※この作品はR-18です。

魂の座 三部 暁の姉妹   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


やっぱり水輝は鬼畜だと思うんだ 2

 正直なところ、混乱はしている。だが不思議と気分は落ち着いた。もしかしたら奈月の穏やかな寝顔を見たせいかも知れない。それに汀は思っていた以上に落ち着いている。

 

 椅子に腰掛けて大きく伸びをする。煙草を吸い始めた水輝の部屋のドアが鳴る。水輝はおー、と間延びした返事をした。ドアを開けた汀が静かに入ってくる。

 

「……何故、死のうとしたの?」

 

 水輝の座る椅子の横に置かれたテーブルに茶を置いた汀がぽつりと言う。水輝は無言で紅茶のカップを取った。唇に挟んでいた煙草を指につまみ、注意深くカップの中身を啜る。だが紅茶は意外にも水輝にちょうどいい温度になっていた。汀がわざわざ猫舌用にいれてくれていたのだ。水輝はありがたくその紅茶を飲んだ。ここ数日というもの、まともに食事をしていない。汀のいれてくれた紅茶はいやに喉に染みた。

 

「お前も妙なメッセージ残そうとしただろ。お互い様だ」

 

 質問には答えず、水輝はぶっきらぼうに言った。すると汀が微かに笑う。そしてまた汀はセックス、と呟くように言った。

 

「あのなあ」

「だって命令だもの」

 

 だから早くしましょう。汀が平然と言う。水輝は深々とため息を吐いてカップを机に戻した。頭をかきながら屋敷の外に意識を飛ばす。

 

「あーあー、こちらは池田水輝です。聞こえていたら吉良優一郎くんは大至急、おれの部屋に来てください。というか、来い」

 

 水輝は平坦な声でそう言った。そこで意識を引っ込める。呆れたような顔をする汀になんだよ、と機嫌の悪い声を返して水輝は紅茶をのんびりと啜った。数十秒後、慌ただしい足音が聞こえ、水輝の部屋のドアがばん、と大きな音を立てて開かれた。息を切らして現れた優一郎に水輝はおお、と呑気に言って手を上げてみせた。

 

「水輝さん? いったい、いつのまに?」

 

 焦って言いながら優一郎が大股で水輝に近付く。水輝はまあまあ、と笑って優一郎に椅子を勧めた。小さな丸いテーブルを挟んで置かれている椅子に優一郎が腰を下ろす。すかさず汀がお茶をいれてきます、と部屋から出て行く。

 

「悪かったな。色々と気を遣ってもらったみたいでさ」

 

 水輝はそう言って優一郎に頭を下げてみせた。優一郎はまだ事態が飲み込めていないらしく、目を白黒させている。

 

「水輝さん、あの、歪みは?」

「あー……ええと」

 

 戸惑いの質問に水輝は口を濁した。だが優一郎が尽力してくれたことも判っている。水輝は諦めのため息を吐いて答えた。

 

「莢花が奈月の身体使って浄化してくれた」

 

 そう言ってから水輝はごめん、と再度優一郎に頭を下げた。優一郎が呆然とした面持ちで水輝をしばし見つめ、次いで深々とため息をついて椅子に沈む。

 

「よかった……」

 

 ほっとしたように優一郎が息を吐く。水輝は煙草を咥え直しながら言った。

 

「でさ。悪いんだけど」

 

 静かに汀が部屋に戻ってくる。優一郎の分の紅茶をテーブルに乗せ、汀は黙って水輝の脇に回った。お前は優一郎のだろうが、と水輝は言葉の途中で汀に言った。だが汀は知らん顔でその場に立っている。

 

「あー……ええと、悪いんだけどさ」

 

 そう言いながら水輝は隣に立つ汀を親指で示した。優一郎が不思議そうな顔で汀と水輝とを見比べる。

 

「なんでしょう?」

「この女、ちょっとおれに貸してくれないか?」

 

 水輝は平然とそう言った。途端に隣に立っていた汀が引きつる。水輝は汀をちらりと見てから優一郎に目を戻した。

 

「ああ、あの、僕からもお話しようと思ってたんです。水輝さん。汀さんを引き取られる気はありませんか?」

「あー。この女、すげえ強情だから大変だっただろ」

 

 水輝は咥え煙草で腕組みしてうんうんと頷いた。優一郎が困ったように笑って紅茶のカップを取る。熱い茶を啜る優一郎につられて水輝もカップを取り上げた。その隣では汀が身体を震わせている。その思惟はさざなみのように揺らいでいる。どうやら少しは動揺してくれたようだ。

 

「しっかりした方だと思います。ただ、僕のことは嫌ってらっしゃるようなので、ぜひ水輝さんに引き取っていただきたいんです」

「きっ、嫌っている訳じゃないわ!」

 

 それまで黙っていた汀が焦ったように叫ぶ。あー、はいはい。と水輝は汀に手を振ってみせた。

 

「お前のは嫉妬だろ、嫉妬。何だ、優一郎とおれが出来てるとでも思ったのか?」

 

 水輝は人の悪い笑い方をして汀を見た。すると汀の思惟が一気に揺らぐ。真っ赤になった汀は手にしていたトレイで水輝の頭を張り倒した。思わず紅茶のカップに顔を突っ込んでから水輝は汀に怒鳴りつけた。

 

「何すんだ、お前は!」

「あなたが非常識なことを言うからよ!」

 

 汀がそう言ってぎらりと優一郎を睨む。

 

「あのっ! 僕はノーマルですから!」

 

 怯えたように優一郎が言う。おやー? と笑いながら水輝は今度は優一郎を見た。汀が真っ赤になったままで優一郎を指差す。

 

「龍神に性別は関係ないでしょ!」

「だそうだ」

 

 汀の叫びに付け足して水輝はにやにやと笑いながら優一郎を見た。

 

「僕は気にするんです!!」

 

 珍しく優一郎が声を荒らげる。だがそんな優一郎に汀が言い返した。

 

「何を言っているの! あなた、立城さんと女性で交わったでしょう!?」

 

 それを聞いた水輝はぴくりと眉を上げた。だが水輝の表情の変化に気付かないのか汀が言葉を継ぐ。




タイトル回収回? みたいな?
姉妹というのはなぎと莢花のことでした。
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