……あ、でも凪が恥ずかしい目にあってるのはエロなのか……?
「凪さん、仮とはいえ管理者として命じます。女性器ユニットからサファイアを取り出して立城さんに渡してあげてください」
凪が目を見張る。だがすぐに諦めたのだろう。凪は不機嫌そうな面持ちで顎をしゃくった。このままの格好では無理だと言いたいらしい。優一郎の横で立城がああ、と頷く。
「外す?」
そう立城が優一郎に声をかける。
「はい。立城さん。拘束を解いてあげていただけますか?」
「判った」
そう告げて立城が指を鳴らす。すると唐突に凪を拘束していた枷が全て消えた。凪が荒い息をつきながら口許を袖で拭い、その場に身を起こす。
「……最低ね、あんたたち」
ぼそりと言ってから凪が優一郎と立城を交互に睨む。どうも凪は相当に気が強いらしい。だが優一郎に言われたことは聞く気があったらしい。凪はくるりと二人に背を向けてスカートを捲り上げた。二人に見えない角度でもぞもぞと動く。
「水輝さんの意志が確認できれば、あなたは水輝さんの物です。あなたの水輝さんへの想いはしっかりと聞きましたから」
「余計なこと言わないで! 手元が狂ったらどうするのよ!」
優一郎の語りかけに凪が即座に言い返す。優一郎は疲れたため息をついて額を覆った。その横で立城がしみじみと告げる。
「随分と勝気な性格になられたんですね」
「……あなたも要らないことは言わなくていいわ」
そう返した後、凪が微かに呻く。スカートを戻した凪の手には大きなピンクの宝石が握られていた。凪が振り返って軽く手を振る。放られた宝石を立城が右手で受け止める。
「それでは凪さんは大きい方のベッドを使ってください。僕はそちらのソファーベッドで寝起きすることにします。部屋から出られないのは不自由でしょうからメイドを一人つけます」
「私は床でいいわ。メイドも要らないわ」
すかさず凪が答えて部屋の隅に背中を預け、そのまま座り込む。膝を抱えて丸くなった凪は抱えた膝に顔を伏せた。
「それじゃ、僕は失礼するね。でも、これは返しておくよ。もう読んだから」
にっこり笑って言いながら立城が凪の傍にそっと宝石を置く。凪は宝石を素早くつかみ、また膝を抱えて顔を伏せた。
「立城さん、戻られるのですね? 今後のことですけど吉良瀬の組織のほうは元通りということで、あの計画はストップしてよろしいですよね?」
凪を刺激しないよう、そっと離れながら優一郎は立城に告げた。立城がそうだねえ、と天井を仰ぎながら優一郎に並んで歩き出す。
「優一郎くんが良ければもう少しいさせてくれないかな」
そう言って立城がにっこりと笑う。立城はドアを開けて廊下に出た。手招きされて優一郎も廊下に出る。ドアを閉じてから優一郎は言った。
「それは別にかまいませんよ。水輝さんの決断も万が一がありますからね。そうなったら、僕よりは立城さんを選ばれるでしょうし」
「正確に言うと、僕が欲しいのは凪さんそのものじゃなくて」
そこまで言って立城が肩越しに振り返って小さく笑う。並んで歩きながら優一郎は首を傾げた。
「何ですか?」
「まあ、君に隠しても仕方ないか」
そう言って立城が少し歩く速度を上げる。どうやら出来るだけ優一郎の部屋から離れようとしているらしい。優一郎はなるほど、と呟いて立城について歩いた。
立城が自分に宛がわれた部屋のドアを開ける。にっこりと笑った立城に促され、優一郎は立城の部屋に入った。優一郎をソファに座らせてから立城が静かに壁まで移動する。
「変だと思ったんだよね。この結界」
そう笑いながら立城が壁に手をあてがう。次の瞬間、凪が張り巡らせていた結界が砕けて散った。その直後、真っ白な光が部屋を包みこむ。優一郎は目を見張って周囲を見回した。
「ちゃっかり僕の力で編まれてたんだよね」
くすくすと笑って立城が白い結界を展開する。難なく力を使っているように見えるのに、相変わらず立城は幼い少年の姿をしている。僅かの間の後、部屋は再び何事もなかったかのような光景になった。
「僕が凪さんを欲しいという理由はね。一つ目は凪さんの持っている情報」
そう言いながら立城が指を一本立てる。
「ヒューマノイドですから情報は引き出すだけなら簡単です。ですけど、水輝さんを鍵としてロックされていると思いますよ」
「だから二つ目。水輝の餌」
にこにこと笑いながら立城が二本目の指を立てる。それから立城は優一郎の前にすとんと腰を下ろした。
「立城さん。凪さんの水輝さんへの想いはとても深いです。水輝さんの中にも一度は断ったといっても凪さんへの想いが存在します。僕は凪さんは水輝さんの物になる事がベストだと思っています」
「やだな。そんなこと知ってるよ」
そう答えて立城が苦笑する。二本の立てた指を唇にあてがい、立城は続けた。
「でもね。僕は割と独占欲が強くてね。これ以上、水輝の周りに女を侍らせたくないんだよね」
笑顔のままで立城がきっぱりと言う。優一郎はため息をついて告げた。
「立城さんには誓約があるでしょう? 凪さんから受け取ったものと、紫さんとして結んだものの、二重の誓約が」
誓約は今でももちろん有効だ。互いが同意の上で破棄しない限り、それは続く。そう言おうとして優一郎はふと立城を見た。立城は指を唇にあてがってくすくすと笑っている。
立城が正気に戻りましたw