※この作品はR-18です。

魂の座 三部 暁の姉妹   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。
……あ、微妙にそれっぽい表現はあるんですけども……これをエロ判定してもいいのかどうか(汗)


莢花と夢の世界 3

 全裸になったところで莢花は息をついた。何気なくショーツに目をやって莢花は訝りに眉を寄せた。

 

 絹のショーツの底に薄い染みが出来ている。底布の湿った部分はちょうど、陰部の触れ合う部分だ。莢花はショーツを見つめながら真っ赤になった。さっきの誰かにそんな妙なところを触られた覚えはない。かと言って変な妄想をした覚えもない。どれだけ考えても莢花はショーツがそんなことになっている理由を思いつけなかった。

 

 莢花は真っ赤な顔で周囲を慌ただしく見回した。誰も部屋にいないことを確認してから莢花はそっと股間に手をあてがった。軽く腰を浮かせて指を滑らせる。恐る恐る指先で股間に触れた莢花はびくん、と身体を震わせて手を引っ込めた。

 

「やだ、なんでこんなに……」

 

 指先で触れた陰部はぐっしょりと濡れていた。莢花は呆然と濡れた指先を見つめた。どうしてさっきまで触れてもいなかったあんな場所が濡れているのだろう。莢花は理解に苦しみながら赤い顔で自分の股間を覗きこんだ。

 

「うぅ、こんなところまで綺麗なのね」

 

 濡れた陰部を覗きこみながら莢花は呻いた。まるで桜のように淡く色づいた陰唇は漏れた愛液でぐっしょりと濡れている。莢花は息を潜めて陰唇をそっと指で割り開いた。

 

 軽く開いた膣口からとろりとしたものが零れてくる。肌を伝うその感触に莢花はぶるりと身震いした。

 

「こんなこと、なかったのに……」

 

 これじゃあまるで、お姉ちゃんみたいじゃない! 心の中で莢花はそう叫んだ。まだ何も知らずに三人で一緒に暮らしていた頃のことだ。莢花は夜中にトイレに行こうとした。そして姉の渚の部屋の前を通りかかった時、妙な声を聞いて不審に思った莢花はそっと部屋の中を覗いたのだ。

 

 そこにはベッドの上で自慰に耽る渚がいた。まだ渚が中学二年、莢花が中学一年生の頃だ。その頃、莢花は渚が何をしているのか判らなかった。が、とても声をかけられる雰囲気ではないことだけ理解した。莢花はそっとドアを閉じ、急いで用を足して自分の部屋に戻った。ベッドに潜っても渚の姿が脳裏に焼き付いて離れなかった。

 

 あの時に渚が自分を慰めていたのだと知ったのは、高校に上がってからだった。友達が恥ずかしそうにする話の中にその手の話が混ざっていたのだ。そして莢花は理解した。あの時、渚は水輝を想いながら自慰をしていたのだ。

 

 すっごい不潔。当時の莢花は渚を軽蔑した。実の弟に恋心を寄せるだけならまだしも、それを想いながら自慰に耽る渚を理解出来なかったのだ。

 

「今ならちょっとはお姉ちゃんの気持ちもわかるかな。お兄ちゃんに比べれば他の男なんて芋か牛蒡か大根かって感じだもんね」

 

 ぼんやりとした面持ちで莢花は呟いた。結局、あの頃の莢花は既に水輝のことを好いていたのだ。だが当時の莢花は自身の想いには全く気付いていなかった。莢花は無意識に渚に嫉妬していたのだ。

 

 水輝はずっと莢花の傍に居た。それは確かだ。が、時折、水輝の目が渚を追いかけることを莢花は知っていた。ほんの些細な時間だ。例えば食事の後に食器を片付けるために渚が流しに向かった時。テレビを見ている水輝と莢花の傍を渚が通りかかった時。莢花と共に階下に降りる時に通りかかる渚の部屋を水輝は時折、とても寂しそうな目で見つめていたのだ。

 

 そんな目で水輝が莢花を見たことはない。莢花は当時のことを思い出してため息を吐いた。

 

「あたしってお兄ちゃんにとって何だったんだろう」

 

 ぽつりと莢花は呟いた。あの時、水輝が莢花を置いて一人で木龍神に立ち向かった日、莢花は夜叉として覚醒した。だがその時にはもう、何もかもが手遅れだった。水輝は狂気に囚われたまま、紫色の双子に刃を向けた。そして水輝は止めに入った莢花を手にしていた刀で貫いてしまったのだ。

 

 真実を暴き、水輝の手にかかって命を散らしながら莢花は初めて満足した。これで水輝は渚ではなく、自分を見てくれるかも知れない。思い起こしながら莢花は顔を歪めた。

 

 不潔なのは渚ではない。自分だ。そう思いながら莢花は膝を抱えて俯いた。

 

「卑怯者だ。あたし。ああすればお兄ちゃんが絶対あたしを忘れないってそう思ったから、だから」

 

 膝に強く額を押し付けながら莢花は呟いた。

 

 だから死に向かって突き進んでいた水輝を止める振りをして、莢花は自らの命を散らした。それで水輝に自分の分も生きろと強要したのだ。

 

 その後、水輝がどうなったかを莢花は知らない。紫翠との誓約によって莢花を守ろうとした水輝は、結果的には莢花を自らの刀で貫いてしまったのだ。ぎりぎりのところまで突き落とされていた水輝の精神はきっともたなかったのではないか。ひょっとしたら水輝はあのまま狂ってしまった可能性だってある。それを考えた莢花は身震いした。

 

「お兄ちゃん……」

 

 莢花はそう呟いて顔を上げた。目尻に溜まっていた涙を拭い、立ち上がる。ふと床に目を落とした莢花は再びこみ上げてきた熱いものを必死で殺した。血溜まりを見るとどうしてもあの時の傷ついた水輝のことを思い出してしまう。

 

「お兄ちゃん!」

 

 涙声で莢花は水輝を呼んだ。だが部屋には誰も現れない。莢花は顔を覆って堪えきれずに泣き出した。涙が後から後から零れてくる。

 

 しばし泣きじゃくってから莢花はふらりと歩き出した。

 

「とりあえず、シャワー、捜さないと……」

 

 血があちこちついたこの身体では服を着ることも出来ない。莢花は着ていたネグリジェを頭から被って身につけてから部屋を出た。




莢花はわけがわからないようだ。
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