今回は中身のないバトル回。
空はこんなに青いのに、オレは何をしているのだろう。仰向けになった龍見はそう思った。そんな適当な事を考えなければやっていられなかった。少し顔の向きを変えてみれば見慣れた自分の下半身。龍見の上半身と下半身は綺麗に泣き別れしていた。
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「手合わせ? いいぞ。いつやる?」
「飯食ってからにしよか。龍見がどんだけ強うなっとるか楽しみやわ」
朝に顔を合わせた霞からの申し出を龍見は快く受け入れた。勝てる相手ではないが、いい訓練になるという考えはあったのだ。
霞は単純に成長したであろう龍見の強さが気になって仕方なかった。龍見の成長速度はとてつもなく早い。初めて会った時にはただの術師でしかなったのに、すぐに武術だけでも戦場に立てるほどになった。そんな龍見に数ヵ月も猶予があったのだ。成長していないはずがない。
朝食も済ませて訓練場に龍見が向かうと、霞は当然居たが、何故か華雄も一緒だった。
「どうした華雄。見学か?」
「まさか。私も参加するだけだ」
「? 三人で交代しながら手合わせするのか?」
「ちゃうちゃう。二対一や」
「…………誰が一人?」
龍見が尋ねると当然のように二人から指を指された。ガックリと項垂れ、溜め息をつきながらも短刀を抜く。
全身に魔力を張り巡らせ肉体を強化し、短刀にも術を掛けて強度を上げる。
「なんや駄々こねる思ったんにヤル気満々やん」
「逃げてもしょうがねぇしな。それに一回全力でお前らとやりたかった」
「その心意気、空回りしないようにするのだな!!」
開始の合図もなく飛び込んできた華雄は斧を降りかぶり、龍見へと叩き付けた。それを難なくかわした龍見は斧を足場にし、華雄を飛び越えて霞の真上まで跳躍した。
「うおらあぁぁっ!!」
短刀を両手で握り締め、落下の勢いそのままに霞へと襲いかかる。だが龍見がいるのは自由の効かない空中。達人である霞には絶好の的である。霞は偃月刀による素早い突きで龍見の心臓を抉り抜こうとした。
しかしながらそれは回避された。術によって自身へかかる重力を強化し、落下速度を速めた龍見は一気に着地する。当然強化された重力は着地と同時に解除したが、脚への負担は相当なものだ。それを無視して霞へ短刀を突き刺そうと動くが、龍見の動きよりも早く霞の脚が龍見の顔面を蹴り上げた。
「今のは驚かされたけど、動き出しが遅いわ」
「くっそ!!」
噴き出す鼻血を手で拭い、体勢を立て直した龍見の背後から殺気が飛ばされる。咄嗟に背後へと短刀を投げ付けるが、そこには誰もいない。ふと空が暗くなる。
「死ねぇい!!」
上空から降り下ろされる斧。短刀を投げ付けた隙があまりにも大きく、回避するのは不可能。
「五行・火。爆破!!」
そこで龍見は自身と華雄の間の空間を爆破し、その爆風で華雄を吹き飛ばし、自身は強引に逃げ出した。投げてしまった短刀からは遠い場所に飛ばされたが、アポーツによって即座に回収する。
「味な真似をしてくれる」
「華雄、顔煤だらけやで」
「…………ふぅ」
軽く会話を交わしている二人とは対照的に龍見は重苦しく息を吐いた。この二人を前にして長い呪文は唱えられない。ならば簡易な術と肉体のみで戦わなくてはならない。その厳しさから思わず溜め息が漏れた。
「少し早いけど、終わりにしよか?」
「こっちは今気持ちを切り替えたってのにもう終わりかよ」
「龍見がこれだけやれるのが分かれば十分や。な、華雄」
「ああ。高名な将にも勝るとも劣らぬ力だ。誇るといい」
「そらどうも」
「ほな、いくで!! そりゃあっ!!!」
「!!?」
霞が力を込めて叫んだかと思うと、偃月刀を投げ付けてきた。とても数十キロはある武器を投げたとは思えないほど凄まじい速度で飛ぶそれを驚きながらも辛うじて回避する龍見。回避した先では華雄が斧を構えていたが、短刀の上を滑らせるようにして斧を受け流す。何度もくる強力な一撃をかわしながら龍見はある事に気が付いた。霞の姿がないのだ。
「ほいっ」
「んなっ!?」
気が付くと同時に背後から聞こえた声。そして払われる脚。そこで龍見は霞が偃月刀を投げた意味を理解する。それは奇襲でも遠距離攻撃でもない。軽量化だ。数十キロのものを持っている状態とそうでない状態。どちらが速いかなど考えるまでもない。普段でも武器を持ちながら素早く動く霞が武器を捨てた状態なら龍見の背後を取るのも容易かった。
「結界発動!!」
このまま倒れれば斧の餌食となる。予め準備していた簡易な結界で一時的に霞と華雄を拘束し、強力な術で仕留めようとした。そう、余力を残しながら結界を張ってしまったのだ。
「「解呪!!!」」
「えっ?」
砕け散る結界。呆ける龍見。迫りくる斧。龍見の体は見事に泣き別れる事となった。
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「詠の仕業、か?」
蘇生が終わった龍見は怠そうに質問した。
「おぉ、ほんまに生き返るんや」
「確かに詠から教わった。解呪は覚えておくべきと言われてな」
「うん、まあ、その通り。良いことだ…………」
「でもま、龍見ほどの術やと複数で対抗せなあかんけどな」
「はぁ…………失敗した」
最後の結界で全力を出しておけば解呪される事などなく、逆転の可能性もあった。今後逃げに出し惜しみは止めようと龍見は深く誓った。
「だる…………部屋で寝る」
「はいはーい。明日飯奢ったるから元気だしや」
「ん…………」
軽く手を降って返事をする龍見の動きは数日徹夜をした人のようにフラフラとしていた。
「霞よ」
「なんや華雄」
「確か今晩、地和が馬淵に抱いてもらうと息巻いていなかったか?」
「んー…………どうにかなるやろ。龍見やし」
次回! 地っぱいを弄る!!