エロと思えるかどうかは、読む方次第……。
「何故あなたが水輝のところに行かなければならないの。これ以上、あの子を追い詰めてどうするつもりなの」
怒りに目を吊り上げて汀は優一郎を睨もうとした。なのに命があるためにどうしてもディスプレイから目が離せない。
「追い詰める気はありません。断罪の光が迫っています。水輝さんを護らねばなりません」
「なんで……すって……?」
汀は真っ青になった。一体、何が。だが優一郎に問うよりも早く汀は理解した。悲鳴に近い声で叫ぶ。
「何てことをしてくれたの!」
機体にこめられていたものがなくなっている。汀は蒼白になったままで身体を震わせた。
「失礼ですが、あなたごときがなんとかできるものではありませんでした。悲劇のヒロインじみた妄想はやめてください」
言われた瞬間、汀は息を飲んだ。愕然と目を見張って絶句する。優一郎に言われた言葉が胸に刺さって痛い。しばしの沈黙の後、汀は疲れた息を吐いた。
そうね。確かに私にはどうにも出来なかったのよね。もし、どうにか出来るものならあの時に出来ていた筈だもの。
汀は心の中でそう呟いた。
「それで? あなた方にはどうにかする権利があったと? そう言いたいのね?」
感情の失せた声で汀は告げた。
「とりあえず僕は水輝さんを狂わせた要因の一つを取り除いたつもりです」
「何故、私を死なせてくれなかったの」
それだけが唯一自分にも出来たことだったのに。汀は力ない声で呟いた。
傍にいることも出来ない。遠くから見つめることも出来ない。それなら水輝を惑わす原因の一端がこめられた自分がいなくなればいいのではないか。
だがその考えこそが妄想だと優一郎は言っているのだろう。汀は静かな声でごめんなさい、と詫びた。
「あなたが滅びたら、水輝さんは確実に狂っていたでしょう」
穏やかな声で優一郎が告げる。汀は小さく笑ってそんなことはないわ、と答えた。すると優一郎が目だけを上げる。だがディスプレイを見つめる汀には優一郎の様子を伺うことは出来なかった。
「ボディの修理は完了しています。というか、斎姫の以前のボディパーツをそのまま流用しただけですが」
「そう。じゃあ、もう目を離してもいい?」
汀はじっとディスプレイを見つめたまま問い掛けた。
「いえ。ご覧の通り、中枢部分の修理はこれからです。まず膣を駆動するモーターを取り付け、ギアボックスを調整します」
くすくすと笑いながら優一郎が説明する。凪はディスプレイを見つめたまま、そう、と感情のない声で告げた。正直なところ、自分の内部だと言われて見せられても特に感慨はない。汀はぼんやりとディスプレイを眺めていた。
「そして、各種のセンサーや性感スイッチを取り付け、愛液タンクからチューブを繋いで、分泌量をバルブで調整します」
「そう。それはご苦労様」
画面を見つめながら汀は感情の失せた声で言った。実際に優一郎が部品をあれこれと汀の下腹部に埋め込んでいく。汀はそれを見つめながらため息をついた。
「これで人工膣の動作テストが可能です。感覚を繋ぎますよ」
言いながら優一郎が膣口の左脇に設えられたスイッチに触れる。唐突に感覚が繋がった汀は僅かに目を細めた。深く息を吸って少しずつ吐き出す。
「どうですか? 感覚はありますか?」
「あるわ」
汀は静かにそう答えた。感覚の戻されたその部位だけが妙に熱く感じられる。恐らく欲情しているのだろう。それは判ったが汀は自分の置かれた状態を酷く冷静に見ていた。自然と答える声からも感情が失せる。
「このスイッチの位置を覚えておいてください。これで人工膣の動作のオンオフを行います」
「そう」
大した興味も抱けず、汀は力なく返事した。ヒューマノイドの機体が人の身体よりずっと欲情し易いのは知っている。だがそれでも汀はどうしてもそんな気にならなかった。確かに命じられれば誰かの伽の相手もするだろうし、自慰もするだろう。だがそのこと自体にはどうしても興味が持てない。
「膣口の右のバルブは愛液の分泌量の調整用です。これも場所を覚えておいてください」
「善処するわ」
汀は膣口の右側にある小さなバルブを示す優一郎の指を見ながら淡々と答えた。
「この構成は電動式の女性器ユニットとして標準的なものです。通常のヒューマノイドには必用の無い知識ですが、汀さんには女性器の修理を担当してもらうつもりですので解説しています」
「そう」
優一郎の説明に凪は静かな声で返した。
「続いてクリトリスの取り付けに入ります。クリトリスは性感スイッチとしてだけではなく、ヒューマノイドの主制御スイッチとして機能します」
剥き出しになった汀の股間部分にはめ込まれた機械仕掛けの女性器は、見方によってはとても不気味だ。しかも修理中だから機械が剥き出しにされたままなのだ。優一郎が指に挟んだ小さな丸いものを静かにはめ込んでいく。汀はぼんやりとその様子を眺めていた。
「ヒューマノイドのクリトリスは欲情したり、制御が必要な状況になると自動勃起します。また、つまんで左右に回転させたり、カチリと音がするまで押し込んだり、時計のリューズのように引き出して回転させることで、ヒューマノイドの機械的な機能を制御します」
そう説明しながら優一郎がきっちりと丸い珠を機械の中にはめ込む。実演のつもりなのだろう。はめ込んだ珠状のものを優一郎が左右に回転させる。
「そう」
画面をぼんやりと眺めながら凪は答えた。
「それでは配線を繋ぎますね。クリトリスには膣のように無効化するスイッチはありません」
言いながら優一郎が一度、小さな珠を機械から抜き取る。次いで、優一郎ははめ込み口に被せられていたカバーを取り去った。その後、小さな珠を同じ場所に戻す。しっかりと優一郎が指で珠を押さえた途端に汀のその部位の感覚は繋げられた。
何でなぎが平然としているように見えるのかですが。
単に落ち込みが激しいのと怒ってるからですかね。
でも実はコレ、ホントは無理です。
ヒューマノイドは性感に逆らえない仕様なので、この状態のなぎはおかしい、ということになります。
だとすると、というのが後々出てきます。