久しぶりに書いたものですので拙い仕上がりになっていると思います。しばらくはリハビリになると思います。それでもよろしければ御覧下さい。失踪していて申し訳ありませんでした。
人というのは自身にとってメリットのない嘘をつく数少ない生き物だ。虚栄心やその場逃れによってつかれる嘘はバレれば即座に自身へと返ってくる。そしてそれから逃れるためにまた嘘をつく。嘘に嘘を塗り固めてしてしまった結果、とんでもない事になってしまった人物がこの魏に一人いた。
「ど、どうしよー、季衣助けて」
「ボクしーらない。素直におばさんに謝ればいいのに」
「無理無理! 嘘だってバレたら殺されちゃうよ!」
「じゃあ兄ちゃんに助けてもらったらいいじゃん」
「兄様は、ちょっと条件に合わなくて」
「条件なんてものまで付けたの?」
季衣も親友の言動とはいえ流石に呆れて溜め息をついてしまう。普段ならば逆なのだが、この場においては季衣が説教する側らしい。
「明日帰省するのに、約束守らなかったらおばさん怒るよ」
「だからどうしようか困ってるの…………なんで婚約者がいるなんて言っちゃったんだろ」
「ちなみに条件って?」
「えっと、優しくて気立てが良くて強くて賢くて器用で、なおかつ年上の人。あ、それに明日一緒に着いてきてくれるような多少の無理なお願いを聞いてくれる人じゃないと」
「それって、黒の兄ちゃんじゃ駄目なの?」
「あっ…………」
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「オレに流琉の婚約者代わりになれと? そんな嘘すぐにバレるぜ。お袋さんには素直に謝りな」
「そこを何とか!!」
龍見に頼み込みにきたもののあっさりと断られた流琉だが、ここで引くつもりはないらしい。ただの嘘のはずなのに鬼気迫る雰囲気に龍見も疑問を持ったようだ。
「とりあえず経緯だけでも聞こうか」
「はい。あれは前回の帰省の時なんですが……」
毎月村へと帰省している流琉だが、先月母親から彼氏なり婚約者なりが見たいと言われたらしい。それだけならば流琉もまだいないと言っただろうが、旧友は既に何人も彼氏がいるなどと言われてしまいムキになって婚約者がいるなどと嘘をついてしまったのだ。しかもそれがどんどんと膨らんでいき、最終的にはあの無茶な条件の婚約者を明日の帰省で連れていくという事になったらしい。
完全に自業自得である。しかしながら嘘をついてしまう事は誰にでもある。怒られるかもしれないが、しっかりと謝れば子供の嘘だと許してもらえそうなものだが。
「母様、私が婚約者を連れてくるって村中に言いふらして。本当に嬉しそうで…………」
「そんないいお母さんを騙し続けるなんてやっぱ良くねぇよ」
「そうなんですけど…………母様、母様は……私より力持ちなんです!!」
「はっ?」
「あんな力で叩かれたら死んじゃうんです!! 助けて下さい!!」
「お、おう」
これが一番の理由かと納得した龍見は勢いに押されて頷いてしまった。ただこれで嘘に荷担してしまった事になる。下手をすれば流琉も恐れる豪腕が自分に振るわれる可能性もある。適当なところで本当の事を言って何とか逃れようと誓う龍見であった。
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翌日、龍見と流琉と季衣の三人は村へとやって来た。なお龍見はこの村へ来る条件として、華琳に事細かな報告書を提出するように言われている。学生時代以来のレポートというところだ。
「じゃあボクは家に帰ってるね。流琉と黒の兄ちゃんは頑張ってね」
「ふぅ…………行きましょう龍見さん」
「まるで死地に向かうみたいだな」
「あながち間違ってないです」
流琉は龍見を連れて実家に戻ったが、どうやら誰も居ないらしい。自分が帰ってくる時には確実にいるはずの母親が見当たらない事を不思議に思った流琉は龍見を玄関に残して家の裏へと回っていった。
そんな流琉と入れ替わる形で家の中から誰かがやってきた。流琉と似た、しかしながら流琉よりも小柄な少女だ。おそらく妹だろうと龍見は思った。
「ごめんね。色々と準備してたら、ってあら? 流琉は?」
「今お母さんを探して裏に回っていますよ」
「もー、お客様を放置してー。ほらお客様、上がっていって下さい」
「おとと、じゃあお邪魔します」
少女は龍見を家に上げ、居間に座らせると流琉を探しに外へと出ていった。どうせだからとのんびりとしていた龍見の元にドタドタと流琉達がやってきた。
「ごめんなさい! 母様がまさか家の中にいるなんて」
「ん、結局家の中にいたのか。まあ妹さんに上げてもらってたから気にしないでくれ」
「妹? 私に妹なんていませんよ」
「は? じゃあその子は?」
「嫌ですわお客様。わたしは流琉の母ですよー」
「…………は?」
非常識な術に精通し、この時代にやってきて様々なものを見てきた龍見とはいえ流石に今の発言には驚いた。小柄な流琉よりも小さいのだ。
「不老長寿の秘薬でも飲みました?」
「あったら飲んでみたいですね」
「それより母様、こちらが婚約者の馬淵龍見。黒の御使い様って言えば」
「流琉、嘘は人様まで巻き込んでするものじゃないわよ」
「……………………ウソジャナイヨー」
「一人娘の嘘くらい簡単に分かるわ。どうしてくるか気になったけど、まさか嘘の婚約者を連れてくるなんてね」
「た、龍見さんはほんもにょの婚約者で」
動揺して汗を流し、言葉も上手く出てきていない。これでは誰が見ても嘘と丸分かりである。
「馬淵龍見さん、うちの娘がご迷惑をお掛けしました」
「いえお気になさらず。流琉、大人しくお仕置きを受けるんだな」
「た、龍見さん助け」
「さてと、華琳さんへの報告書はどう愉快に脚色したものか」
「無視しないでー!!!」
「ほぉら、お尻こっちに向けなさい」
ーースパァンッ
「ひぎぃぃぃぃぃっ!!?!?!」
鳴り響くスパンキングの音を背に、龍見は適当に脚色した報告書を書き上げるのであった。あまりに脚色すぎたためにお叱りを受けるのはまた別のお話。