そしてTS警報です!
落胆の息をついて立城は優一郎の差し出していたトレイをそっと押した。
「そこで、紫さんにお願いしたいことがあるんです」
「え?」
早くここから去ろう。そう思っていた立城は意外な優一郎の言葉に驚いて目を上げた。優一郎が手にしていたトレイを傍の実験台に乗せる。
「僕、龍神の女性とはセックスしたことがないんですよ」
さらりと告げて優一郎がにっこりと笑う。立城は驚きに目を見張ったまま、優一郎と斎姫とを見比べた。だが不思議なことに斎姫に驚いた様子はない。
「僕は人間を再現するためにヒューマノイドを開発しているわけではありません」
「ちょっと待って」
立城はぐらぐらする頭を押さえて息をついた。斎姫にごめんね、と言い置いて優一郎の手を引く。立城は優一郎の腕を抱えたまま研究室から出た。引っ張られるままに優一郎も研究室から出る。
ドアをしっかり閉めてから立城は優一郎に向き直った。
「それって僕を抱きたいということ?」
「端的に言うとそうなりますね。第一に資料として、第二には性欲解消のため。紫さんを抱きたいです」
きっぱりと優一郎が告げる。立城は高鳴る鼓動を抑えようと胸元を強くつかんだ。
「でも、僕と性交すると色々と変なものが見えるかも知れないよ」
以前は抑えられていたことも今は抑えられるかどうかすら怪しい。それどころか一度、女性になってしまったら性欲がどこまで深くなるか判らない。立城は緊張に身を強張らせてそう説明した。
「それは当然です。抑圧するだけでは、限界ありますからね。このままだと破綻するの、わかってらっしゃるんでしょう?」
優一郎は頷きながらその場にしゃがんだ。視線を合わせてくれた優一郎を立城はしばし無言で見た。そうしている間にも欲求はどんどん深くなる。このまま少しでも刺激を受ければ射精すらしてしまいそうだ。
「ごめんね。僕が困っているからそう言ってくれてるんでしょ?」
掠れた声で言いながら立城は俯いた。
「いえ、お見せしたとおり、こっちも困ってるんです。ここは困っている者同士、取引するということで手をうちませんか?」
笑顔のままで告げて優一郎は唐突に立城の肩をつかんだ。驚きに目を見張る立城の胸に優一郎が右手を突き入れる。立城は掠れた声を上げて仰け反った。痛いはずの他者の侵入が快感に変わる。
「ここなら、水輝さんとの誓約に縛られることも、水輝さんに察知されることもありません」
器の中で優一郎の手が蠢くのが判る。立城は全身の力を抜いてその場にがっくりと膝を落とした。抵抗しようとしていた理性の糸がぷつんと切れる。立城は快楽に喘ぎながら力なく首を振った。優一郎が器の中にある宝珠に触れる。
「紫さん……本来の姿に」
囁きと共に優一郎が宝珠に指を突き立てる。その瞬間、立城はびくりと身体を震わせた。少年の形を取っていた器が紫の光を帯びて変質する。数瞬後、立城の姿は成熟した女性のものへと変化した。
「綺麗ですよ。紫さん」
くすりと笑って優一郎が右手を胸から抜き出す。立城は深い吐息をついて閉じていた目を開けた。宙を漂っていた長い髪が背中にふわりと零れ落ちる。されるがままに変質した立城は服もなにも纏っていなかった。
腕を伸ばして優一郎の首にすがりつく。腰を上げた立城の股間からは既に愛液が伝っていた。
「感じやすいんですね。もうこんなになってる」
立城の耳元に囁いて優一郎が手を伸ばす。乳首をつままれた立城は掠れた声を上げて腰をひくつかせた。
「とりあえず、ここで一発やっていいですよね? ちょっと僕のほうも辛抱できそうにないので」
言うが早いか、優一郎は白衣を開いてズボンのジッパーを下ろした。立城は優一郎の言葉にうっとりとした面持ちで頷き、軽く足を開いた。露にされた優一郎のペニスを濡れた腿の間に挟む。
「血、出るかも」
勃起しきったペニスを濡れた股間でゆっくりとなぞりながら立城は囁くように告げた。この器になってから誰かと交わるのは初めてだ。
「そんなこと気にされなくても。ズボンが汚れる程度でしょ?」
くすくすと笑いながら優一郎が立城の腿の間に手を入れる。されるがままに足を開いて立城は優一郎に体重を預けた。
「食べないの?」
龍神にとって処女血は特別な意味を持つ。それは対象が人間であろうが龍神であろうが変わりない。立城は欲望に弾け飛びかけた理性を必死でつなぎ止めてそう告げた。
「とりあえず、分析してからいただきます。僕は科学者なので」
水輝さんに取られてたらたいへんなことになってたなあ、と優一郎が続ける。じゃあ、と立城は震える腕で優一郎の肩を強く押した。ふらつく身体を何とか支えて立ち上がる。
「どこか……採血出来る道具が……あるところで」
全身の熱が集中したように下腹部が熱い。立城はふらつきながら懸命に歩き出そうとした。だが立城の手を優一郎が引く。引かれるままに立城はよろけてその場に膝をついた。
「道具はいりませんよ」
立城を片腕に抱き、優一郎は白衣のポケットから試験管を取り出した。それを軽く宙に放る。立城はぼんやりと試験管の行方を目で追った。二人の傍で試験管が宙に浮いたままぴたりと静止する。
「十二柱最弱の僕でもこの程度の力なら使えますから」
そう告げて優一郎は立城を抱え上げた。立城は判った、と頷いて優一郎の首に腕を回した。濡れた立城の陰部を確かめるように優一郎が指でなぞる。その感覚に微かに声を漏らして立城は呟くように告げた。
この頃から優一郎は立城を紫と呼ぶようになる……はずです。