ここは
「安定した気候最高!!」
とあるビーチでそう叫ぶのはナミ。
気候どころか季節すら数分で変わることもある
「こうのんびりするのも久しぶりね」
「はい!とても落ち着いた感じがしますね」
「ふふふ、みんな。日焼けには気を付けてね」
水着でビーチチェアに体を預けて日光浴をするナミ、ノジコ、ビビの三人に対してパラソル下で帽子を被り、薄いシャツを着ているのはマキノ、その横ではロビンが静かに読書を楽しんでいた。
海辺ではたしぎが水泳訓練としてオト、アデルと共に水遊びに興じていた。
ここは
事の発端はウォーターセブンで新たなる船サウザンドサニー号を建造し、それに乗った後まで遡る。
ルフィのタグタグの実を十全に活用する機構は予想以上の性能だった。
今までならロープの張り状態や帆の状態のタグの付け替えを関連付けてよりスムーズに、さらには船の構造を特殊にして操舵桿を操作して連動して舵を切るモノから直接的に船にタグをつけるという仕様にした。
もちろん、ルフィの不在時の操舵のために女性や子供でも舵が取れる補助付きの舵輪もある。
フランキーの自信作の目玉のソルジャードックシステムや全員の要望を取り入れた船室など、全てが満足以上の出来栄えの船。
その中ではメリー号にはない部屋も多くある。そのうちの一つがオトとアデルの【子供部屋】だ。
今までは女船室では手狭のためウタとオトが倉庫の一つを部屋代わりにして使っていた。そこにアデルを加えた3人がいても十分広かったが子供の成長にはよろしくない環境ではあった。
「ねえ」
そこで子供のための部屋を専用で作ってもらった。隣にはウタの部屋も用意してもらい、夜中にウタがルフィとシても子供を起こすようなことにはならないようになった。
「ママってパパと結婚式したの?」
「え?」
そして子供部屋には幼少の頃に本などを読むことができる環境ではなかった二人のためにウォーターセブンで買った物語や図鑑、アデル用の船大工の入門誌などがある。
その中で最近のオトのお気に入りでは愛する男女が様々な困難を乗り越え、結婚をする話だ。
しかし、オトは生まれて10年の間エレジアで育ってルフィと顔を合わせたのも最近なのだ。
そしたら純粋な疑問で「自分が生まれる前に結婚したのかな?」と思った。
「う、ううん…エレジアに迎えに来てもらう前は、結婚できなかったから」
「えっ、なんで?なんで?」
一般的な教養が少ないオトにとって純粋な疑問だが、当時のウタは9歳。子供が「絶対に○○君と結婚する!」と言った可愛らしい我が儘を言うことはあるだろうが、公的な結婚式を行うことはできない。おまけに赤髪海賊団に所属していたため主に養父や環境的にも難しいとしか言えなかった。
「…でも、そっか…結婚かぁ…」
赤髪海賊団でプレイボーイな副船長が買ってくれた本の物語で憧れていたこともある。
それからルフィの【モノ】となって、エレジアに置き去りにされ、オトが生まれ、そんな憧れを忘れてしまっていた。
「でもなぁ…」
今でもルフィは好きだ。
いや、むしろフーシャ村にいた頃よりも大人になった分恋愛感情が増大してるし、大切な娘すら認知して大事に【使ってくれる】し、醜くなった自分も変わらずに【犯して】くれた。
事実上の夫婦と言ってもいいが、やはりウェディングドレスを着てルフィと、という憧れはある。
だが、問題はルフィとその周りだ。
「私だけなのもなぁ…」
同じように自分の身を案じてくれていたマキノに、自分と同じ立場になったナミ達。
ルフィの【モノ】同士が優劣をつけるなんてありえないし、船上生活で協力できない人間は足手まといになる。
つまりは【他の仲間を差し置いてルフィと結婚】なんていうのは申し訳が立たないのだ。
「あ、それなら簡単ですよ」
「え?」
アデルの計算の勉強を見ていたビビがウタの悩みに対して簡単に解決できる方法を言った。
それが――
「それにしても、フラウス王国が一夫多妻だなんて知らなかったわ」
その事実はあまり知られていないが、王家の娘で他の国についてある程度の知識があるビビはそのことを知っていた。
「いつかは皆さんと結婚式をやりたかったんですけど、一夫多妻の国ってあまりないので…サニー号が
サニー号の基本設計はフランキーのを、さらには船員の要望で追加・修正されたのだが、一つだけアイスバーグの好意で備えられたものがある。
それは【船底に敷き詰められた海牢石】だ。
本来能力者の力を阻害する海牢石だが、それは海のエネルギーを発してるからとされている。
そこに目を付けた海軍の科学者が船底に敷くことで海中の海王類やそのほかの生物から発見されにくくするステルス能力を発揮することを見つけたのだ。
そして、海軍が所属している政府の御用達であるガレーラカンパニーは船を制作する際にその技術を使うことを依頼される。
ウォーターセブンの復興でルフィがタグタグの能力で協力をしてくれた礼だとして、それをサニー号に導入してくれたのだ。
更には無風ともいえる
「けど、係の人も目を丸くしてたわね」
それを思い出してかノジコは少し笑った。
すでに婚姻を結んでいた夫婦に新たに妻を迎えることや、数人の女性と一度に結婚、なんていうことはあったかもしれないが一度に8人の妻を迎える男なんて初めてのケースだったのだろう。
いまは花嫁となる8人のウェディングドレスの仮縫いと仕立てを順番にしているところだった。
一度に8人同時は流石にこの島にいる針子でも無理だし、待っている間のオトとアデルの面倒も見なければなかった。
そしてナミ達は既に終わり、残るはウタだけ。
この場にいないカヤは水着姿にムラったルフィと岩場で楽しんでいるところだった。…耳をすませば喘ぎ声も聞こえるが、人がいないのは幸いだ。
「…ねえ、それにしても遅くない?」
ナミが気になったのはウタが遅いことだ。基本的なデザインは「ルフィの
「お、奥様方!大変です!!」
なにかあったのだろうかと心配になっていたら慌てて式場の係の人がやってきた。
「ウタが攫われた…?」
岩場でカヤと楽しんでいたルフィが慌てたように呼びに来たノジコに事情を聴けば、突然海賊が襲い掛かってきて仮縫いをしていたウタが攫われたという。
そして足腰がガクガクなカヤを任せてビーチへと戻れば青い顔をした係員がいて、ルフィを見ると何度も頭を下げた
「も、申し訳ありません!突然、海賊が押し入って金目のものと若奥様を…!」
一般人が海賊に抵抗したら最悪殺されるかもしれない。だから見ることしかできなかったのはわかる。だが、ウタが抵抗もできずに攫われたというのが気になった。
ウタウタの実の能力を使えば対抗手段を持ってない限り連れていかれることなんてないだろう。
「それが、押し入った女が突然服を脱いで…驚いていると、突然体が蜂蜜みたいにトロトロしたものになって…」
「悪魔の実か…」
「そのまま若奥様を捕まえて…首を絞められて息ができなくなったようで、若奥様はそれで意識を失ってたようで…」
おそらくは悪魔の実で拘束された際に気道を潰されたのだろう。だが連れ去ったところを見れば今は殺すつもりはないはずだ。
問題はどこに連れていかれたのか。
「奴らはこのあたりに出没するトランプ海賊団です」
「トランプ海賊団…?」
「はい、恐ろしい能力者がいる海賊で、ねじまき島を支配しているんです」
――ねじまき島:トランプ城
「ムホッー!好みのタイプだ!」
「はぁ…?」
一方、連れ去れたウタは困惑していた。突然の襲撃に歌おうと大きく息を吸った瞬間妙な液体を飲んでしまった。
それで窒息してしまい、気が付いたら知らない場所にいたのだ。少なくとも周囲にいる人間が善人であるはずはない。
道化師のような風貌の不気味な男、大量の汗をかいてブタの被り物をしてる男、非常に肌を見せるゴージャスな格好をした女、暑苦しいスーツを身に包んだ小柄な男。
そして特に目の前にいる大柄の毛深い男。この連中のリーダーのようだがガタイの良さと被り物のクマが非常にアンバランスでとても似合ってなかった。
「け、け、け結婚を前提に交際をしよう!」
「あ、私、夫も子供もいます」
「なにぃっ!!?」
「あら、ベアキング様。私たちは海賊、他人の物を奪ってなんぼでしょう?」
ウタの言葉に(まだ結婚はしてないが)驚いた男――ベアキングだがウタを連れ去った女がねっとりとした言い方で指摘をした。
その言葉にウタが「海賊…?」と目が変わった。
「お、おう!そうだな!」
「…貴方達、海賊なの?」
「む?なんだ、お前、俺様を知らないのか?いずれ海賊王になる男、ベアキング様だ!」
何故か顔を近づけて得意気にそう言うベアキング。が、その額にウタの履いていた靴のヒールが刺さった。
見事な上段蹴り――だったのだが、まるでダメージがなかった。
「悪いけど、私…海賊がッ大っ嫌いッ!!平気で噓をついて!見捨てて!嗤って!そんな奴と結婚だなんて冗談じゃない!!」
「貴様…何を言ってるのか分かってるのか?」
「私をルフィから奪えると思うなら、奪ってみなさい!!」
見るからに力任せな性格のベアキングに対してウタは本当にキレたときの赤髪海賊団が持つ威圧感がないのに気づいていた。
どう考えてもシャンクスたちよりも格下の、弱者を虐げることでしか強さを表現できない相手に自分も、ルフィも負けるなんて考えれなかった。
ウタは能力を発動し、この場を制圧しようとした。
「ふんっ、口ぶりだけは強気だな。だが、
「っ…!」
――ねじまき島:近海
「あれか」
ねじまき島の場所を聞き、サニー号で向かえばすぐに見えてきた。
普通の島の上に人工的に積み上げられた文字通りねじまきのような巨大な島だ。
「あそこにウタが…」
「早く助けないと」
「ですが、どうします?」
ウタの身の安全を心配する一同。だが攻めるにしても島は7年ほど前に占拠されてそれ以来海軍も手が出せないでいるらしい。
攻め入るとしても情報が足りなすぎる。
「――みんな!5時の方向から船!」
「船?連中か?」
展望台にいるノジコが周囲を見渡して船影を見つけた。もしもトランプ海賊団の船なら捕縛して情報を引き出すことも考えていた。
だがノジコは「ううん、違う!」と言った。
「あれ、海軍!」
「…なに?」
「やあ、君たち、久しぶりだね」
サニー号に近づいてきた海軍の船。そこにいたのはルフィたちが
彼にはアーロンやクロの引き渡しやココヤシ村の復興などいろいろと手伝ってもらった。
「
「…トランプ海賊団ってのにうちのクルーが攫われた」
「なんと…!?」
ルフィの説明に驚きながらも納得したようだ。
するとプリンプリン准将は少し考えて「なら、力を貸してほしい」と言った。
「7年前からねじまき島はトランプ海賊団に占拠されてる。それは知ってるとは思うが、海軍も今まで放置しようとしたわけじゃない」
「どういうことだ?」
「島には大量のトラップが仕掛けられている」
そう言ってプリンプリン准将は根元にある螺旋階段を指さして「例えば」と言った。
「あの螺旋階段は登ろうとすると上から水が流れてきて棘と、巨石に押しつぶされる仕掛けになっている。仮に上に行けたとしても地雷原や武装した敵団員も待ち構えている。唯一上に上がれるためのエレベーターも海賊に抑えられているため、網を張って攻め入るタイミングを――と思っていたのだが、それで7年も経過した」
「それほどまでに連中が慎重なのか?」
「いや…恥ずかしい話だが、その待ち伏せの指揮を取っていた将校が海賊からの賄賂を貰っていたんだ」
そう怒りを見せるプリンプリン准将。だが、ナミの故郷と言い偽のクロを処刑した件といい、「まともな海兵がいなさすぎだろ」とついルフィが苦言を呈するのも無理はなかった。
だが、その事実が発覚してプリンプリン准将が派兵された、というわけだ。
「あまり民間人の君に協力を依頼するのも控えるべきなのだが、最終的な目的が同じなら共に向かったほうがいいのではないかと思ってね」
「…まあ、あの島や連中の情報が欲しいのは確かだな」
そう言ってルフィは待機してる仲間たちの方へと向いた。
「おれは准将たちとウタの救出に向かう。みんなは待機してくれ」
「ルフィさん、私も行きます」
「ビビ?」
なぜかビビが同行に名乗りを上げた。しかし、いつもと違い今回は海軍との合同作戦だ。
それならビビがついてくる必要もないと思われた。
「
「…それで責任を感じてるのなら全員が連帯だ。誰一人反対もしてないし、賛同していた」
「それでも、です」
妙なところで責任感があるビビ。もしも拒否して置いて行けばウタを救出した後も引きずるかもしれない。
それなら救出に同行させてある程度手伝わせた方が自分を責めないと判断して「わかった」とルフィは同行を認めた。
「たしぎ、ロビン、万が一も無いとは思うが留守の方を頼む。ナミとノジコは一応海の方を見てくれ、
「(…それにしても、女性比率が相変わらず高いような…)」
不在の間の指示を出しているのを見てプリンプリン准将はココヤシ村でも思ったのだが女性船員が多いのが気になった。
ルフィ以外では留守番するロビンと呼ばれた男性しかいないが、そう言う場合もあるのだろうと思うことにした。
――もっとも、正確には今のロビンは男性化してるだけで本来ルフィしか男性はいないのだが。
――トランプ城
牢屋へと連行されるウタはその間に嵌められた手錠を指で撫でる。
「(力が抜ける感じはない…海楼石じゃないみたいから、能力は使える。歌えば逃げれるけど、さっきアイツは『あの女のように』って言ってた。つまり、誰か捕まってる)」
見知らぬ相手だが、もしもそれが子供とかなら。
そう考えると一児の母で1人の子供の保護者でもあるウタは見捨てることなんてできなかった。
だから歌わずに素直にハニークイーンに捕まった。
するといくつかの階層を降りて牢屋のような造りの部屋へと連れて来られた。
「ひぃっ…!」
「っ…」
そこにいたのは1人の女性。
年齢はウタより少し上で顔つきも同性目線でも美人とは思う。
しかし、思わずウタが顔を顰めたのは彼女と部屋の状況だ。
まず彼女の腕には手錠があり足も壁と鎖で繋がっているのだ。
更に服は着ておらず、痛々しい暴行の後と、乾き切って酷い悪臭を放つ体液が素肌にこびり付いていた。
「や、やだぁ…こないでっ…」
弱々しく、それで必死に拒絶する姿に何をされていたのか想像するのは容易かった。
「あらあら、最初の強気はどこ行ったのかしらねぇ?アハハハ!」
女性としての尊厳を踏み躙られる苦痛を理解できるはずのハニークイーンは、馬鹿にしたように、それでいて笑っていた。
「ほらぁ、そんなに欲しいならくれてやりな!」
「へへ、仕方ないですぜぇ」
「ひッ…!」
「ーーーーーーねぇ」
ハニークイーンの指示に口では渋々とした言葉を並べるがその目は、表情は、行動は女性を見下す下劣そのものだ。
「あら、何かしら?まさか貴女が先に」
「こんなことに…愛のないセックスに、意味があるの?」
ハニークイーンの言葉を遮り、ウタが聞いた。
彼女の事実上の旦那であり、飼い主であり、持ち主の男は自分や他の仲間達を【性奴隷】のように犯し、使う。
だがそこには彼の愛がある。想いがある。だからこそウタは、仲間たちはルフィの所有物であることを望んだ。
「意味?あるわけ無いじゃない。単純に私達に歯向かうこの女が気に入らないだけよ」
「そっか……もういい」
「ん~?どうい……えっ?」
ウタの口からこの場に不釣り合いな歌が紡がれ始めた。
綺麗だが力強く、低いトーンの怒りの歌。
「―――♪――――♪」
「なに…を……す…」
ハニークイーンが、男達が、まるで子守唄を聞く赤子のように意識を手放していく。
「―――――――♪……ふぅ」
「すごい、けど……なん、で?」
歌い終えた時には牢に繋がれた女性以外が眠りについていた。
「私の悪魔の実の力。歌を聞けば眠らせたり、ある程度自由に動かせるの」
「能力…あっ…だ、だったらここから」
「ううん、その状態なら連れて行けないよ」
ウタはともかく、彼女は牢屋と繋がれてる状態だ。
それにウタも逃げるにあたって手が不自由なのも心配だ。
「お、…置いて、いくの…?」
「えっ?」
どうすれば逃げれるかと思案すれば彼女が怯えた様子で言った言葉にウタは驚いた。
「…大丈夫。必ずルフィが助けに来てくれるから」
そう慰めるウタだが、あまり効果がないようだ。
「ひゃあぁァ゛!!」
「ひぃっ!?な、なに!?」
突然ハニークイーンが悲鳴をあげたことに女性が驚いた。
しかし、ハニークイーンは起きたわけではないようで魘されていた。
「眠らせた時に見る夢を操作できるんだけど、たくさんの男の人に犯され続ける夢を見せてるの」
「…なんで、そんな…?」
悪趣味にも程があると思った。しかし、ウタはさも当たり前のように言った。
「セックスは意味のある行為じゃないといけない。お互いに気持ちいいとか、好きな人とやるとか、…子供が欲しいとか」
そう言って下腹部に手を当てる。
あの時に最初に膣内出しを希望したのも、
初潮を黙っていたのも、
ゴードンの説得を跳ね除けたのも、
「それを意味のない、他人を苦しめるだけの手段だって思ってるなら、自分で味わってみればいい」
ウタはそう言いながら夢の中で強姦され続けるハニークイーンを見下した。
女性はなんとなくだが、ウタが特殊な環境で子供を産んだことを察した。
そして、こんな場所でも助けに来てくれることを信じて疑わない大切な人がいるのも。
「…? なんか、外が…騒がしい…?」
――トランプ城:玉座
「ば、バカな…いずれ、海賊、王になる、おれ様が…!!」
「雑魚すぎだろ」
螺旋階段、地雷原、その他諸々の仕掛けを全部タグで解除した一行は敵陣の中心であるトランプ城の玉座へと攻め込んだ。
そこには船長のベアキングのほかに3人の幹部もいた。が、悪魔の実に頼り切りで自意識過剰に油断しまくっているせいぜい1100万ちょっとの賞金首なんて速攻でカタがついた。
「おい、お前」
「は、はいでガス!!」
道化師のような男もプリンプリン准将の指揮で動く多数の海兵に物量差で押し切られ、太った男は自慢だった棘の鎧の隙間を
飛んで逃げようとしたところを着ている服の重さを操作されて身動きが取れないでいた。
「ウタはどこだ?」
「ウ、ウタ…?あの赤と白の髪の女でガスか?も、もしやお前が」
「ウタはどこだ?3度目はない」
ウタが助けに来ると信じていた男がもしやコイツなのかと驚いているとルフィは能力発動させるように右手を向けながらもう一度聞いた。
このままでは殺されると思ったのか「ひぃ!牢屋でガス!そこの階段から3つ降りたところでガスゥ!!」と必死に言葉を発した。
「ルフィさん」
「ああ」
やっとウタの居場所が分かり、ルフィとビビは男が行っていた牢屋の方へと向かった。
既に海兵たちが大体を制圧しており、道中特に足止めもなく牢屋へとたどり着いた。
「あ、ルフィー!こっちこっちー!」
牢屋の前でウタが手を振っていた。周囲には敵がいるが、全員が眠っているためウタが能力で無力化したのだろう。
「大丈夫か、ウタ」
「もー、最悪だよ!変な男に求婚されるし、みんなでビックリさせようとしたのにドレス着たままだし」
能力で手錠の材質を砂に変えて外しながらルフィが聞けばウタが拗ねたように言った。
バージンロードという大事な場所、大事なタイミングで全員一緒にウェディングドレス姿を披露しようとみんなで話し合ったのにこんな最低な場所でルフィに見られてしまったのだ。
それに「ごめんね」と言いながらビビがウタを抱きしめた。
「無事でよかった……!」
「……うん。迎えに来てくれてありがと、ビビ」
この場にビビがいる理由をなんとなく察したウタはそう言って【許した】。
これでひとまず安心だと「帰るぞ」と言えばウタが「あ、ルフィ!ちょっと、この人の鎖外して!」と言った。
ウタ以外に誰か捕まってるのかと、ルフィが牢屋の中を見て――
「は?」
「あ…アンタ…は…!?」
「え…?」
中にいたのは鎖で牢屋に捕まったままの金髪の美女。全裸で普通の男なら鼻の下を伸ばそうであろうが、今のルフィ――それとビビは驚きで声が出なかった。
一方の美女も、ルフィとビビを見て目を丸く、そして怯えた表情を浮かべた。
「お前…ウィスキーピークにいた…」
「ミス・バレンタイン…!?」
あの時と違い、髪は乱れ、男に犯され、痛々しい痣を作っているが間違いなくバレンタインだった。
一方のバレンタインも「あの時の…それに、ビビ王女…!?」とこの場にやってきた救援があの時の男だと知って驚いていた。
「え、知り合い?」
「知り合いって言うか…前に話しただろ?ビビの国が大変だったって。それでビビを殺そうとした組織の幹部だ」
ルフィの説明にウタは「うそーっ!!?」と驚いていた。
これまでの旅についてはある程度はウタには話していたが、詳細までは言ってなかった。
まさか海賊で捕まった先で残党と出会うなんて思いもしないだろう。
「お前、なんでこんなところに…」
「っ…アナタに、能力で島外に飛ばされた私は…偶然、この島に流れ着いた」
ルフィの能力でウィスキーピークから島外に流されたバレンタインは上空の風にあおられてねじまき島にたどり着いたそうだ。
「すぐに本社へ戻らないと始末される…そう思って船を奪おうとしたの」
しかし、トランプ海賊団の能力者で、今ここでウタに眠らされたハニークイーンとは相性はよくなかった。
バレンタインは体重を増減させる能力なのだが、基本的な攻撃はのしかかりや上空に挙がっての押しつぶしだ。
それを体を流動体に変化させるハニークイーンによって拘束されては身動きが取れなくなる。
「結局、私は捕まって…ここで…男たちに…ッ…!」
その先は言わずとも部屋や彼女の身体でだいたいが分かる。
高飛車な彼女がこんなにも弱弱しく折られたのだ。一度や二度、一日二日ではないだろう。
「えっと…敵、だったってこと、だよね?どうするの?」
「っ、お、お願い助けて!!もうこんなところ嫌なの!!ビビ王女を殺そうとしたことも国を乗っ取ろうとしたことも全部謝罪する、します!!」
そう言ってバレンタインは拘束されてまともに動かせない体を無理に動かし、土下座した。
プライドの高い彼女にとって屈辱的な行為だが、そんなことを気にしている場合ではない。
ここで見捨てられたら、また男たちに殴られる。犯される。それどころか殺されるかもしれない。
「私、何でもやります!どんな命令でも聞きます!だから、助けてください!!」
「……」
精神的にも生理的にも気持ち悪い体液の上に頭をこすりつけて必死の懇願。
ウィスキーピークの、ビビを襲っていた時の威勢はどこにもない。
「ビビ、お前が決めろ」
「え、わ、私?」
「おれは恨みはねぇ、かと言って助ける理由もない。お前の好きにしろ」
ルフィに言われ、ビビは少し考える。
いや、そんなそぶりを一瞬だけあったが答えを出した。
――数週間後:フラウス王国:教会
「――新郎、ならびに新婦の総名は今ここに永遠の愛を誓うことを神に捧げます。新たな夫婦、新たな門出に、祝福があらんことを」
神父の宣言にパチパチと小さいながらも祝う気持ちの籠った拍手がされる。
一夫多妻の結婚には多くの親戚や友人が来るのだが、この場で主役である新郎新婦以外の出席は二人だけ。
それも、この新たな家族の括りの中に組み込まれるであろう子供だけだった。
だが、参列者がいなくても、世間一般には公表されなくても、これは【結婚式】なのだ。
「ママたち、すごくきれい!」
「うん、ルフィさんもかっこいい…!」
タキシードの新郎1人に
なんともアンバランスではあるがそれを想うのは進行役でありその行く末の幸福を願う牧師ただ一人だった。
「ありがとー!オトもすごく似合ってるよ!」
「ええ、お姫様みたい!」
「あら、本当の御姫様からのお墨付きね」
「やっぱりオトとアデルにもちゃんとした服を仕立ててもらって正解ね」
ウェディングドレスではないが、純白のヒラヒラとした可愛らしい服を着て目を輝かせるオト。
エレジアで育った環境と年齢の関係で化粧なんてしたことがなかった我が子の姿にメロメロになるウタと、その姿を讃える王女ビビ。
その事実に微笑みかけるロビンと一行の財政を握るナミも今回は奮発してよかったと満足していた。
「あ、もう、アデルさん!あとで撮影するのにまた袖で…」
「まあまあ、これぐらいなら目立たないって」
「でも少し化粧が取れちゃってますね」
「ふふ、アデルにはおめかしは少し早かったかしらね」
男として過ごしていたが故に汗を拭ったりするときに服の袖で擦るのが癖になってるアデルだ
だが、今日は化粧をしていた。そのためにそれが少しはがれて服についてしまい、それをたしぎが咎めるが、せっかくの記念の日だからと宥めるノジコ。
化粧がはがれたところが目立つために化粧をしなくてはと指摘するカヤと、アデルの性格的には化粧は煩わしいのだろうと笑うマキノ。
「…ねえ、本当に…私も…」
「何いまさら言ってるんだ。お前だって欲しいんだろ?ならみんな同じだ」
ウェディングドレスを着た
えー、突然ですが今回はここまでデス。
切りどころが悩みに悩んだ…
いきなり東の海に戻ったのには訳があってまず、散々「出します!」って言ってたハニークイーンのフラグを、最初の予定だと【エンディング】を出して、その後に色々あって東の海に戻った際にトランプ海賊団を壊滅させて――ということにしようとしたんです。
ただ、そのエンディングから東の海に戻る流れがどうしても無理やりすぎるからどうしようかと悩んでいた時に『ねじまき島の冒険』でナミが花嫁衣裳を着てたのを思い出して「この作品だと誘拐されるのはウタにしたいなぁ」と思ったら「ってか、この一団結婚とかどうしよう」と思いました。
ウタを正妻に他を愛人に、って言うのも考えたんですけど、付き合いで言ったらマキノが長いし、性欲的にはビビやカヤがアレだし、ナミ達も納得しなさそうだし…と思っていっそのこと一夫多妻制での式ということにしたところ、「そのために東の海に戻るか」と理由を加えてみました。
あとはちょっとした理由でハニークイーンに「強姦されまくる夢」を見させるのにミキータを登場させる流れでこうなりました。
ウタの能力だと現実的にもできそうだったけど流石に海軍も困惑するだろうから夢の中だけ。
ちなみにこの作品のウタはルフィと出会う前のナミ以上に海賊に対して嫌悪感を抱いてます。
理由は――言わずもがな?もしこれで「ウタが一番大嫌いな例として挙げた海賊」と再開したらどうなるのかな…(ワクワク)
あと、なんとなく、本当になんとなく、「高飛車で加虐的」なミキータを全裸土下座させたかった。そこに理由はないですけど、ね?(察し)
プリンプリン准将は最初、ねじまき島の攻略にルフィと同行してトラップを解除させるという展開を考えていたのですが、先述の文字数の関係でカットになりました。
結婚式の場面で唯一の参列者としての登場もよかったんですけどナミ・ノジコ・カヤの故郷を知ってるのとロビンを男性化して誤魔化していたのを女性にして「まさか、悪魔の子…!?」となる展開もあり得そうだったので結局特に出番が…
いっそのこと遭遇しなかったことにしようとも思ったんですけど、前回「ロビンは人目を気にして男性化する」というのが描写的にあっさり過ぎたかな?と思ってそこの印象付けだけでそのままとなりました。
結婚式と言えば、参列者がいなかったのは、まあ普通に…倫理的に?
間違いなくゲンゾウが殺しに来ますし、メリーは気を失ってウソップは最悪ショック死しそうだし。スモーカーも困惑して、アラバスタとの国際問題になるんじゃないか?
ちなみに最初は式をコルボ山で、もしくは参列者にダダンが関わる予定でしたがフーシャ村からガープにも伝わりそうだったのでやめました。
次回はミキータと、結婚式についての話となります。