※この作品はR-18です。

あなたに捧ぐ恋の夢   作:雨期

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番外之ニについて皆さんに言いたい。
龍見はロリコンではねぇから!! あれ紫苑の策だから!!
ロリコンは作者だから!!


第二十二話

 龍見も蜀にかなり馴染んできた。蜀の全員にも真名を任せられるほどに信頼もされてきた。正直将来確実に敵になる相手なのにここまで深く付き合ってもいいのかと龍見は考えていた。戦う時などやりにくくて仕方がないはずだ。

 

「先生、考え事ですか?」

 

「…………雛里ちゃん。いつの間に膝の上に?」

 

「えへへ」

 

「いやえへへじゃなくてだね」

 

 薬品事件以降、雛里の様子がかなり変わった。引っ込み思案だったのが、隙あらば引っ付いてくるようになったのだ。龍見が無理に引き離さないというのもあり、遠慮なく引っ付いている。

 

「先生、桃香様が呼んでいましたよ」

 

「そうか。なら離れてくれ」

 

「はい」

 

 このようにちゃんと言えば離れてくれるので大丈夫と放置している龍見にも問題があるのかもしれない。これからも雛里の行動改善は難しそうだ。

 龍見は雛里に言われた通り桃香のところへと向かった。そこには既に何人か将が集まっている。

 

「突然呼んですみません」

 

「いや気にしないでくれ。同盟なんだから。で、何か事件か?」

 

「事件と言えば事件なんですけど…………不審者が出没するようになったんです」

 

「不審者? そりゃまた何とも…………とりあえずどんな不審者か教えてもらえるかな?」

 

「はい。なんでも正義の味方を名乗って、悪党さんを勝手に捕まえているんです。私達という存在が居る以上、あんまりそういう事はしてもらいたくなくて。民の皆さんからも怪しいって相談がありますし。確か名前は…………何だっけ、愛紗ちゃん」

 

「華蝶仮面です。蝶の面を付け、槍で戦う女性という情報しかありません」

 

「そりゃまた奇っ怪な」

 

 ちゃんとした機関がある中でそういった事をされては、街の管理をしっかりとしているものとしてはたまったものではない。いくら善意でもやっていい事の範囲がある。

 

「これまでの功績を考えると捕まえるのは忍びないし、せめて止めてもらえるようにお願いしたいんです」

 

「そのためにまずはそいつを見つけ出さないとな。どこによく出るとかは?」

 

「それが神出鬼没で、法則性がないんです。ただ犯罪が起こると時折現れるという感じでして」

 

「時折? いつもじゃないんだな」

 

「はい。地図に出没した場所を描いたのがこれですけど…………」

 

 華蝶仮面が出没した日付と印が描かれた地図には確かに法則性らしいものは一切ない。だが火のないところに煙は立たない。全く何もない場所から人は湧いて出ない。

 

「…………これ」

 

「朱里ちゃん、どうしたの?」

 

「警羅の巡回路に近い場所に出没していませんか?」

 

 全員が確認したところ確かにその通りだった。ここから導き出される答えは一つ…………という事でもないが、高確率で身内の犯行だろうという結論に至った。

 

「となるとこの日付に警羅に出ていた誰かの犯行という事かな?」

 

「いや、逆に休暇の奴の犯行かもしれん…………槍で戦う女性か……………………女性しか手掛かりは無しか」

 

「どうしてですか? 槍も十分手掛かりでは?」

 

「桃香さん、それなりの武芸者なら得意とする武器以外も無難に使えるもんですよ。ねぇ愛紗さん」

 

「確かに龍見殿の言う通りではあります。ただの盗人や暴漢程度なら普段使う武器以外でも、それこそ箒などでも勝てるでしょう」

 

「困りましたね。ならこれからは華蝶仮面が現れた付近を重点的に警羅しましょう」

 

「それが無難でしょう。そうそう、愛紗さんにちょっとお願いがありますので、後で少し時間をもらえますか?」

 

「今では駄目なので?」

 

「ちょっと準備が必要ですから」

 

 龍見が何を頼んでくるかは誰もが分からなかったが、意味のない事ではないだろうと判断した愛紗は了承し、この場は解散となった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「華蝶仮面に捕らえられた者と話をしたい?」

 

「はい。その時実験もしたいんですよ」

 

「ならば何故あの場で話さなかったのですか?」

 

「あそこに華蝶仮面の容疑者が居たので」

 

「! 誰ですかそれは!」

 

 話に食い付く愛紗をたしなめる龍見。まずは実験をしてからでないと結論としては出せないらしい。

 

「どのような実験をするのかだけ教えて下さい」

 

「ちょっとお面をして捕まった奴と会うんですよ。オレの作ったお面をしてね」

 

 かなり勿体ぶって話すので結論を聞きたい愛紗としてはモヤモヤしたが、やはり実験で確かめない限り龍見は結論を言うつもりはないらしい。仕方がないので愛紗は華蝶仮面に捕まった数人を龍見の部屋へと連れてきた。

 

「何するんすか。これで刑が少し軽くなるって聞いたんすけど」

 

「そうだ。まずは質問に答えてくれ。華蝶仮面の姿をはっきりと見たものは手を上げてくれ」

 

 当然と言わんばかりに全員が手を上げた。次は武器を見たもの、次は性別を判断したもの、という具合に質問していき、全員手を上げ続けるが、ある質問でピタリと手は上がらなくなった。

 

「華蝶仮面の服装を覚えているものは手を上げてくれ…………いないのか? じゃあ髪色は? 肌の色は? 見たんだろ?」

 

「いや、確かに見たけど、仮面しか思い出せねぇ」

 

「ならどうやって性別を判断したんだ?」

 

「声、かな」

 

 どうやら他の者も全員同じなようだ。龍見はそれに頷くと、質問をやめて決めていた実験を始めた。

 

「これからある人物にお面をして入ってきてもらう。そいつの容姿を覚えるんだ。愛紗さんも参加してくれ。時間だ、頼むぞ」

 

 入ってきたのは目の部分に穴が開いただけの真っ白な無地のお面をした人物だった。それを見た全員が言われた通りに容姿を覚えようとしたが、どうしてもお面に目が行ってしまう。それならば最低限髪だけでもと思ったが、それすらも無意味だ。まるで人形にお面が張り付いているように見えた。

 

「はいそこまで。お前は暫く部屋の外で待っててくれ。さあ訊こうか。どこでもいい。お面以外を覚えているものは手を上げてくれ」

 

 静まり返る室内。誰一人として覚えていないというのが分かる。その結果に龍見は非常に満足げだった。

 

「これにて実験は終わりだ。愛紗さん、そいつらを牢に戻してきて下さい」

 

「分かりましたが、先程のは誰なのです?」

 

「部屋の外で待っているはずですよ」

 

 確かに先程龍見はそう言った。一体誰だったのか気になるという事もあり、愛紗は足早に部屋を出た。

 

「終わったか」

 

「焔耶……だったのか?」

 

「本当に効果があるようだな、これは」

 

 部屋の外に居た焔耶の手には確かに先程のお面がある。しかしあのお面を付けた誰かが知り合いだったなどとは愛紗は信じられなかった。そしてそれを短時間で用意した龍見に戦慄した。あの男がその気になれば何でもやれるのかもしれないと錯覚に陥るほどに。

 

「言い忘れていました。愛紗さん、そいつら牢に戻したらまた部屋に来て下さい。それと紫苑さんも呼んでおいてもらえますか? 事情は説明しておいてもらえると助かります」

 

「分かり、ました」

 

 牢へ罪人達を連れていった愛紗は今度は紫苑を連れて戻ってきた。言われた通りに犯人が分かったとも伝えてある。

 

「失礼します。紫苑も連れてきました」

 

「入って下さい。すみません、お手を煩わせてしまって」

 

「いえ。それよりも犯人というのは?」

 

「勿体ぶっても仕方がないですし言いますよ。今回の犯人は星です」

 

「それは何故か聞いてもよろしいですか、龍見さん。私、まだ把握しきれていないので」

 

「そうでしたね紫苑さん。では少し時間を貰いますけど」

 

 龍見は先程までの実験結果を話した。その上で星が犯人である理由を話し始めた。

 

「星の顔にある魔力の痕跡が残っていたんですよ。それが何かはまだ分からなかったんですね。とはいえいくつかに絞れはしたんですけど」

 

「それで先程の実験ですか。候補があったわりにはあっさりと一回で分かったようですけど」

 

「試作をいくつか作ってる間に分かっちゃいましてね。まあ確認の意味を込めての実験でしたよ」

 

 龍見に言わせると魔力の痕跡を調べるのは刀傷の種類を調べるようなものらしい。比べて何が合うのか合わせるのだとか。

 

「では先程の仮面のようなものを星も被っていると」

 

「そうなります。ですから星が犯人と判断しました。そこでですね、星を現行犯で捕まえたいと思います」

 

「あら、それはどうやって?」

 

「囮作戦です。オレの行き付けの店に頼み込んで、星が近くにいる時を見計らってオレが食い逃げをします」

 

「すると華蝶仮面が現れると。そんなに上手くいくか?」

 

「安心しな焔耶。仮面の力を過信しているだろう星なら確実に出てきてくれる。作戦実行は明日。三人には安全に捕獲するために手伝ってもらいたい」

 

「勿論です。味方の間違いを正すのも仕事ですから」

 

「ええ、私で良ければ」

 

「多人数でやるのは好かないが、味方を傷つけるわけにもいかんしな」

 

「ありがとうございます。では明日までゆっくり休んで下さい」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 作戦決行の朝に龍見は土像(ゴーレム)の鳥を星の監視に付けた。今日は星は休暇だが、愛紗の部下が星を昼食に誘っている。その店は当然龍見行き付けの店だ。

 

「ほほう、なかなか美味ではないか」

 

「そうでしょう。最近見つけた穴場なんですよ。治安が少し悪いそうですけど」

 

「それならば安心しろ。私がいれば万事解決だ」

 

「よっ! 流石は趙雲様!」

 

 愛紗の部下と星が昼食を取っている間に愛紗達は戦闘準備を整えていた。龍見も幻術を使っているのでバレていない。作戦をやろうと思えばいつでもやれる。その時は刻一刻と迫っていた。

 愛紗の部下と星が店を出て、二人が別れて少しすると店の方から叫び声が聞こえてきた。

 

「キャー! 食い逃げよー!!」

 

「何?」

 

 どうやら無事に聞こえたようだ。星はすぐに向かおうとしたが、少し止まると物陰に隠れて仮面を付けた。これにて星は華蝶仮面となった。華蝶仮面は屋根に飛び上がり、食い逃げ犯となった龍見を追いかける。その姿はすぐに見つかった。

 

「フハハハハ! 見つけたぞ食い逃げ犯!」

 

「何者だ!?」

 

「貴様のような悪人に名乗る名はない!! というところだが特別に教えてやろう。私は華蝶仮面! 悪を挫く正義の味方だ!!」

 

「…………いやほんとに楽しそうだな、星」

 

「なっ!? せ、星とは誰かな? そのような美しい女性は知らないな」

 

「自分で言ってて恥ずかしくならないか?」

 

「五月蝿い! 貴様は何者だ!!」

 

「龍見だよ」

 

 龍見が幻術を解いて姿を現すと、華蝶仮面はしまったという顔をする。仮面の力は確かでも相手が悪い。

 

「ふふ、ふふふ、龍見殿」

 

「何だ?」

 

「口封じをさせてもらおう!」

 

「そのような事はさせん」

 

「!?」

 

 正体がバレるという想定外の事態に動揺していため、普段ならば気付くような背後からの不意打ちに反応が遅れてしまい、焔耶の一撃を不安定な防御で受けてしまう。そのため屋根から地上へ落とされた。

 

「さあ星、ここいらが年貢の納め時だ」

 

「そうはいかぬ。逃げる程度」

 

「どこへ逃げるつもりだ?」

 

「! 愛紗…………」

 

「私も居ますよ」

 

「くっ、紫苑まで。徹底的に対策をしてきたか」

 

「ああ。仲間を傷付けるつもりはないんでな。影縫い!」

 

「ぬっ!? う、動けない!?」

 

「呆気ない終わりになったな。ったく、やるなら無断じゃなくて許可を取ってやれよ」

 

「そ、そう言われても、こんな事、反対されるだろうし…………」

 

 自分のやっていた事が恥ずかしいという自覚があったのか、モジモジしながら答える星は仮面を付けていても実に可愛らしく、龍見の心にもグッと来た。

 

「そんな事言ってみないと分からないだろ。オレが一緒に桃香さんに掛け合ってやるから」

 

「ほ、本当か?」

 

「その程度な。でもその前に」

 

 龍見は星の仮面を取ると解呪をした。これでもう仮面を付けても正体がバレないという事もなくなるはずだ。

 

「はぁ、皆さんお疲れ様でした。オレだけだったらこうはいきませんでした」

 

「礼なら今度別の形で貰おうか」

 

「払える範囲で頼むぜ」

 

 これで華蝶仮面騒動は無事に閉幕、しなかった。桃香に掛け合ったところ何故か桃香も華蝶仮面をやりたがり、華蝶仮面二号が誕生し、その後も次々と華蝶仮面候補は増えていった。これを見た龍見は『そう遠くない未来、華蝶戦隊が誕生するだろう』と語った。




大切な部分には力を入れず、どうでもいいところに力を入れる。それが作者です。あ、次回と次々回はR-18予定です。
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