※この作品はR-18です。

魂の座 三部 暁の姉妹   作:伊駒辰葉

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エロのはずなのにー!!!w
多分、エロく見えないかと思います。


安らぎの歌を口にする時 3

 金の星、昼と夜の狭間に去らん。我、水の星と対になりし者。水の星を見守りし者。満ち、欠ける者。

 

 澄んだ声がどこからともなく降って来る。水輝は奈月の右手首から手を離した。右腕で奈月の腰を強くつかんで上下に揺する。栄子の乳房が消え、逞しい胸板が現れる。栄子の股間に現れたペニスを奈月の膣壁で擦りながら水輝は目を閉じた。栄子が腕を伸ばして奈月の乳房を服越しにつかむ。

 

 水の星のみを見つめ来し者。水の星に住まう全ての者よ。安らかなれ、健やかなれ、清くあれ。

 

 背を反らした奈月の手が栄子の胸から抜ける。水輝は奈月の口を押さえていた手を剥がした。両手で奈月の腰をしっかりとつかみ直し、細かく上下に揺する。そうしながら水輝は伏せかけていた上体を起こした。栄子が獣じみた情欲に溢れた目をして腰を突き上げる。水輝は栄子の足の間に膝で立ち、無言で奈月の腰を揺すり続けた。

 

 水輝の手にぽつりと温かいものが落ちる。奈月の零した涙だということは判っていたが、水輝はそれでも手を止めなかった。栄子の動きが徐々に単調になる。荒い息を吐きながら腰を上下させる栄子に合わせ、水輝は奈月の腰を円を描くように小さく回した。

 

 栄子が眉を寄せて腰を一度、大きく跳ね上げる。その直後、奈月がびくんと身体を震わせた。水輝は静かに奈月から手を離し、ベッドを降りた。恍惚の顔で栄子が何度か腰を跳ね上げる。その度に奈月の身体は不安定に揺れた。が、両の乳房をつかまれているため、奈月が倒れることはない。

 

 床に落ちていたシャツを拾い上げる。水輝はそれに手を通そうとしてふと、左手を見た。手の甲を濡らしていた奈月の涙にそっと口づける。

 

「最低だな、おれ」

 

 殆ど声にならない声で呟いて水輝はシャツの袖に腕を通した。一度の射精では足りなかったのか、栄子はベッドに奈月を組み伏せている。奈月は無表情のまま、天井を見つめている。その目からは涙が伝っていた。

 

 いとしき水の星と、そこに住まう全ての者よ。我は汝らをとわに愛さん。我は汝らをとわに見つめん。

 

 澄んだ歌声はまだ続いている。水輝はシャツのボタンも留めず、胸ポケットに手を伸ばして煙草を抜いた。唇に咥えたところで動きを止める。ライターがない。水輝は火の点いていない煙草を咥えたまま、周囲に目を配った。広々とした寝室の床を見回してからベッドの傍の机に目をやる。

 

 不意に栄子が官能の声を漏らす。奈月を犯しながら栄子は口許に淡い笑みを浮かべている。相手が誰であるか判らなくなっているのだろう。犯されている奈月は無表情のままだ。水輝はベッドで絡み合う二人をしばし見つめてから机に乗せられていた銀色のライターを取り上げた。

 

 火を点けて深く息を吸う。

 

「……どうせならおれを殺させれば良かった」

 

 それならこんな思いはしなくて済んだのに。水輝はこみ上げてくるものを堪えながら呟いた。あの時、死んだのが、自分なら、こんな思いは。

 

 深い息をついて栄子が身体を起こす。水輝ははっとして伏せかけていた顔を上げた。栄子は満足そうに唇を舐めてから腰を引いた。だが奈月の膣からは精液は漏れてこない。

 

「水輝……さん。愛しています」

 

 奈月が小さな声で呟く。だがその顔に表情はない。水輝は無言でベッドに寄り、めくれていた奈月のスカートを戻した。ベッドに座った栄子が深呼吸をして額に指をあてがう。瞬く間に栄子の姿は女性のそれに戻った。栄子の性の別が女性そのもののため、男性の身体を維持するのは難しいのだ。

 

「泣いているんですの?」

 

 栄子が深く息をついてから静かに告げる。水輝は別に、と短く答えて唇から煙草を引き剥がした。まだ長い煙草を灰皿に押し付け、その場に散っていた下着を拾い上げる。水輝は黙々と服を着てからベッドに向き直った。

 

 両腕に静かに奈月を抱え上げる。

 

「水輝さん。次なる命を」

 

 静かな声で奈月が言う。水輝はじっと奈月を見つめて微かに目を細めた。

 

「とりあえず疲れただろうから少し休め。長旅の上に無理やり龍神の童貞を切らされたんだ」

 

 無表情の奈月に水輝はそっと語りかけた。すると奈月が水輝の腕の中で小さく頷く。

 

「はい。水輝さんがわたしをまた必用としてくださるそのときまで」

 

 おやすみなさい。水輝さん。

 

 奈月が無表情のままで告げ、瞼を閉じる。水輝は脱力した奈月の胸に顔を埋め、肩を震わせた。

 

「だらしないですわよ。青龍王」

 

 鋭い声が飛んでくる。奈月の胸に顔を埋めたまま、水輝は煩い、と低い声で告げた。栄子がベッドを滑るように降り、椅子にかかっていた服を取り上げる。手早く服を身につけ、栄子は腰に手をあてがって水輝に向き直った。

 

「少なくともわたくしの知る青龍王はそんなに情けない御仁ではありませんでしたわ」

「そりゃどーも」

 

 深く息をついて水輝は顔を上げた。真っ直ぐに栄子を見つめて告げる。

 

「風の息吹よ。汝に問う」

 

 凛とした水輝の声に頷き、栄子が身を屈める。その場に片膝をつき、胸に手をあてがった栄子が頭を垂れる。

 

「……おれは間違っているのか? おれは何でいつも大事なものをこの手で壊す羽目になるんだ?」

 

 問い掛ける水輝の声は半ばから殆ど音になっていなかった。頭を上げた栄子が水輝を見上げて告げる。

 

「それが青龍王、貴殿の使命故」

 

 時の流れには誰も逆らえませぬ。栄子の答えに水輝は目を細めた。左の目が熱くなり、自然と涙が浮かぶ。水輝は一筋の涙を零しながら告げた。

 

「それでもおれは絶対、逆らってやる」

 

 低い声でそう言ってから水輝は栄子に背を向けた。栄子が深々と水輝の背に頭を垂れる。水輝は栄子を振り返ることなく、その場から姿を消した。




そういえばこれを書いた頃は煙草を買うのも吸うのもごく普通のことでした。
副流煙ナニソレオイシイノ? みたいな頃だったと思います。
時間の流れは早いなぁ……。
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