※この作品はR-18です。

あなたに捧ぐ恋の夢   作:雨期

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難産だけど安産だった。


第四十話

「みんなー!! 今日はありがとー!!」

 

『ありがとー!!!』

 

「愛してるわよー!!」

 

『愛してるー!!!』

 

「また来てねー!!」

 

『来るー!!!』

 

 数え役満☆姉妹の公演が無事に終わり、彼女らの世話をしている龍見は舞台裏で一息ついていた。この後には片付けや反省会があるものの、メインイベントが終わったのだ。安心もする。

 

「まだ昼だし、適当な店を貸しきって反省会でもするか………」

 

「龍見ーー!!」

 

「お疲れ様、三人とも。ちぃは少し落ち着こうな」

 

 三人に労いの言葉を掛けつつ、飛び掛かってきた地和は軽く受け止める。

 

「それにしても龍見さんは恋さんの近くにいなくて平気ですか?」

 

「まだ出産予定日まで半月はある。華陀も一緒だ。何あったら連絡が来るさ」

 

「いえ、龍見さんが恋さん欠乏症で倒れないかと」

 

「おいこら人和。変な病気作るんじゃねぇ。ん? 華陀か? どうした?」

 

『急用だ。時間はあるか?』

 

 和気藹々と雑談をしているなか、突如として華陀からの念話が入る。急用と言う割には落ち着いているようだ。

 

「今公演が終わったところだ。話してくれて構わないぞ」

 

『助かる。恋の事なんだが、出産予定日が早まった』

 

「ほー、いつよ」

 

『明日だ』

 

「急だな!? 今すぐ戻る!!」

 

『ああ、戻るなら天和も一緒だとこちらとしても助かるが、大丈夫そうか?』

 

「天和! 一緒に帰るぞ!」

 

「? いいよー」

 

 華陀には華陀の考えがあるのだろうと特に詮索する事なく龍見は言うことに従った。幸い公演が終わったので天和達がやる事は少ない。ここで連れて戻っても関係者から不満が出る事はないだろう。

 

「龍見、どうしたの?」

 

「恋の出産予定日が明日になった! ちぃ、人和! 関係者への指示は任せる! 行くぞ天和!!」

 

「きゃー! さーらーわーれーるー!!」

 

 天和を担ぎ上げた龍見は猛ダッシュして姿を消した。

 

「出産かぁ。羨ましいなぁ」

 

「だから姉さんが駆り出されたのね。時期が早いのは心配だけど、華陀さんと姉さん、それに義兄さんもいるし大丈夫かしらね。私達は私達の仕事をするとしましょう」

 

「………………人和、義兄さんって?」

 

「龍見さんよ。まだ正式に決まったわけじゃないけど、もうほぼ確定でしょ?」

 

「なんか照れちゃうわ」

 

「ちぃ姉さんが照れる必要はないと思うのだけれど………」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 馬を全速力で走らせてきた龍見と天和は夕方には城に戻ってきた。

 

「龍見さん。帰ってくる途中でも話したけど、父親になるんだからドーンと構えないと駄目だよ。恋さんもお腹の赤ちゃんも心配しちゃうんだから」

 

「ああ、大丈夫。大丈夫だ………………華陀、戻ったぞ。入ってもいいか?」

 

「問題ない」

 

 華陀の返事を待ってから静かに部屋に入る。恋は眠っているらしく、華陀はその隣で出産に向けての準備を行っていた。

 

「急に呼び出す形になってすまない」

 

「それはいいんだ。それより恋の容体は?」

 

「着々と出産に向かっている

 

「半月も時期がずれて大丈夫なのか? それに患者の診察を失敗するなんてお前らしくもない」

 

「時期ならば問題はない。早い出産も遅い出産も経験はある。失敗については、申し訳ない。魔眼が妊娠には役立たずな以上、医師としてしっかり診察しなくてはならないのだが、如何せん恋が患者としては特殊でな」

 

 華陀が患者にも問題があるように言うのは非常に稀だ。特に恋のように医者の言うことをキチンと聞く患者に対してこのような事はまず言わない。

 

「何が特殊なんだ?」

 

「陣痛をほぼ感じなかったらしい。今朝も少し腹が痛む程度だと思って相談してきたのだ」

 

「てことは、予兆自体は結構前からあったけど、恋が言わないから気付けなかったと」

 

「すまん」

 

「いや、いいんだ。恋は武将だからな。痛みに強くて当たり前だ 。戦いの痛みと陣痛は相当違うだろうけど、恋からすりゃ我慢が簡単なもんなんだろう」

 

「二人とも。話すのはいいけど、準備もね。恋さんが痛むくらいの陣痛って事はすぐにでも破水が始まってもおかしくないよ」

 

「ああ、そうだ………な………………なんだその格好」

 

 いつの間にか着替えていた天和の服装は何故かこの時代にあるナース服だった。それもコスプレというよりも本職が着ているようなしっかりとしたものだ。

 

「助産するんだから格好もきっちりしないとね」

 

「………………助産出来るのか?」

 

「あー! なんか馬鹿にしてるでしょー! これでも村一番の助産師って呼ばれてたんだから!!」

 

「彼女の腕は俺が保証しよう。これまで出会ってきた助産師の中でも五本の指に入るほどだ」

 

「意外な才能があるもんだ」

 

「ん、ふぁ~~」

 

「恋? 起きたのか? 調子はどうだ?」

 

「?? 龍見?」

 

 目覚めた恋はまだ帰ってくるはずのない龍見を見て首をかしげる。直後、何かに気が付いたように自身の股間付近に手を伸ばす恋。

 

「お………………」

 

「お?」

 

「おもらし………………してる………………」

 

「龍見さんと華陀さんはあっち向いててね。恋さん、確認するからそのままね」

 

 天和に言われてハッとした二人は即座に後ろを向く。その間に天和は恋の様子を見るため布団を剥ぎ取る。

 

「………………華陀さん! 出産準備!! 龍見さんは産湯の用意!! 破水してる!!」

 

「「なにぃ!?」」

 

 天和の言葉に驚く二人だが、体はすぐに行動へと移っていた。何より龍見は素早い。たらいの錬金から産湯の生成まで、僅か十数秒で済ませる。華陀も予め用意してあった道具を取り出し、恋へと駆け寄る。

 

「温度は問題ないか?」

 

「適温だ。このまま維持は可能だな?」

 

「当然」

 

「恋さん、ここから更に痛くなると思いますけど、赤ちゃんが頑張っている証拠ですよ。お母さんも頑張りましょうね」

 

「うん、わかった」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 破水が始まってからどれほど経ったか。ただ待つ事しか出来ない龍見には何十時間も待たされているような感覚しかなかった。

 

「まだなのか?」

 

「もう何度も同じ質問をしているぞ。安心しろ。今頭が見えている。もう少しだ」

 

「恋さんの調子もいいですよ。これほどの安産はなかなかないくらいです。お父さんになるんですからどーんと構えていて下さい」

 

「むぅ………」

 

 確かに龍見がいくら騒ごうと出産の結果を変えられるわけではない。落ち着くため座って深呼吸をする。華陀の実力は信用しているし、天和もこれまでも動きを見れば十分な腕を持っているのは理解できる。ならば二人に全てを委ねよう。そう龍見が自分に言い聞かせ終わった時………………

 

「オギャアッオギャアッ」

 

 その声は響き渡った。決して大きいわけではない。だがそれでも命の誕生を伝えるには十分すぎるほどの泣き声。

 

「やりましたね恋さん! 女の子ですよ!」

 

「よく頑張ったな!! 龍見! 何を呆けているんだ! こっちに来い!」

 

「あ、ああ」

 

 先程まで慌てていたのが嘘かのように呆然としている龍見は、華陀に呼ばれて意識を取り戻したかのうに恋へと駆け寄る。

 産湯に入れられた小さな命。直前まで恋の中にいたとは思えないほど元気に泣いている。そっと龍見が手を伸ばすと、その小さな手で龍見の指をしっかりと握り返してきた。

 

「ああ………ありがとう………………生まれてきてくれて、ありがとう………………恋も、本当によくやってくれたな………………」

 

「少しだけ、疲れた………………」

 

「ふふ、お前らしいな………………今はゆっくり休んで」

 

ーーパリィンッ

 

 龍見が言葉を紡ぎきる前に窓が砕け散る音がした。そして何か強い衝撃を胸に受けた龍見はそのまま命を落とした。だが龍見も周囲を元に戻しながら復活する。普段は復活直後は気だるそうにする龍見が今は怒りによってそれを掻き消していた。

 

「くそが!!! オレの娘と妻に怪我させるつもりか!!!」

 

 一気に窓まで近寄ると、窓へ最大限の強化を叩き込む。そこへ何かが高速で飛んでくるが、一つたりとも窓を突破する事は出来ていない。やがて何かの飛来は止み、それとほぼ同時に城の者達が駆け込んできた。どうやら先程龍見が殺された時の窓が割れた音がかなりの範囲に響いたらしい。

 

「何よさっきの音!? 恋と赤ちゃんは大丈夫なの!?」

 

「落ち着け詠。無事だよ………………貂蝉、話がある」

 

「言わなくても分かるわぁん。左慈ちゃん達、やってはいけない事にまで手を出したわね」

 

「ああ………………ライフルとは、流石に想定外だ………………」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「また失敗か? 于吉、どういうつもりだ?」

 

「申し訳ありません左慈。しかしながら今回の作戦はもう止めましょう。この時代にない兵器を持ち込んでこれ以上何かしようものなら上が黙っては」

 

「黙れ!!!!」

 

 左慈の一発の蹴りで于吉は地を転がり、そのまま壁に衝突して止まった。内臓でもやられたのかかなりの量の血液を吐いている。

 

「上に目を付けられる? 喜ばしいじゃないか。この異常な外史を消し去れる!! それが俺らの望みだろう!!」

 

「だ、駄目………です。この、外史は既に独自の、ゴホッ………………歩んで………………仮に消さ、れる………………し………た、ち………………」

 

 体が持たなかったのか。言葉絶え絶えに何かを左慈に言おうとした于吉は気を失った。そんな于吉を横目に左慈は次の作戦を練るためにその場を去った。確実に龍見を消し去る。今の彼はそれでのみ動いていた。




ノリで現代兵器まで持ち出しちゃったんだぜ。
次は生まれたばかりの娘ちゃんのお話になるはず。
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