射精できなかったもどかしさだけが残り、そんなタイミングで今、ゆかりが俺を誘うように寄りかかっているのだった。
「お前···なんだか風俗嬢みたいだな」
「こんな感じなんですか?フーゾク嬢さんって。勉強になります」
「勉強になってどうするんだ。将来アイドル辞めて風俗嬢になったら悲しいからな俺」
そんなことになったらいくら俺でもどう接していいのかわからなくなる。
抱きついていたゆかりが離れると、何だか考え込むのだった。
「···どした?」
すると何かを思い付いたのか、それはそれはたいそう大真面目な顔で俺に言うのだった。
「なら私、零次さんの前でだけフーゾク嬢さんになりますね。それなら、文句ないでしょう?」
俺は思わず片手を額に当てて項垂れた。
どうしてこうなったんだこいつは。
一度経験するとこうなる性格だったのか。
極度の負けず嫌いからなのか、頑なに譲らないゆかりだった。
前にトランプで遊んでいた時に根負けして負けてあげていたみりあを思い出す。
「じゃあそろそろ、行きましょうか。琴歌さんたちが待っていますから」
「そっか···そうだな。またあの遊戯室に行けばいいのか?」
「あ、違います。今夜は···その···」
すると途端にモジモジしだすゆかり。
今度は一体何を考えているんだこいつは。
ゆっくりと顔を上げて、ゆかりは恥ずかしそうにボソッと呟くように言うのだった。
「琴歌さんの寝室で···遊びましょうと。星花さんも一緒に待っていますので···」
言葉が最後尻すぼみに小さくなっていき、上目遣いに俺と目を合わせたり反らしたり、落ち着きがないような様子で唇をムニュムニュと動かしていた。
その様子から、こいつらが何かを計画しているのをうっすらと俺は感じたのだった。
一体ゆかりはあいつらにどこまで話したのだろう。
それを聞いたのなら、琴歌が遊戯室ではなく寝室へ招いたというのも腑に落ちる。
何かしらの''流れ''を感じる。
何だか、この絶妙な青臭さが懐かしく思えた。
自然な流れを作ろうとして逆に不自然に思えるこの感じ。
自分の学生時代を思い出す。
「零次さん、行きましょう?」
ゆかりはソファーから降りると、俺の手を取って軽く引っ張るのだった。
細い指、小さな手のひらで俺の指を引っ張り立ち上がらせるゆかり。
向かい合って立ってみると、やっぱり身長差から見下ろす形になる。
「このまま···手を繋いでいてもいいですか?」
「···ああ」
するとゆかりは隣に並んで、俺を誘導するように先陣を切って歩き始めた。
妙な火照りを俺は感じていると、自分の感覚が妙に鋭くなり心臓の鼓動が何だかハッキリわかるような気がしてきた。
繋いだゆかりの手は温かく柔らかくて少し水気を帯びていることから、お風呂上がりであることがわかる。
ゆかりが歩きながらもチラチラと俺の様子を伺っていることから、この先に起こること···というより、ゆかりもこの先の流れに期待しているような様子だった。
「零次さん、忘れ物はありませんか?」
「ん?あ、ああ。携帯くらいでいいだろう。泥棒が入るわけでもあるまいし」
「ふふっ、そうですね。琴歌さんのお部屋にも、色々と···準備しておきましたから」
廊下に出ると、空調の涼しい風が心地よい。
ゆかりと二人の妙な雰囲気の空間が少し暑かったので、ありがたかった。
こんな要塞みたいなお屋敷だ、泥棒なんて入れるハズもない。
そもそも、今は俺と琴歌たち以外この屋敷とその周辺にはいないのだ。
「それなら、飲み物とかも持っていかなくてよさそうか?色々準備してもらって悪い」
「いえ全然、誘ったのはこっちですし」
部屋から出たおかげでさっきの感覚も少し薄れ、会話にも余裕ができてきた。
美城プロよりも二回りくらい大きい廊下を二人で歩くと足音だけが響き、本当に誰もいないことがヒシヒシと伝わってくるのだった。
ゆかりに手を引かれて進んでいく廊下。
黙っていると、ゆかりの呼吸する音も静かに聞こえてくるくらい静かだった。
口元が時折薄く開き、緊張しているのか息がほんのり荒く感じてきた。
そんなゆかりを見ていると、またも復活してくる火照り。
首筋に熱を感じ、鼻をツンとするような感覚が生まれてきた。
俺の中の本能がイヤでもすぐ隣を歩くゆかりの身体に視線を走らせてくる。
身長差から見下ろす形になるその視線の先には薄いネグリジェのネックラインが見え、そこに施されたきめ細かな装飾が高級なイメージをより一層引き締めていた。
そのネグリジェの首もとはバストまわりまで開かれていて、水色の下着とそれに包まれている胸がユサユサと揺れているのが見えた。
ゆかりが肩に掛かる長い髪を手で払うときに軽く頭を動かすと、俺の視線に気付いて首を少し傾げる。
俺は誤魔化すように首を左右に振るが、すぐに察したのか、恥ずかしそうに笑みを浮かべた。
「もうっ、零次さんったら」
「だってお前···さっきから思ってたけどそれ薄すぎないか?イヤでも目に入ってきて、男には目に毒だ」
そう言うとゆかりは自分の胸元を見ながらネグリジェの襟の真ん中に人差し指を引っ掛けると、軽く下に引っ張る。
「ちょっ、おまっ、ほんっっと···」
すぐに顔を背けたが、その一瞬の光景が脳に焼き付く。
ハッキリと見えた水色のブラジャー。
下地が水色で、白い花柄の装飾が施されていた高そうな一品だった。
「ごめんなさい、見えちゃってましたか?」
「見えてたっていうか···悪い。こう、見下ろす形になるからさ、斜め上から見えちゃったんだよ。その、ブラがな」
俺はなるべく見ないようにしながらも、指さしながら説明した。
「ああ、なるほど···」
「だから正面からなら大丈夫だった。さっきの部屋の時みたいに」
ふむふむとゆかりは頷いていたが、その視線が俺と自分の胸元を行き来するように動くのだった。
「な、なんだ?」
俺が困惑しているのをからかうように、ゆかりの口元に笑みが浮かんでくる。
するとゆかりは再度自分のネグリジェに指を掛けると、一瞬下ろしてブラを見せつけてきたのだ。
「だからおまっ」
「ふふふふっ」
また顔を反らす俺の様子が可笑しかったのか、ゆかりはクスクス笑う。
「すみません、男の人ってチラッと見えるのが好きだって聞いたことがあったので」
「それは···状況による状況に。っていうかそのあたりは女の子に説明することじゃないから、俺も言いたくない」
ましてや自分よりもかなり年下の女の子になんて何かイヤだった。
しかしゆかりは興味があるのか食い下がってくる。
「下着が見えるのがいいんですか?それとも、直接見える方がいいんですかね?」
「うーん···どう言ったらお前は諦めてくれるんだ?うーん···」
半分冗談で半分真面目なゆかり。
育ちの良さがここにきて悪い方向に働いていたのだった。
キョトンとしているゆかりは、俺に言う。
「でも昨日私、零次さんに見られてますし···今更では?」
「それとこれとは違うんだ。あー···この話は終わり、終わり終わり」
昨日の光景がまたよみがえってきた。
それを振り払うように俺は手を左右に振りながらゆかりにそう言う。
「···でも」
ゆかりの声が若干トーンダウンしてどもる。
その雰囲気の変わりように俺も何かを察するが、何も言えずにゆかりの次の言葉を待った。
「零次さんにその···ブラが見えたのならよかったです。そういうのを選んできましたから、男の人が喜ぶ···みたいな」
そう言うと恥ずかしそうに顔を伏せるゆかりだった。
ゆかりの手に力が入って、少し強く俺の手を握ってくる。
無意識に自分の歩く速度が速くなっているのに気付かない様子のゆかり。
俺とゆかりの間の妙な雰囲気が強くなっていく。
少し前に出たゆかりの後ろ姿、その姿が妙に目に入ってくる。
揺れる長い髪から時折見えるうなじ。
体と擦れて動く薄いネグリジェ。
そんなネグリジェが描き出す、お尻の形とその割れ目。
昨日の夜のお風呂場、裸のゆかりがお尻をこちらに突き出していた姿が一瞬頭をよぎる。
ゆかりの腰を押さえるように、くびれに手を当てた時の感触。
細いウェスト、中学生プラスアルファ位の体型故に、そのまま人差し指がすぐあばらまで届くほど体が小さい。
胴や足の短さ、身長が低いというより全体的に小さいため、全身が見渡せたのだった。
そんなゆかりが一生懸命こちらを確認して、高さを合わせる。
吸い付くようにみずみずしい肌、シャワーの水滴が乾いても、手に吸い付くようにくっ付いてくる年齢故の若々しさ。
穴と棒が位置を合わせて向かい合う、あの瞬間。
俺の下半身に少し力が入ったかと思うと、ジンジンとする感覚が股間に集まってきた。
少し···亀頭に力が入る。
俺は慌てて首を横に振って煩悩を払う。
なるべく飲み込まれないようにと大人の体裁を取り繕うとする。
そんな葛藤の最中、ゆかりが一つの扉の前で止まったのだった。
「ここです、零次さん」
ゆかりが立ち止まると、扉をノックする。
『いいですわよー!』
中から琴歌の声が聞こえてきた。
相変わらず能天気な、元気な声。
その声のおかげで少しだけ頭がリフレッシュする。
そんな考えばかり持っちゃダメだ、俺からしたらあいつらはまだまだ子どもだ。
あんなアイドルの容姿に惑わされるな、そう思っていたら扉の取っ手に手を掛けていたゆかりがボソッと呟いたのだった。
「あの、お部屋に色々と準備しておいたって言いましたけど···その、一応ですが···避妊具もいくつか用意しておきましたので、よかったらお使いいただければ···と」
丁寧すぎる言い方に一瞬ピンと来なかったが、その言葉···というより単語がすぐ頭に響き渡ってきた。
コンドームがある。
それを用意しているというのだから、部屋で待っている琴歌と星花の二人もきっとわかってる。
もう考えなくても何を考えているのかがわかる。
扉がグワッと開かれて、中から涼しい空調と共に、高そうな革製品と大きな絨毯の高級な部屋の匂い。
その中に琴歌たちのような女の子の部屋の香料のようないい匂いが追うように出てくるのだった。
「お待ちしておりましたわ、零次様」
高そうな絨毯、高そうなソファー。
そのソファーに腰掛けていたのは、ゆかりと同じ様なネグリジェに身を包んだ琴歌と星花だった。