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「いえ、実はこの方と約定を結んでいるんです。僕の愛人にするために、女性の使い魔を一人紹介していただけると」
「それは困ったな。僕も諸般の事情で凪さんが欲しいんだよね」
さらりと告げた立城が困ったように笑う。どうやらすっかり正気に戻っているらしい。立城はしっかりと凪を見つめている。
『それではこういうのはどうかしら? そのお嬢さんの心を射止めた殿方にお譲りするというのは?』
ころころと笑いながら栄子が言う。
「だったらこの方は水輝さんの物になりますね。この方は現在、心当たりの使い魔はいらっしゃらないようですので、現在のところ主であるあなたに約定を果たしていただけると、別の使い魔の女性を一人いただけるという理解でよろしいでしょうか?」
にっこりと笑って優一郎は言った。すると困ったわねえ、と栄子が呟く。
『青龍王はそう簡単にはそのお嬢さんを受け入れないのではなくて? この場合、そのお嬢さんの一方通行の想いでは主従関係は成立しなくてよ?』
「……要するにあなたはとにかく何でもいいから争奪戦がさせたいんですね?」
疲れたように立城が言う。優一郎はため息をついて提案した。
「とりあえず、水輝さんをこの場に呼びましょう。蒼、お願いがあるんだ。多輝の主として陪臣である君に命じたい」
「はい」
優一郎の呼びかけに答え、蒼がその場に姿を現す。傍に現れた蒼に優一郎は告げた。
「水輝さんの下に赴いて確認してきて欲しい。現在から未来に至って、凪さんを臣下として迎える気があるのかどうか。誓約の管理者からの正式な最終意思確認だと念押ししたうえで、返答をもらうか、ここに来ていただくかしてくれ」
「畏まりました」
そう返事して蒼が姿を消す。その姿を見送った立城がぼそりと無理じゃないかなあ、と呟く。
「それはそうと、如月さん。そちらで一体、何をなさっているのですか?」
立城が静かな声で訊ねる。すると栄子はころころと笑いながら答えた。
『女性の秘密を無理に暴こうとするのは良くなくてよ?』
そう切り返されて立城がため息をついて黙り込む。その時、蒼が戻ってきた。優一郎の傍に片膝をついて座す。
「申し訳ありません。その……」
そこまで言って蒼が立城をちらりと見る。立城がいいよ別に、と低い声で言う。すると蒼が再び口を開いた。
「実は水輝様はとあるお宅の……その……」
「伝えられなかったのかい?」
何となく理解して優一郎は告げた。すると蒼が深々と頭を下げる。
「申し訳ありません」
「……どうせどこかの女性のベッドでたかいびきなんでしょ」
ぼそりと立城が告げる。すると目に見えて蒼が硬直した。それを見た立城と凪が同時にため息をつく。
「それでは栄子さん、争奪戦は現時点では保留ということでよろしいでしょうか?」
まあ、なんにしても僕が選ばれることは無いだろうけど。そう続けて優一郎は苦笑した。するとまあ、と栄子が声を漏らす。
『殿方がそんなに早く諦めるものではなくてよ? それにそこのお嬢さんがいつ心変わりするかも判りませんし』
そう言って栄子が楽しそうに笑う。立城が深々とため息をつき、優一郎の袖を引いた。手招きされ、身を屈めた優一郎の耳に立城がそっと小声で囁く。
「風の属性は物事を煽ることにあるから、抵抗するだけ無駄だと思うよ」
それだけ言って立城が優一郎の袖を離す。優一郎は静かに屈めていた身を起こした。
「栄子さん、実はこの方は僕の部屋から出る事ができないという状況にあります。先ほどの約定に関連する制限事項なんですけど。さしあたって、この方の管理は僕が請け負うと言うことでよろしいでしょうか?」
『ええ、構わなくてよ』
栄子が優しい声で告げる。その声の向こうに微かな呻き声のようなものを聞き取って優一郎は目を細めた。何となく立城を見やる。すると立城は明らかに頬を引きつらせていた。
「それでは栄子さん、回線を切ります。立城さんの復活に向けて最後のリハビリを行いますので。いろいろとお世話になりました。また、お会いしましょう」
そう告げて優一郎は素早く凪のクリトリスを指先で回転させた。いつの間にか傍にいた蒼が消えている。優一郎は続いて凪を見た。凪は未だ股間を晒しているのに、恥ずかしがっている様子はない。それどころか目に怒りがこもっている。続いて優一郎は立城を見た。立城は俯いてこぶしを固め、何事かを口の中で呟いている。
「立城さん、そのご様子だと、凪さんを抱く必要はないですよね? 競争は公平に行われるべきですし」
そう告げると立城がのろのろと顔を上げて小さく頷いた。萎えちゃったしね。そう呟いている。優一郎は立城に頷き返して凪に告げた。
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