※この作品はR-18です。

海賊王に、俺は、ならない!   作:銀猫

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今回はR18要素はありません。


初めての親戚

シャボンディ諸島

 

それは新世界へと向かう者たちがその準備のために集う、いわば偉大なる航路(グランドライン)におけるローグタウンのような場所だ。

冒険隊と言った堅気から海賊といったアウトローまで、様々な者たちが流れ着くその79本の木によってできた島に、ルフィ冒険隊もたどり着いた。

 

 

「【チェンジ】」

 

 

決められたわけではなく、自然と振られた番号から1~29番は無法地帯、30~39番は繁華街、40~49番は観光関係、50~59番は造船所やコーティング作業所、60~69番は海軍駐屯地、70~79番はホテル街が多い傾向にある。

サニー号はその中でコーティング作業などが行われる54番マングローブへと停泊した。

 

ここからはコーティング職人のところで依頼をするのだが、過去にサニー号と同程度のサイズをコーティングしてもらったエースが言うには少なくとも数日がかかる作業とのこと。

 

 

「よし、これでバレねぇだろ」

 

 

そのための変装としてエースの外見をルフィそっくりに、ロビンの性別を男、ケイミーを人魚から人間へと変えた。

ちなみにケイミーは最初はシャボンディ諸島までの案内の予定だったのだが、「どうせなら一度魚人島に帰ろうかな」とそこまでの案内までしてくれることを申し出てくれた。

断る理由もないし、子供たちも懐いているためそれに感謝した。

 

あとついでにエースとロビンについては名前が同じのそっくりさんで押し切った。

パッパグは「嘘だろ…」と疑ってはいたがハマグリで買収し、ケイミーは「わかったー!」とコロっと騙されていた。

 

 

 

「職人探しは俺とエースとビビとロビンでやる、マキノとナミとノジコは買い出しを頼む。ほかは留守番な」

 

「えー!」

 

 

留守番に不満の声を上げたのはオトだった。

幼い彼女は「パパがお出かけするのなら付いていきたい」と思ってるのだろう。

そんな娘にウタは「こーら、わがままはダメ」と優しく宥めた。

 

 

「パパは今日は遊びに行くんじゃないの」

 

「ぶー…」

 

「あっ、そうだ!オトちん、この島にね、遊園地があるの」

 

「…遊園地!」

 

 

何かを思いついたケイミーがこの島の娯楽施設のことを言えば、生まれてそのような場所に行ったことがないオトが目を輝かせた。

ウォーターセブンでのブルでの散策がそれに近いが、より遊びをメインにした施設というのは子供ながらに理解してるのだろう。

 

その話をした意図に気づいたロビンが「じゃあ、今日お留守番できたら明日、パパと行きましょうね」と言えば「うん!」と機嫌を直したのか「ゆっえんっち!ゆっえんっち!」と謎のテンションでワクワクしていた。

 

 

「悪いな、2人とも」

 

「ううん、シャボンディパークには私も行きたかったんだけど、人魚だってバレたら大変だから…けど、これで行けるから」

 

 

そう言って嬉しそうにケイミーは自分の足を見る。

これなら誰が見ても人魚だとは分からないし、海水に浸かるかルフィが解除しない限りバレることはないだろう。

 

 

「――おっとと」

 

 

とはいえ、さすがに尾ひれと勝手が違うのか少しよろけた。

今日一日は足に慣れる練習をするということで船で留守番するということだ。

 

 

「じゃあ、ミキータ。留守の間頼むぞ」

 

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が昔、上陸したのはこの23番マングローブ、ここで船員がコーティング職人と出会った」

 

エースと共にやってきたのは無法地帯に位置する20番帯のマングローブだった。

そこに足を踏み入れた途端、一般的な出店や商店などがなくなり、代わりにガラの悪い連中が主にビビとロビンを目当てに襲い掛かってきた。

 

――ちなみにそいつらは秒で蹴散らされていた。

 

 

「名前は知ってるんだが、そう簡単に見つかるかどうかが問題だ」

 

「なんて名前なんです?」

 

「……シルバーズ・レイリーだ」

 

 

どこか会いたくなさそうに、そのコーティング職人の名前を口にしたエース。

それにルフィたちは驚きを隠せなかった。

 

 

「それって」

 

「もしかして…冥王」

 

「…海賊王の右腕か?」

 

 

誰でも一度は耳にしたことがある海賊王ゴールド・ロジャーの副船長にして右腕と言われた生ける伝説。

大海賊時代の幕開けとともに姿を消したとされ、一部では死亡説すら流れている存在だ。

 

 

「俺は会ってないけどな…今も会いたくないが」

 

「え?」

 

「…ま、そうだろうな」

 

 

海賊として名を上げるのなら老いているとはいえの海賊王の右腕、冥王の首は何よりもデカい存在のはずだった。

おまけに白ひげはロジャーとはライバル関係、殺し合いをしたこともあるのならエースにとっては獲物でもあるはず。

それなのに会いたくないという理由が分からないビビとロビンだが、その事情を知るルフィは納得していた。

 

 

「多分、俺のところの副船長の名前を出せばコーティングはしてもらえるとは思う。ああ、そいつはマスクド・デュースって言うんだ」

 

「本当?」

 

「俺も詳しくはねぇんだがなんか、意気投合したらしい。少なくとも、アイツの人を見る目は確かだから、俺が知る限りじゃ安心して任せられる唯一の職人だ」

 

 

だがここで問題がある。

まずレイリーの居場所が分からない。

 

 

 

 

そのためには聞きこむ必要があるがこの辺りのマングローブは無法地帯だ。

 

 

 

 

 

「っていうわけで、知らねぇか?」

 

「し、しらねぇ!そんな奴知らねぇよ!」

 

 

襲ってきた連中を返り討ちにして聞いてみた。

だが、帰ってくるのはだいたい同じ。

 

そもそも海賊王の右腕が名も姿も隠さずにいること自体あまりかんがえられない。

 

 

「――どうする?」

 

 

襲い掛かって来た相手が10組を超えたあたりでルフィが作戦会議としてそう聞いた。

正直エースもここまで手がかりが無いとは思ってなかったらしく、ばつが悪そうにしてロビンはまだ平気そうだがビビには疲労の色が見えてきた。

 

 

「コーティングに時間がかかるならこれ以上手間を掛けたくないな…」

 

「はぁー…一旦どっかで休憩するか?無法地帯でも酒場とかあるだろ」

 

「あそこにそれらしい建物があるわ」

 

 

ロビンが指さした先、少し高い位置に酒場っぽい建物が見えた。

ビビの疲労もあるし、どこかで腰を落ち着ける必要もあるため、そこへと向かう。

 

 

「――やめねぇか、この店」

 

 

ルフィがそう言うのも無理はない。

店の看板には【シャッキー’sぼったくりBAR】と書かれていた。

ツッコミどころ満載の店構えに入るのを思わず躊躇う。

 

 

「まあ、大丈夫だろ。いざとなったら俺が能力で燃やせば…」

 

「それは最終手段ね」

 

 

まあ、万が一があっても能力の応用が効くルフィに腕っぷしに自身があるエース、交渉力があるビビに博識なロビンと対応はできるだろう。

そう思ってルフィが扉を開ければカランカランとドアベルが鳴った。

 

「払います…」

「いらっしゃい、なににする?」

 

「なあ、やっぱこの店やめね?」

 

 

店の中には店主と思わしきタバコを吸う女性と、客と思わしきズタボロになっている男性が数名。

治安が悪いにもほどがあるためルフィがそう言うが「あら、冷やかし?」と言われると何故かこっちが悪いように感じた。

 

 

「…とりあえず、値段聞きたいんだが」

 

「水が1000ベリー、ラム酒2000ベリー、あとつまみが800ベリーで」

 

「ぼったくりじゃないっ!!」

 

 

あまりにも法外な金額設定にビビがそう突っ込むと「あら」と面白そうなものを見つけたかのように女性が反応した。

そして掴んでいた男を投げ捨てるとまじまじとルフィ、そしてビビを見た。

 

 

「驚いたわね、まさかアラバスタの英雄と王女に会うなんて」

 

「!!」

 

「お前、なにもんだ!?」

 

 

とある冒険隊の協力でアラバスタがクーデターを治めたことは新聞にはなったが、名前や顔写真は出回ってないはずだ。

それに一見してビビがアラバスタの王女であることも見抜いた。

ただの酒場の店主にしては知り尽くしていることにルフィとエースが思わず構えた。

 

 

「私はシャクヤク、ちょっとした情報通な店主よ。ふふっ、一度モンちゃんには会ってみたかったのよ」

 

 

そう言うとシャクヤクはバーカウンターから4つグラスに酒を注いでカウンターに置いた。

そして「おごりよ、それは料金取らないわ。こいつらから法外なお金をぼったくるから座って待ってて」と倒れてる男に蹴りを入れた。

 

 

 

 

「足を洗ったけど私は海賊をしててね、ガープにも追いかけられたことがあるのよ」

 

あの後、男たちから金を巻き上げて店から叩き出した後、シャクヤクが昔を懐かしむようにそう話した。

一瞬ガープに対して恨みでもあるかとと警戒すれば「昔の話よ」とあくまで思い出話のようだった。

 

 

「それに、モンちゃん…女ヶ島に行ったでしょ?」

 

「…どこまで知ってんだよ、アンタ」

 

「九蛇とは関係があってね。特にハンコック達は幼い頃も抱えていた秘密も知ってる、あの男嫌いだった子が好きになった相手って聞いて興味があったの」

 

 

ハンコックはルフィの妻になることを望んでいたが、九蛇の長としての立場もありいずれ、ということで納得してもらった。

それは幼い頃を知るニョン婆なんかも驚きを隠せないほどだった。

 

 

「老婆心ってやつよ。あの子たちは孫みたいなものだから」

 

「お前何歳だよ」

 

「やめとけ、下手なこと言うと碌なことにならない」

 

 

自分たちよりも年上のハンコックを孫扱いするシャクヤクの年齢に思わずツッコミを入れるエースにルフィは過去の経験からか、口が過ぎると面倒くさい展開になることを想像して釘をさす。

 

 

「ところで、ボウヤたちはなんでこんなところに?知らずにこのあたりの地帯に来たわけじゃないんでしょ」

 

「あ、ああ。コーティング職人を探してる、少し前に腕がいいやつがこのあたりにいたって聞いて」

 

「ああ、レイさんね。彼なら今ここにはいないわよ」

 

 

そのコーティング職人――海賊王の右腕について知ってるのか咥えてたタバコを指で挟んで煙を吹きながら呆れたように吐き捨てた。

まさかの手がかりだが、シャクヤクとレイリーは深い仲なのだろうか。

 

 

「それじゃあ帰ってくるのを待てば…」

 

「もう半年は帰ってきてないわ。前から数年帰ってこなくて思い出したように顔を出しては外に作った女のところに転がり込んで…多分、次に帰ってくるとしてもしばらくあとね」

 

 

慣れたようにそう言うシャクヤクだが、ルフィたちは落胆した。

折角の手がかりだったのだが、また振り出しに戻った。

 

 

「ふふっ、そう落ち込まないで。これを貸してあげる」

 

 

そう言ってシャクヤクが取り出したのは一枚の紙。

文字も何も書いてない何の変哲もない紙だが、それがなんなのか。

 

 

「これ…ビブルカードか?」

 

「ビブルカードって確か、その人の方向が分かる紙でしたよね?」

 

「ええ、これはあの人のビブルカード。これを辿れば、あの人に会えるわ。でも失くしたりしたら…」

 

 

四六時中位置がバレるなんてとんでもない情報アドバンテージだ。

それを理解してるシャクヤクが少し殺気を込めながら念を押すとビビが青い顔をしてガクガクとうなずいた。

 

 

「いいのか?そんな大事ものを借りて」

 

「言ったはずよ、老婆心って。ハンコックのお気に入りの男に少し手を貸してあげたくなっただけ」

 

 

 

――63番マングローブ:海軍駐屯地

 

 

「お久しぶりです、スモーカーさん」

 

【派手にやってるようだな】

 

 

新世界への準備として海賊が立ち寄ることが多いシャボンディ諸島は緊急時のために他の町に比べて大きな駐屯地が存在する。

そこに報告書を提出するためにやってきたのはたしぎだった。

 

忘れてるかもしれないが、たしぎがルフィの船に乗ってるのは船の監督任務のためだ。

今までの航海中や島への滞在中にトラブルがあったか、また航海技術やクルーたちの素性などの報告書を島の海軍の詰め所に提出していた。

 

するとシャボンディ諸島の受付が「たしぎ曹長ですよね?ローグタウンのスモーカー大佐より連絡をせよとの伝言が」と久しぶりにかつての上司へ連絡しているというわけだ。

 

 

【アラバスタでの大捕り物に噛んでるなんて聞いたときは流石に耳を疑ったぜ】

 

「あ、あはは…アレは巡り会わせが凄かっただけです」

 

 

力をつけるために送り出したスモーカーもその直後でクロコダイルのアラバスタ乗っ取り未遂でたしぎがビビの護衛についていたと寝耳に水だった。

ちなみにその後のガスパーデや何故か東の海に戻ってのトランプ海賊団の捕縛、またはアクアラグナによる被害復興の手伝いとハチャメチャな報告書に「報告してるやつは本当にたしぎか?」と疑ったほどらしい。

 

 

【どうだ、十分な力はつけたのか?】

 

「…まだ未熟です。ですが、強くなるきっかけはつかめたと思います」

 

 

アマゾンリリーで学んだ覇気の使い方。

今は彼女たちと同じように刀に纏わせて切ることはできるが、それが達人になれば黒刀のように染め上げることもできると聞いた。

 

だから今は覇気を使うことを重点に修業をしていた。

 

 

【そうか、ならいいタイミングかもな】

 

「タイミング…?」

 

 

 

 

 

――9番マングローブ

 

 

「あ、待って」

 

 

ぼったくりBARから出てビブルカードを頼りに移動を始めた4人。

時折ビブルカードの向きで道を変えたりしていたのだが大通りを歩いていると今までとは違う反応にビビが声をかけた。

 

 

「どうした?」

 

「紙が後ろ方向に…」

 

「ってことは、この近くか」

 

 

ビブルカードが後退するということは、レイリーとすれ違ったわけだ。

だが大通りには人が多い。一人一人に声をかけるわけにもいかない。

 

 

「どうするの?」

 

「せめて人相とか聞いておけばよかったわね」

 

「…いや、アイツだ」

 

 

レイリーの顔を知らない4人だが、エースは一人の老人を見てそれがレイリーだと判断した。

ローブのようなものを羽織り、眼鏡をかけてスキットルから酒を飲みながら歩く老人。

 

 

「え、でもどうして…」

 

「路地に抜けるわ。見失うわよ」

 

 

なぜそれがレイリーだと思ったのか、疑問に思っているが細い道にそれるレイリーに見失うと急いで追いかける。

 

 

「おい、待て!」

 

 

路地の奥を進むレイリーを呼びながらエースが追いかけ、その後ろを少し空けてルフィ、ビビ、ロビンと追いかける。

声をかけても気づいてないのか、進むレイリーの肩をエースが――

 

 

「っ!!?」

 

「ほう」

 

 

肩を掴もうとしたエースの手が空を切り、エースの顔面の横を鋭い蹴りが通り抜けた。

レイリーはその様子に感心したかのように声を漏らす。

 

 

「追い剥ぎか、誰かの手下かと思ったが…なるほど、三下ではないようだ」

 

「テメ…!」

 

「ちょ、ストップ!」

 

 

思わず反撃に出ようとするエースとの間をルフィが割り込む。

無抵抗をアピールすればレイリーは警戒はしながらも、構えは解いた。

 

突然の臨戦態勢にビビがうまく呼吸ができないように息を呑んだ。

 

 

「俺達はアンタに危害を加えに来たわけじゃない。仕事の依頼だ」

 

 

 

 

 

「ふむ…なら、その偽装を解くべきなのではないかね?」

 

「…!」

 

レイリーはエース、そしてロビンを見てそう言った。

この島についてからエースとロビンにはタグを付け替えて別人に見せて、性別を誤魔化している。

 

だが、今までこの偽装を見破られたことがなかった。

 

 

「うまい変装だ、ふと見ただけでは分からんだろう。だが、あるレベルの見聞色の覇気になれば違和感を感じる。そうやって身を誤魔化すのは世間の目を気にするか、あるいは私を侮って欺くか…いや、君の様子を見るに前者だ。だが、私としても身元を誤魔化すような連中を信用するというのは無理な話だ」

 

「なんだと…っ、ルフィ」

 

「筋は向こうが通ってるんだ。幸いここならほかの連中にも見られないだろ」

 

 

そう言ってルフィはチラッとロビンを見た。今だけ能力を解除して正体を見せることも仕方ないと頷いた。

ルフィは「【リターン】」と編集していたタグを元に戻した。

 

 

「…! ほう、悪魔の実の力か…それに世界政府が喉から手が出るほど欲する二人…」

 

「不躾だったのはお詫びする」

 

「いや、こちらもすまないね。なるほど、そう言った事情なら仕方がない、無理を言った」

 

 

2人の正体がエースとロビンだと分かると素性を隠していたのも納得して「元に戻すといい」と再び偽装をすることを認めた。

再びタグを戻すころにはエースも落ち着いたのか、少し不機嫌そうながらも反撃の体勢から戻った。

 

 

「過去にマスクド・デュースが乗る船をやってもらった腕前を見込んでコーティングの依頼したい」

 

「なるほど、彼の紹介か。ふふふ、懐かしい…いいだろう。船の場所は?」

 

「54番マングローブのスループ型帆船だ」

 

 

そう告げれば「では、道具を持って後で合流する」とシャクヤクのバーがある方へと歩いて行った。

そこでやっと、緊張感がなくなりビビが息を落ち着けることができた。

 

 

「ビビ、大丈夫か?」

 

「ええ……でも、本当に彼がシルバーズ・レイリーだったのね」

 

「ああ、俺も驚いた。それにまさか一発で見破られるとはな」

 

 

エースの外見認識タグを弄るのを気配なんかで気づかれる可能性は分かる。

しかし、情報タグで丸々の身体を変えてるロビンすらも見破ったのには驚かされた。

 

それほどまでにレイリーの見聞色が強い、ということだ。

 

 

「…人探しは終わったんだ、帰るぞ」

 

 

一方のエースはレイリーに対して、何も言わずにその場から離れた。

それを見てロビンも、ルフィと共にビビもサニー号へと戻っていった。

 

 

 

 

――54番マングローブ

 

 

「この規模なら最低でも3日…入念なコーティングをするなら4日は欲しいところだな」

 

 

サニー号にコーティング道具を持ってやってきたレイリーは仕事にかかる時間をそう算出した。

海賊相手に仕事を請け負うことがあり、中には追われてる中急いでやってくれと頼む依頼者もいるそうだ。

 

 

「時間より安全第一だ、1日2日伸びたところで問題はない」

 

「それとコーティング中は船の中から出てもらうからホテルで寝泊まりしてくれ」

 

「わかった」

 

 

仕事の打ち合わせを終えると、ルフィが船へと戻った。

甲板ではケイミーが歩行の練習を、マキノ達がその手伝いをしていた。

 

 

「あ、ルフィ。時間がかかりそうなの?」

 

「ああ。みんな、コーティング中はホテルに4日間滞在することになる。準備をしてくれ」

 

 

ルフィの呼びかけに各々が船を降りるために作業を始めた。

数日分の着替えに期限が近い食料の処理、滞在中に暇をつぶす本や滞在費の用意など。

 

 

「忘れ物はない?」

 

「なーい!」

「大丈夫、と思う」

 

 

ウタも、オトとアデルと部屋で荷物をまとめた。

2人用に小さいカバンを取り出し、着替えや勉強道具、読みかけの本などを確認するとウタは満足そうにうなずいた。

 

 

「さてと、ママも自分の準備するから二人は甲板で待ってね」

 

「はーい!」

「あ、オト、こけるぞ」

 

 

探検気分なのだろう、楽しそうにオトがカバンを背負って部屋を出て姉として面倒を見る責任を感じてかアデルがそれを追いかける。

その様子にウタは「まったく、元気がいいんだから」と呆れたように笑った。

 

 

「いっちばーん!…あれ」

 

「おや」

 

 

自分の用意だけでなく不在の間の処理をしている大人たちは作業をしていた。

だから誰もいないと思ったオトだが、そこには見覚えのない老人が一人いた。

 

 

「おじいさん、だれー?」

 

「こんにちは、私はレイリー。レイさんと呼んでくれたらいいよ。君は?」

 

「オトはオト!こんにちはー!」

 

 

元気に挨拶をするとやっとアデルが追い付いて「おい、オト!ごめんなさい、邪魔して…」とレイリーに謝罪する。

だが特に迷惑も掛かってないし礼儀正しいオトとアデルの反応ににこやかにレイリーは「いやいや」と宥める。

 

 

「それにしても、驚いたな。偉大なる航路(グランドライン)の中盤までくる船に君たちみたいな幼い子供が乗ってるとは」

 

「えっと…やっぱり、珍しいのか?」

 

 

ずっとガスパーデの船に乗っていたアデルとエレジアの外を知らないオトは他にも同じような子供がいるのかどうか知らない。

だから疑問に思って聞くとレイリーは「そうだな」と顎を撫でるようしながら考えた。

 

 

偉大なる航路(グランドライン)は大人でさえ根を上げる海域だ。子供を連れて入ることは滅多にないな。ただ航海中に何らかの理由で子供を乗せたり、あるいは遭難した子供を保護したりはあるだろう。シャンクス…私がアイツを拾った時も幼かったな」

 

「へぇ…」

 

「あれ…?アデルお姉ちゃん、シャンクスってママのパパだよね?」

 

 

「「―――は?」」

 

 

コテっと首をかしげて聞くオトにレイリーとアデルは同時に固まった。

 

この船ではウタやオトの身の上は後で乗ったミキータを含めて周知の事実だった。が、それにはアデルは含まれていなかった。

それは単純に「幼い頃に育ての親に滅ぼした国へ置き去りにされ、その後に赤ん坊を産んだ」というのが子供にとって重くて難しい話だったからだ。

 

だからアデルはウタとオトの身の上は「海賊によって大変な目にあった」というぐらいにしか認識しておらず、アマゾンリリーはそれで警戒していたとしか思ってなかった。

 

 

 

「シャンクスが君の…母親の父?それは、間違いないのかい?」

 

「え…えっと……ママたちが…そんな話をしてた……」

 

 

信じられないように、腰を落として目線を合わせながらも迫るレイリーに威圧感を感じてオトは少し怖がりながらそう言った。

それに気づいたアデルはハッとしてオトを背に隠すようにして守るように間に立った。

 

 

「あ…ああ、すまない。怖がらせてしまったね」

 

 

流石に子供相手に大人気ないことをしたと気づいたレイリーは、動揺しながらも【もう何もしない】というアピールのためか少し距離をとった。

だが子供故か、一度怖がらせると警戒がなかなか解くことはしない。オトは怯えたようにアデルの影からレイリーを見て、アデルも気を緩めなかった。

 

 

「アデル、オト、なにしてるのよ?」

 

 

やっと、真っ先に準備を終えたノジコが甲板に現れると二人はその背に隠れるようにしてレイリーから離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――正確には私は、赤髪海賊団で育てられた」

 

 

あの後、どうも怯えた二人を何とか宥めている間に他の大人たちがやってきて、異様な状況に困惑しているとレイリーがウタに向かって「君は、シャンクスの娘なのか?」と聞いた。

そこでやっと、レイリーの口からシャンクスの名前が出たことで、オトが反応して詰め寄った、ということが分かった。

 

 

ルフィとウタ以外の大人たちがレイリーに対して怖がる子供たちと先にホテルに向かわせて話をした。

そこでオトは自分の出生――シャンクスたちに拾われたこと、赤髪海賊団の音楽家を自称していたこと、ルフィとは幼少の時に会ったこと、赤髪海賊団がエレジアを滅ぼして置き去りにされたこと、ルフィが来なければ自分やオトが迎えに来なければ餓死をしていたとを説明した。

 

 

 

「…なるほど」

 

 

レイリーはそれに言葉を挟まずに聞いて、聞き終わると持参していたスキットルの酒を一気に飲んだ。

そしてそのスキットルをグシャリと握りつぶした。

 

 

「すまなかった」

 

「…あなたが、謝る必要なんて、ないよ」

 

「いや、私にとって、シャンクスは我が子同然だ。アイツの海賊としての生き方に口を挟むつもりはない、だが親としての在り方は別だ。アイツは君に、海賊としてなく親として接して、それで傷つけた。ならばそれはシャンクスの親である私の責任だ」

 

 

かつて所属していた海賊の副船長としてではなく、親としての立場からの謝罪。

それならばウタも、一人の親として言葉を受け入れるしかなかった。

 

 

「…謝っても困るだけだろう。だからもし、今後何か困ったことがあれば必ず助けに行こう。たとえ海軍本部だろうがインペルダウンだろうが、ラフテルだろうが必ず君たちを助けに行く」

 

「そんなことやる必要はないよ。アイツにとって、私は娘なんかじゃなかったんだろうし…」

 

「いや、これは私の自己満足に過ぎない。それに、あいつにとって娘じゃなかったとしても私にとっては、君は孫みたいなものだ。一度子供だと認めたのなら、後からなかったことになんかできない、していいはずがない。だから私は今でもシャンクスの親なのだよ」

 

 

これが、本当の【親】というものだろう。

ウタにとっての親は自分を置いて行ってその繋がりをなかったことにして、誤魔化していた。

だが、レイリーは子供との繋がりを今でも持ち続け、その責任から逃げようとしなかった。

親を知らないウタは、これが本当の親なのだと、改めて認識した。

 

 

「じゃあさ…今度シャンクスに会ったら、代わりに殴ってほしいかな」

 

「ああ、特大のゲンコツをお見舞いしてやろう。若い頃にガープに喰らわされて十分に経験があるからな」

 

 

そう言ってルフィを見たレイリー。おそらく、シャクヤク同様ガープの孫ということは知っていたのだろう。

だが、それも気にしないほどの器の大きさを、改めて感じ取った。

 

クスクスと笑うウタと底が見えない大物さに呆れるルフィにレイリーは少し怖い笑みを浮かべると「さて」と言って握りつぶしたスキットルを片付けて大きなハケを手に持った。

 

 

「孫娘やその子が乗る船だ。気合を入れて作業にとりかかろうか」




案外いろいろと悩みました…

原作だとハチの案内でシャクヤクとレイリーのところに行きましたが、こっちではどうするか…というところから始まりました。
もちろん、episodeAでエースが過去に依頼した職人ということで、偶然にもそれがレイリーだったというのはネット情報で知ってたのでそれにしようと思いました。
ただ、いざ漫画を読んでみたら職人がレイリーってことも知っていてエースがロジャーに対する恨みで会いたくないと思ってるというのもあったから…うーむ。
それにシャクヤクとも出会ってなかったみたいだし、と最終的に歩き回る結果に。

原作だと司法の島のことでファンになってるみたいな描写があったけど、こっちじゃやってなかったから…少し無理やりですがアラバスタでの一件を裏の情報として知って(それとガープとの縁も含めて)興味があることにしました。
あと女ヶ島でハンコックのことを気に掛けるようにして――となんとかシャクヤクの信頼度をこれで確保できたかなぁ…


あと、一方その頃のたしぎ。
忘れてる方もいるかもしれませんが、彼女って海兵の任務として乗船してるんですよね。
…本当はそう言った報告とかの流れを今まで出したかったんですけど明確に海軍の駐屯地とか一度も出て来たことが無いからここまで伸びてしまった。


そしてやっとレイリーとの接触。
エースが見抜いたのは纏ってる風格が一般人のそれとは違うからというのと、運命的な何かを感じたためです。

そしてこの作品で初めてのタグを見破られるという展開。
インペルダウンで軽く「見聞色とか使われてないだろうし、気づかない」といった説明をしてましたがもしもある程度のレベルの見聞色を使われていたというと、こうなっていました。
あと、エースについてはロジャーの子供ということと脱獄したことには気づいてますがあまりおせっかいを掛けないためにも気づかないふりをしてます。

レイリーが海賊王の右腕ということを聞いたため、ルフィも誰かしらにバレることはないだろうと判断してます。


今更ながら、母親をしてるウタってなんかキャラ変わるよな…
もう少し姉妹的な感じにしたかったけどちゃんと母親をやってるような感じにしかできなくなったような…


そしてこの話を作るにあたって一番頭を悩ませたのはレイリーがどうやってウタがシャンクスの娘だと知るかということです。
多分ルフィもマキノもシャンクスがロジャーやレイリーに育てられたとは知らないだろうし、逆にウタがシャンクスから聞いてるわけもないだろうし…と。
ふとしたきっかけで知るとしたらレイリーの思い出話か何かでシャンクスの名前をだすかなと、最初は作業を見学したアデルか誰かにレイリーが口を滑らせて、と思ってましたがなんとなくレイリーがオトを孫(というよりひ孫)みたいに思う感じにしたかったから面識があるようにしたら、そこで判明する形になりました。

あと、アデルがシャンクスのことについて知らなかったのは作中でもあったように子供が知るには重すぎるから、女ヶ島でウタがどこかの海賊に対して敵対心があると思ってるぐらいになりました。
まあ、オトはウタから聞いてなくてもルフィたちに説明するのを横で聞いてそうかなと、それと多分ゴードンとウタとのやり取りで名前が出てきてもおかしくないかな。


そしてウタとレイリーの会話。
多分海賊としてのシャンクスの行いについては何も言わないだろうけど、自分たちの姿を見て【親】を名乗るのなら別かな、と。
原作同様にシャボンディ諸島でシャンクスと再会して、子供を置き去りに、ましてや
餓死寸前にさせてる様子がみじんもなかったため静かに怒りを抱いてます。
そして親としての責任を放棄したシャンクスの代わりに力になると約束してくれました。

…本当はその流れで「孫からお金は取れない」という感じにコーティング代を取らないみたいな流れにしたかったんですけど、組み込むスペースがなかった。



ひとつ、説明忘れてましたがこのシャボンディ諸島は原作よりも時間が進んでるのでレイリーが身売りをしてヒューマンショップからお金を盗んで、天竜人はルフィに殴られることなく帰り、最悪の世代も順次出航して行ってます。

原作だとこれらの問題が起こったのがエース処刑前だったのですが、この作品ではウォーターセブンから東の海に渡り女ヶ島にたどり着くまでが大体同じ時間として考えてますので、これらの出来事は全部過ぎ去ってます。

一応、IFでこの作品のルフィが天竜人に手を出す話も考えてますが、後の話の繋がりとか展開とかが結構無理やりなので機会があれば出すかもしれないかな。


さて、次回はR18要素ありの話で27日に投稿予定です。
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