ふと優一郎は工作室のドアを振り返った。その直後、ノックの音がする。優一郎は立ち上がってドアに近付いた。自分からドアを開いて廊下に出る。そこに居たのは凪だった。
「少しお話しませんか?」
狭いところでは窮屈だろう。そう促して優一郎は歩き出した。凪が判りましたと返事してついてくる。途中、キッチンに顔を覗かせて優一郎は梨恵に二人分の茶の用意を言いつけた。
優一郎は私室のドアを開いて凪をどうぞと促した。凪が大人しく頷いて優一郎の部屋に入る。優一郎はその後に続いてリビングにある応接セットに凪を促した。
「立城さんとの伽を終えたので報告をと思って」
ソファに静かに腰を下ろしながら凪がにっこりと笑う。優一郎は凪の正面に回って腰を下ろした。
「気づいてらっしゃると思いますが、実は見てました」
肝心なところで隠すから逆にエッチでしたよ。笑顔で続けて優一郎は凪を真っ直ぐに見た。凪は穏やかな笑みをたたえたままそうですか、と答える。だが凪は自分からはそれ以上の話はしない。
見た目には凪はとても大人しい女性に見える。かつては水輝と姉弟として育ったようだが、実際に二人には血の繋がりはない。凪は夜叉の末裔だったのだ。が、その血はあくまでも薄かったようだ。水輝が紫翠の誓約に従って守ろうとしたのは当時の凪ではなく、あくまでもその妹だった。
結局、水輝は妹に手をかけ、殺してしまった。
「凪さんの身体、どうなっているか興味あるなあ」
凪は見た目には女性そのものだ。が、映像で見る限り、凪は立城を男性器で犯していたようだ。少なくとも立城のあの反応はそうとしか言いようがない。知的好奇心溢れる優一郎の言葉に凪が小さく笑う。
「普通ですよ」
そう、凪が返したところでドアが鳴る。優一郎の返事に従ってドアを開けて現れたのは梨恵だった。ティセットを乗せたトレイを両手にした梨恵が静かに入室し、近付いてくる。二人分のティセットをテーブルに乗せ、梨恵はお辞儀をして立ち去った。いれたての紅茶を示し、優一郎は凪にどうぞと促した。凪がそれでは、とにっこり笑ってティカップを取る。
「普通の身体で、立城さんをあそこまで追い込むことはできないでしょう?」
優一郎はにこやかな笑みを浮かべて告げた。するとまあ、と凪が笑う。紅茶を啜り、ティカップを唇から離して凪は上目遣いに優一郎を見た。
「立城さんは随分と欲情されていたようだから、きっと感じやすかったのではないかしら」
楚々と笑って凪が再びカップを唇に寄せる。優一郎は笑みを納め、真面目な面持ちになって告げた。
「いえ、あの言葉責めの手際は素晴らしかったです。芸術的でした」
それを受けた凪が手を止めてカップを下ろす。まあ、と呟いて凪はくすくすと笑った。
「どうもありがとう。まさか誉められるとは思わなかったわ」
にっこり笑って凪がカップをソーサーに戻す。優一郎は感嘆の息を吐きながら自分の前に据えられたティカップを持ち上げた。少し思案してからカップを戻し、傍にあったミルクポットを引き寄せる。梨恵はどうも茶をいれることに慣れていないらしい。少し紅茶は濃い。優一郎はたっぷりとミルクを落としてスプーンでカップの中をかき混ぜた。
「凪さんは立城さんを治療した後は、栄子さんの下に戻られるのですよね?」
何気なく優一郎は問い掛けた。問いながらばかな質問をしたかな、と胸中で呟く。だが意外にも凪は優一郎の問いにすぐには答えなかった。視線を少し下げて黙り込む。訝りを覚えた優一郎は紅茶を混ぜる手を止めて凪をじっと見つめた。
「どうされたのですか? 凪さんは水輝さんの使いでここに参られましたけど、もともとは栄子さんの使い魔なんですよね?」
「え、ええ。そうよ」
頷いて凪が答える。だがそれ以上、凪は語ろうとしない。優一郎は試しに凪の思惟を探ろうとした。が、凪は用心深く防壁を築いており、とても心の中まで見通せない。
「行くところが無いならここにいらっしゃってもいいんですよ」
まだまだ拡張する予定ですし。笑顔で告げて優一郎はスプーンをソーサーに乗せた。カップを取り上げて口に運ぶ。凪は微かな笑みを浮かべて言った。
「いいえ。そういう訳ではないの。お気遣いありがとう」
凪が軽く会釈をする。それから凪はカップを取り上げて紅茶を静かに飲み干した。まだ熱いだろうに。優一郎は目を見張ってカップを傾けていた手を止めた。凪はだが、優一郎の心配を余所に空になったカップを静かにソーサーに戻す。
「報告は終わったし、お話がないなら私は立城さんの部屋に戻るわね」
優しい笑みを浮かべて凪が腰を上げる。優一郎は目を細めて凪を見た。それじゃあ、と会釈をする凪に声をかける。
「待ってください」
優一郎はカップを置いて立ち上がった。不思議そうな顔で足を止めた凪の傍にするりと寄り、腕の中に細い身体を抱きしめる。その途端、凪は硬直して悲鳴を上げた。
「やっ、やめて!」
慌てたように凪が身をよじる。
「えっとあの?」
とぼけた振りをして優一郎はさりげなく腕を少しだけ持ち上げた。すると凪が喉の奥で悲鳴を上げて身体を震わせる。優一郎は服越しに腕で凪の乳房を強く押さえていた。
設定は後で出来るモノ!!w