ここ数日、龍見は土像(ゴーレム)を使っての情報収集に励んでいた。数ヵ月前に協力関係になった貂蝉によるとそろそろ反董卓連合が動き出す頃合いらしい。
ちなみに貂蝉だが、最初は警戒されまくっていたものの、化粧や料理の技術をみんなに教えているうちに真名を許されるほどに馴染んでしまっていた。
「龍見、お茶」
「ああ、助かるよ恋……………………ぷはぁっ、この一杯が堪らねぇ」
「どう?」
「貂蝉の言う通りだ。いや一部は既に動いている。こっちも準備しねぇと。おっとと」
長距離での複数の土像(ゴーレム)の操作はかなりの疲労となるらしく、立ち上がった龍見はふらふらとした足取りで外へ向かおうとした。
そんな龍見の体が急に後ろに引っ張られ、倒れるように寝かされた。それをやったのは当然恋で、龍見は恋に膝枕をされる状態となった。
「少し、休んだ方がいい」
「んー、そうだなぁ。恋がここまでしてくれるならそうするか……………………」
そのまま目を瞑り、眠りに入った龍見を恋は優しく撫でる。一枚の絵にもなりそうな情景だが、乱入者によって十数分で終わりを告げる。
「龍見ちゅわぁん♪ 報告よぉ」
「しーっ。寝てる」
「いや、大丈夫だ恋。今起きた。あんがと。くぅー! よく寝た」
「恋ちゃんの膝枕なんて羨ましいわねぇん。それで報告なんだけど、左慈ちゃん達の動きは完全に掴んだわ。龍見ちゃんの使い魔が囮になってくれたおかげよ」
「ナイス。それで?」
「反董卓連合が攻め入っている間に転移か何かで龍見ちゃんに奇襲を仕掛けるみたい。術や道具も使えるだけ使うようよ。このままだとどうやっても龍見ちゃんに勝ち目はないけど、あっちはわたしに気付いてないみたい」
「最高の情報だが、逆にこっちの情報が漏れてるって事はないか?」
「ないとは言い切れないわねぇ。于吉ちゃんはそういうところがやらしいし」
「ならオレが言い切ってやる。てめぇが偽者だからこっちの情報が筒抜けだよ!!」
龍見は短刀を貂蝉の頭に投げ付けた。それが刺さると貂蝉は最初からそこに居なかったかのように消え去り、一枚の人形の紙のみが短刀に突き刺さっていた。
「せめて一人称くらいちゃんと真似しとくんだな」
「龍見ちゃん!! 于吉ちゃんの使い魔の気配がしたけど」
「おせぇよ筋肉達磨!!」
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龍見に使い魔を壊された左慈は壁を殴り付けて于吉に怒鳴り付けた。
「チィッ! 于吉! バレてるじゃないか!!」
「申し訳ありません左慈。やはりあの男は危険ですね」
「そんな事は分かっている! 次の策はあるのか!?」
「ええ。ご安心を。左慈に嫌われたくはないのでね」
「なら早くしろ」
「分かりました」
ーーゴッ
「ガッ…………!? うき、つ…………何を…………!?」
「あらぁん、本当に于吉ちゃんだと思ったの?」
于吉の痩せ型の体が筋骨隆々とした肉体へと変化していく。言うまでもない。貂蝉だ。
「き、さま……!!」
「流石の左慈ちゃんも背後からの一撃には耐えられないみたいねぇ。それで何か聞きたいかしら? 閉じ込める前に答えてア・ゲ・ル♪」
「いつ、から…………于吉に」
「一週間くらい前よ。ちなみに今の変身も、さっきまで観てた龍見ちゃんへの使い魔も、それと龍見ちゃんの部屋に入ってきたあたしも全部龍見ちゃんの自作よ。本当に天才的で惚れちゃいそうだわぁん♪」
「く、そ…………」
左慈が意識を失うと、貂蝉は魔法陣を描いて左慈をその中に引き込んだ。そして魔法陣に魔力を込めると左慈は魔法陣へと沈んでいき、その姿を消した。
「龍見ちゃん、聞こえるかしら? 終わったわよぅ」
『成功したのか。ふぅ、これで暫くは安泰だな』
「生かしたまま封じ込める形で良かったのかしら?」
『ああ、いいんだよ。下手に殺すとお前らの上司がまた別のを送り込んでくるかもしれないだろ』
「それもそうねぇ」
『一応もう一度安全を確認してから帰ってきてくれ』
「分かったわぁ」
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「邪魔もなくなったし、安心して反董卓連合と戦えるな」
「お疲れ様」
「一週間もあいつに変化をかけ続けるのは精神力使ったぜ。恋、また膝枕してくれ~」
「うん…………」
恋の膝に遠慮なく頭を乗せた龍見は恋の顔色が少し青いのに気が付いた。
「気分が悪いのか?」
「少し」
「医者に診てもらおうか」
「…………一緒に来てくれるなら」
「甘えん坊だな。いくらでも付き合ってやるよ」
「抱っこ」
「はいよ」
恋を抱えながらだと流石に目立つものの、龍見も恋も一切気にしていない。街中ですら何でもないかのように歩いていき、診療所へと着いた。
「呂布様に馬淵様、この度は如何なさいました?」
「恋の調子が悪いみたいだし、少し診てやってくれ」
「畏まりました」
恋を医者に任せて座っていた龍見の元にすぐに医者はやってきた。
「馬淵様、董卓様方をお連れしてきて頂けませんか?」
「ん? ああ、分かった」
医者がこんな事を言うのだから、何か余程の事が起こったかもしれないと龍見は急いで月達へと連絡に走った。一番の武将に何かあってはいけないと全員がすぐに集合した。
「恋に何があったの?」
「そう身構えないで下さい。まずは馬淵様」
「オレか?」
「はい。単刀直入に申しますと、おめでたです」
「…………詠、オレを殴ってくれ」
「そうね。こんな大事な時期に何してくれてんのよこの馬鹿ぁ!!!」
「いてぇっ!!!? マジか、夢じゃないのか!!」
「夢だと思うなら私も殴ってやるわよ!! 恋が好きなのは知ってたけど、私にも手を出しなさいよ!!」
「ぐへっ!? ち、地和何をするんだ!? って今のってまさかこくは」
「お祝いや! うちの一撃も食らっとき!!」
「ぐほっ!!? し、霞、お前のは洒落にならん…………」
その後も何かと理由を付けられ、月以外の全員のパンチを顔面に浴びた龍見の顔は、それはそれは見ていられないほど悲惨だった。
「あんらぁ、こんなところに居たのねぇ。城に誰も居ないからどうしたのかと…………龍見ちゃん、本当にどうしたの?」
「ひほひほとあっは」(色々とあった)
「お帰りなさい貂蝉さん。実は恋さんが身籠ったみたいなんです」
「あらそれはめでたいわねん…………龍見ちゃん、ちょっといいかしら?」
「はは」(ああ)
貂蝉は龍見を連れて診療所の裏に回った。ご丁寧に結界まで張ってある。
「いちち、なんとか普通に喋れそうだ。んで何用だ?」
「恋ちゃんの妊娠は世界の修正力の影響かもしれないわ」
「なんだそれ」
「外史といえど極力正史と同じように動こうとするのよ」
「ふむふむ」
「次の戦いで董卓軍が負けるのは知っていると思うけれど、今の董卓軍にはあたしと龍見ちゃんという強力なイレギュラーが居るわ。その状態で董卓軍が負けるようにするにはどうすればいい?」
「最大戦力である呂布、恋を何とかすべきだな。だから妊娠か。世界もセコいな」
「でも龍見ちゃんが手を出していなければもっと大きな怪我や病気が恋ちゃんを襲っていたかもしれないわ。そこはファインプレーね」
「ヤって褒められるとは思わなかった。しかし世界も甘い。恋が妊娠程度でどうにかなるわけないし、何よりオレに火を付けちまった。恋と子供を守るために全力でやらせてもらう」
「具体的には?」
「神降だ。ハデスのおやっさんは人の争いが嫌いだから喚べないが、もっとエグいのを喚んでやる。あのお方をな」
ククク、と嫌な笑みを浮かべる龍見には流石の貂蝉もゾッとした。世界の修正力は本当にとんでもない事をしてしまったのかもしれない。
左慈、于吉、一時的に退場!
そして恋のにんっしんっ!!
次回は父親となった龍見がとんでもねぇ神様と一緒に全力で反董卓連合と戦います。