※この作品はR-18です。

魂の座 三部 暁の姉妹   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


凪の正体と栄子の愉楽 4

「誓約はあるよ。確かにね。でもそれって永遠じゃないもの」

 

 そう言って立城がソファの縁から下ろした足をぶらつかせる。子供のような仕草をする立城を優一郎はじっと見つめた。

 

「誓約も奪われて、僕の部屋に閉じ込められた凪さん……まさか、このまま彼女をあそこに閉じ込めたままにさせようとか考えてらっしゃいますか?」

「それこそまさかだよ。邪魔になって仕方ないじゃない」

 

 不思議そうに目を見開いて立城がためらいもなく告げる。それに、と立城は優一郎に指を突きつけた。

 

「君なら知ってる筈だ。僕がどちらの誓約を選んだのか」

 

 それを聞いた優一郎は僅かに目を細めた。

 

「なるほどと思いましたけど。ああいう選択もあるのかと」

 

 それまで真っ直ぐに優一郎を見つめていた立城が小さく笑って手を下ろす。再び足をぶらつかせながら立城は呟くように言った。

 

「下手に死なれて余計な誓約されても迷惑なんだよね。僕が」

 

 それに水輝は使い魔として凪さんを使うことは出来ないよ。そう笑って立城が首を傾げる。

 

「なぜですか?」

 

 疑問に思ったまま、優一郎は訊ねた。すると立城が困ったように笑う。

 

「水輝が少し本気だから。水輝はね。そういう相手を使い魔としては使わないよ。守ることにむきになって、結局は相手を自滅させる」

 

 そう言って立城は身軽にソファを飛び降りた。備え付けのキッチンで茶をいれて立城が戻ってくる。ありがたく茶を受け取りながら優一郎は告げた。

 

「だとしても、僕は水輝さんに首を縦に振らせるよう努力します」

「どうして?」

 

 再び優一郎の正面に腰を下ろしながら立城が笑って訊ねる。

 

「それが彼女のためだと、僕は信じるからです」

 

 僕の玩具として弄られるなんて論外でしょう? 冗談のつもりで優一郎はそう告げて苦笑した。すると立城が何度か瞬きして指を鳴らす。

 

「それ、いいじゃない」

 

 そう言って立城が嬉しそうに頷く。優一郎は苦い顔で茶を啜り、ため息混じりに告げた。

 

「煽らないで下さい。凪さんは僕のことがかなり苦手そうですし」

「僕だって嫌われているけど?」

 

 すかさず言葉を挟んで立城がくすくすと笑う。ああ、そうだと告げて立城は腕を顔のところまで持ち上げて三本の指を立てた。

 

「三つ目。……単純な好奇心。僕は吉良博士の作ったあの機体に興味がある」

 

 何しろ水輝の宝石だけであんなに簡単にぺニスを生やしてみせたんだもの。立城はにこにこと笑いながらそう告げた。

 

「それについては任せてください。メンテナンスを兼ねて機会を見てできるだけ早く分解して、内部構造を確認するつもりです」

 

 かなりガタが来てますし。そう続けて優一郎は真顔で頷いた。だが立城が違うよ、と苦笑して首を横に振る。

 

「僕は機体の構造を知りたい訳じゃない。どの程度の刺激でどんな反応をして、更に嫌いであるところの僕に傅いた時の反応を見たいんだ。それと力の流れ」

 

 流れるような口調で立城が語る。

 

「ではあなたの手に落ちないように、僕は全力で阻止させていただきます」

 

 優一郎はにっこりと笑ってみせた。立城も笑顔で首を傾げる。

 

「折角あれだけ使えそうなのに、君ってけっこう頑固だね」

 

 そう言って立城は拗ねたように唇を尖らせた。足をぶらつかせて上目遣いに優一郎を見る。

 

「誓約、覚えてますよね? あなたは今、ここに未だ居ます」

 

 そう言って優一郎は真っ直ぐに立城を見据えた。立城が困ったように笑って首を傾げる。もしかしたら立城は優一郎が言うことを最初から知っていたのかも知れない。

 

「誓約に基いて地上の王に命ず。凪に対する権利を過去から未来に渡って永続的に放棄することを求む」

 

 不意に音のない光が優一郎の身体から漏れ始める。優一郎は目を見張って自分の身体を見下ろした。色とりどりの光がかわるがわるに部屋の中を照らす。

 

「やはり、判っててここに残ったんですね? 僕を煽るために」

「それもあるよ。だってそうでもしないと僕は彼女を殺してしまいそうだったからね」

 

 小さく笑って立城が優一郎に手のひらを向ける。

 

「わかってます。今も僕はあなたの手のひらの上で踊っているにすぎないってことですね」

 

 疲れた息を吐いて優一郎は告げた。だが立城はそれに答えず、静かな声を紡ぐ。それはまるで歌のようにも聞こえた。

 

「我、紫の錠、汝との誓約により地上に異変をもたらす者。かの者に封印されし古の力を今ここに」

 

 口を開こうとした優一郎より早く、立城が言う。

 

「具現せよ」

 

 そう立城が言った瞬間、優一郎の身体から漏れていた光が更に強い輝きを帯びた。それと同時に圧倒的な何かが優一郎を襲う。静かに優一郎に手のひらを向けた立城が小さな声で呟く。

 

「そう。君も、そして僕も、誰かの手の上で踊っているに過ぎないんだ」

 

 立城の声が遠い。優一郎の手から自然とカップが滑り落ちる。乾いた音を立ててカップが割れる。ぐらりと揺れた優一郎の体はそのままソファに沈み、同時に優一郎の意識も闇に沈んだ。




なぎははずかしめをうけた。
みたいな感じのタイトルが良かったでしょうか?w
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